謎の最強師匠に弟子入りしたけれど、本当にこの師匠は何者なのだろう~最強を目指す少年が、謎の強すぎる師匠に弟子入りする話~

星上みかん(嬉野K)

文字の大きさ
17 / 19
遊び人

第17話 また遊ぼう

しおりを挟む
「午前の稽古はこれで終わり」
「え……」夢中になってメルと戦っていたエトワールが、「まだ……」
「食べるのも修行。それに、想像よりも疲れてると思う」
「……そう、ですか?」
「うん。それに、ただやればいいってものじゃない。休憩する時間をいかに過ごすかで、その人の強さが変わってくる」

 そう言われたので、渋々エトワールは剣をしまう。エトワールは結構スロースターターなので、もう少し手合わせしたかった。だけれど、師匠がそういうのなら従おう。

 ということなので、昼食タイム。食べるのも修行だというのなら、全力で食べようとエトワールは思う。実はエトワールは食事をとるのが苦手なので、これからは意識して食べようと思っていた。まぁ量だけ食べればいいというわけではないと思うけれど。

「じゃあまた、午後になったら道場で。……道場跡で」

 いちいち言い直さなくていい。悲しくなるから。
 
 なんとなくエトワールは提案してみる。

「一緒に行きませんか?」

 メルの食生活が気になるのだ。どんなものを、どんな場所で食べているのか……それが気になる。そしてあわよくば参考にしようと思っていた。

「それはいいけれど……どこに行く?」
「先生のオススメの場所でお願いします」
「オ、オススメ……?」言うなり、メルは黙り込んでしまった。「……」

 そして数分経過。なにかマズイことを聞いてしまったかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
 メルは真剣に悩んでいるようだった。オススメのお店がどこなのか、エトワールをどこに連れて行くべきか、本気で悩んでいるようだった。

 あんまりメルが悩むので、

「オ、オススメじゃなくても、行きつけの場所でもいいですよ」
「行きつけの場所は……ちょっと治安が悪くて……」
「それなら大丈夫です」

 治安は町全体が悪いし、なによりメルがいるなら大抵の場所は安全である。エトワール自身だって、打たれ強さには自信があるので、ある程度やられたって平気である。

「じゃあ……行こうか」

 メルのあとに続いて、町を歩く。しばらく歩いてたどり着いたのは、

「……酒場、ですか?」

 そこは大きめの酒場だった。かなりの広さで、昼間からすでに賑わっている様子である。

「酒場なら、素性を聞かれることが少ないから」

 そうかもしれない。酒場は来る者拒まずだ。だからこそ治安も悪くなる。だからこそ怪しい人物も立ち入る。だからこそ滲み出る雰囲気がある。そんな雰囲気が、エトワールは嫌いじゃない。エトワールの村でも酒場は旅人がいたりして、たまに話を聞かせてもらったものだった。

 と、そんなことを思っていると、

「……っ!」

 エトワールは息を呑む。いきなり酒場の窓が割れて、人間が飛び出してきたからだ。ガラスが地面に飛び散って、スキンヘッドの大男が転がり落ちてきた。

 その男はいきり立った様子で酒場の中に叫ぶ。

「てめぇ……! このイカサマ女が……! ただで済むと思うなよ!」
「イカサマ? 人聞き悪いこと言うなぁ……」

 割れた窓から男を見下ろしていたのは、女性だった。女性というより、少女だろうか。おそらく18歳前後くらい、髪の短い少女だった。

 少女はさらに男に向かって言う。自信に満ち溢れていて、挑発的な口調だった。

「どこにそんな証拠があるっての? それに仮にイカサマだったとしても、酒場の賭博にルールなんて無用でしょ? アンタだって、そうやってたんまり稼いでたみたいじゃないか。自分がやってたのに、自分がやられるのは嫌ってのはさすがに――」
「うるせぇ!」

