謎の最強師匠に弟子入りしたけれど、本当にこの師匠は何者なのだろう~最強を目指す少年が、謎の強すぎる師匠に弟子入りする話~

星上みかん(嬉野K)

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遊び人

第23話 楽しみ

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 正面玄関の鍵はサジェスが開けてくれた。マグノリア家に侵入するメンバーはメル、マーチ、エトワール、サジェスの4人だった。サジェスに関しては家に入っただけだから、侵入とはいえないかもしれないが。

 広い家だった。掃除さえ行き届いていれば、さぞ高級感のある家だっただろう。今はそこかしこにホコリが積もり、花も枯れていた。マグノリアが暴れたのか、ところどころ家具や美術品も壊れている。おばけでも出てきそうな雰囲気だった。

 扉を開けて家に入るなり、マグノリアの怒鳴り声が聞こえてきた。

「おいサジェス……! 酒買ってこいって……」そこまで叫んで、マグノリアは見知らぬ人物たちがいることに気がついたようだった。「あ……? お前ら……」

 マグノリアというディビジョンSの男は、どこにでもいそうな男だった。無精髭を生やしていて、たくましい体つきの男だった。

「こんにちは」平然と、メルが言う。「あなたと戦いに来た」
「は?」突然の宣言に、マグノリアは目を丸くする。「俺と……?」

 そりゃ混乱するだろう。今のメルの説明はちょっと過程を飛ばしすぎだ。
 会話が成立しないのを見て、マーチがフォローする。

「やぁマグノリアさん。あなたが子供に暴力振るってるのを知ったから、懲らしめに来たんだ」

 メルの目的は違うけれど。本当にマグノリアと戦いに来ただけなのだけれど。まぁマーチの説明のほうが都合が良いので黙っておくことにする。

「家庭の問題だ」酔っ払って赤い顔のマグノリアが階段を降りてくる。「お前ら警察か?」
「警察?」どうにもおしゃべりなマーチだった。「そりゃ違うよ。私たちは……メル師匠とその弟子」

 言ってから、マーチはエトワールに聞く。

「あれ……キミも弟子だったっけ? というか、名前は?」

 そういえば名乗ってなかったようなきがする。

「エトワール、です。メル先生の弟子です」
「そっか。じゃあ兄弟弟子だね。よろしく」
「は、はい……」

 兄弟弟子が明るそうな人で良かった……って今はそんな事を言っている場合じゃない。

「メル……メル・キュールか」マグノリアもその名前には覚えがあるらしい。「たしか、この辺の道場を買ってた奴だな……」
「そうそう」このメンバーだとマーチばっかり喋る。「燃えちゃったんだって。悲しいねぇ……弟子として嘆かわしいよ……」

 マーチはかなり適当な性格の人物であるようだった。そして芝居がかった喋り方をするようであった。全然嘆いているようには見えない。

 マグノリアはマーチとエトワールを見て、

「お前ら……道場で何をするつもりだ?」
「私? そうだねぇ……暇つぶし……じゃなくて、やっぱり修行じゃない? ほら、強くなるためにさ。ね、エトワールくん」
「え……? あ、はい」

 強くなるためにメルの弟子になったのはその通りだ。マーチのように暇つぶしできたわけじゃない。そしてマーチは嘘をつくことに抵抗がない人間のようだった。

「強く?」マグノリアは鼻で笑う。「強くなるために努力するなんてやめとけよ。時間のムダだ」
「ムダ? そうかな」
「ああ」マグノリアは言う。とても皮肉たっぷりの口調だった。「強さなんてのは結局才能だ。どれだけ努力したところで、凡人は強くなれん。俺のようにな」
「? マグノリアさんはディビジョンSまで行ったんでしょ? じゃあ、強いほうじゃないの?」
「そうかもしれないな……だが、あいつらには絶対に届かないんだ」
「あいつらって?」
「ディビジョンS上位……いや、俺は中位にすら届いていない。下位でも下のほうだ」
「それでもディビジョンSはすごいと思うけどなぁ……」
「お前には分かんねぇよ。中途半端に夢を追ったやつの末路なんてな」唇を噛んで、マグノリアは言う。「半端な強さじゃ何も守れない。ディビジョンSのモンスターには及ばない。努力なんて、するだけムダだった」

 ディビジョンSのモンスター。グランを始めとする、人外たちの集まり。ディビジョンSにたどり着けてしまったがゆえに、モンスターたちとの差も感じてしまったのだろう。最初からその境地に到達できなければ、見えもしなかった差が浮き彫りになってしまったのだろう。

「守れなかったって……奥さんのこと?」
「……お前には関係ないだろ」マグノリアは否定するが、明らかに図星だった。「どれだけ強くなっても、結局は無意味だ。誰も守れない。そんな強さは、いらない」

 マグノリアは指の骨を鳴らして、

「俺の邪魔をするなら……力ずくで出ていってもらう」
「……」答えるのはメル。「……全力で来て。手加減の必要は、ない」
「自信家だな。その自信、いつか折られるぜ」
「……すでに何回か折られてる」
「は?」
「なんでもない」

 メルが話すと、たまに会話にならないことがある。ボソボソと小さい声で話すから、相手に届いていないのかもしれない。会話はマーチにやってもらったほうが圧倒的にスムーズだろう。

「行くぞ」
「……」メルは軽く構えて、「楽しみ」
 
 そうつぶやいた。どうやらメルは戦うことが好きらしい。それも強者と戦うことは、とても好きであるようだ。

 なんにせよ、元とはいえディビジョンSとの戦い。そしておそらくメルも相応の実力者。

「エトワールくん」メルと少し距離を取りながら、マーチが言う。「強くなりたいなら、目を離さないほうが良い」
「はい」
「……うん。こんな戦い、そう簡単には見られないよ」

 分かっている。ディビジョンSクラスの実力者が少ないのだから、当然そのレベルの人達が戦うことも少ない。それを直に見れるというのだから、貴重な機会としか言えない。

 メル・キュールVSマグノリア。この戦いで、メルの強さの底がわかる。
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