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遊び人
第25話 第2ラウンド
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「サジェス……」つぶやいたのは、父親であるマグノリア。「お前……それ、どっから」
サジェスが持っていたのは、ヌンチャクだった。使い古されていて、ところどころ塗装が剥げ落ちている。
マグノリアはそのヌンチャクを見て驚いているようだった。
「それは俺が捨てたはず……どうして……」
「ゴ、ゴミ捨て場から、拾った……」震える声で、サジェスは言う。「お父さん……お母さんが死んじゃって、それで悲しんでるだけ。またいつか、強くてかっこいいお父さんに戻ってくれるって思ってる。だから……だから」
強くてかっこいいお父さん。
きっとそうなのだろう。奥さんを亡くすまでは、そのとおりだったのだろう。ディビジョンSになれるような人が弱いわけがない。格好悪いわけがない。
だから、サジェスはゴミ箱のヌンチャクを拾ってきていた。きっとマグノリアが使用していた武器なのだろう。かっこよかった頃の父親の武器を捨てられるのが耐えられなかったのだろう。だから、拾って保管していた。いつか強い父親が帰ってきたときのために、大切に取っておいたのだろう。
その大切なものは、ついにマグノリアの手に戻る時が来たのかもしれない。少なくともサジェスは、今渡すべきだと判断した。
だから、
「負けないで」サジェスは泣きそうな顔で言う。「もう一度、強いお父さんを見せて」
そう言って、サジェスはヌンチャクを父親に向かって放り投げた。マグノリアはそれを受け取って、
「……苦労かけたな……」そうつぶやいた。「俺もそろそろ、現実を受け止めないといけないな。いくら酒を飲んで逃げても、あいつは戻ってこない」
あいつ、というのはマグノリアの奥さんのことだろう。マグノリア自身が守りきれなかったと思っている奥さん。いくら悔やんでも、酒を飲んでも戻ってこない。忘れることなどできはしない。
「病気だったよ」マグノリアは言う。「俺が武術なんかじゃなくて、医術を学んでいたら、助けられたかもしれない。そう思ったら、俺がしてきた武術の努力が虚しくなった。無意味なものだと思うようになった」
そうだな、とマグノリアは自問自答してから続ける。
「あんた、さっき言ってたな。俺にとって強さとは何かと。思い出した……俺にとって強さは、あいつを守ることだった。大切なものを守ろうと強くなったはずだった」
守るために強くなった。だが、その強さでは大切な人を守れなかった。だから、マグノリアは絶望したのだろう。今までの自分の人生を否定されたかのような感覚だったのだろう。
「なんのために戦えばいいのか、わからなくなった。今でもわかってないかもしれない。だが……」マグノリアはヌンチャクを構える。「とりあえず……たまには全力で運動するのも悪くない」
マグノリアは準備運動でもするようにヌンチャクを振り回す。洗練された動きで、今までの怒りに身を任せた雑な動きではなかった。並大抵の努力では身につかないことがすぐに伝わってくる、完成された動きだった。ヌンチャクが風を切る音、所作。すべてが噛み合って、まるで芸術作品みたいだった。
メルはそれを見て、
「……あなたが戦う理由。本当は気づいてるはず」
「……?」
「昔から、変わってないはず。守るべき大切なものは、まだ残ってる」
「……そうかもな」
マグノリアに残された守るべき大切なもの。それはサジェスのことだろうか。それとも……サジェスのイメージの中にある、強くてかっこいいお父さんだろうか。そのどちらもだろうか。
緊張感が高まっていく。明らかにマグノリアのスタイルと練度、そして集中力が変わった。おそらくこれからが、元ディビジョンSの本領発揮なのだろう。それをメルもわかっているから、警戒心を高めている。
「あんた、名前は?」
「メル……メル・キュール」
「そうか。感謝するぜメル・キュール。俺自身も何に対して感謝してるのか、まだわかってないが……あんたがここに来たから、何かしら変わっただろう。これからも、何かが変わるだろう」
だが、とマグノリアは続ける。
「悪いなメルの弟子たち。午後の修行はお預けだ。代わりに見舞いの品でも用意しとけ」
お前を病院送りにしてやる、という挑発。
それを受けてメルは、
「サジェスくん」
「は、はい……」
「お酒じゃまともな消毒はできない」
「……へ?」
これからマグノリアが負う傷を消毒するにはお酒では足りないということ。要するに、これからマグノリアをボコボコにするという挑発。今回は完全に意図した挑発だった。
言葉の意味が理解できないサジェスの代わりに、マグノリアが言う。
「もう酒はいらねぇよ。今回も、これからも」
「……そう……」メルは一瞬目を伏せる。そして、完全に戦闘モードに入ったようだった。「今度こそ、全力で来て」
「おう。そっちも全力出さないと、ケガするぜ」
「……そうかも」
メル・キュールVSマグノリア。第2ラウンドの開始である。
サジェスが持っていたのは、ヌンチャクだった。使い古されていて、ところどころ塗装が剥げ落ちている。
マグノリアはそのヌンチャクを見て驚いているようだった。
「それは俺が捨てたはず……どうして……」
「ゴ、ゴミ捨て場から、拾った……」震える声で、サジェスは言う。「お父さん……お母さんが死んじゃって、それで悲しんでるだけ。またいつか、強くてかっこいいお父さんに戻ってくれるって思ってる。だから……だから」
強くてかっこいいお父さん。
きっとそうなのだろう。奥さんを亡くすまでは、そのとおりだったのだろう。ディビジョンSになれるような人が弱いわけがない。格好悪いわけがない。
だから、サジェスはゴミ箱のヌンチャクを拾ってきていた。きっとマグノリアが使用していた武器なのだろう。かっこよかった頃の父親の武器を捨てられるのが耐えられなかったのだろう。だから、拾って保管していた。いつか強い父親が帰ってきたときのために、大切に取っておいたのだろう。
その大切なものは、ついにマグノリアの手に戻る時が来たのかもしれない。少なくともサジェスは、今渡すべきだと判断した。
だから、
「負けないで」サジェスは泣きそうな顔で言う。「もう一度、強いお父さんを見せて」
そう言って、サジェスはヌンチャクを父親に向かって放り投げた。マグノリアはそれを受け取って、
「……苦労かけたな……」そうつぶやいた。「俺もそろそろ、現実を受け止めないといけないな。いくら酒を飲んで逃げても、あいつは戻ってこない」
あいつ、というのはマグノリアの奥さんのことだろう。マグノリア自身が守りきれなかったと思っている奥さん。いくら悔やんでも、酒を飲んでも戻ってこない。忘れることなどできはしない。
「病気だったよ」マグノリアは言う。「俺が武術なんかじゃなくて、医術を学んでいたら、助けられたかもしれない。そう思ったら、俺がしてきた武術の努力が虚しくなった。無意味なものだと思うようになった」
そうだな、とマグノリアは自問自答してから続ける。
「あんた、さっき言ってたな。俺にとって強さとは何かと。思い出した……俺にとって強さは、あいつを守ることだった。大切なものを守ろうと強くなったはずだった」
守るために強くなった。だが、その強さでは大切な人を守れなかった。だから、マグノリアは絶望したのだろう。今までの自分の人生を否定されたかのような感覚だったのだろう。
「なんのために戦えばいいのか、わからなくなった。今でもわかってないかもしれない。だが……」マグノリアはヌンチャクを構える。「とりあえず……たまには全力で運動するのも悪くない」
マグノリアは準備運動でもするようにヌンチャクを振り回す。洗練された動きで、今までの怒りに身を任せた雑な動きではなかった。並大抵の努力では身につかないことがすぐに伝わってくる、完成された動きだった。ヌンチャクが風を切る音、所作。すべてが噛み合って、まるで芸術作品みたいだった。
メルはそれを見て、
「……あなたが戦う理由。本当は気づいてるはず」
「……?」
「昔から、変わってないはず。守るべき大切なものは、まだ残ってる」
「……そうかもな」
マグノリアに残された守るべき大切なもの。それはサジェスのことだろうか。それとも……サジェスのイメージの中にある、強くてかっこいいお父さんだろうか。そのどちらもだろうか。
緊張感が高まっていく。明らかにマグノリアのスタイルと練度、そして集中力が変わった。おそらくこれからが、元ディビジョンSの本領発揮なのだろう。それをメルもわかっているから、警戒心を高めている。
「あんた、名前は?」
「メル……メル・キュール」
「そうか。感謝するぜメル・キュール。俺自身も何に対して感謝してるのか、まだわかってないが……あんたがここに来たから、何かしら変わっただろう。これからも、何かが変わるだろう」
だが、とマグノリアは続ける。
「悪いなメルの弟子たち。午後の修行はお預けだ。代わりに見舞いの品でも用意しとけ」
お前を病院送りにしてやる、という挑発。
それを受けてメルは、
「サジェスくん」
「は、はい……」
「お酒じゃまともな消毒はできない」
「……へ?」
これからマグノリアが負う傷を消毒するにはお酒では足りないということ。要するに、これからマグノリアをボコボコにするという挑発。今回は完全に意図した挑発だった。
言葉の意味が理解できないサジェスの代わりに、マグノリアが言う。
「もう酒はいらねぇよ。今回も、これからも」
「……そう……」メルは一瞬目を伏せる。そして、完全に戦闘モードに入ったようだった。「今度こそ、全力で来て」
「おう。そっちも全力出さないと、ケガするぜ」
「……そうかも」
メル・キュールVSマグノリア。第2ラウンドの開始である。
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