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宇宙の帝王が攻めてきたんですよ
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「あれ……」軽い手荷物を持って外に出たアルが、街を見て言う。「……怪物でも来たんですか?」
キミが暴れたんですよ。だから街が崩壊してるんですよ。だから、こんな人気のない明け方に出立することにしたんですよ。街の人にアルが見つかったら面倒だから。
明け方、というにはまだ早いか。太陽はまだ見えておらず、薄暗い。一番静かで、一番眠い……昨日の疲れもまだあるし、眠いのは仕方がないか。
とりあえず街の惨状に関しては、適当にごまかしておこう。
「宇宙の帝王が攻めてきたんですよ。そしたら、ソラさんが倒してくれました」
「おお……やっぱり強いんですねあの人」
こんな嘘あっさり信じないでほしい。大丈夫だろうかこの弟子は。 ちょっとばかり素直すぎないだろうか。
「じゃあ……」アルが振り返って、「出発しますか?」
「……そうですね……」
現在位置は私がバイトしていた酒場の目の前。……もしかするとソラさんがついてくるかもしれないから、ちょっとだけ待っていたのだが……無駄だったかな。
……少しばかり、ソラさんとも一緒に旅をしてみたかったな。アルも面白い人材であることは間違いがないのだが、そのアルを簡単に叩きのめしたソラさんのほうが面白い。
ちょっとだけ名残惜しい。そう思って、酒場を振り返った。
「おや……」酒場の入り口には、ソラさんがいた。しかも……「……なんですか……その荷物は……」
異常な量の荷物を背負ったソラさんが、そこにいた。もはや背負っているだけで汗をかいている。旅支度にしても多すぎるぞ……
「待てソラ。一応もう一着持ってけ」
そう言って小走りでシャツを持って酒場から出てきたのが酒場の主人。彼は手に持ったシャツをパンパンに膨れ上がったソラさんのバッグに押し込んだ。
……なるほど……ありゃ酒場の主人が用意したソラさんの旅支度か……まったく過保護にもほどがある。そして、完全に空回りしている親心だ。
本当にこの人は、ソラさんのことを大切に思っているんだな。だからこそ、こんなにも用意をしてしまったのだ。
だが、あの量の荷物を持って歩かれたのでは、私が困る。
「そんなに持ち歩けませんよ。減らしてください」
「……だがな……」
「大丈夫ですよ。私がついてますから。もっと軽装で大丈夫です」
「ぬぅ……」唸ってから、主人はソラさんのバッグの中身を選別しだした。「……こんなもんか……」
最終的にリュックは一つになったが、それでもその一つがパンパンに膨れ上がっている。……まぁいいか。あれくらいならソラさんの体力なら持ち歩けるだろう。無理ならその辺で焚き火の火種にすればいい。
それにしても……ソラさんを説得できたんだな。正直無理かと思っていたのだが……ま、私の知らない歴史によって、ソラさんが動かされたのだろう。酒場の主人が、うまく説得してくれたのだろう。
私は、知らなくていい。どんな会話があって、どんな説得がなされたのかなんて、知らなくていい。ソラさんと主人だけが知っていれば、それでいいのだ。
ただ旅の同行者が増えるだけ。それだけだ。私にとっては、それだけの出来事。
「じゃあ、行きますか」
私が言うと、ソラさんは頷いた。どうやら覚悟は決まっているようで、旅立つことに後悔はなさそうだった。
それは、酒場の主人も同じようだ。
「おう、行ってこい。ソラ、思う存分暴れてこい」ついでに、と酒場の主人は付け加える。「ルナ……ソラを、よろしく頼む」
「……」頼む、と言われても困る……だけれど、一応言っておこう。「お任せあれ」
私がこの言葉を発することによって、酒場の主人が安心できるのなら、言っておこう。たとえ嘘でも、それが幸せにつながるのなら問題はない。
そんなこんなで、私達は旅立った。連れる予定もなかった同行者を二人引き連れて、私は旅を続けることにした。
悪魔の血を引くアル。そして……絶対に敵に回してはいけない男ソラ。
……なかなか愉快なパーティになったものだ。こんなことになるなんて、この街に来たときの私は予想していなかった。
