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遊び人
第22話 ガラス、お願い
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マグノリアの家に来た理由は、マグノリアが息子であるサジェスに虐待をしているからだ。それを助けるために、メルとエトワールはマグノリアの家に来た。そこに同じような目的で居合わせたマーチが、成り行きで門下生になることになった。
門下生が増えたのは喜ばしいことだが、今の目的は門下生探しではない。サジェスを助けることなのだ。
「さて……どうすんだい、メル師匠」マグノリアの家の裏手で、マーチが言う。「私を追っかけてきたんじゃないなら、サジェスくんを助けに来たんでしょ?」
「……違う……ディビジョンSの強さが気になっただけ。仮に少年が助かったとしても、それは偶然」
「あ、そうなの? まぁ結果が同じなら目的はどうでもいいけどね」
結果としてサジェスが助かれば、人助けが目的だろうが戦闘が目的だろうが変わらない。
「なんにせよ、乗り込む?」マーチは家を指さして、「今も暴れてるみたいだし」
そう言っている間にも、家の中からは大きな物音が聞こえてきていた。おそらくマグノリアが暴れているのだろう。サジェスが買ってきた酒を飲んで、さらに泥酔しているのかもしれない。
「メル師匠の強さも、気になってたんだ」マーチは言う。「突然現れた謎の人物。どうにも腕が立つらしいけど……どれくらい強いの? 町の噂じゃ、ディビジョンAくらいだ妥当だって声が大きいけれど……」
「……」
「まぁ、今回の戦いを見てればわかるか。マグノリアさんに勝てるなら、ディビジョンSレベルなのは間違いないからね」
あ、そうだ、とマーチは何かを思い出したように、
「さっきメル師匠は、強さとは何かを私に聞いたよね。だったら……メル師匠にとって強さって何? 師匠の思う強さを、教えてほしいな」
メルの思う強さ。メルの追い求める強さ。それはエトワールにとっても興味があることだった。これほどの強さを持つ人物が行き着いた、強さという問題への答え。
「それは……」
メルが口を開きかけた瞬間、ガラスが割れる音がした。
上を見ると、マグノリアの家の窓ガラスが砕け散っていた。それだけではない。真に驚くべきことは少年の体が空中に投げ出されているということ。
家の中で虐待を受けた息子サジェスが、2階の窓から投げ出されたらしい。2階から落ちれば大怪我は免れない。ヘタをすれば命を失う可能性だってあるだろう。
頭上から少年1人とガラス片が降ってくる。
「マーチさん」メルがつぶやくように言う。こんな一刻を争う瞬間でも、彼女は冷静そのものだった。「ガラス、お願い」
「了解」
簡潔な会話を済ませて、2人は動き始める。
まずメルがサジェスをキャッチした。片腕と足をうまく使って、できる限りサジェスに衝撃が伝わらないようにキャッチしていた。包み込むような、優しい動作だった。
間髪入れず、ガラス片が降ってくる。その瞬間エトワールの視界はなにかに遮られた。太陽光を遮ったそれは、布だった。マーチが羽織っていた服で4人を覆い、ガラス片を防いだのだった。いくつかガラス片が布を突き破って顔を出したが、それは人に当たることはなかった。
エトワールはといえば……大した動きもできないでいた。サジェスを助けようと近寄ったことまでは覚えているが、その後はただ圧倒されていた。メルとマーチの瞬時の判断力に気圧されていた。
ガラス片が地面に当たって砕け散る音が聞こえた。そしてすべてのガラス片を防いだと確信したマーチが、覆っていた布を取り払う。太陽の光が再び差し込んできて、エトワールは目を細めた。
「ありゃ……」マーチがガラス片の刺さった自分の服を見て、「こりゃもう着れないなぁ……ま、別にいいけど」
「ごめん」メルが謝罪する。「ありがとう。助かった」
「どういたしまして」それから、マーチがエトワールとサジェスに聞いた。「ケガはない?」
「僕は……大丈夫です」
エトワールが答える。自分がまだ心配される側の人間であることを自覚して、思わず唇を噛んでしまった。もっと強くならなければ、守られる側から脱出することはできない。誰かを守ることなどできない。
「あ……その……」メルにキャッチされたサジェスが血の気の引いた表情で、「大丈夫……です……」
どう見ても大丈夫ではない。たしかに落下の衝撃はなかったかもしれないが、ガラスが刺さったのか数か所から血が出ている。それに……顔にアザがあった。どうやら本格的に虐待の暴力が表面的になり始めているようだった。
そんなサジェスに向かって、空から声が降ってきた。
「おいサジェス!」怒鳴り声を発したのは、おそらくマグノリア。窓から声が聞こえているだけだから、姿は確認できない。「そのまま酒買ってこい!」
マグノリアはここにメルたちがいることに気づいていないのだろう。仮にサジェスだけがいると思っていたとしても、突き落とした我が子に言う言葉ではないが。
メルはサジェスを地面に立たせて、
「行ってくる」
「私も行くよ」マーチが同意して、エトワールに聞く。「キミは?」
「え……あ、その……」迷ったけれど、「行きます……」
