伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
222 / 500
第五章 2年目前半

第222話 続々・聖女育成計画

しおりを挟む
 翌日、学園に登校した私は、モモと一緒にサキに会いに行く。
 すると、すっかり調子が戻って元気になったサキが学園に登校していた。
「サキ様、すっかり調子はよろしいようですね」
「これはアンマリア様。ええ、もうすっかり元気です」
 たったの2日で全快するとは、さすが聖女といったところかしら。すぐさま私も処置をしたし、こうやって見ていると間違っていなかったんだなと再認識する。
 サキも無事に回復して、これで一応は学園生活は元に戻った。
 なんだかんだでサキもクラスでは人気があるようで、周りにはそれなりに親しい友人が居るようである。王子の婚約者と聖女という2つの肩書があるからこそ、サキの周りには人が集まっているところがある。これがただの男爵令嬢だったら、はたしてこうなっていたのかは疑問に思えた。
 まあそんな事はさておいて、私はサキに話し掛ける。
「サキ様、全快祝いにお渡ししたいものがございますの。よろしいでしょうか」
 私が話し掛けると、サキに群がっていた友人たちはさっと蜘蛛の子を散らしたかのように去っていく。なんか怯えたように走っていくその姿に、私は表情を曇らせた。
「何なのですか、あれは……。まるで魔物でも見たかのように走っていくなんて、どうかしていますわ」
「アンマリア様、恐れられていますね」
「はあ、なんでそうなるのかしら」
 私は理解できないといった感じにため息を吐く。するとモモが横からツッコミを入れてくる。
「ふふっ、お姉様ったらその体格ですし、去年魔法型の所属ながらも剣術大会であそこまで善戦されたんですもの。普通の方々からしたら恐れ多くなるのは当然だと思います」
 モモが笑いながら言うものだから、私はどういった反応をしていいのかものすごく困ってしまった。何と言っても可愛い妹だからね。
 それはそれとして、気を取り直して私は改めてサキに話し掛ける。
「ちょっと予想外な事をされてしまったので話が逸れてしまいましたね。改めて全快祝いの贈り物をお受け取り下さいな」
「アンマリア様、一体何を下さるのでしょうか」
 私の言葉に、サキがもの凄くわくわくしているのが分かる。だって、目が輝いているんですもの。
「そ、そんな期待するほどのものでもありませんよ。ほら、これです」
 ずいっという圧力が強いサキに、私は落ち着かせるように言いながらその贈り物を取り出す。
「何でしょうか、これは」
 サキがきょとんとした顔をしている。そのサキの目の前に出てきたもの、それはエスカに言って形状を変えてもらったサキ専用の杖だった。
 本来なら光と氷の属性を持つサキとは相性の悪い、エスカの闇とモモの火の魔法を使って仕上げた杖だけど、そこに私がひとつまみの工夫を加えて問題がないようにしておいた。
 そうやってでき上がった杖は、材料はトレント木材とはいえ、きれいな乳白色の見事な一品に仕上がっていた。長さとしてはナイフ程度なので、そこそこ細長い。
「まあ、きれいです、アンマリア様。いいんですか、これを私が頂いてしまって」
 サキからは感嘆の声が漏れていた。
「いいのですよ、サキ様。この杖なんですが、トレント木材という魔力と親和性の高い木材を使っています。念じながら魔力を通す事で、いろいろな姿に変える事ができますのよ」
 私はそう言って、誕生日にもらった棒切れ状のトレント木材を取り出した。
「通常のトレント木材でしたら、一度魔力を通して変形させると、二度と形が変わらなくなるのですが、これはちょっと訳が違いますのよ」
 私がここまで言いかけたところで、ホームルームの鐘が鳴る。
「あら、時間ですね。それではお昼休みにでもゆっくりお話をしましょうか」
「はい、承知しました、アンマリア様」
「私も同席致しますね」
 私の言葉に返事をするサキと、乗っかってくるモモ。
 というわけで、私たちは昼休みに改めて三人で会って話をする事になった。

 昼休みを迎え、賑やかな学食の一角に三人で席を囲む。食事をしながら簡単に説明をするためだ。
「今朝、サキ様にお渡しした杖は、エスカ王女殿下とモモの二人で作り上げた特殊な杖なのです」
「ええ?! そんなものを、頂いてしまっていいのですか?」
 私が単刀直入に告げた事実に、サキはものすごく驚いている。モモはまだしもエスカが関わっているせいだろう。
「構いません。サキ様を魔法に関して鍛えるには、これが最適だと思われますのでね」
 強く言い切る私。私の言葉に、サキは黙って今朝渡された杖をじっと見てる。
「この杖は二人の魔法によって特別に作られたものでして、魔力を通す事で様々なものに姿を変えられるのです。しかも、何度でもです」
「まあ……!」
 地球でなら質量保存の法則やエネルギー保存の法則よって変形の制限が掛かってしまうような事も、魔法があればまったく問題がない。魔力という媒体によって、そんなものなどどうとでもできてしまうからだ。
「ですので、このトレント木材の杖を使って、サキ様には更なる魔法の訓練をして頂きたいのです。あのような無茶をされて、命の危険に晒されてしまうのはもう終わりにしてしまいましょう」
 私はまるで何かを企んでいるかのような鋭い目で笑うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...