謎の最強師匠に弟子入りしたけれど、本当にこの師匠は何者なのだろう~最強を目指す少年が、謎の強すぎる師匠に弟子入りする話~

星上みかん(嬉野K)

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遊び人

第20話 全部

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 ディビジョンというのは簡単に言えば強さの指標。その指標の中でトップに位置するのがディビジョンS。ディビジョンAとは明確な違いが存在する最強クラスのモンスターが揃った場所だ。
 
 ディビジョンSのトップに君臨するのが勇者グラン。彼に匹敵する強さを持ったものは、この世に存在しないとまで言われている。

 ディビジョンは同じSの中でも、なんとなく序列がある。ディビジョンS上位、中位、下位といった様子で分けられているのだ。まぁ上位だの下位だのは、あくまで個人の主観で決められているので、あまり正確な評価ではないかもしれないが。

 今から会う人物は……マグノリアは元ディビジョンSの実力者。現在は酒浸りになり、実力的にはディビジョンA上位からディビジョンS下位くらいであろう。
 そんな人物が息子であるサジェスに暴力を振るっている。家庭内暴力、虐待というやつだ。それを助けようと、メルはマグノリアの家を探している。

 道を歩きながら、エトワールは言う。

「優しいんですね、メル先生」
「……?」
「虐待を受けてる子供を助けようなんて……」
「それは違う」明確な否定だった。「私が行くのは、ディビジョンSの強さが気になってるから。それだけ。子供は……まぁ幸せになる事ができるのなら、嬉しいけれど」

 メルは続ける。

「仮に人助けだとしても、それは偽善の人助け」
「偽善?」
「子供を助けたら、私の道場の評判が上がるから。ただそれだけ。無償の人助けなんて、私はできない」
「……できない?」
「……なんでもない……」

 なんだかメルの心の奥底に触れたような気がするが、それはすぐに隠されてしまった。無償の人助けはできない……それはどうしてだろう。メルの人助けは偽善だという。人助けに善も偽善も悪もないだろうに。

 気になって、聞いてみる。直接的には聞けないので、なんとなく濁して聞く。

「先生は……その……昔、何をしていたんですか?」
「……昔?」
「その……戦争中とか……」
「……」返答はしばらくなかった。「それは……まだ答えられない」
「あ……すいません」まだ、ということはいつか教えてくれるのかもしれない。「じゃあ……戦争が終わってから、10年間は何を?」
「……戦争が終わった直後に腕と足をなくして……それから、しばらく塞ぎ込んでた。それから先生に拾われて、修行してた」
「先生?」
「うん……いろいろ、教わった」

 メルの先生……つまりエトワールからすれば先生の先生になる。さすがにどんな人物なのか気になる。

「その人は……どんな人だったんですか?」
「……わからない。飄々としてて……常に穏やかだった。たまに難しいことを言い出して……当時の私には良くわからなかった。いや……今でも良くわかってない」

 素直なことだ。今ならなんとなくわかった、とでも言っておけばいいのに。

「どんなことを教わったんですか?」
「全部」迷いのない回答。「戦い方から修行のやり方……言葉も料理も……生きて行くのに必要なものは、全部あの人から教わった。あの人がいなかったら私は……今を生きてない」

 どうやらメルの先生は偉大な人物であるらしい。メルをこの強さまで育てたのもおそらく先生なのだろう。そうであるならば、エトワールにとっても間接的に恩人である。

「今はどこにいらっしゃるんですか?」
「わからない。最後に別れたきり……旅に出るって言ってた。だからどこにいるのかは、わからない」
「なるほど……」

 できれば会ってみたかったのだけれど……まぁどこにいるのかわからないなら仕方がない。生きていればいつか会えるかもしれないし、長生きしよう。

「お名前はなんというのでしょう」
「……ごめん、それもわからない……」
「え?」
「名前はないって言ってた。だから、先生とだけ呼んでた。私たち2人しかいなかったから、それで問題がなかった」

 名前がない……メルを含めて2人しかいない。ということは、よほど浮き世離れした生活をしてたらしい。山奥にでもこもっている仙人みたいな人なのだろうか。

 そんな世間話をしているうちに、どうやらマグノリアの家に到着したようだった。
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