231 / 500
第五章 2年目前半
第231話 国王からの報告と依頼
しおりを挟む
サクラの誕生日パーティーの翌日、私はまたお城に呼ばれた。ちなみにエスカも同席している。エスカはお城が苦手なのか露骨に嫌な顔をしていた。
国王たちと顔を合わせる私とエスカ。
話の内容としては、先日の痩せる呪いについての調査経過の話だった。本当は昨日のあの場で済ませたかったらしいのだが、貴族たちがかなり群がってしまい、やむなく今日に引き延ばしたというわけである。
そんなわけで、私たちはこうやって城に呼び出されたわけだった。
「よく来てくれたな、アンマリア、エスカ」
やって来たのは国王の執務室だった。その国王の前には膨大な量の書類が積み上がっている。まったく、国王というのも忙しい職業である。玉座で踏ん反りがえっているイメージがあったのだけど、改めなきゃいけないわよね。
「ご機嫌麗しゅうございます、国王陛下」
私とエスカは揃ってカーテシーをする。
「うむ、体格の割には相変わらず美しい所作よな」
国王、体格の話はしないで下さいな。それよりも本題プリーズ。
「今回呼んだのは、すでに知らせた通り、平民街で起きた食堂に掛けられた呪いの一件だ」
国王は単刀直入に話を始める。
そして、この調査の結論から言うと、具体的な成果は得られなかったらしい。
サキによって呪いは完全に解けていたし、魔法の痕跡を追おうとしても、どうやらかなり複雑なものだったらしくて追跡不可能だったようなのだ。
それ以外にも食堂やその周辺に聞き込みも行ったらしいのだが、その線からも情報はまったく得られなかった。
そんなわけで、王国としてはもうお手上げ状態だったらしい。
「そうですか……。それは残念でございますね」
「そうですわね。私たちの魔法で気付けなかったわけですし、サキの聖女としての力がなければ看破は難しかったですものね」
私もエスカも、肩を落としてしまう。
「そう、聖女の力を使ってはどうかという意見も出たんだがな。あの一件で体調を著しく崩してしまった以上、無茶はさせられまいて。その意見はやむなく却下したのだよ」
「賢明かと存じます。せっかく現れた聖女なのですから、簡単に失いたくはございませんもの」
国王の判断を支持する私。
「これだけの時間が経っている以上、犯人は既に王都に居ないかも知れん。危険かも知れないが、これ以上の調査は不可能と判断させてもらった。二人はこれで構わないかね」
「問題ございません。もし何かあれば、私たち自身で解決してみせます」
国も忙しいだろうから、これ以上手を煩わせるのはよくないという判断である。これもまあ仕方のない話だった。
「そうか、すまなかったな。力不足がために不安を解消できなかった事を謝罪しよう」
頭は下げないが、まさかの謝罪の言葉である。私たちはものすごく驚いてしまう。
「いえいえ、とんでもございません、陛下」
「そ、そうですよ。このアンマリアの魔法でも無理なのですから、そこまで卑下にならないで下さいませ」
必死にフォローしようとするものの、もうめちゃくちゃであった。そのせいか、国王がついぞ笑い始めてしまった。あーあ、やっちゃったなこれ。
「ふふっ、実に面白い子たちだ」
はい、面白い子頂きましたー。
「それはそうと、突然話を変えるが……」
調査結果で終わりだと思ったら、国王は何か別の話題を切り出してきた。今度は何よ。
「ミスミ・バッサーシから聞いたが、面白いものを作ったそうだな。見せてもらっても構わないか?」
国王の切り出した話題に、私たちは口をパクパクさせている。口外するなと言ったじゃないですかー?
「実はその光景を見てしまってな。私としてもものすごく興味を持ったのだよ。ミスミ・バッサーシからは無理やり聞き出したから、彼女は責めないでくれ」
「むぅ……」
国王にこう言われてしまえば、私たちは黙るしかなかった。てか、あの時のやり取りを国王に見られてたのか……。これは他の貴族にも見られた可能性があるわね。
私は素直に反省した。
反省を終えると、他言無用でお願いしますと私はエスカから送られた木の棒を取り出した。
「ふむ、ただの棒切れだな。これがその面白いものなのか?」
「左様でございます。魔力を籠める事で形を変えられるトレント木材を使った一品となります。エスカ王女殿下の努力の末誕生した、魔力で何回も形を変える棒でございます」
「ほう、それはすごいな!」
国王の食いつきが凄かった。
国王からの要望に応えて、私は棒切れを何種類もの姿に変化させていた。杖に剣にハリセンに鞭に、それはもう元の形に戻らないんじゃないかというくらい変形させてみた。ところが、それでも棒切れは最終的に棒切れの姿に戻っていた。驚くべき形状記憶木材。エスカの発想の恐ろしさであった。
「これは間違いなくほしいところだな。護衛騎士が付くとはいっても、いざという時に間に合わない可能性がある。そういう時に手持ちを装備に変えられるのなら素早い対応ができそうだな」
確かにそうだ。王族は命を狙われる可能性を持っているのだ。だから、いざというための護身のための技術を身に付けている。だが、武器などがなければそれも無駄になる可能性がある。そういう時にいち早く手にできる装備品というのは切なるものなのだった。
「……承知致しました。自分のを含めて、王族の方々の分はなんとかしてみましょう」