そんなこんなで、メルたちはマグノリアの屋敷に正面から侵入した。待ち受けているのはおそらくマグノリアとの、ディビジョンSとの戦いだろう。
メルの強さ……それがある程度明らかになる。さすがにディビジョンSにはかなわないのか、それとも……
門下生が増えたのは喜ばしいことだが、今の目的は門下生探しではない。サジェスを助けることなのだ。
「さて……どうすんだい、メル師匠」マグノリアの家の裏手で、マーチが言う。「私を追っかけてきたんじゃないなら、サジェスくんを助けに来たんでしょ?」
「……違う……ディビジョンSの強さが気になっただけ。仮に少年が助かったとしても、それは偶然」
「あ、そうなの? まぁ結果が同じなら目的はどうでもいいけどね」
結果としてサジェスが助かれば、人助けが目的だろうが戦闘が目的だろうが変わらない。
「なんにせよ、乗り込む?」マーチは家を指さして、「今も暴れてるみたいだし」
そう言っている間にも、家の中からは大きな物音が聞こえてきていた。おそらくマグノリアが暴れているのだろう。サジェスが買ってきた酒を飲んで、さらに泥酔しているのかもしれない。
「メル師匠の強さも、気になってたんだ」マーチは言う。「突然現れた謎の人物。どうにも腕が立つらしいけど……どれくらい強いの? 町の噂じゃ、ディビジョンAくらいだ妥当だって声が大きいけれど……」
「……」
「まぁ、今回の戦いを見てればわかるか。マグノリアさんに勝てるなら、ディビジョンSレベルなのは間違いないからね」
あ、そうだ、とマーチは何かを思い出したように、
「さっきメル師匠は、強さとは何かを私に聞いたよね。だったら……メル師匠にとって強さって何? 師匠の思う強さを、教えてほしいな」
メルの思う強さ。メルの追い求める強さ。それはエトワールにとっても興味があることだった。これほどの強さを持つ人物が行き着いた、強さという問題への答え。
「それは……」
メルが口を開きかけた瞬間、ガラスが割れる音がした。
上を見ると、マグノリアの家の窓ガラスが砕け散っていた。それだけではない。真に驚くべきことは少年の体が空中に投げ出されているということ。
家の中で虐待を受けた息子サジェスが、2階の窓から投げ出されたらしい。2階から落ちれば大怪我は免れない。ヘタをすれば命を失う可能性だってあるだろう。
頭上から少年1人とガラス片が降ってくる。
「マーチさん」メルがつぶやくように言う。こんな一刻を争う瞬間でも、彼女は冷静そのものだった。「ガラス、お願い」
「了解」
簡潔な会話を済ませて、2人は動き始める。
まずメルがサジェスをキャッチした。片腕と足をうまく使って、できる限りサジェスに衝撃が伝わらないようにキャッチしていた。包み込むような、優しい動作だった。
間髪入れず、ガラス片が降ってくる。その瞬間エトワールの視界はなにかに遮られた。太陽光を遮ったそれは、布だった。マーチが羽織っていた服で4人を覆い、ガラス片を防いだのだった。いくつかガラス片が布を突き破って顔を出したが、それは人に当たることはなかった。
エトワールはといえば……大した動きもできないでいた。サジェスを助けようと近寄ったことまでは覚えているが、その後はただ圧倒されていた。メルとマーチの瞬時の判断力に気圧されていた。
ガラス片が地面に当たって砕け散る音が聞こえた。そしてすべてのガラス片を防いだと確信したマーチが、覆っていた布を取り払う。太陽の光が再び差し込んできて、エトワールは目を細めた。
「ありゃ……」マーチがガラス片の刺さった自分の服を見て、「こりゃもう着れないなぁ……ま、別にいいけど」
「ごめん」メルが謝罪する。「ありがとう。助かった」
「どういたしまして」それから、マーチがエトワールとサジェスに聞いた。「ケガはない?」
「僕は……大丈夫です」
エトワールが答える。自分がまだ心配される側の人間であることを自覚して、思わず唇を噛んでしまった。もっと強くならなければ、守られる側から脱出することはできない。誰かを守ることなどできない。
「あ……その……」メルにキャッチされたサジェスが血の気の引いた表情で、「大丈夫……です……」
どう見ても大丈夫ではない。たしかに落下の衝撃はなかったかもしれないが、ガラスが刺さったのか数か所から血が出ている。それに……顔にアザがあった。どうやら本格的に虐待の暴力が表面的になり始めているようだった。
そんなサジェスに向かって、空から声が降ってきた。
「おいサジェス!」怒鳴り声を発したのは、おそらくマグノリア。窓から声が聞こえているだけだから、姿は確認できない。「そのまま酒買ってこい!」
マグノリアはここにメルたちがいることに気づいていないのだろう。仮にサジェスだけがいると思っていたとしても、突き落とした我が子に言う言葉ではないが。
メルはサジェスを地面に立たせて、
「行ってくる」
「私も行くよ」マーチが同意して、エトワールに聞く。「キミは?」
「え……あ、その……」迷ったけれど、「行きます……」
そんなこんなで、メルたちはマグノリアの屋敷に正面から侵入した。待ち受けているのはおそらくマグノリアとの、ディビジョンSとの戦いだろう。
メルの強さ……それがある程度明らかになる。さすがにディビジョンSにはかなわないのか、それとも……
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