112 / 292
第三章 学園編
第112話 踊りましょう?
しおりを挟む
サーロイン王国国王、王妃、フィレン王子、リブロ王子、アーサリー・ミール王子、エスカ・ミール王女と、全部で六人の王族の登場は実に圧巻だった。フィレン王子の正装は見慣れているけれど、他のみんなの正装は何気に初めて見る。というか、エスカってば着飾るとあんなに艶めかしいのね。普段の残念王女しか知らないから新鮮だわ。
バルコニーから階段を降りて、檀上に勢ぞろいする王族たち。そこで一度拍手が巻き起こる。ただ、その一方でリブロ王子の状態を見た事により、一部からざわざわとした動揺の声が上がっていた。
「諸君、本日は我が第一子、フィレンの誕生日を祝うために集まってくれた事を、心より嬉しく思う。また、しばらく公の場から身を引いていたリブロも、この通り本日より復帰する事となった。リブロの姿に思うところはあるかも知れないが、本日はフィレンの誕生日を心より祝ってもらいたい」
国王の挨拶に、会場からは拍手が起こる。ただ、それは思ったよりは小さいように思えた。やっぱりリブロ王子の車椅子姿に動揺をしているのだろう。エスカだって横目にじろじろ見ているものね。あなたは前世で何となく目にした事あるでしょうにね。
まあ、こっちの世界では車椅子っていうものにも見慣れていない、というか見た事ないだろうし、騒ぎにはなるわよね。私は心の中でドヤ顔を決めておく。
そうこうしているうちに国王の挨拶が終わり、フィレン王子が一歩前に出ていた。どうやら誕生日を迎える王子からの直接の挨拶のようだわ。
「みなさん、本日は私の誕生日を祝うためにお集まり頂き、誠に感謝申し上げます。これだけ多くの臣民に支えられていると思うと、感謝しかありません。どうぞ、本日は最後までごゆるりと宴を楽しんで頂きたく思います」
フィレン王子が話を終えると、再び拍手が巻き起こる。さて、ここで乾杯に進むかと思ったんだけど、動きを見るにどうも違うっぽい。楽団が音楽の演奏を始めたのだ。
「アンマリア・ファッティ、サキ・テトリバー。前に出てきなさい」
壇の脇に立つ宰相が大きな声で私たちを呼ぶ。
(ああ、ダンスの方が先なのね)
察した私は、すぐ横に居たサキの手を取って、一緒に壇へと向かった。
壇の前までやって来ると、私とサキは揃ってカーテシーをする。痩せているサキのカーテシーはだいぶ美しいのだけれども、私は膝を曲げるのも一苦労だった。涼しい顔をしているけれども、それは魔法のおかげである。ちょっと、今笑った人は覚えておくからね?
私たちがカーテシーをしている間に、フィレン王子が壇から降りてくる。
「親愛なる婚約者たちよ。どうか私と1曲ずつ踊ってくれないかな?」
フィレン王子が跪いて手を差し出す。まさかの行動に会場の令嬢たちが黄色い悲鳴を上げていた。私たちはただただ目を丸くしていた。いやまぁ、跪くとは思っていなかったわね。しかし、いつまでも固まっていられないので、私は肘でこつんとサキを突いた。それで我に返ったサキと共に、
「はい喜んでお受け致します」
と声を揃えて返した。
「アンマリア様、お先にどうぞ」
続けて、サキは私に順番を譲ってくれた。その言葉に甘えて、私はフィレン王子の手を取った。
フィレン王子が立ち上がり、私とのダンスが始まる。
こんな体形だけれども、伯爵令嬢としての教養を見せてあげるわよ。
音楽が流れる中、私とフィレン王子がダンスをする。初めこそなんだかんだと文句を言いたげにしていた観衆たちも、私たちの見事な踊りに黙らざるを得なかった。こちとらハッピーエンド目指して頑張っとるんじゃい!
本気でハッピーエンドを目指しているのはもちろんだけれども、私のこの体形と体重のせいで王子に恥をかかせるわけにはいかないものね。私は風魔法を使ってフィレン王子に負担を掛けないように調整を掛けているんだから。
曲が終わって私たちが踊り終わると、会場からは拍手が巻き起こっていた。ふん、当然よね。そのために努力してきたんだから。
私とフィレン王子は互いに頭を下げて、相手が私からサキへと交代になる。ここでプレゼントをと思ったけれど、ちょっとタイミングが悪すぎた。なので、先に小声で「終わった時に」と伝えておいた。サキもそれに対して頷いた。
さて、サキとフィレン王子のダンスが始まる。曲はさっきと同じようだけれども、サキが踊っているダンスは私のとは違う。財政が立ち直った事で、先にも十分な教育を受けさせる事ができたのだろう。私の優雅なものとは違い、サキのダンスは素朴な感じだった。それでもフィレン王子は慌てないし、うまく先をリードしている。この適応力の高さは、さすが王子といったところだろう。
貧乏男爵家の小娘風情がといった感じに見ていた観衆たちも、サキのダンスには驚いているようだ。まあ、彼女のダンスには私も一枚かんでますものね。聖女としての魔法訓練のついでに、うちの教育を受けさせたんですもの。そりゃ、芋臭くなくなるわよ。
私が自慢げにしている間に、サキとフィレン王子のダンスも終わりを迎える。そして、ダンスが終わった時には、私の時同様、いえ、それ以上の拍手が送られたのだった。く、悔しくなんかないんだからね!
