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第四章 学園編・1年後半
第171話 女だからって舐めないで
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闘技場の廊下まで下がったところで、私はようやくアーサリーを下ろす。そのアーサリーの顔は悔しさと恥ずかしさでものすごく複雑な顔をしていた。その状態のまま控室まで戻ってくると、どういうわけかエスカがそこに待ち構えていた。
「やっぱり負けましたわね、お兄様」
「エスカ、お前……」
いきなり煽るものだから、アーサリーの表情がものすごく怖い事になっている。
「だから言いましたのに。アンマリアを甘く見ない方がいいのですわよ。何て言ってもヒロインなのですから」
エスカが意味不明な単語を言い放つ。
「なんだ、そのヒロインってのは」
「おっと、これは失礼しましたわ。アンマリアが洗礼式で得た恩恵の事ですわよ」
エスカはアーサリーに向かって囁くように言っているのだけれど、真横に居る私には丸聞こえだった。だけども、他の学生は反応していないので、とりあえずは大丈夫そうだった。まったく、いきなりなんて事を言うのかしらね。
洗礼式は国ごとに行われるんだけど、その内容って国外には極秘なんだけどなぁ……。これ、他人に知られたらまずいですわよ。
「エスカ、エスカ」
私は小声で呼ぶ。
「なんでしょうか、アンマリア」
エスカがにこにこしながら寄ってくる。
「エスカ、サーロイン王国の洗礼式の内容は国外に極秘ですわよ。エスカが知っていたら、友人関係にある私にいろいろ疑いが掛かるんですけど?」
私がそう言うと、エスカはきょとんとしていた。あっ、これ知らない流れだ。
「えっ、そうだったの? ごめん、前世の知識のせいでつい喋っちゃったわ」
少し間を開けて、ようやくエスカは我に返ったようだった。王女モードを忘れてタメ口で私に謝ってきていた。
「それにしても、アンマリアはさすがですね。魔法なしでもしっかりとした戦えるんですもの」
そして、すぐに切り替えて、王女モードでしっかりと私を褒めまくってきた。図太いわね。
「アンマリア様」
私たちが話をしていると、サクラが話し掛けてきた。
「サクラ様。もうしばらくしたら試合ですね。ご武運を祈っております」
「ありがとうございます、アンマリア様。アンマリア様の戦いを見ていたら、俄然私も燃えてきました」
私が言葉を返すと、サクラはものすごく気合いが入っていたようだった。バッサーシ辺境伯の血筋ゆえに負けられないから、気合いの入り方が断然違っていた。
「サクラ・バッサーシ、そろそろ試合です」
話をあまりできないうちに、サクラを呼ぶ声が聞こえてきた。思ったより早いペースで試合が消化されていっているようである。
「畏まりました、すぐに向かいます」
サクラは反応して、すぐさま装備を整えた。
「それでは、アンマリア様。行ってまいりますね」
「頑張って下さいね、サクラ様」
私たちはそう言葉を交わすと、私はエスカとアーサリーを連れて観客席の方へと移動するのだった。
今日は1回戦だけしか行われないとはいっても、思ったより展開が早い。私たちが観客席に到着した頃には、もう12試合目が終わっていた。つまり、ちょうどいいタイミングで観客席に到着できたのである。
「よかった、ちょうどこれからですわね」
「1回戦第13試合、サクラ・バッサーシ対ターレ・ヒデンの試合を行います!」
秘伝たれって……、酷いネーミングね。とはいえ、ヒデン子爵家もそれなりに歴史の古い家柄である。とはいえど、武術に関してはバッサーシ辺境伯と比べるとどうしても劣ってしまう。はてさて、ターレはサクラの攻撃に耐えられるかしらね。
「始め!」
こうして、サクラ対ターレの試合が始まる。
「くそう、バッサーシと当たるとは、俺もついてない」
対戦相手のターレは開始早々愚痴を言っている。
「だが、相手は女だ。負けるわけにはいかない!」
そう言って走り出すターレ。
「相手は女と見て甘く見ていますか。情けない」
一方のサクラはものすごく落ち着いていた。如何なる時でも落ち着いて対処するのがバッサーシの心得なのだ。
「やああっ!」
距離を詰めて斬り掛かってくるターレだが、サクラはいまだに棒立ちである。そして、その距離が無くなった瞬間だった。
「かはっ……!」
ターレが握っていた剣を落とし、そのまま膝から崩れ落ちてしまったのである。一瞬過ぎて誰もが何が起こったのか分からない。だが、サクラはターレの背後に立っていた。
「あれは、ホント一瞬でしたわね」
「アンマリア? 私見えませんでしたよ」
「ああ、俺もまったく分からなかった」
どうやら王子王女のどちらもサクラの動きを追えなかったようである。
「サクラ様は相手が振り下ろす瞬間に相手を薙ぎ払っています。その証拠があの移動です。その気になればその場から一歩も動かずに倒す事もできたでしょうね」
私の説明に、エスカもアーサリーも首を捻っている。まったく理解できていないようだった。まあ、それも無理はないのかも知れない。なにせ立っているサクラの剣は腰に当てがったままなのだから。つまり、サクラは目にもとまらぬ速さで剣を抜き、ターレの脇腹に一撃を食らわせ、そして剣を直したという事になるのだ。
(このサクラ様が、順調に行けば決勝の相手……。これは燃えますわ!)