面白いな。人生ってのは、これだから面白い。予測できないから面白い。
相変わらず私は運が良い。
私の人生は、変わらず最高である。
キミが暴れたんですよ。だから街が崩壊してるんですよ。だから、こんな人気のない明け方に出立することにしたんですよ。街の人にアルが見つかったら面倒だから。
明け方、というにはまだ早いか。太陽はまだ見えておらず、薄暗い。一番静かで、一番眠い……昨日の疲れもまだあるし、眠いのは仕方がないか。
とりあえず街の惨状に関しては、適当にごまかしておこう。
「宇宙の帝王が攻めてきたんですよ。そしたら、ソラさんが倒してくれました」
「おお……やっぱり強いんですねあの人」
こんな嘘あっさり信じないでほしい。大丈夫だろうかこの弟子は。 ちょっとばかり素直すぎないだろうか。
「じゃあ……」アルが振り返って、「出発しますか?」
「……そうですね……」
現在位置は私がバイトしていた酒場の目の前。……もしかするとソラさんがついてくるかもしれないから、ちょっとだけ待っていたのだが……無駄だったかな。
……少しばかり、ソラさんとも一緒に旅をしてみたかったな。アルも面白い人材であることは間違いがないのだが、そのアルを簡単に叩きのめしたソラさんのほうが面白い。
ちょっとだけ名残惜しい。そう思って、酒場を振り返った。
「おや……」酒場の入り口には、ソラさんがいた。しかも……「……なんですか……その荷物は……」
異常な量の荷物を背負ったソラさんが、そこにいた。もはや背負っているだけで汗をかいている。旅支度にしても多すぎるぞ……
「待てソラ。一応もう一着持ってけ」
そう言って小走りでシャツを持って酒場から出てきたのが酒場の主人。彼は手に持ったシャツをパンパンに膨れ上がったソラさんのバッグに押し込んだ。
……なるほど……ありゃ酒場の主人が用意したソラさんの旅支度か……まったく過保護にもほどがある。そして、完全に空回りしている親心だ。
本当にこの人は、ソラさんのことを大切に思っているんだな。だからこそ、こんなにも用意をしてしまったのだ。
だが、あの量の荷物を持って歩かれたのでは、私が困る。
「そんなに持ち歩けませんよ。減らしてください」
「……だがな……」
「大丈夫ですよ。私がついてますから。もっと軽装で大丈夫です」
「ぬぅ……」唸ってから、主人はソラさんのバッグの中身を選別しだした。「……こんなもんか……」
最終的にリュックは一つになったが、それでもその一つがパンパンに膨れ上がっている。……まぁいいか。あれくらいならソラさんの体力なら持ち歩けるだろう。無理ならその辺で焚き火の火種にすればいい。
それにしても……ソラさんを説得できたんだな。正直無理かと思っていたのだが……ま、私の知らない歴史によって、ソラさんが動かされたのだろう。酒場の主人が、うまく説得してくれたのだろう。
私は、知らなくていい。どんな会話があって、どんな説得がなされたのかなんて、知らなくていい。ソラさんと主人だけが知っていれば、それでいいのだ。
ただ旅の同行者が増えるだけ。それだけだ。私にとっては、それだけの出来事。
「じゃあ、行きますか」
私が言うと、ソラさんは頷いた。どうやら覚悟は決まっているようで、旅立つことに後悔はなさそうだった。
それは、酒場の主人も同じようだ。
「おう、行ってこい。ソラ、思う存分暴れてこい」ついでに、と酒場の主人は付け加える。「ルナ……ソラを、よろしく頼む」
「……」頼む、と言われても困る……だけれど、一応言っておこう。「お任せあれ」
私がこの言葉を発することによって、酒場の主人が安心できるのなら、言っておこう。たとえ嘘でも、それが幸せにつながるのなら問題はない。
そんなこんなで、私達は旅立った。連れる予定もなかった同行者を二人引き連れて、私は旅を続けることにした。
悪魔の血を引くアル。そして……絶対に敵に回してはいけない男ソラ。
……なかなか愉快なパーティになったものだ。こんなことになるなんて、この街に来たときの私は予想していなかった。
面白いな。人生ってのは、これだから面白い。予測できないから面白い。
相変わらず私は運が良い。
私の人生は、変わらず最高である。
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