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第一章 転生アンマリア
第23話 そりゃ痩せたいですからね
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はちみつを使ったチョコレートは好評だった。
さて、私がはちみつ入りのチョコレートを作ったのには理由がある。いくら体質で太りやすいからとはいっても、時に甘いものが食べたくなってしまうのだ。とはいっても砂糖入りのお菓子は何にしてもカロリーが高いのだ。
そこで私が考えたのは前世でもあった代替甘味料というわけだ。人工甘味料なんてこの世界にあるわけがないので、そこで真っ先に思い付いたのがはちみつだったというわけである。はちみつ入りのチョコレートは実際にあったので、これをまずは作ってみたというのが今回のお茶会に出した一品というわけだった。同量の砂糖に比べると少しカロリーを控えられるし、はちみつには他の栄養素もあるので、ある意味理想的なものとなってくれた。だけど、そのはちみつも砂糖に負けず劣らず生産量は多くないので、量産化は難しいところだった。ブラックは苦いし、ミルクははちみつ入りより保存が利かない、だからこそのはちみつ入りなのである。
しかし、このはちみつ入りのチョコレートは、予想外な方に食いつかれてしまったようだ。
「アンマリア様、このはちみつ入りチョコレートを、売りに出してみる気がございませんこと?」
公爵令嬢ラム・マートンである。彼女も私と同じように太っている。それゆえに同じような悩みを抱えているのだ。おいしくて太りにくい料理というものを、料理人と一緒に模索しているそうなのだ。食べ過ぎたら意味はないんだけどね。
そういった経緯があって、実は公爵家では商会を一つ経営しているのだった。そこで、私が出したこのはちみつ入りチョコレートを、商会から売りに出してみる気はないかと尋ねてきたわけだった。うん、正直面倒くさい。面倒くさいけれど、それは別に悪い話ではなかった。契約によって発案者としてロイヤリティがもらえるなら、伯爵家にも恩恵のある話である。だけど、さすがに私一人の一存で決められる事ではなかった。なので、
「ラム様、それは実に嬉しいお話ですし、私としても問題はございませんけれど、お父様たちでお話しする内容かと存じます」
了承はするけれど、詳しい事は親に丸投げしましょうと答えておいた。すると、ラムは笑いながら、
「そうですわね。了解しました。では、わたくしの両親にお話しした後、正式にお話を持ち掛けさせて頂きます」
と返してきた。正直私は胃が痛くなった気がした。でもまぁ、この場を丸く収める事ができたのだからこれでいいのだ。
それからもしばらくの間は、私とラムとで話をしていた。太った者同士、どうしても共通の悩みがあるというものだ。お互いに共感しかできなかった。どうやらラムも少しは痩せようとしているらしい。ただ、両親が少々厳しいのか運動とかはさせてもらえないそうな。それでいて食事はたくさん出してくるし、残すと体調不良を疑って騒ぐので、ラムは嫌々食べているのだそうな。娘が太っている事に関しては何とも思っていないのだろうか。
すると、そこへ一人の令嬢がやって来た。上腕筋のムキムキ具合から、辺境伯令嬢のサクラ・バッサーシと判断する。顔は見ていない。
「恐れ入ります、ラム・マートン公爵令嬢、アンマリア・ファッティ伯爵令嬢。私、バッサーシ辺境伯家のサクラと申します。お初にお目にかかります」
やっぱりサクラ・バッサーシだった。しかし、一体何しに来たというのだろうか。
「いやはや、お痩せになられたいという気持ちはよく分かりますよ。まあ、私の場合は筋肉太りというものですけれどね、あっはっはっは」
なんだ、ただの筋肉自慢か。よし、なら帰れ。私は鬱陶しく思ってしまった。
「運動というものは、何も屋外だけで行うものではありませんよ。室内でもできる事はありますからね」
まぁそれは確かにそうだ。ちなみに私だってそれくらいしている。
「使用人の目が厳しいというのであれば、寝る前がおすすめですよ。その時間ともなれば使用人も部屋を離れます。その際に部屋の中の似たような重さの本を2冊持って腕の運動とか、それ以外に屈伸をするなど思ったよりできるものなのです」
サクラはいろいろとアドバイスをしてくる。ラムはそれを一生懸命に聞いていた。これは本気のようである。
その様子を見ていた私は、徐々に二人から離れ始める。
「おや、どこに行かれるのですか、アンマリア様」
サクラに気付かれてしまった私は、しっかりと呼び止められてしまう。
「おほほほ。他の方にも今回のチョコレートの感想を伺って参りますわ。好評ならば、私の両親も乗り気になるでしょうからね」
「そうですね。他の皆さんの評価はわたくしも気になりますわ。わたくしたちの事は気にせず、行ってらっしゃいませ」
そうやってラムは私を送り出してくれたので、しっかりと主催として他の招待客と話をする事ができた。概ね満足した様子が見られたので、結果としてはまずまずといったところだろうか。
ちなみに母親は私の事をずっと見ていたようで、終わった後で褒めてくれていた。
こうして初の主催となったお茶会は無事に終わる事ができた。
