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第四章 学園編・1年後半
第181話 いろいろと不発でした
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「さて、できましたわ」
うどんが茹で上がる。それにしても器がないのでどうしようかと頭を悩ませた。なにせ、器を確保しに行った王子たちの侍従が戻ってこないのだから。
そこで何を思ったのか、私は土魔法と火魔法を使って、さっさと陶器を作ってしまったのだった。
「あ、アンマリア? 今どこから器とフォークを?」
「私が魔法で作りました。形がイメージできれば魔法でどうにかなってしまうみたいです」
私の説明に口をぽかんと開ける王子たち。あれ、何か変な事を言ったかしら。
「いや、イメージでどうにかなるものだけど、普通はそんなに簡単に作れはしませんよ」
あーそういう事ね。私は王子の言いたい事を理解した。
魔法がイメージなのは一般的によく知られている事である。だけれども、そのイメージ通りに魔法を行使するとなると、それなりの熟練度を要求されるのである。それを13歳の私がいとも簡単にやってのけたので、フィレン王子もリブロ王子も驚いているという事なのだろう。
だが、そんな事は今はどうでもいいわけで、私はまずは自分でうどんの味を確認してみる。うん、魚から取っただしだけなので少し物足りない気はするものの、それでも確かにうどんだった。もう少しコシが欲しかったところだけれど、ど素人の作るうどんにそこまで求めてはいけないわね。
「では、フィレン殿下、リブロ殿下。お味を見て下さいませ」
私は二人の分のうどんを用意すると、先程うどんを打っていた台の上の一部をきれいにしてそこで食すように促した。
「テトリバー男爵領の小麦と、バッサーシ辺境伯領の塩、それとミール王国の魚の共演ですわよ。ささ、お召し上がりになって下さいな」
私がずずいっと勧めると、フィレン王子とリブロ王子は困ったような顔をして見合った後、仕方なくうどんをすすり始めた。
まだあどけなさの残る13歳と12歳の王子が一生懸命にうどんをすする姿に、私はちょっと顔をにやけさせてしまう。だけども、周りに人が居る状態でそんな顔を見られるわけにもいかないので、私はすぐさま無表情へと戻す。
「うん、意外とおいしいようだ」
「この白くて細長い食べ物、思ったより弾力がありますね」
そこそこ好感触のように思える。
「これはうどんという、小麦粉を塩水を混ぜて捏ねたものでございます。味付けもそれほど濃くありませんし、噛まなくても飲み込めるというのが特徴なんですよ」
「へえ、面白ですね」
フォークに刺したうどんを見ながら、フィレン王子はうどんをまじまじと見ている。
「パスタとの違いは小麦粉がそもそも違う事と、塩の有無ですね。うどんもパスタのような味付けはできますけれど、塩を使っているのでその分味付けは要注意です。塩分が濃くなってしまいますから」
私がうどんとパスタの違いを説明しているのだけれど、うん、二人とも興味がないという感じのようね。王子様だから仕方ないかしらね。
「それは分かったけれど、アンマリア。なぜうどんというものを作ろうと思ったのかな?」
フィレン王子が私に確認をしてきた。そりゃ突然未知なる食品を作っていれば、気にもなりますよね。
「それは、ギーモ商会長がテトリバー男爵家の小麦をそのまま持ってきたからです。どういったものか分からないのなら、売りようがないではないですか。だから、それをシンプルに味わえるうどんを作ったというわけです。ちょうど調理に使えるコンロも売っていますから」
「なるほど……」
私の説明にフィレン王子は納得をしているし、リブロ王子の方は興味深く私を見ている。
商会の売り場の中を確認すると、小麦の袋はやっぱり山積みになっていた。商談が成立していれば印がつけられるはずなのだが、それもないみたいなので売れていないようである。
「お待たせ致しました、殿下」
ガラガラと台車を押しながら従者が戻ってくる。台車にはたくさんの器とフォークが載せられている。おそらくは学園の食堂からもらってきたものだろう。
「ありがとうございます。それでは、テトリバー産の小麦粉を使ったうどんの試食会を始めますわ」
ぐつぐつとお湯を沸かしてだしを取り始める私。一部の客の鼻にその香りが到達すると、徐々に私の方へと視線が集まり始めた。
「ボンジール商会で扱います、テトリバー男爵領産の小麦を使った食品の試食を行いますわ。ぜひとも気に入って頂きましたらお買い求め下さいませ」
濃くないだし汁は、素材の味をあまり邪魔しないので、小麦の味をシンプルに味わえるはずである。私はにっこりと微笑みながらうどんを振る舞ったのだった。
だがしかし、それほどの評価は得られたような感じではなかった。うどんの珍しさが勝ちすぎたのだ。それでも、小麦と塩と魚の宣伝ができたので、まあいいのではないのだろうか。実際、小麦はあれから何件か商談成立していたようだし。
「まったく、アンマリアとは不思議な女性だね」
その様子を見ていたフィレン王子からこんな事を言われた私は、
「そうですわよ。ちょっと不思議なところがあった方が、惹かれませんこと?」
ちょっと意地悪な感じで笑っておいたのだった。
うどんの試食なんてなんで思いついたのか、振り返ってみればよく分からなかった。それでも、それなりにボンジール商会の出店は盛り上がったのでヨシですわ!
そんな感じで、よく分からないうちに3日目が終わったのだった。
そういえばあまり言いたくない話ですけれど、この日の夜に久しぶりにステータスを確認しましたら、体重が2kgも増えてましたわ。訳が分かりませんわよ!