エスカはやむなくその依頼を引き受けたのだった。
国王たちと顔を合わせる私とエスカ。
話の内容としては、先日の痩せる呪いについての調査経過の話だった。本当は昨日のあの場で済ませたかったらしいのだが、貴族たちがかなり群がってしまい、やむなく今日に引き延ばしたというわけである。
そんなわけで、私たちはこうやって城に呼び出されたわけだった。
「よく来てくれたな、アンマリア、エスカ」
やって来たのは国王の執務室だった。その国王の前には膨大な量の書類が積み上がっている。まったく、国王というのも忙しい職業である。玉座で踏ん反りがえっているイメージがあったのだけど、改めなきゃいけないわよね。
「ご機嫌麗しゅうございます、国王陛下」
私とエスカは揃ってカーテシーをする。
「うむ、体格の割には相変わらず美しい所作よな」
国王、体格の話はしないで下さいな。それよりも本題プリーズ。
「今回呼んだのは、すでに知らせた通り、平民街で起きた食堂に掛けられた呪いの一件だ」
国王は単刀直入に話を始める。
そして、この調査の結論から言うと、具体的な成果は得られなかったらしい。
サキによって呪いは完全に解けていたし、魔法の痕跡を追おうとしても、どうやらかなり複雑なものだったらしくて追跡不可能だったようなのだ。
それ以外にも食堂やその周辺に聞き込みも行ったらしいのだが、その線からも情報はまったく得られなかった。
そんなわけで、王国としてはもうお手上げ状態だったらしい。
「そうですか……。それは残念でございますね」
「そうですわね。私たちの魔法で気付けなかったわけですし、サキの聖女としての力がなければ看破は難しかったですものね」
私もエスカも、肩を落としてしまう。
「そう、聖女の力を使ってはどうかという意見も出たんだがな。あの一件で体調を著しく崩してしまった以上、無茶はさせられまいて。その意見はやむなく却下したのだよ」
「賢明かと存じます。せっかく現れた聖女なのですから、簡単に失いたくはございませんもの」
国王の判断を支持する私。
「これだけの時間が経っている以上、犯人は既に王都に居ないかも知れん。危険かも知れないが、これ以上の調査は不可能と判断させてもらった。二人はこれで構わないかね」
「問題ございません。もし何かあれば、私たち自身で解決してみせます」
国も忙しいだろうから、これ以上手を煩わせるのはよくないという判断である。これもまあ仕方のない話だった。
「そうか、すまなかったな。力不足がために不安を解消できなかった事を謝罪しよう」
頭は下げないが、まさかの謝罪の言葉である。私たちはものすごく驚いてしまう。
「いえいえ、とんでもございません、陛下」
「そ、そうですよ。このアンマリアの魔法でも無理なのですから、そこまで卑下にならないで下さいませ」
必死にフォローしようとするものの、もうめちゃくちゃであった。そのせいか、国王がついぞ笑い始めてしまった。あーあ、やっちゃったなこれ。
「ふふっ、実に面白い子たちだ」
はい、面白い子頂きましたー。
「それはそうと、突然話を変えるが……」
調査結果で終わりだと思ったら、国王は何か別の話題を切り出してきた。今度は何よ。
「ミスミ・バッサーシから聞いたが、面白いものを作ったそうだな。見せてもらっても構わないか?」
国王の切り出した話題に、私たちは口をパクパクさせている。口外するなと言ったじゃないですかー?
「実はその光景を見てしまってな。私としてもものすごく興味を持ったのだよ。ミスミ・バッサーシからは無理やり聞き出したから、彼女は責めないでくれ」
「むぅ……」
国王にこう言われてしまえば、私たちは黙るしかなかった。てか、あの時のやり取りを国王に見られてたのか……。これは他の貴族にも見られた可能性があるわね。
私は素直に反省した。
反省を終えると、他言無用でお願いしますと私はエスカから送られた木の棒を取り出した。
「ふむ、ただの棒切れだな。これがその面白いものなのか?」
「左様でございます。魔力を籠める事で形を変えられるトレント木材を使った一品となります。エスカ王女殿下の努力の末誕生した、魔力で何回も形を変える棒でございます」
「ほう、それはすごいな!」
国王の食いつきが凄かった。
国王からの要望に応えて、私は棒切れを何種類もの姿に変化させていた。杖に剣にハリセンに鞭に、それはもう元の形に戻らないんじゃないかというくらい変形させてみた。ところが、それでも棒切れは最終的に棒切れの姿に戻っていた。驚くべき形状記憶木材。エスカの発想の恐ろしさであった。
「これは間違いなくほしいところだな。護衛騎士が付くとはいっても、いざという時に間に合わない可能性がある。そういう時に手持ちを装備に変えられるのなら素早い対応ができそうだな」
確かにそうだ。王族は命を狙われる可能性を持っているのだ。だから、いざというための護身のための技術を身に付けている。だが、武器などがなければそれも無駄になる可能性がある。そういう時にいち早く手にできる装備品というのは切なるものなのだった。
「……承知致しました。自分のを含めて、王族の方々の分はなんとかしてみましょう」
エスカはやむなくその依頼を引き受けたのだった。
7
あなたにおすすめの小説
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる