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9 感謝だよ
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「あ、あの……ありがとうございました……」
そう声をかけてきたのは、さっき酔っ払いたちに襲われていて、か細いSOSを発していた女性だった。
改めてこの女性を見て、思う。
……キレイだな、この人。大人っぽくておっとりしていそうで……それにスタイルだって抜群だ。僕があの女神様に一目惚れしていなかったら、恋に落ちていたかもしれない。
にしても……この女性がここで酔っ払いたちに襲われていなかったら、この女性が助けを求める声を発していなかったら、僕はかなりマズイ状況に陥っていただろう。
ランがこの国の印象を私に聞いて、その答えに詰まっていた。そして、僕が黙っているのを『SOSを聞きつけた』とランが勘違いしてくれたおかげで、僕はランにバレないですんだ。僕が上辺だけの薄っぺら男だということが、バレずに済んだのだ。
だから――
「礼を言うのはこちらだ。ありがとう」
「……?」僕が言うと、女性は首を傾げた。「……えっと……私は……」
「あ……」
……しまった……そうだよな。この女性からすれば、僕は救世主だ。ピンチを救ってくれた男でしかない。その男からいきなりお礼を言われても混乱するだけだよな。
どうごまかすか……悩んだ挙げ句絞り出した言葉がこれだった。
「キミという存在に巡り合わせてくれた神への……感謝だよ」
何を言ってるんだ僕は。人見知りとコミュ障をこじらせすぎてわけのわからないことを言ってしまった。とんだプレイボーイだ。キャラがまったく定まっていない。
「うげ……」隣でランが失望したとばかりに、「何……ナンパ目的だったの? まぁ別にいいけどさ……私興味ないから消えてるね。終わったら呼んで」
そう言い残して、ランは歩いて路地裏を出ていった。
結果として、僕は目の前の女性と2人きりになってしまった。
しかも……
「あ、あの……その……私……」
女性は顔を赤くしてモジモジしている。なんだか恥ずかしそうに体を縮こまらせていた。
……これがCV〇〇〇〇の効果か……そりゃ〇〇〇〇の声で『キミという存在に巡り合わせてくれた神への……感謝だよ』とか言ったら……僕だったら惚れてる。同性でも惚れてる。
しかも、今回はカリスマスキルまでおまけとしてついているのだ。ナンパに使うには強大すぎる能力たちである……って別にナンパしてるわけじゃないけど。
しかしどうしたものか……この女性は明らか僕に惚れた。見てわかるくらい惚れている。童貞の妄想じゃないと断言できるくらい惚れている。
どうする? いっそこのままこの女性を口説き落として、ハーレムでも作るか? それもいいかもしれない。異世界の醍醐味といえばやはりハーレムだろう。可愛い女の子たちに囲まれて、それだけで幸せになるというのも悪くない。
だが……だが……
「すまない。勘違いさせる言動をとったな」
「……?」
「キミが魅力的な女性であることは間違いない。だが、私には心に決めた女性がいるのでね」
「あ……」女性は一瞬絶望の表情を浮かべた。だが、すぐに悲しそうに笑って、「そう、ですよね。ありがとうございます。危うく……勘違いするところでした」
その憂いに満ちた表情を見て、心が傷んだ。
……失態だった。調子に乗っていた。この声とカリスマスキルがあれば、何を言っても許されると、心のどこかで思っていた。
だから、この女性を傷つけてしまった。僕の浅はかな言動によって、罪のない女性を傷つけてしまった。
……やはり僕の中身は、変わっていないのだ。薄っぺらい男でしかないのだ。そのことを、再認識させられた。
「まずは愛人から、ということですよね」
「……?」
……この人は何を言っている? いきなりこの人は何を言いだしたんだ? なんで笑顔で愛人なんて言葉が出てくるんだ?
「問題ありません。二番手でもいいです。ただ、あなたのそばに存在させてください」
そう声をかけてきたのは、さっき酔っ払いたちに襲われていて、か細いSOSを発していた女性だった。
改めてこの女性を見て、思う。
……キレイだな、この人。大人っぽくておっとりしていそうで……それにスタイルだって抜群だ。僕があの女神様に一目惚れしていなかったら、恋に落ちていたかもしれない。
にしても……この女性がここで酔っ払いたちに襲われていなかったら、この女性が助けを求める声を発していなかったら、僕はかなりマズイ状況に陥っていただろう。
ランがこの国の印象を私に聞いて、その答えに詰まっていた。そして、僕が黙っているのを『SOSを聞きつけた』とランが勘違いしてくれたおかげで、僕はランにバレないですんだ。僕が上辺だけの薄っぺら男だということが、バレずに済んだのだ。
だから――
「礼を言うのはこちらだ。ありがとう」
「……?」僕が言うと、女性は首を傾げた。「……えっと……私は……」
「あ……」
……しまった……そうだよな。この女性からすれば、僕は救世主だ。ピンチを救ってくれた男でしかない。その男からいきなりお礼を言われても混乱するだけだよな。
どうごまかすか……悩んだ挙げ句絞り出した言葉がこれだった。
「キミという存在に巡り合わせてくれた神への……感謝だよ」
何を言ってるんだ僕は。人見知りとコミュ障をこじらせすぎてわけのわからないことを言ってしまった。とんだプレイボーイだ。キャラがまったく定まっていない。
「うげ……」隣でランが失望したとばかりに、「何……ナンパ目的だったの? まぁ別にいいけどさ……私興味ないから消えてるね。終わったら呼んで」
そう言い残して、ランは歩いて路地裏を出ていった。
結果として、僕は目の前の女性と2人きりになってしまった。
しかも……
「あ、あの……その……私……」
女性は顔を赤くしてモジモジしている。なんだか恥ずかしそうに体を縮こまらせていた。
……これがCV〇〇〇〇の効果か……そりゃ〇〇〇〇の声で『キミという存在に巡り合わせてくれた神への……感謝だよ』とか言ったら……僕だったら惚れてる。同性でも惚れてる。
しかも、今回はカリスマスキルまでおまけとしてついているのだ。ナンパに使うには強大すぎる能力たちである……って別にナンパしてるわけじゃないけど。
しかしどうしたものか……この女性は明らか僕に惚れた。見てわかるくらい惚れている。童貞の妄想じゃないと断言できるくらい惚れている。
どうする? いっそこのままこの女性を口説き落として、ハーレムでも作るか? それもいいかもしれない。異世界の醍醐味といえばやはりハーレムだろう。可愛い女の子たちに囲まれて、それだけで幸せになるというのも悪くない。
だが……だが……
「すまない。勘違いさせる言動をとったな」
「……?」
「キミが魅力的な女性であることは間違いない。だが、私には心に決めた女性がいるのでね」
「あ……」女性は一瞬絶望の表情を浮かべた。だが、すぐに悲しそうに笑って、「そう、ですよね。ありがとうございます。危うく……勘違いするところでした」
その憂いに満ちた表情を見て、心が傷んだ。
……失態だった。調子に乗っていた。この声とカリスマスキルがあれば、何を言っても許されると、心のどこかで思っていた。
だから、この女性を傷つけてしまった。僕の浅はかな言動によって、罪のない女性を傷つけてしまった。
……やはり僕の中身は、変わっていないのだ。薄っぺらい男でしかないのだ。そのことを、再認識させられた。
「まずは愛人から、ということですよね」
「……?」
……この人は何を言っている? いきなりこの人は何を言いだしたんだ? なんで笑顔で愛人なんて言葉が出てくるんだ?
「問題ありません。二番手でもいいです。ただ、あなたのそばに存在させてください」
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