現在のアンマリアの体重[99kg]!
うどんが茹で上がる。それにしても器がないのでどうしようかと頭を悩ませた。なにせ、器を確保しに行った王子たちの侍従が戻ってこないのだから。
そこで何を思ったのか、私は土魔法と火魔法を使って、さっさと陶器を作ってしまったのだった。
「あ、アンマリア? 今どこから器とフォークを?」
「私が魔法で作りました。形がイメージできれば魔法でどうにかなってしまうみたいです」
私の説明に口をぽかんと開ける王子たち。あれ、何か変な事を言ったかしら。
「いや、イメージでどうにかなるものだけど、普通はそんなに簡単に作れはしませんよ」
あーそういう事ね。私は王子の言いたい事を理解した。
魔法がイメージなのは一般的によく知られている事である。だけれども、そのイメージ通りに魔法を行使するとなると、それなりの熟練度を要求されるのである。それを13歳の私がいとも簡単にやってのけたので、フィレン王子もリブロ王子も驚いているという事なのだろう。
だが、そんな事は今はどうでもいいわけで、私はまずは自分でうどんの味を確認してみる。うん、魚から取っただしだけなので少し物足りない気はするものの、それでも確かにうどんだった。もう少しコシが欲しかったところだけれど、ど素人の作るうどんにそこまで求めてはいけないわね。
「では、フィレン殿下、リブロ殿下。お味を見て下さいませ」
私は二人の分のうどんを用意すると、先程うどんを打っていた台の上の一部をきれいにしてそこで食すように促した。
「テトリバー男爵領の小麦と、バッサーシ辺境伯領の塩、それとミール王国の魚の共演ですわよ。ささ、お召し上がりになって下さいな」
私がずずいっと勧めると、フィレン王子とリブロ王子は困ったような顔をして見合った後、仕方なくうどんをすすり始めた。
まだあどけなさの残る13歳と12歳の王子が一生懸命にうどんをすする姿に、私はちょっと顔をにやけさせてしまう。だけども、周りに人が居る状態でそんな顔を見られるわけにもいかないので、私はすぐさま無表情へと戻す。
「うん、意外とおいしいようだ」
「この白くて細長い食べ物、思ったより弾力がありますね」
そこそこ好感触のように思える。
「これはうどんという、小麦粉を塩水を混ぜて捏ねたものでございます。味付けもそれほど濃くありませんし、噛まなくても飲み込めるというのが特徴なんですよ」
「へえ、面白ですね」
フォークに刺したうどんを見ながら、フィレン王子はうどんをまじまじと見ている。
「パスタとの違いは小麦粉がそもそも違う事と、塩の有無ですね。うどんもパスタのような味付けはできますけれど、塩を使っているのでその分味付けは要注意です。塩分が濃くなってしまいますから」
私がうどんとパスタの違いを説明しているのだけれど、うん、二人とも興味がないという感じのようね。王子様だから仕方ないかしらね。
「それは分かったけれど、アンマリア。なぜうどんというものを作ろうと思ったのかな?」
フィレン王子が私に確認をしてきた。そりゃ突然未知なる食品を作っていれば、気にもなりますよね。
「それは、ギーモ商会長がテトリバー男爵家の小麦をそのまま持ってきたからです。どういったものか分からないのなら、売りようがないではないですか。だから、それをシンプルに味わえるうどんを作ったというわけです。ちょうど調理に使えるコンロも売っていますから」
「なるほど……」
私の説明にフィレン王子は納得をしているし、リブロ王子の方は興味深く私を見ている。
商会の売り場の中を確認すると、小麦の袋はやっぱり山積みになっていた。商談が成立していれば印がつけられるはずなのだが、それもないみたいなので売れていないようである。
「お待たせ致しました、殿下」
ガラガラと台車を押しながら従者が戻ってくる。台車にはたくさんの器とフォークが載せられている。おそらくは学園の食堂からもらってきたものだろう。
「ありがとうございます。それでは、テトリバー産の小麦粉を使ったうどんの試食会を始めますわ」
ぐつぐつとお湯を沸かしてだしを取り始める私。一部の客の鼻にその香りが到達すると、徐々に私の方へと視線が集まり始めた。
「ボンジール商会で扱います、テトリバー男爵領産の小麦を使った食品の試食を行いますわ。ぜひとも気に入って頂きましたらお買い求め下さいませ」
濃くないだし汁は、素材の味をあまり邪魔しないので、小麦の味をシンプルに味わえるはずである。私はにっこりと微笑みながらうどんを振る舞ったのだった。
だがしかし、それほどの評価は得られたような感じではなかった。うどんの珍しさが勝ちすぎたのだ。それでも、小麦と塩と魚の宣伝ができたので、まあいいのではないのだろうか。実際、小麦はあれから何件か商談成立していたようだし。
「まったく、アンマリアとは不思議な女性だね」
その様子を見ていたフィレン王子からこんな事を言われた私は、
「そうですわよ。ちょっと不思議なところがあった方が、惹かれませんこと?」
ちょっと意地悪な感じで笑っておいたのだった。
うどんの試食なんてなんで思いついたのか、振り返ってみればよく分からなかった。それでも、それなりにボンジール商会の出店は盛り上がったのでヨシですわ!
そんな感じで、よく分からないうちに3日目が終わったのだった。
そういえばあまり言いたくない話ですけれど、この日の夜に久しぶりにステータスを確認しましたら、体重が2kgも増えてましたわ。訳が分かりませんわよ!
現在のアンマリアの体重[99kg]!
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