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第二章 ゲーム開始前
第58話 おいしいお魚天国
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翌日、私はすっきりと目覚める。
(あー、お魚最高!)
到着初日の夕食に出てきた焼き魚は、焼き加減が程よく、肉厚でジューシーなものだった。まるで鯛のようなお魚だった。私は大満足よ。
将来のために痩せなきゃいけないけれど、前世以来のお魚とあっては食べなきゃ損よね。本当ならお箸で食べたかったんだけど、この世界にはないからフォークとナイフで器用にキレイに食べてあげたわよ。うん、お魚最高!
さてと、2日目はボンジール商会の買い付けに合わせて街の見学をする事になっている。昨日の事もあってか、私たちは絶対単独で行動するなときつく言われている。……もうしないわよ。
生のお魚は痛みやすいので、ボンジール商会では購入しない。商会が購入するのはこの地域だけに存在している調味料が主だった。王国内で出回っている塩は、王国内で採れる岩塩とこのクルスで取れる天日塩の二種類である。塩田とかあるんだ、この世界。
それにしても、この2日目の見学を、私は非常に楽しみにしていた。昨日は途中で道に迷っちゃったせいでろくに見れなかったんだもの。
街に繰り出した私の目に飛び込んできたのは、あふれんばかりのさかな、サカナ、魚。ここがお魚の天国か。
「うっひゃあ~~っ!」
私はつい令嬢らしからぬ声を出してしまう。なにせ、イカやタコまで見つけた上に、しょっつるというかナムプラーというかそういう感じの調味料も発見してしまった。これは買わざるを得ない。それ以外にも魚を何匹か購入。こうとなれば私のやる事は決まっている。とりあえず少なくとも夜まではまともに行動できそうにないので、私は土魔法でキャスター付きの箱を作り、その中に氷魔法で凍らせた魚を突っ込んでいく。魚醤も一緒に放り込んでおく。一瞬でとんでもない事をやってのけた私を、周りが呆然と見つめていた。お魚を箱にしまった私はその様子に気が付いて、「あっ……」となったので笑ってごまかしておいた。説明も面倒だ。
その後も私は野菜とかを適当に購入していき、実にホクホクのままその日の見物を終えたのだった。もちろん、ボンジール商会の買い出しの邪魔はしませんでし、迷子にもなりませんでしたよ。
「お姉様、そんなに買って何をなさるおつもりなのですか?」
私は宿の厨房へとやって来ていた。料理人たちには邪険にされたが強引に一角を確保したのだ。
「まぁ黙って見ててよ、モモ」
私は早速魚を一尾取り出して三枚におろしていく。内臓と骨は魔法も駆使しながらきれいに取り除き、開いた身を水魔法でよく洗う。本当は塩水がいいんだけど仕方ない。そして、風魔法で浮かせて、火魔法と組み合わせながら乾燥させていく。こうしてでき上がったのは、魚の干物だった。うん、記憶を取り戻してから3年以上経つけれど、しっかり前世で身に付けた技術は衰えてなかったわね。
「アンマリア、それは何なのです?」
「殿下、これは魚の干物ですわ。こうして水分を飛ばしておくと日持ちがするようになるのです。干し肉とかと同じ要領ですね」
説明しながら、私は次の作業に映る。野菜を風魔法で切り刻んで塩や砂糖と一緒に煮詰めていく。そう、作っているのはソースだ。この後に作る料理には必須のアイテムである。魔法で反則的に熟成の過程をすっ飛ばし、最後に魚醤を混ぜて完成である。スプーンにひと口分すくって舐めてみると、いい感じの味になっていた。
こうして本番である。卵とキャベツがないからどうしようかとも思ったけれど、そのまま強引に作る事にした。葉物野菜を刻んで王国から持ってきた小麦粉に水を加えて混ぜる。それを鍋に引いた油の上に広げる。鉄板は用意できなかったので仕方がない。そこに先に処理しておいたイカやタコを刻んだものを落としていき焼いていく。鍋は底が深いのでひっくり返すのが大変だけれども、そこは風魔法で強引にひっくり返す。チート様様、チート万歳!
そうして焼き上がったお好み焼きもどきに、さっき作ったソースを塗って完成よ。ああ、ふわっと磯の香りがする。
「どれどれ、ちょっと味見を……」
お好み焼きとは違った作り方をしたので、何かと不安だった私は、とにかく味の確認をする。うん、うまい。ここまでの作業で3時間は費やしていたので、お腹が空いていたせいもあるかも知れないけれどおいしかった。
「お姉様、わ、私にも食べさせて下さい」
「そうですよ、アンマリア。目の前で見せられてお預けとはあんまりです」
モモとフィレン王子が騒いでいる。
「あ、慌てないでよ。もう少し作るから待ってて」
そんなわけで、私の調理に興味を持った料理人ともども、お好み焼きの試食会となってしまった。
「うん、これは名物になるぞ」
「そうだな。干物は確かに日持ちがしそうだし、これならよそへ持って行って売る事ができるな」
料理人たちが大騒ぎとなっている。あー、これは間違いなくやっちゃいましたね。干物って概念は魚には無かったようだった。干し肉があるなら魚にあってもおかしくないんだけどなぁ……。
とまぁこんな感じに、2日目にも私は騒ぎを起こしてしまってので、後で父親たちから相談くらいしろと怒られてしまったのだった。
(あー、お魚最高!)