そして、余談だけれど、後日の事、マートン公爵家が経営する商会からはちみつ入りチョコレートが無事に発売となりましたとさ。
さて、私がはちみつ入りのチョコレートを作ったのには理由がある。いくら体質で太りやすいからとはいっても、時に甘いものが食べたくなってしまうのだ。とはいっても砂糖入りのお菓子は何にしてもカロリーが高いのだ。
そこで私が考えたのは前世でもあった代替甘味料というわけだ。人工甘味料なんてこの世界にあるわけがないので、そこで真っ先に思い付いたのがはちみつだったというわけである。はちみつ入りのチョコレートは実際にあったので、これをまずは作ってみたというのが今回のお茶会に出した一品というわけだった。同量の砂糖に比べると少しカロリーを控えられるし、はちみつには他の栄養素もあるので、ある意味理想的なものとなってくれた。だけど、そのはちみつも砂糖に負けず劣らず生産量は多くないので、量産化は難しいところだった。ブラックは苦いし、ミルクははちみつ入りより保存が利かない、だからこそのはちみつ入りなのである。
しかし、このはちみつ入りのチョコレートは、予想外な方に食いつかれてしまったようだ。
「アンマリア様、このはちみつ入りチョコレートを、売りに出してみる気がございませんこと?」
公爵令嬢ラム・マートンである。彼女も私と同じように太っている。それゆえに同じような悩みを抱えているのだ。おいしくて太りにくい料理というものを、料理人と一緒に模索しているそうなのだ。食べ過ぎたら意味はないんだけどね。
そういった経緯があって、実は公爵家では商会を一つ経営しているのだった。そこで、私が出したこのはちみつ入りチョコレートを、商会から売りに出してみる気はないかと尋ねてきたわけだった。うん、正直面倒くさい。面倒くさいけれど、それは別に悪い話ではなかった。契約によって発案者としてロイヤリティがもらえるなら、伯爵家にも恩恵のある話である。だけど、さすがに私一人の一存で決められる事ではなかった。なので、
「ラム様、それは実に嬉しいお話ですし、私としても問題はございませんけれど、お父様たちでお話しする内容かと存じます」
了承はするけれど、詳しい事は親に丸投げしましょうと答えておいた。すると、ラムは笑いながら、
「そうですわね。了解しました。では、わたくしの両親にお話しした後、正式にお話を持ち掛けさせて頂きます」
と返してきた。正直私は胃が痛くなった気がした。でもまぁ、この場を丸く収める事ができたのだからこれでいいのだ。
それからもしばらくの間は、私とラムとで話をしていた。太った者同士、どうしても共通の悩みがあるというものだ。お互いに共感しかできなかった。どうやらラムも少しは痩せようとしているらしい。ただ、両親が少々厳しいのか運動とかはさせてもらえないそうな。それでいて食事はたくさん出してくるし、残すと体調不良を疑って騒ぐので、ラムは嫌々食べているのだそうな。娘が太っている事に関しては何とも思っていないのだろうか。
すると、そこへ一人の令嬢がやって来た。上腕筋のムキムキ具合から、辺境伯令嬢のサクラ・バッサーシと判断する。顔は見ていない。
「恐れ入ります、ラム・マートン公爵令嬢、アンマリア・ファッティ伯爵令嬢。私、バッサーシ辺境伯家のサクラと申します。お初にお目にかかります」
やっぱりサクラ・バッサーシだった。しかし、一体何しに来たというのだろうか。
「いやはや、お痩せになられたいという気持ちはよく分かりますよ。まあ、私の場合は筋肉太りというものですけれどね、あっはっはっは」
なんだ、ただの筋肉自慢か。よし、なら帰れ。私は鬱陶しく思ってしまった。
「運動というものは、何も屋外だけで行うものではありませんよ。室内でもできる事はありますからね」
まぁそれは確かにそうだ。ちなみに私だってそれくらいしている。
「使用人の目が厳しいというのであれば、寝る前がおすすめですよ。その時間ともなれば使用人も部屋を離れます。その際に部屋の中の似たような重さの本を2冊持って腕の運動とか、それ以外に屈伸をするなど思ったよりできるものなのです」
サクラはいろいろとアドバイスをしてくる。ラムはそれを一生懸命に聞いていた。これは本気のようである。
その様子を見ていた私は、徐々に二人から離れ始める。
「おや、どこに行かれるのですか、アンマリア様」
サクラに気付かれてしまった私は、しっかりと呼び止められてしまう。
「おほほほ。他の方にも今回のチョコレートの感想を伺って参りますわ。好評ならば、私の両親も乗り気になるでしょうからね」
「そうですね。他の皆さんの評価はわたくしも気になりますわ。わたくしたちの事は気にせず、行ってらっしゃいませ」
そうやってラムは私を送り出してくれたので、しっかりと主催として他の招待客と話をする事ができた。概ね満足した様子が見られたので、結果としてはまずまずといったところだろうか。
ちなみに母親は私の事をずっと見ていたようで、終わった後で褒めてくれていた。
こうして初の主催となったお茶会は無事に終わる事ができた。
そして、余談だけれど、後日の事、マートン公爵家が経営する商会からはちみつ入りチョコレートが無事に発売となりましたとさ。
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