バルコニーから階段を降りて、檀上に勢ぞろいする王族たち。そこで一度拍手が巻き起こる。ただ、その一方でリブロ王子の状態を見た事により、一部からざわざわとした動揺の声が上がっていた。
「諸君、本日は我が第一子、フィレンの誕生日を祝うために集まってくれた事を、心より嬉しく思う。また、しばらく公の場から身を引いていたリブロも、この通り本日より復帰する事となった。リブロの姿に思うところはあるかも知れないが、本日はフィレンの誕生日を心より祝ってもらいたい」
国王の挨拶に、会場からは拍手が起こる。ただ、それは思ったよりは小さいように思えた。やっぱりリブロ王子の車椅子姿に動揺をしているのだろう。エスカだって横目にじろじろ見ているものね。あなたは前世で何となく目にした事あるでしょうにね。
まあ、こっちの世界では車椅子っていうものにも見慣れていない、というか見た事ないだろうし、騒ぎにはなるわよね。私は心の中でドヤ顔を決めておく。
そうこうしているうちに国王の挨拶が終わり、フィレン王子が一歩前に出ていた。どうやら誕生日を迎える王子からの直接の挨拶のようだわ。
「みなさん、本日は私の誕生日を祝うためにお集まり頂き、誠に感謝申し上げます。これだけ多くの臣民に支えられていると思うと、感謝しかありません。どうぞ、本日は最後までごゆるりと宴を楽しんで頂きたく思います」
フィレン王子が話を終えると、再び拍手が巻き起こる。さて、ここで乾杯に進むかと思ったんだけど、動きを見るにどうも違うっぽい。楽団が音楽の演奏を始めたのだ。
「アンマリア・ファッティ、サキ・テトリバー。前に出てきなさい」
壇の脇に立つ宰相が大きな声で私たちを呼ぶ。
(ああ、ダンスの方が先なのね)
察した私は、すぐ横に居たサキの手を取って、一緒に壇へと向かった。
壇の前までやって来ると、私とサキは揃ってカーテシーをする。痩せているサキのカーテシーはだいぶ美しいのだけれども、私は膝を曲げるのも一苦労だった。涼しい顔をしているけれども、それは魔法のおかげである。ちょっと、今笑った人は覚えておくからね?
私たちがカーテシーをしている間に、フィレン王子が壇から降りてくる。
「親愛なる婚約者たちよ。どうか私と1曲ずつ踊ってくれないかな?」
フィレン王子が跪いて手を差し出す。まさかの行動に会場の令嬢たちが黄色い悲鳴を上げていた。私たちはただただ目を丸くしていた。いやまぁ、跪くとは思っていなかったわね。しかし、いつまでも固まっていられないので、私は肘でこつんとサキを突いた。それで我に返ったサキと共に、
「はい喜んでお受け致します」
と声を揃えて返した。
「アンマリア様、お先にどうぞ」
続けて、サキは私に順番を譲ってくれた。その言葉に甘えて、私はフィレン王子の手を取った。
フィレン王子が立ち上がり、私とのダンスが始まる。
こんな体形だけれども、伯爵令嬢としての教養を見せてあげるわよ。
音楽が流れる中、私とフィレン王子がダンスをする。初めこそなんだかんだと文句を言いたげにしていた観衆たちも、私たちの見事な踊りに黙らざるを得なかった。こちとらハッピーエンド目指して頑張っとるんじゃい!
本気でハッピーエンドを目指しているのはもちろんだけれども、私のこの体形と体重のせいで王子に恥をかかせるわけにはいかないものね。私は風魔法を使ってフィレン王子に負担を掛けないように調整を掛けているんだから。
曲が終わって私たちが踊り終わると、会場からは拍手が巻き起こっていた。ふん、当然よね。そのために努力してきたんだから。
私とフィレン王子は互いに頭を下げて、相手が私からサキへと交代になる。ここでプレゼントをと思ったけれど、ちょっとタイミングが悪すぎた。なので、先に小声で「終わった時に」と伝えておいた。サキもそれに対して頷いた。
さて、サキとフィレン王子のダンスが始まる。曲はさっきと同じようだけれども、サキが踊っているダンスは私のとは違う。財政が立ち直った事で、先にも十分な教育を受けさせる事ができたのだろう。私の優雅なものとは違い、サキのダンスは素朴な感じだった。それでもフィレン王子は慌てないし、うまく先をリードしている。この適応力の高さは、さすが王子といったところだろう。
貧乏男爵家の小娘風情がといった感じに見ていた観衆たちも、サキのダンスには驚いているようだ。まあ、彼女のダンスには私も一枚かんでますものね。聖女としての魔法訓練のついでに、うちの教育を受けさせたんですもの。そりゃ、芋臭くなくなるわよ。
私が自慢げにしている間に、サキとフィレン王子のダンスも終わりを迎える。そして、ダンスが終わった時には、私の時同様、いえ、それ以上の拍手が送られたのだった。く、悔しくなんかないんだからね!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
222
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる