恋人が最強に可愛いしカッコいいし溺愛してくれるので、心臓が持ちません。

星上みかん(嬉野K)

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5 恋人が最強に可愛いしカッコいいし溺愛してくれるので、心臓が持たない

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 僕の彼女は一つ後輩の小桃こもも桃姫ももひめという人だ。

 クールで優しくて可愛くて、僕にはもったいないくらいの美少女である。クールと言うかほんわかしてるというか……とにかくホヤホヤした平和な空気が彼女の周りには平穏なオーラが漂っている。
 にもかかわらず、彼女はトラブルメーカーであるけれど、まぁそれも彼女の魅力の一つだ。

 そんな彼女がどうして僕のことを好きになってくれたのか、それはわからない。けれど、僕のことを好きになってくれた以上全力で幸せにしてあげたいと思っている。

 僕が彼女を好きになった最大の理由が一つある。可愛くて優しいというのも当然理由の一つだが、最大の理由が一つある。

「山登りも楽しいですね」

 彼女がゆっくりとした口調でそういう。山登りというより、山を舞台にした軽いハイキングみたいなものだけれど、まぁ山登りといえば山登りだ。

林檎りんご先輩」彼女が僕を呼ぶ。「先輩って利き足どっちですか?」

 聞かれた瞬間ドキッとした。まさか気づかれた?

「……左……」

 明確に左である。右で動作を行おうとすると明らかに違和感がある。
 だけれど……ちょっと前から、1分ほど前からとある事情で右足に体重をかけていたのだ。
 
 要するに、足を痛めたのだ。別にハイキングを舐めていたとかそういうことではないのだけれど……
 僕は体がそんなに強いわけじゃないから、こうやって体を痛めることは結構あるのだ。
 そのたびに強がってみせるのだけど……いつも――

「先輩。私ちょっとやりたいことがあるんですよ」
「……何?」
「おんぶしてみたいです」

 こうやって気づかれてしまう。明らかに僕が足を痛めていることに気がづいて、おんぶしてくれると言っているのだ。

「大丈夫だよ。僕は――」
 
 言いかけた瞬間、彼女のキレイな顔が目の前にあった。

 ……ああ……この目だ。僕はこの目にどうしても惹かれてしまう。

 真剣で真っ直ぐで優しくて、それでいて強さを含んだこの目。
 彼女は脳が溶けるような甘い声で、

「先輩に何かあったら……嫌です。無理は、しないでください」

 断れない。この人にこうやって詰め寄られてしまうと、断れない。圧倒されてしまう。

 次の瞬間、

「よいしょ」彼女は軽々と僕の体を持ち上げた。そして、背中に僕を背負って、「行きましょうか」
「行くって……どこに……?」
「景色の良いところですよ。せっかく山に来たんですから、楽しみましょう」
「え……でも……」

 それだと、僕を背負ったまま彼女が動き回ることになってしまう。さすがにそれは、と家に帰ることを提案しようとしたとき――

「大丈夫」この少し低くなったカッコいい声が、僕は大好きだ。「私なら、できます。余裕ですよ」

 実際に余裕に成し遂げてしまうのだから……この人にはかなわない。

 だってこの人……僕より強いのだから。僕より体力あるのだから。僕より……カッコいいのだから。
 この人に負けないように虚勢張っているけれど……やっぱり追い付けないなぁ……

 しかもこんな僕のことを溺愛してくれるのだから……もうダメだ‥

 恋人が最強に可愛いしカッコいいし溺愛してくれるので、心臓が持たない……
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