「勝者、サクラ・バッサーシ!」
圧倒的強さで相手を倒したサクラ。会場からは割れんばかりの歓声が上がる。
これにはミスミ教官も満足と思ったのだが、貴賓席に座るミスミ教官の顔は険しかった。身内ゆえの厳しい評価という事なのだろう。さすが戦いに身を置く一族だと思った。
まあそれでも、友人が無事に初戦を突破したという事で、私は嬉しい気持ちでサクラに拍手を送っていた。
「やっぱり負けましたわね、お兄様」
「エスカ、お前……」
いきなり煽るものだから、アーサリーの表情がものすごく怖い事になっている。
「だから言いましたのに。アンマリアを甘く見ない方がいいのですわよ。何て言ってもヒロインなのですから」
エスカが意味不明な単語を言い放つ。
「なんだ、そのヒロインってのは」
「おっと、これは失礼しましたわ。アンマリアが洗礼式で得た恩恵の事ですわよ」
エスカはアーサリーに向かって囁くように言っているのだけれど、真横に居る私には丸聞こえだった。だけども、他の学生は反応していないので、とりあえずは大丈夫そうだった。まったく、いきなりなんて事を言うのかしらね。
洗礼式は国ごとに行われるんだけど、その内容って国外には極秘なんだけどなぁ……。これ、他人に知られたらまずいですわよ。
「エスカ、エスカ」
私は小声で呼ぶ。
「なんでしょうか、アンマリア」
エスカがにこにこしながら寄ってくる。
「エスカ、サーロイン王国の洗礼式の内容は国外に極秘ですわよ。エスカが知っていたら、友人関係にある私にいろいろ疑いが掛かるんですけど?」
私がそう言うと、エスカはきょとんとしていた。あっ、これ知らない流れだ。
「えっ、そうだったの? ごめん、前世の知識のせいでつい喋っちゃったわ」
少し間を開けて、ようやくエスカは我に返ったようだった。王女モードを忘れてタメ口で私に謝ってきていた。
「それにしても、アンマリアはさすがですね。魔法なしでもしっかりとした戦えるんですもの」
そして、すぐに切り替えて、王女モードでしっかりと私を褒めまくってきた。図太いわね。
「アンマリア様」
私たちが話をしていると、サクラが話し掛けてきた。
「サクラ様。もうしばらくしたら試合ですね。ご武運を祈っております」
「ありがとうございます、アンマリア様。アンマリア様の戦いを見ていたら、俄然私も燃えてきました」
私が言葉を返すと、サクラはものすごく気合いが入っていたようだった。バッサーシ辺境伯の血筋ゆえに負けられないから、気合いの入り方が断然違っていた。
「サクラ・バッサーシ、そろそろ試合です」
話をあまりできないうちに、サクラを呼ぶ声が聞こえてきた。思ったより早いペースで試合が消化されていっているようである。
「畏まりました、すぐに向かいます」
サクラは反応して、すぐさま装備を整えた。
「それでは、アンマリア様。行ってまいりますね」
「頑張って下さいね、サクラ様」
私たちはそう言葉を交わすと、私はエスカとアーサリーを連れて観客席の方へと移動するのだった。
今日は1回戦だけしか行われないとはいっても、思ったより展開が早い。私たちが観客席に到着した頃には、もう12試合目が終わっていた。つまり、ちょうどいいタイミングで観客席に到着できたのである。
「よかった、ちょうどこれからですわね」
「1回戦第13試合、サクラ・バッサーシ対ターレ・ヒデンの試合を行います!」
秘伝たれって……、酷いネーミングね。とはいえ、ヒデン子爵家もそれなりに歴史の古い家柄である。とはいえど、武術に関してはバッサーシ辺境伯と比べるとどうしても劣ってしまう。はてさて、ターレはサクラの攻撃に耐えられるかしらね。
「始め!」
こうして、サクラ対ターレの試合が始まる。
「くそう、バッサーシと当たるとは、俺もついてない」
対戦相手のターレは開始早々愚痴を言っている。
「だが、相手は女だ。負けるわけにはいかない!」
そう言って走り出すターレ。
「相手は女と見て甘く見ていますか。情けない」
一方のサクラはものすごく落ち着いていた。如何なる時でも落ち着いて対処するのがバッサーシの心得なのだ。
「やああっ!」
距離を詰めて斬り掛かってくるターレだが、サクラはいまだに棒立ちである。そして、その距離が無くなった瞬間だった。
「かはっ……!」
ターレが握っていた剣を落とし、そのまま膝から崩れ落ちてしまったのである。一瞬過ぎて誰もが何が起こったのか分からない。だが、サクラはターレの背後に立っていた。
「あれは、ホント一瞬でしたわね」
「アンマリア? 私見えませんでしたよ」
「ああ、俺もまったく分からなかった」
どうやら王子王女のどちらもサクラの動きを追えなかったようである。
「サクラ様は相手が振り下ろす瞬間に相手を薙ぎ払っています。その証拠があの移動です。その気になればその場から一歩も動かずに倒す事もできたでしょうね」
私の説明に、エスカもアーサリーも首を捻っている。まったく理解できていないようだった。まあ、それも無理はないのかも知れない。なにせ立っているサクラの剣は腰に当てがったままなのだから。つまり、サクラは目にもとまらぬ速さで剣を抜き、ターレの脇腹に一撃を食らわせ、そして剣を直したという事になるのだ。
(このサクラ様が、順調に行けば決勝の相手……。これは燃えますわ!)
「勝者、サクラ・バッサーシ!」
圧倒的強さで相手を倒したサクラ。会場からは割れんばかりの歓声が上がる。
これにはミスミ教官も満足と思ったのだが、貴賓席に座るミスミ教官の顔は険しかった。身内ゆえの厳しい評価という事なのだろう。さすが戦いに身を置く一族だと思った。
まあそれでも、友人が無事に初戦を突破したという事で、私は嬉しい気持ちでサクラに拍手を送っていた。
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