到着初日の夕食に出てきた焼き魚は、焼き加減が程よく、肉厚でジューシーなものだった。まるで鯛のようなお魚だった。私は大満足よ。
将来のために痩せなきゃいけないけれど、前世以来のお魚とあっては食べなきゃ損よね。本当ならお箸で食べたかったんだけど、この世界にはないからフォークとナイフで器用にキレイに食べてあげたわよ。うん、お魚最高!
さてと、2日目はボンジール商会の買い付けに合わせて街の見学をする事になっている。昨日の事もあってか、私たちは絶対単独で行動するなときつく言われている。……もうしないわよ。
生のお魚は痛みやすいので、ボンジール商会では購入しない。商会が購入するのはこの地域だけに存在している調味料が主だった。王国内で出回っている塩は、王国内で採れる岩塩とこのクルスで取れる天日塩の二種類である。塩田とかあるんだ、この世界。
それにしても、この2日目の見学を、私は非常に楽しみにしていた。昨日は途中で道に迷っちゃったせいでろくに見れなかったんだもの。
街に繰り出した私の目に飛び込んできたのは、あふれんばかりのさかな、サカナ、魚。ここがお魚の天国か。
「うっひゃあ~~っ!」
私はつい令嬢らしからぬ声を出してしまう。なにせ、イカやタコまで見つけた上に、しょっつるというかナムプラーというかそういう感じの調味料も発見してしまった。これは買わざるを得ない。それ以外にも魚を何匹か購入。こうとなれば私のやる事は決まっている。とりあえず少なくとも夜まではまともに行動できそうにないので、私は土魔法でキャスター付きの箱を作り、その中に氷魔法で凍らせた魚を突っ込んでいく。魚醤も一緒に放り込んでおく。一瞬でとんでもない事をやってのけた私を、周りが呆然と見つめていた。お魚を箱にしまった私はその様子に気が付いて、「あっ……」となったので笑ってごまかしておいた。説明も面倒だ。
その後も私は野菜とかを適当に購入していき、実にホクホクのままその日の見物を終えたのだった。もちろん、ボンジール商会の買い出しの邪魔はしませんでし、迷子にもなりませんでしたよ。
「お姉様、そんなに買って何をなさるおつもりなのですか?」
私は宿の厨房へとやって来ていた。料理人たちには邪険にされたが強引に一角を確保したのだ。
「まぁ黙って見ててよ、モモ」
私は早速魚を一尾取り出して三枚におろしていく。内臓と骨は魔法も駆使しながらきれいに取り除き、開いた身を水魔法でよく洗う。本当は塩水がいいんだけど仕方ない。そして、風魔法で浮かせて、火魔法と組み合わせながら乾燥させていく。こうしてでき上がったのは、魚の干物だった。うん、記憶を取り戻してから3年以上経つけれど、しっかり前世で身に付けた技術は衰えてなかったわね。
「アンマリア、それは何なのです?」
「殿下、これは魚の干物ですわ。こうして水分を飛ばしておくと日持ちがするようになるのです。干し肉とかと同じ要領ですね」
説明しながら、私は次の作業に映る。野菜を風魔法で切り刻んで塩や砂糖と一緒に煮詰めていく。そう、作っているのはソースだ。この後に作る料理には必須のアイテムである。魔法で反則的に熟成の過程をすっ飛ばし、最後に魚醤を混ぜて完成である。スプーンにひと口分すくって舐めてみると、いい感じの味になっていた。
こうして本番である。卵とキャベツがないからどうしようかとも思ったけれど、そのまま強引に作る事にした。葉物野菜を刻んで王国から持ってきた小麦粉に水を加えて混ぜる。それを鍋に引いた油の上に広げる。鉄板は用意できなかったので仕方がない。そこに先に処理しておいたイカやタコを刻んだものを落としていき焼いていく。鍋は底が深いのでひっくり返すのが大変だけれども、そこは風魔法で強引にひっくり返す。チート様様、チート万歳!
そうして焼き上がったお好み焼きもどきに、さっき作ったソースを塗って完成よ。ああ、ふわっと磯の香りがする。
「どれどれ、ちょっと味見を……」
お好み焼きとは違った作り方をしたので、何かと不安だった私は、とにかく味の確認をする。うん、うまい。ここまでの作業で3時間は費やしていたので、お腹が空いていたせいもあるかも知れないけれどおいしかった。
「お姉様、わ、私にも食べさせて下さい」
「そうですよ、アンマリア。目の前で見せられてお預けとはあんまりです」
モモとフィレン王子が騒いでいる。
「あ、慌てないでよ。もう少し作るから待ってて」
そんなわけで、私の調理に興味を持った料理人ともども、お好み焼きの試食会となってしまった。
「うん、これは名物になるぞ」
「そうだな。干物は確かに日持ちがしそうだし、これならよそへ持って行って売る事ができるな」
料理人たちが大騒ぎとなっている。あー、これは間違いなくやっちゃいましたね。干物って概念は魚には無かったようだった。干し肉があるなら魚にあってもおかしくないんだけどなぁ……。
とまぁこんな感じに、2日目にも私は騒ぎを起こしてしまってので、後で父親たちから相談くらいしろと怒られてしまったのだった。
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