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第四章 学園編・1年後半
第169話 学生たちの戦いが始まる
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訓練場の前には、確かに剣術大会の組み合わせ表が貼り出されていた。どうやら剣術大会はトーナメント方式みたいね。
「アンマリア様とは、決勝まで当たらないみたいですね」
サクラがちょっと残念そうな声で言っている。
その声に私がトーナメント表を確認すると、私は第4試合で、サクラは第13試合のようである。全部で参加者は48名で、全部で24試合になるから、確かに、決勝まで行かないと当たらないようだった。
それにしても、学年は3学年あるというのに、剣術大会の参加者は48人と少々少ないように思われる。しかし、これには理由があるようだった。サクラのように武術型に通う令嬢は、サクラとは違って基本的にこういう場を避けるというわけ。傷が付いたらどうたらこうたらっていう、よくある言い訳ね。怪我を負った令嬢は基本的に避けたがるのよ、どこの貴族も。まったく、失礼よね。とはいっても、やはり自分の妻とするのであれば、社交界での体裁を気にしてしまう。それゆえに、傷が付く事を恐れるわけなのである。
一方、男子学生たちも今年は特に敬遠している。
「あー、フィレン殿下の名前もありますわね……」
「タンもありますよ」
そう、攻略対象である二人の存在だった。例年ならこの倍は出ているらしいけれど、さすがに王子や騎士志望の脳筋が居たら敬遠してしまうというわけである。ついでだけれど、ミスミ教官が言っていた通りアーサリーの名前もあったのだが、よりにもよって私の初戦の相手である。なんでよ?!
「よう、アンマリア」
トーナメント表の前で佇む私たちに、声を掛けてくる人物が居た。そちらに顔を向けたらそこに居たのはアーサリーだった。横にはエスカが付き添っている。
「これはアーサリー殿下、エスカ王女殿下」
私たちは普通に挨拶をする。一応学園内では身分差はほとんど関係なくなるとはいえ、やはり王族にはちゃんと敬称はつけないとね。
「アンマリア、初戦でお兄様と当たるなんて幸運ですね」
「おい、エスカ。それはどういう意味で言ってるんだ?!」
エスカがにっこりとしながら私に言うものだから、アーサリーがもの凄くご機嫌斜めになっている。不運じゃなくて幸運とか言うなんて、場外乱闘でも始めさせるつもりかしら。
「大体だ。こんな太った相手に、俺が後れを取るとでも言うのか?」
アーサリーは怒りが収まらないのか、妹であるエスカにさらに詰め寄っている。だというのに、エスカは素知らぬ顔で立っていた。なんて強心臓なのよ、この子。
しかし、エスカは怒るアーサリーに謝るどころか、
「そこまで言うのでしたら、お兄様。剣術大会でアンマリアに勝てばよろしいのですわ。ふふっ、強いと仰るのでしたら、簡単な事でしょう?」
さらにアーサリーを煽る始末である。ちょっとエスカ。その煽りは私にとばっちりが来るんですけど?
この兄妹のやり取りには、さすがの私も呆れるしかなかった。というか、なんでサクラは笑ってるのでしょうかね。他人事だと思ってませんかね。
「こ……の……っ!」
さすがに妹であるエスカを人前で殴れないのか、アーサリーはものすごく葛藤に苛まれている。ここは私が一肌脱ぎましょう。エスカ、後で覚えてらっしゃい。
「アーサリー殿下。エスカ王女殿下に好き勝手言われてお怒りなのはごもっともですが、でしたら、それを私との戦いにぶつけて下さいませ。私も全力で応えてみせますわ」
私の言葉に、アーサリーの眉がぴくりと動く。
「ほほお、言ってくれたな! 分かった、全力でお前を叩きのめしてくれる。後悔するなよ?」
「おほほほ、私とて簡単に負けるとは思っておりませんわ。戦場であるなら男も女も関係ありません。ぜひとも全力で戦って下さいませ」
もはや売り言葉に買い言葉である。だからといっても、私は手加減する気などまったくなかった。ええ、全力で泣かしてやりますとも。私とアーサリーとの間で火花がバチバチと飛び散っている。
「アンマリア様。そろそろ闘技場へと向かいませんと。開会式が始まってしまいます」
サクラが慌てて私に声を掛けてくる。その声に反応した私は、周りの学生たちがぞろぞろと闘技場に向かっていく姿を確認した。
「あら、もうそんな時間ですのね。分かりました、すぐに向かいましょう、サクラ様」
「ほら、お兄様も行ってらっしゃい。私は貴賓席で見学させて頂きますから」
私たちが歩き始めた後ろで、アーサリーがエスカにどんと押されていた。本当にそれじゃ、とても王子王女の行動に見えませんよ。気を付けて下さい、二人とも。
そんなこんなで、いろいろとトラブルがあったものの、無事に私たちは闘技場へとやって来た。
まだ剣術大会が始まる前だというのに、会場である闘技場の外から盛り上がりは最高潮だった。よく見れば賭け事をしている姿があったのだけど、学園内は賭け事禁止なのよね。即刻通報ですわよ。
私たちは参加者の入口から闘技場へと入り、開会式の会場へとたどり着く。
闘技場の真ん中には八角形の結界が用意されており、それが戦いの舞台となるようである。ルール上は魔法は身体強化を含めて一切禁止ではあるものの、興奮した選手から魔法が放たれる事もしばしばあるようで、それを防ぐために結界が張られているのだそうだ。ちなみに、この結界から出た場合も負けになるらしく、どうやら相撲の土俵のようなもののようだった。
というか、開会式の前から発動させてどうするつもりなのかしら。と思っていたら、私たち大会の参加者は結界の中に入れられる。魔法を使っていれば結界の中には入れないらしいので、最初の不正チェックみたいだった。
私たち参加者が全員結界に入ると、いよいよ剣術大会の開会式が始まるのだった。
「アンマリア様とは、決勝まで当たらないみたいですね」
サクラがちょっと残念そうな声で言っている。
その声に私がトーナメント表を確認すると、私は第4試合で、サクラは第13試合のようである。全部で参加者は48名で、全部で24試合になるから、確かに、決勝まで行かないと当たらないようだった。
それにしても、学年は3学年あるというのに、剣術大会の参加者は48人と少々少ないように思われる。しかし、これには理由があるようだった。サクラのように武術型に通う令嬢は、サクラとは違って基本的にこういう場を避けるというわけ。傷が付いたらどうたらこうたらっていう、よくある言い訳ね。怪我を負った令嬢は基本的に避けたがるのよ、どこの貴族も。まったく、失礼よね。とはいっても、やはり自分の妻とするのであれば、社交界での体裁を気にしてしまう。それゆえに、傷が付く事を恐れるわけなのである。
一方、男子学生たちも今年は特に敬遠している。
「あー、フィレン殿下の名前もありますわね……」
「タンもありますよ」
そう、攻略対象である二人の存在だった。例年ならこの倍は出ているらしいけれど、さすがに王子や騎士志望の脳筋が居たら敬遠してしまうというわけである。ついでだけれど、ミスミ教官が言っていた通りアーサリーの名前もあったのだが、よりにもよって私の初戦の相手である。なんでよ?!
「よう、アンマリア」
トーナメント表の前で佇む私たちに、声を掛けてくる人物が居た。そちらに顔を向けたらそこに居たのはアーサリーだった。横にはエスカが付き添っている。
「これはアーサリー殿下、エスカ王女殿下」
私たちは普通に挨拶をする。一応学園内では身分差はほとんど関係なくなるとはいえ、やはり王族にはちゃんと敬称はつけないとね。
「アンマリア、初戦でお兄様と当たるなんて幸運ですね」
「おい、エスカ。それはどういう意味で言ってるんだ?!」
エスカがにっこりとしながら私に言うものだから、アーサリーがもの凄くご機嫌斜めになっている。不運じゃなくて幸運とか言うなんて、場外乱闘でも始めさせるつもりかしら。
「大体だ。こんな太った相手に、俺が後れを取るとでも言うのか?」
アーサリーは怒りが収まらないのか、妹であるエスカにさらに詰め寄っている。だというのに、エスカは素知らぬ顔で立っていた。なんて強心臓なのよ、この子。
しかし、エスカは怒るアーサリーに謝るどころか、
「そこまで言うのでしたら、お兄様。剣術大会でアンマリアに勝てばよろしいのですわ。ふふっ、強いと仰るのでしたら、簡単な事でしょう?」
さらにアーサリーを煽る始末である。ちょっとエスカ。その煽りは私にとばっちりが来るんですけど?
この兄妹のやり取りには、さすがの私も呆れるしかなかった。というか、なんでサクラは笑ってるのでしょうかね。他人事だと思ってませんかね。
「こ……の……っ!」
さすがに妹であるエスカを人前で殴れないのか、アーサリーはものすごく葛藤に苛まれている。ここは私が一肌脱ぎましょう。エスカ、後で覚えてらっしゃい。
「アーサリー殿下。エスカ王女殿下に好き勝手言われてお怒りなのはごもっともですが、でしたら、それを私との戦いにぶつけて下さいませ。私も全力で応えてみせますわ」
私の言葉に、アーサリーの眉がぴくりと動く。
「ほほお、言ってくれたな! 分かった、全力でお前を叩きのめしてくれる。後悔するなよ?」
「おほほほ、私とて簡単に負けるとは思っておりませんわ。戦場であるなら男も女も関係ありません。ぜひとも全力で戦って下さいませ」
もはや売り言葉に買い言葉である。だからといっても、私は手加減する気などまったくなかった。ええ、全力で泣かしてやりますとも。私とアーサリーとの間で火花がバチバチと飛び散っている。
「アンマリア様。そろそろ闘技場へと向かいませんと。開会式が始まってしまいます」
サクラが慌てて私に声を掛けてくる。その声に反応した私は、周りの学生たちがぞろぞろと闘技場に向かっていく姿を確認した。
「あら、もうそんな時間ですのね。分かりました、すぐに向かいましょう、サクラ様」
「ほら、お兄様も行ってらっしゃい。私は貴賓席で見学させて頂きますから」
私たちが歩き始めた後ろで、アーサリーがエスカにどんと押されていた。本当にそれじゃ、とても王子王女の行動に見えませんよ。気を付けて下さい、二人とも。
そんなこんなで、いろいろとトラブルがあったものの、無事に私たちは闘技場へとやって来た。
まだ剣術大会が始まる前だというのに、会場である闘技場の外から盛り上がりは最高潮だった。よく見れば賭け事をしている姿があったのだけど、学園内は賭け事禁止なのよね。即刻通報ですわよ。
私たちは参加者の入口から闘技場へと入り、開会式の会場へとたどり着く。
闘技場の真ん中には八角形の結界が用意されており、それが戦いの舞台となるようである。ルール上は魔法は身体強化を含めて一切禁止ではあるものの、興奮した選手から魔法が放たれる事もしばしばあるようで、それを防ぐために結界が張られているのだそうだ。ちなみに、この結界から出た場合も負けになるらしく、どうやら相撲の土俵のようなもののようだった。
というか、開会式の前から発動させてどうするつもりなのかしら。と思っていたら、私たち大会の参加者は結界の中に入れられる。魔法を使っていれば結界の中には入れないらしいので、最初の不正チェックみたいだった。
私たち参加者が全員結界に入ると、いよいよ剣術大会の開会式が始まるのだった。
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