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遊び人
第17話 また遊ぼう
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「午前の稽古はこれで終わり」
「え……」夢中になってメルと戦っていたエトワールが、「まだ……」
「食べるのも修行。それに、想像よりも疲れてると思う」
「……そう、ですか?」
「うん。それに、ただやればいいってものじゃない。休憩する時間をいかに過ごすかで、その人の強さが変わってくる」
そう言われたので、渋々エトワールは剣をしまう。エトワールは結構スロースターターなので、もう少し手合わせしたかった。だけれど、師匠がそういうのなら従おう。
ということなので、昼食タイム。食べるのも修行だというのなら、全力で食べようとエトワールは思う。実はエトワールは食事をとるのが苦手なので、これからは意識して食べようと思っていた。まぁ量だけ食べればいいというわけではないと思うけれど。
「じゃあまた、午後になったら道場で。……道場跡で」
いちいち言い直さなくていい。悲しくなるから。
なんとなくエトワールは提案してみる。
「一緒に行きませんか?」
メルの食生活が気になるのだ。どんなものを、どんな場所で食べているのか……それが気になる。そしてあわよくば参考にしようと思っていた。
「それはいいけれど……どこに行く?」
「先生のオススメの場所でお願いします」
「オ、オススメ……?」言うなり、メルは黙り込んでしまった。「……」
そして数分経過。なにかマズイことを聞いてしまったかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
メルは真剣に悩んでいるようだった。オススメのお店がどこなのか、エトワールをどこに連れて行くべきか、本気で悩んでいるようだった。
あんまりメルが悩むので、
「オ、オススメじゃなくても、行きつけの場所でもいいですよ」
「行きつけの場所は……ちょっと治安が悪くて……」
「それなら大丈夫です」
治安は町全体が悪いし、なによりメルがいるなら大抵の場所は安全である。エトワール自身だって、打たれ強さには自信があるので、ある程度やられたって平気である。
「じゃあ……行こうか」
メルのあとに続いて、町を歩く。しばらく歩いてたどり着いたのは、
「……酒場、ですか?」
そこは大きめの酒場だった。かなりの広さで、昼間からすでに賑わっている様子である。
「酒場なら、素性を聞かれることが少ないから」
そうかもしれない。酒場は来る者拒まずだ。だからこそ治安も悪くなる。だからこそ怪しい人物も立ち入る。だからこそ滲み出る雰囲気がある。そんな雰囲気が、エトワールは嫌いじゃない。エトワールの村でも酒場は旅人がいたりして、たまに話を聞かせてもらったものだった。
と、そんなことを思っていると、
「……っ!」
エトワールは息を呑む。いきなり酒場の窓が割れて、人間が飛び出してきたからだ。ガラスが地面に飛び散って、スキンヘッドの大男が転がり落ちてきた。
その男はいきり立った様子で酒場の中に叫ぶ。
「てめぇ……! このイカサマ女が……! ただで済むと思うなよ!」
「イカサマ? 人聞き悪いこと言うなぁ……」
割れた窓から男を見下ろしていたのは、女性だった。女性というより、少女だろうか。おそらく18歳前後くらい、髪の短い少女だった。
少女はさらに男に向かって言う。自信に満ち溢れていて、挑発的な口調だった。
「どこにそんな証拠があるっての? それに仮にイカサマだったとしても、酒場の賭博にルールなんて無用でしょ? アンタだって、そうやってたんまり稼いでたみたいじゃないか。自分がやってたのに、自分がやられるのは嫌ってのはさすがに――」
「うるせぇ!」
言葉の途中で激高した男が、少女に向かって突進する。止めに入るべきかとエトワールは身構えたが、
「お……ケンカで決める? いいの? 私、そっちのほうが得意だけど」
少女はそう忠告するが、激怒する男の耳には入っていない。一瞬にして間合いが詰まり、割れた窓から攻撃を仕掛ける。
男は窓から侵入して、その後は音だけが聞こえてきた。どうやら店内で大暴れしているらしい。さすがに店内すべてを見渡せるほど窓は壊れていないので、中の様子は詳しくわからない。
やがて、また男が店からふっ飛ばされてきた。今度は正面入口が派手な音を立てて開いて、そこから男が転がってきた。
「今度は腕っぷしも磨いてからきなよ」入り口から悠々と出てきた少女が、「アンタのイカサマ、嫌いじゃなかったよ。また遊ぼう」
「チッ……このクソガキ、覚えてろよ!」
捨て台詞を残して、男はその場から去っていった。そして、少女がメルたちに向かって微笑んで、
「騒がせたね。どうぞ、入っていいよ」
「わかった」
平然と答えて、メルは酒場の中に入っていった。エトワールはと言うと、先程のケンカに気を取られて、それどころではなかった。
「キミキミ」そんなエトワールに少女が言う。「この辺の酒場ははじめて?」
「そう、ですね……」
正確には少し離れた酒場には入ったことがあるが、ここまで治安は悪くなかった。前にエトワールが入ったのは、落ち着いた雰囲気の酒場だった。
「これからも来るつもりなら、ケンカくらい慣れときなよ。見るのも、やるのもさ。それから、この酒場でギャンブルは受けちゃダメだよ。身ぐるみ剥がされるからね」
じゃあねぇ、とヒラヒラ手を振りながら、少女は店の中に戻っていった。どうやらまだ酒場にいるつもりらしい。
エトワールは、なんだかとんでもなく治安の悪い場所に来てしまった、と思っていた。これが都会か……それともこの辺の治安が悪いだけなのか?
なんにせよ……メルは本当に治安の悪い場所が似合う人だった。そして治安の悪い場所が、好みであるらしい。
「え……」夢中になってメルと戦っていたエトワールが、「まだ……」
「食べるのも修行。それに、想像よりも疲れてると思う」
「……そう、ですか?」
「うん。それに、ただやればいいってものじゃない。休憩する時間をいかに過ごすかで、その人の強さが変わってくる」
そう言われたので、渋々エトワールは剣をしまう。エトワールは結構スロースターターなので、もう少し手合わせしたかった。だけれど、師匠がそういうのなら従おう。
ということなので、昼食タイム。食べるのも修行だというのなら、全力で食べようとエトワールは思う。実はエトワールは食事をとるのが苦手なので、これからは意識して食べようと思っていた。まぁ量だけ食べればいいというわけではないと思うけれど。
「じゃあまた、午後になったら道場で。……道場跡で」
いちいち言い直さなくていい。悲しくなるから。
なんとなくエトワールは提案してみる。
「一緒に行きませんか?」
メルの食生活が気になるのだ。どんなものを、どんな場所で食べているのか……それが気になる。そしてあわよくば参考にしようと思っていた。
「それはいいけれど……どこに行く?」
「先生のオススメの場所でお願いします」
「オ、オススメ……?」言うなり、メルは黙り込んでしまった。「……」
そして数分経過。なにかマズイことを聞いてしまったかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
メルは真剣に悩んでいるようだった。オススメのお店がどこなのか、エトワールをどこに連れて行くべきか、本気で悩んでいるようだった。
あんまりメルが悩むので、
「オ、オススメじゃなくても、行きつけの場所でもいいですよ」
「行きつけの場所は……ちょっと治安が悪くて……」
「それなら大丈夫です」
治安は町全体が悪いし、なによりメルがいるなら大抵の場所は安全である。エトワール自身だって、打たれ強さには自信があるので、ある程度やられたって平気である。
「じゃあ……行こうか」
メルのあとに続いて、町を歩く。しばらく歩いてたどり着いたのは、
「……酒場、ですか?」
そこは大きめの酒場だった。かなりの広さで、昼間からすでに賑わっている様子である。
「酒場なら、素性を聞かれることが少ないから」
そうかもしれない。酒場は来る者拒まずだ。だからこそ治安も悪くなる。だからこそ怪しい人物も立ち入る。だからこそ滲み出る雰囲気がある。そんな雰囲気が、エトワールは嫌いじゃない。エトワールの村でも酒場は旅人がいたりして、たまに話を聞かせてもらったものだった。
と、そんなことを思っていると、
「……っ!」
エトワールは息を呑む。いきなり酒場の窓が割れて、人間が飛び出してきたからだ。ガラスが地面に飛び散って、スキンヘッドの大男が転がり落ちてきた。
その男はいきり立った様子で酒場の中に叫ぶ。
「てめぇ……! このイカサマ女が……! ただで済むと思うなよ!」
「イカサマ? 人聞き悪いこと言うなぁ……」
割れた窓から男を見下ろしていたのは、女性だった。女性というより、少女だろうか。おそらく18歳前後くらい、髪の短い少女だった。
少女はさらに男に向かって言う。自信に満ち溢れていて、挑発的な口調だった。
「どこにそんな証拠があるっての? それに仮にイカサマだったとしても、酒場の賭博にルールなんて無用でしょ? アンタだって、そうやってたんまり稼いでたみたいじゃないか。自分がやってたのに、自分がやられるのは嫌ってのはさすがに――」
「うるせぇ!」
言葉の途中で激高した男が、少女に向かって突進する。止めに入るべきかとエトワールは身構えたが、
「お……ケンカで決める? いいの? 私、そっちのほうが得意だけど」
少女はそう忠告するが、激怒する男の耳には入っていない。一瞬にして間合いが詰まり、割れた窓から攻撃を仕掛ける。
男は窓から侵入して、その後は音だけが聞こえてきた。どうやら店内で大暴れしているらしい。さすがに店内すべてを見渡せるほど窓は壊れていないので、中の様子は詳しくわからない。
やがて、また男が店からふっ飛ばされてきた。今度は正面入口が派手な音を立てて開いて、そこから男が転がってきた。
「今度は腕っぷしも磨いてからきなよ」入り口から悠々と出てきた少女が、「アンタのイカサマ、嫌いじゃなかったよ。また遊ぼう」
「チッ……このクソガキ、覚えてろよ!」
捨て台詞を残して、男はその場から去っていった。そして、少女がメルたちに向かって微笑んで、
「騒がせたね。どうぞ、入っていいよ」
「わかった」
平然と答えて、メルは酒場の中に入っていった。エトワールはと言うと、先程のケンカに気を取られて、それどころではなかった。
「キミキミ」そんなエトワールに少女が言う。「この辺の酒場ははじめて?」
「そう、ですね……」
正確には少し離れた酒場には入ったことがあるが、ここまで治安は悪くなかった。前にエトワールが入ったのは、落ち着いた雰囲気の酒場だった。
「これからも来るつもりなら、ケンカくらい慣れときなよ。見るのも、やるのもさ。それから、この酒場でギャンブルは受けちゃダメだよ。身ぐるみ剥がされるからね」
じゃあねぇ、とヒラヒラ手を振りながら、少女は店の中に戻っていった。どうやらまだ酒場にいるつもりらしい。
エトワールは、なんだかとんでもなく治安の悪い場所に来てしまった、と思っていた。これが都会か……それともこの辺の治安が悪いだけなのか?
なんにせよ……メルは本当に治安の悪い場所が似合う人だった。そして治安の悪い場所が、好みであるらしい。
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