43 / 115
第43話 新たな住民を迎えて
しおりを挟む
助け出した一部の人外とルスは、ガーティス子爵家で生活する事となった。命を救われたとあってか、人間たちを信用できない様子ではあるものの、状況はきちんと受け入れているようである。
中でも女性タイプはモエが引き受ける方向で話が進み、エリィの指導の下、モエと同じようにガーティス家でメイドとなる事になった。
しかし、帰らなかった女性型の人外は多くなかった。ラビス族とキャラル族の二人しか居なかった。元々獣がほとんど占めていたし、みんな故郷に帰りたがっていたのでこういう結果になったのである。
ラビス族というのはウサギの耳と尻尾を持つ種族で、その姿は結構差がある。人の姿に耳と尻尾が生えたような者も居れば、ウサギが二足歩行しているタイプの者も居る。今回の子はその中間っぽい感じだ。
キャラル族は猫の耳と尻尾を持ち、骨格が人間と同じような獣人タイプの種族である。ラビス族と違って、人寄りか獣寄りかの程度によって種族名が変わるのが特徴である。
ひと口に人外といっても、いろいろ居るようである。
ラビス族とキャラル族の女性は、エリィとモエに連れられてメイド服を着る事になったのだが、
「そういえば、あなたたち。名前はありますか?」
服が保管してある更衣室に着いたところで、エリィから質問を投げかけられた。しかし、二人とも首を傾げるばかりであり、名前を言う気配はなかった。どうやら名前が何なのか分からないようだった。
「名前っていうのはあなたたちの個体を指し示す呼び方の事ですよ。私で言えば、マイコニドが種族名で、モエが名前って感じですね」
二人に対してモエが自分を例に出しながら説明する。すると、二人はそれですんなりと理解してくれたようだった。
「名前はありません」
そう答えたのはラビス族の女性だった。見た目的には二人ともモエと同い年くらいなのだけど、どうやら二人とも個体名はないようだった。
それにしても、さっきから反応するのはラビス族の方だけで、キャラル族の方はまったく喋らなかった。警戒しているのか喋れないのかは分からないけれど、まったく喋らなかった。
「あっ、エリィさん。私ったら食堂の掃除に行かなければなりません。ここはお願いしてもよろしいでしょうか」
急に用事を思い出したモエである。そういえば、今は昼前である。
「分かりました。済ませたら戻ってきて下さいね」
「承知しました。では、行ってきます」
モエは食堂の掃除のために部屋を出ていった。仕事なので穴を開けるわけにはいかないから仕方がない。
モエを見送ったところで、エリィは改めてラビス族とキャラル族の二人を見る。
「お二人は、私とモエの二人でしっかりと一人前に育てさせて頂きます。今はモエさんが戻ってくるまでの間、私が基本的な事をお教え致しましょう」
「は、はい! よろしく、お願いします……」
ラビス族の方は背筋を伸ばしてから頭をおそるおそる下げている。キャラル族の方はちょっと気持ちが散漫なのか、あくびをしていた。
「ほほう、あくびとはいい度胸ですね……。ここに残るという選択をしたのですから、ここの生活にしっかりと馴染んで頂きますのでね。覚悟して下さい」
あくびを見たエリィが少々お怒りのようである。ものすごい気迫と共にキャラル族の女性を見ると、耳と尻尾を逆立たせてラビス族の女性の後ろに隠れていた。怯えながらエリィの事を見つめている。
「ふふっ、しっかりと馴染む努力をして下さるのであるなら、怒りはしませんよ。ええ、努力さえして頂ければ……」
笑顔のエリィだが、ものすごく怖い。キャラル族の女性はますます怯えて、どんどんとラビス族の女性の後ろに隠れていった。
「ちょ、ちょっとやめて下さい。エリィさんの睨みが私に向けられちゃいます。こ、怖いんですから、ね、やめてってば……」
ラビス族の女性が怖がって訴えるものの、キャラル族の女性は顔を覗かせる様子はまったくなかった。
「うふふふ、馴染むつもりがないのでしたら、お昼は食べられませんよ。働かざる者、食うべからずです。それでもよろしいのですか?」
エリィはお昼ごはんを食べさせないという荒業に打って出る。すると、ご飯が食べられないと聞いて、キャラル族の女性は慌てたようにラビス族の女性の隣に出てきて、ピンと背筋を伸ばしていた。さすがごはんは強かった。
「よろしい。とはいえ、うちに来て初日ですからね、今のところは仕事の説明だけしましょう。モエさんと合流してお昼を済ませたら、屋敷の中を案内します。その時にあなたたちの名前も決めてしまいましょう」
「わ、分かりました。お願いします」
ラビス族の女性は畏まって頭を下げていた。
こうして、新たな屋敷の住民を迎えたガーティス子爵邸。亜人や獣たちが増えて、ますます賑やかになっていく。
しかし、今回潰した密売組織は恐らくは問題の一部だろう。本格的な解決に向けて、子爵たちは調査の続行をしているし、捕まえた連中の取り調べもいよいよ本格化する。
