伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
111 / 500
第三章 学園編

第111話 さあ、始まるわ

しおりを挟む
 煌びやかな内装にこれでもかと並ぶ豪華な料理。転生を理解してから何度目の王宮でのパーティーだろうか。だけれども、今回のパーティーはフィレン王子の誕生日パーティーだ。それゆえに、いつものただの集まりとは雰囲気が違う。
 さすがに王子たちの婚約者が正式決定している現在では、玉の輿をなんていう令嬢はほとんど居ない。私とサキの実力は社交界に結構広まっているのだ。令嬢としての作法などにも問題はない。ただ、私は太っている、サキは男爵家というつけ入る隙はあるのだが、それでもほとんどの令嬢は諦めていた。まあ、無駄な争いがないのは平和で助かるものだ。
 さて、そんな空気の中、私もパーティー会場に顔を出している。父親は大臣としての仕事があるのでやむなく欠席。私の家族は母親とモモの三人で会場に出ていた。王子の誕生日パーティーこんな時なんだから、仕事放っておいても問題ないでしょうに、本当に父親は律儀なんだから。
 さて、乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』でも、この誕生日パーティーはいろいろイベントが起きていた。フィレン王子は3回、リブロ王子は2回あるんだけど、リブロ王子の誕生日は夏休みのターンだから、選択肢によっては完全スルーなのよね。そもそも登場してなければ出てきやしない。それにパーティーに出ても好感度が上がるとは限らないしね。さすが隠しキャラだわ。
 フィレン王子の1回目はほぼ消化イベント。ゲームの時だと遠目に眺めて終わりなんだけど、選択肢次第じゃ一応スチル回収ができるのよ。
 ひとつは、会場の空気に馴染めずに外に行こうとして、そこでモブ令息にぶつかって飛んでいったハンカチが木の枝に引っ掛かるのよね。それをなぜか体を張って自分で取ろうとして、そのまま転落。そして、なぜかそこに居たタンの上に落っこちるというもの。いやよく生きてたわね、タン。
 もうひとつは、ダンスをしようとしてホールで立っていると、カービルに声を掛けられて一緒に踊るっていう奴。彼はデブ専ですものね。まあ、結果としてはゲームのアンマリアは足を踏みまくっていたんだけど、彼は笑顔でいたわね。いやこっちもこっちで「あんた、足大丈夫?」な事案だったわけなんだけどもさ……。
 この時のターンでは最軽量でも100kgを超えている巨体だもの。タンは筋肉があるとはいっても、2階か3階から落っこちてきた巨体を受け止められるわけがないし、いくら靴が踵の低いものとはいってもその体重で踏まれた足が無事なわけがない。まったくゲームってのは都合よくできているわね。
 ちなみに今の私の体重は109kg。少し痩せたわよ。
 それはいいとして、今の私はライバル令嬢たちと話をしているわ。モモは義妹だから当然として、ラム、サクラ、サキの三人は気が付いたら私のところに来ていた。この辺りの関係性もすっかりゲームとは乖離していて、ラムとサクラが結構仲がいい。ゲームでは太った令嬢と脳筋令嬢だからすこぶる相性は悪かったんだけど、今の二人の仲はとても良好よ。
 サクラの教えた運動でラムはものすごく痩せて、それは公爵令嬢たる気品を備えた目のくらむような立派な美少女になっている。多分、エスカが見たら……って、もう学園で見てるわね。紹介もしてあげたもの。しばらくとんでもない叫び声を上げてたっけかな。失礼だと思わないのかしらね。
 ラムとサクラが仲良くなった事で、北西のバッサーシ辺境伯領の状況も好転している。やっぱりバッサーシ辺境伯領産の馬の価値が認められたのかしらね。ラムも馬術を習っているみたいだし、その乗っている馬はバッサーシ辺境伯領産の馬らしいし。
「お姉様?」
「うん、どうしたの、モモ」
 いろいろ考え事をしていると、モモから声を掛けられる。
「先程から何やら考え事をされているみたいですけれど、ちょっと心配になってしまいます」
「ああ、ごめんなさい。殿下にどのタイミングで贈り物を差し上げようかと考えていましてね。婚約者たる私とサキだけの特権ですもの。つい、考えてしまいますわ」
 ほとんど嘘だけれども、やっぱりプレゼントのタイミングというのは大事だものね。
 一応、フィレン王子が出てきて挨拶をした後、婚約者、つまり私たちと踊るタイミングがある。そこで渡すのがいいのだけれど、要は踊る前か踊った後か、どちらがいいのかという話である。まあ、私とサキの交代するタイミングがちょうど良さそうだとは思うんだけどね。ちなみにどちらが王子と先に踊るかというのは聞かされていない。つまりは国王たち次第という事だ。
 ま、どっちでもいいかと思った私は、とりあえずサキに声を掛けておく。すると、サキはそれを快く了承してくれた。
 歓談が交わされている中、突如として音楽が止まる。
 さて、いよいよゲーム本編1回目のフィレン王子の誕生日パーティーが始まるわ。ゲームでは特に事件も何も起きないけれど、ここは現実。イレギュラーな事は起こりうるものね。
 私が警戒に表情を引き締める中、会場のバルコニーに王族たちが姿を現したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...