 言葉の途中で激高した男が、少女に向かって突進する。止めに入るべきかとエトワールは身構えたが、

「お……ケンカで決める? いいの? 私、そっちのほうが得意だけど」

 少女はそう忠告するが、激怒する男の耳には入っていない。一瞬にして間合いが詰まり、割れた窓から攻撃を仕掛ける。

 男は窓から侵入して、その後は音だけが聞こえてきた。どうやら店内で大暴れしているらしい。さすがに店内すべてを見渡せるほど窓は壊れていないので、中の様子は詳しくわからない。

 やがて、また男が店からふっ飛ばされてきた。今度は正面入口が派手な音を立てて開いて、そこから男が転がってきた。

「今度は腕っぷしも磨いてからきなよ」入り口から悠々と出てきた少女が、「アンタのイカサマ、嫌いじゃなかったよ。また遊ぼう」
「チッ……このクソガキ、覚えてろよ!」
 
 捨て台詞を残して、男はその場から去っていった。そして、少女がメルたちに向かって微笑んで、

「騒がせたね。どうぞ、入っていいよ」
「わかった」

 平然と答えて、メルは酒場の中に入っていった。エトワールはと言うと、先程のケンカに気を取られて、それどころではなかった。

「キミキミ」そんなエトワールに少女が言う。「この辺の酒場ははじめて?」
「そう、ですね……」

 正確には少し離れた酒場には入ったことがあるが、ここまで治安は悪くなかった。前にエトワールが入ったのは、落ち着いた雰囲気の酒場だった。

「これからも来るつもりなら、ケンカくらい慣れときなよ。見るのも、やるのもさ。それから、この酒場でギャンブルは受けちゃダメだよ。身ぐるみ剥がされるからね」

 じゃあねぇ、とヒラヒラ手を振りながら、少女は店の中に戻っていった。どうやらまだ酒場にいるつもりらしい。

 エトワールは、なんだかとんでもなく治安の悪い場所に来てしまった、と思っていた。これが都会か……それともこの辺の治安が悪いだけなのか? 

 なんにせよ……メルは本当に治安の悪い場所が似合う人だった。そして治安の悪い場所が、好みであるらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

5人の勇者を「500人」と報告したら、魔王様が和平の準備を始めました

miko.m
ファンタジー
※最終話までプロット作成済み。 ※毎日19時に更新予定(たまに12時にも更新します)。 「勇者が500人!? 無理無理、勝てるわけないだろ! 和平だ、今すぐ娘を嫁に出せ!!」 魔王軍第一軍団長・ゴルドーは困っていた。たった5人の勇者に惨敗したなど、出世欲の塊である魔王ゼノンに言えるわけがない。保身のために彼がついた嘘。それは「勇者が500人いた」という、あまりにも適当な虚偽報告だった。 しかし、小心者の魔王様はそれを真に受けてパニックに! 「500人の勇者と全面戦争なんてしたら魔王軍が破産する!」と、威厳をかなぐり捨ててまさかの「終戦準備」を開始してしまう。 一方、真実を知った魔王家の三姉妹は、父の弱腰を逆手に取ってとんでもない作戦を企てる。 「500人は嘘? ちょうどいいわ。お父様を売って、あのハイスペックな勇者様たちを婿にしましょう!」 嘘を塗り重ねる軍団長、絶望する魔王、そして勇者を「逆スカウト」して実家脱出を目論む肉食系姫君たち。人間界のブラックな王様に使い潰される勇者たちを、魔王軍が「厚遇」で囲い込む!? 嘘から始まる、勘違いだらけの経営再建ファンタジーコメディ、開幕!

雑魚狩りスキルはCランクまでの魔物しか経験値にできないがそれでも多くの魔物を倒す経験で最強冒険者ライフを送る

銀雪 華音
ファンタジー
主人公のアオイは持っていたスキルが雑魚狩りというスキルだった。この主人公は作業を繰り返しすることが好きだった。ほかの人に比べて弱いスキルだと気づき努力をして経験値にはならないけどCランク以上の魔物も倒せるようになった。この主人公は何をするのか分かりません。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

処理中です...