モエたちの平穏な生活には、まだまだ先が長そうだった。
中でも女性タイプはモエが引き受ける方向で話が進み、エリィの指導の下、モエと同じようにガーティス家でメイドとなる事になった。
しかし、帰らなかった女性型の人外は多くなかった。ラビス族とキャラル族の二人しか居なかった。元々獣がほとんど占めていたし、みんな故郷に帰りたがっていたのでこういう結果になったのである。
ラビス族というのはウサギの耳と尻尾を持つ種族で、その姿は結構差がある。人の姿に耳と尻尾が生えたような者も居れば、ウサギが二足歩行しているタイプの者も居る。今回の子はその中間っぽい感じだ。
キャラル族は猫の耳と尻尾を持ち、骨格が人間と同じような獣人タイプの種族である。ラビス族と違って、人寄りか獣寄りかの程度によって種族名が変わるのが特徴である。
ひと口に人外といっても、いろいろ居るようである。
ラビス族とキャラル族の女性は、エリィとモエに連れられてメイド服を着る事になったのだが、
「そういえば、あなたたち。名前はありますか?」
服が保管してある更衣室に着いたところで、エリィから質問を投げかけられた。しかし、二人とも首を傾げるばかりであり、名前を言う気配はなかった。どうやら名前が何なのか分からないようだった。
「名前っていうのはあなたたちの個体を指し示す呼び方の事ですよ。私で言えば、マイコニドが種族名で、モエが名前って感じですね」
二人に対してモエが自分を例に出しながら説明する。すると、二人はそれですんなりと理解してくれたようだった。
「名前はありません」
そう答えたのはラビス族の女性だった。見た目的には二人ともモエと同い年くらいなのだけど、どうやら二人とも個体名はないようだった。
それにしても、さっきから反応するのはラビス族の方だけで、キャラル族の方はまったく喋らなかった。警戒しているのか喋れないのかは分からないけれど、まったく喋らなかった。
「あっ、エリィさん。私ったら食堂の掃除に行かなければなりません。ここはお願いしてもよろしいでしょうか」
急に用事を思い出したモエである。そういえば、今は昼前である。
「分かりました。済ませたら戻ってきて下さいね」
「承知しました。では、行ってきます」
モエは食堂の掃除のために部屋を出ていった。仕事なので穴を開けるわけにはいかないから仕方がない。
モエを見送ったところで、エリィは改めてラビス族とキャラル族の二人を見る。
「お二人は、私とモエの二人でしっかりと一人前に育てさせて頂きます。今はモエさんが戻ってくるまでの間、私が基本的な事をお教え致しましょう」
「は、はい! よろしく、お願いします……」
ラビス族の方は背筋を伸ばしてから頭をおそるおそる下げている。キャラル族の方はちょっと気持ちが散漫なのか、あくびをしていた。
「ほほう、あくびとはいい度胸ですね……。ここに残るという選択をしたのですから、ここの生活にしっかりと馴染んで頂きますのでね。覚悟して下さい」
あくびを見たエリィが少々お怒りのようである。ものすごい気迫と共にキャラル族の女性を見ると、耳と尻尾を逆立たせてラビス族の女性の後ろに隠れていた。怯えながらエリィの事を見つめている。
「ふふっ、しっかりと馴染む努力をして下さるのであるなら、怒りはしませんよ。ええ、努力さえして頂ければ……」
笑顔のエリィだが、ものすごく怖い。キャラル族の女性はますます怯えて、どんどんとラビス族の女性の後ろに隠れていった。
「ちょ、ちょっとやめて下さい。エリィさんの睨みが私に向けられちゃいます。こ、怖いんですから、ね、やめてってば……」
ラビス族の女性が怖がって訴えるものの、キャラル族の女性は顔を覗かせる様子はまったくなかった。
「うふふふ、馴染むつもりがないのでしたら、お昼は食べられませんよ。働かざる者、食うべからずです。それでもよろしいのですか?」
エリィはお昼ごはんを食べさせないという荒業に打って出る。すると、ご飯が食べられないと聞いて、キャラル族の女性は慌てたようにラビス族の女性の隣に出てきて、ピンと背筋を伸ばしていた。さすがごはんは強かった。
「よろしい。とはいえ、うちに来て初日ですからね、今のところは仕事の説明だけしましょう。モエさんと合流してお昼を済ませたら、屋敷の中を案内します。その時にあなたたちの名前も決めてしまいましょう」
「わ、分かりました。お願いします」
ラビス族の女性は畏まって頭を下げていた。
こうして、新たな屋敷の住民を迎えたガーティス子爵邸。亜人や獣たちが増えて、ますます賑やかになっていく。
しかし、今回潰した密売組織は恐らくは問題の一部だろう。本格的な解決に向けて、子爵たちは調査の続行をしているし、捕まえた連中の取り調べもいよいよ本格化する。
モエたちの平穏な生活には、まだまだ先が長そうだった。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる