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第9話
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芳樹は運転手に成城の本宅へ行くように指示した。
芳樹が住む離れと同じ敷地内であっても用がある時以外は絶対入るなと言われている。
今思うと義父である仁は芳樹を見たくなかったのだろう…自分が愛した男に、そして自分を裏切った男にそっくりの息子を見たくは無い…でも、自分の目の届かない所には置きたくなかったのも…。
深く愛していたぶん…裏切られた憎しみは大きかったのだろう…。
その深く暗い怒りの全てが芳樹に向かった。
ある意味、母と仁は似ていると芳樹は思った…きっとどちらも認めないだろうけど、2人はどこか似ている。
だから父は母を愛していると感じたのかもしれない。
そんな事を考えているうちに成城の本宅の表玄関に到着した…。
車のドアを執事の高倉が開けた。
「お帰りなさいませ芳樹様、旦那様が執務室でお待ちでございます。」
「ああ…分かっている。」
高倉の後を付いて行きながら久し振りに来た本宅のエトランスで芳樹は明とその横に佇む令嬢と出会ってしまった。
明の横にいる美しい中に可愛さを持つ女性…彼女の目が大きく開かれる…。
そんな彼女の目から私を隠す様に明が俺を見る目は憎々しげで…その目は、何故お前の様な者がここにいるのかと言っている様だった。
「なんでここに来た?お前の様な薄汚い者が表から来るなんて!」
そう口に出して言ったのは明の弟である本城征俺たちより5歳歳下の男で俺を小さい時から嫌っていた…今は見るのも穢らわしいと思っている。
俺は俺の全部を総動員して無表情の仮面を着ける。
そして、尊大に答えた。
「あの人に呼ばれたのでね…それ以外に私がここに来る理由なんてない…。」
本城兄弟を敢えて見下ろす様に言葉を紡いだ。
明は無言で弟の征は益々憎々しげに俺を睨んだ。
そんな2人に背を向けて高倉に案内をさせて芳樹は仁の執務室に向かった。
背中で明の声が聞こえた。
「今の方はどなたですの?」
「ただの顔見知りっていうだけの者だ…貴女は知らないくていい…これから先会うことも無いのだから…。」
『ただの顔見知り…』俺の心臓に見えない言葉のナイフが突き刺さった。
芳樹は見えないナイフの痛みに顔を歪ませたが、すぐに元のポーカーフェイスに戻した。
いつだって…芳樹を傷付ける事が出来るのは、明だけ…。
昔も今も変わらない自分の想いに…自分もまた、あの母の血に繋がっている事を思い知った。
『たった1人の人を深く思い続ける俺もまた…母と同じ異常者なのかもしれない…。』
芳樹は1つため息をつき…広い本宅の中の一際立派なドアの前に来た。
軽くノックした高倉がドアの中に芳樹が来た事を知らせた。
「旦那様、芳樹様がおいでになられました。」
「入れ!」
最後に明に会えた…。
それだけで、俺はもういいんだ…。
だから、こんな俺は消えてしまおう…。
人魚姫と同じ様に…泡になって…。
消えてしまおう…。
この想いが、君に悲しみを届けてしまう前に…。
芳樹が住む離れと同じ敷地内であっても用がある時以外は絶対入るなと言われている。
今思うと義父である仁は芳樹を見たくなかったのだろう…自分が愛した男に、そして自分を裏切った男にそっくりの息子を見たくは無い…でも、自分の目の届かない所には置きたくなかったのも…。
深く愛していたぶん…裏切られた憎しみは大きかったのだろう…。
その深く暗い怒りの全てが芳樹に向かった。
ある意味、母と仁は似ていると芳樹は思った…きっとどちらも認めないだろうけど、2人はどこか似ている。
だから父は母を愛していると感じたのかもしれない。
そんな事を考えているうちに成城の本宅の表玄関に到着した…。
車のドアを執事の高倉が開けた。
「お帰りなさいませ芳樹様、旦那様が執務室でお待ちでございます。」
「ああ…分かっている。」
高倉の後を付いて行きながら久し振りに来た本宅のエトランスで芳樹は明とその横に佇む令嬢と出会ってしまった。
明の横にいる美しい中に可愛さを持つ女性…彼女の目が大きく開かれる…。
そんな彼女の目から私を隠す様に明が俺を見る目は憎々しげで…その目は、何故お前の様な者がここにいるのかと言っている様だった。
「なんでここに来た?お前の様な薄汚い者が表から来るなんて!」
そう口に出して言ったのは明の弟である本城征俺たちより5歳歳下の男で俺を小さい時から嫌っていた…今は見るのも穢らわしいと思っている。
俺は俺の全部を総動員して無表情の仮面を着ける。
そして、尊大に答えた。
「あの人に呼ばれたのでね…それ以外に私がここに来る理由なんてない…。」
本城兄弟を敢えて見下ろす様に言葉を紡いだ。
明は無言で弟の征は益々憎々しげに俺を睨んだ。
そんな2人に背を向けて高倉に案内をさせて芳樹は仁の執務室に向かった。
背中で明の声が聞こえた。
「今の方はどなたですの?」
「ただの顔見知りっていうだけの者だ…貴女は知らないくていい…これから先会うことも無いのだから…。」
『ただの顔見知り…』俺の心臓に見えない言葉のナイフが突き刺さった。
芳樹は見えないナイフの痛みに顔を歪ませたが、すぐに元のポーカーフェイスに戻した。
いつだって…芳樹を傷付ける事が出来るのは、明だけ…。
昔も今も変わらない自分の想いに…自分もまた、あの母の血に繋がっている事を思い知った。
『たった1人の人を深く思い続ける俺もまた…母と同じ異常者なのかもしれない…。』
芳樹は1つため息をつき…広い本宅の中の一際立派なドアの前に来た。
軽くノックした高倉がドアの中に芳樹が来た事を知らせた。
「旦那様、芳樹様がおいでになられました。」
「入れ!」
最後に明に会えた…。
それだけで、俺はもういいんだ…。
だから、こんな俺は消えてしまおう…。
人魚姫と同じ様に…泡になって…。
消えてしまおう…。
この想いが、君に悲しみを届けてしまう前に…。
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