可愛いあの子は溺愛されるのがお約束

猫屋ネコ吉

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プロローグ

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クリスマスの夜…僕は死んだ。

白い雪が降る中僕は1人凍えるベランダに出され躾と言った義父の殴る蹴るという暴力と風呂場で頭から水を被せられてベランダに出されたのだ。
さっき蹴られた脇腹が痛いを通り越して熱くなって、それすら段々感じなくなって来た。
暖かい部屋からは楽しそうな家族団欒の声がしている。

こんな地獄が始まったのは僕が小学3年生になった時、母が再婚してから…。
最初の頃は義父も優しい人だった。
でも、ある日を境に義父は僕だけを嫌う様になって言葉の暴力から始まり、手が出る様になってから段々エスカレートしていく暴力に僕はどうする事も出来なくて…。
上の兄と下の妹には優しいままの義父。
そんな義父は公務員で市役所勤務をしているらしい。
義父と結婚してからお金に困る事が無くなった母は義父の言う事が大事で、僕が殴られても見て見ぬ振りどころか一緒になって僕を殴ることすらある。
食事は一日に一回貰えたら運がいい。
小学校の時は給食があったから良かったのだけれど、中学に上がってから給食が無くなってから僕の食事事情はいっきに悪くなった。

学校からどんどん痩せていく僕を見て病気では無いか?虐待じゃ無いかと言われた両親、特に外面のいい義父は病院に入れて検査すると言って僕を家から出さなくなった。
学校からも隔離され毎日食事も碌に貰えず暴力を受ける僕を誰も助けてはくれない。

そんな日々がようやく終わる。
僕が死ぬ事で終わるんだ。

やっとこの苦しみの世界から解放される事が出来ると思うと、何だか何もかもが許せる気がするんだ。

暴力で自分のストレスを解消する義父とそれを止めない母。
義父の暴力が自分に来ない様に立ち回り僕なんて居ない様に無視する兄と自分には優しい義父に何も疑わない妹…。

僕の家族は誰もが僕に優しくはしてくれなかったけど僕はもういいんだ。
やっと解放されるんだから…。

まっ暗い闇の中へと落ちていく…。
もう寒くも痛くも無い。
でも、何でかな?目から涙が落ちていくのが分かるんだ。
それももう直ぐ消えてしまう。

最後に聞いたのは隣りに住んでいるオジさんの声…。
大声で僕の名前を呼んでいるみたいだ。
その声に暖かな部屋にいた僕の家族が慌ててベランダの戸を開けて僕を揺さぶっているけど僕はもう何も感じない。

遠くから響くサイレンの音も泣き叫ぶ母と妹の声も、誰かが僕を抱きしめた腕の暖かさも…何もかもが遠くなって僕の全ての音も消えた。

神様…もしこの世に神様が居るのなら僕の家族を許してやって欲しい。
母も兄も妹も…そして義父も。
この世に生まれて短い人生だったけど、決して幸せじゃなかったけど、この世に生まれて良かった事もあったんだ。
綺麗な花、綺麗な空、暖かい陽射し、淡い月明かり、瞬く星空。
隣りのオジさんは時々ベランダ越しに僕にクリームパンをくれた。
ドア越しに僕の様子を何度も聞きに来た中学の担任の先生。
苦しい痛い事だらけの中にあった優しい光が僕を人間でいさせてくれたんだよ。
だから神様…僕は誰も恨まない。
良い事だけを持って僕は死ぬ…。

『神様…あり…がと…』






僕が死んだ後、虐待で子供を死なせたとして義父と母は逮捕された。
兄と妹は、それぞれ施設に入れられ家族は離散した。
被害者が家族で加害者も家族…。
それはこれから生きて行く上で兄も妹も辛い人生を送る事になる。
エリートだった義父は後に裁判で懲役13年と判決を出され服役し塀の中で虐めに合い精神を病んで自殺した。
母親も自分の子供を死なせた事に裁判で懲役12年となり服役した。
その後11年で模範囚として罪を減らし出所したが世間は冷たかった。
親、親戚からも勘当されていたし出所しても誰も迎えに来てくれなかった。
それでも生きて行く為に働いたが10年経っても息子を殺した母親という事が一生付いて回った。
それ故に楽な仕事など就けず1人で生きて行くしかなかった。
そんな彼女の過去を知らず付き合った男が居たが、結局はバレて結婚の話しも消えた。
1人で生きて行く事の寂しさのなか深夜勤務の後にひき逃げに合い事故死する。
寒い夜だった為、事故後直ぐに病院に運ばれたら助かったかもしれないが、深夜で人も通らなかった為にそのまま凍死してしまった。

因果応報。

その言葉が正しく働いた結果だったのかもしれない。



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