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第五章 2年目前半
第239話 防がれたトラブル
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パーティー会場に最初に姿を現したのは、サーロイン王国第二王子リブロ・サーロイン、ミール王国王子アーサリー・ミール、ベジタリウス王国王子レッタス・ベジタリウス、ベジタリウス王国王女ミズーナ・ベジタリウスの四人だった。
フィレン王子は主役だし、エスカは私の隣に立っている。だからこそ、登場したのは四人というわけだった。
ところが、エスカが居ない事に、一部の貴族が騒ぎ始めた。エスカが一般貴族と同じように入場した事を知らないのである。それに気が付いたのか、エスカはふらふらっと前へと出ていった。
そして、他の王族たちと横並びになると、ちょとんとスカートの裾をつまんで挨拶をしていた。本当にエスカは自由だった。だけど、エスカがひょっこりを姿を現した事で、会場に集まった貴族たちは安心したようだった。
そのエスカの様子にアーサリーは不機嫌な表情を浮かべていたが、他のみんなは一様に笑っていたようである。
こうして和やかになったところで、満を持して今夜の主役が登場する。
「フィレン・サーロイン第一王子の入場です!」
宰相の声が響き渡り、会場はより一層静まり返る。
会場内の貴族たちが見守る中、国王と王妃を伴いながら、フィレン王子が現れた。さすがに14歳ともなればイケメンでかっこいいものである。弟のリブロ王子は可愛い系だ。まったく、なんて絵になる王子たちなのだろうか。
私は面食いではないけれど、この王子たちにはつい見惚れてしまうものだった。
そして、会場の中央まで進んできたフィレン王子たち。国王と王妃は玉座に座り、フィレン王子は一歩前に歩み出た。
「みなさん、私の誕生日パーティーにお集まり頂き、感謝致します。王国の民たちに愛されている事を改めて感じ、みなさんに祝福される事を喜ばしく思います」
フィレン王子のスピーチである。私はその言葉に聞き入っていた。隣に居るモモは泣いているし、サキなんて倒れそうな勢いでうっとりしている。やめて、倒れないで!
どうにかサキを必死に支えながら、フィレン王子のスピーチを聞く私たち。本当に、この王子様ったら破壊力が凄すぎる。よくよく見てみれば、サキと同じように王子の魅力にやられている令嬢たちがちらほら見える。大丈夫なのかしらね、このパーティー……。これはさすがに心配になってしまうわね。
ひやひやしたフィレン王子のスピーチだったけれど、どうにか令嬢の大量失神とかいう最悪の事態は逃れた模様。
(みんな、やめなさいよ。婚約者持ちなんだからね)
私は心の中で叫んでいた。
とはいえ、あれだけ顔も性格もよい王子となると、みんなが心酔するのはよく分かる。だからといっても、惚れるだの好きになるだのとなればまた別の問題。正式な婚約者が居るのだから大問題なのよ。本当に、貴族子女って惚れっぽいみたいね。私は正直頭が痛かった。
スピーチが終われば、いよいよ乾杯である。
子どもはお酒が飲めないので、フィレン王子の手にあるグラスの中身は果汁である。
「私の誕生日のお祝いを感謝する。サーロイン王国の更なる繁栄に乾杯!」
「乾杯!」
こうして無事に乾杯が終わる。
だが、この時私は妙な雰囲気を感じた。誰かが不敵に笑ったような気がするのだ。
なるほど、この乾杯の飲み物に毒を仕込んだってわけね。その感覚に私はすぐに直感した。
ところが、乾杯が終わってしばらくダンスなども行われたのだが、何も起きる気配はない。それもそうだろう、私たちの力によって城に持ち込まれただろう毒物はすべて無毒化したのだから。
「お父様、お父様、ちょっとよろしいですか?」
「どうしたんだい、マリー」
「どうやら、毒を仕込んだと思われる人物が会場内に居るみたいなんです。変な魔力を感じましたから、間違いないかと」
私からそう言われた父親は、驚いた顔をする。すると、それを肯定するようにサキが続いた。
「はい、私も感じましたね。ただ、その人物は今はまともに動けないと思います。この会場を包み込む魔法に影響されているでしょうから」
サキが話した会場を包み込む魔法というのは、私とミズーナ王女によって掛けられた防護魔法の事である。悪意があればこの魔法によって弾き出されるという代物なのだけど、最初からその魔法の中に居れば、影響は小さいのである。
だけど、今回この場で悪意を発動した事で、その魔法の影響を受け始めたというわけなのよ。今頃は会場のどこかでうずくまっているはず。私とサキの言葉で、父親は会場の中を当該人物を探して移動を始めた。
すると、会場の一角で椅子に座っている人物が発見された。顔色は悪い。
「ロートント男爵、一体どうされたのですかな?」
父親が声を掛けたのは、ローロント男爵という私の父親の部下の男だった。
「すまない、酒に酔ったようだ。しばらく休んでいれば大丈夫だと思うので、ファッティ伯爵、このままそっとしておいてほしい」
「そうか。この程度の酒で酔うとは、すっかり酒に弱くなったな、ロートント男爵」
ロートント男爵の言い分をとりあえず信じて、その場はそのままにしておく父親。だが、近くに居た使用人や兵士たちに、ロートント男爵の動きを見張るように話をしておいた。
フィレン王子の誕生日パーティーは、特に混乱なく無事に終わる事ができたのだった。
フィレン王子は主役だし、エスカは私の隣に立っている。だからこそ、登場したのは四人というわけだった。
ところが、エスカが居ない事に、一部の貴族が騒ぎ始めた。エスカが一般貴族と同じように入場した事を知らないのである。それに気が付いたのか、エスカはふらふらっと前へと出ていった。
そして、他の王族たちと横並びになると、ちょとんとスカートの裾をつまんで挨拶をしていた。本当にエスカは自由だった。だけど、エスカがひょっこりを姿を現した事で、会場に集まった貴族たちは安心したようだった。
そのエスカの様子にアーサリーは不機嫌な表情を浮かべていたが、他のみんなは一様に笑っていたようである。
こうして和やかになったところで、満を持して今夜の主役が登場する。
「フィレン・サーロイン第一王子の入場です!」
宰相の声が響き渡り、会場はより一層静まり返る。
会場内の貴族たちが見守る中、国王と王妃を伴いながら、フィレン王子が現れた。さすがに14歳ともなればイケメンでかっこいいものである。弟のリブロ王子は可愛い系だ。まったく、なんて絵になる王子たちなのだろうか。
私は面食いではないけれど、この王子たちにはつい見惚れてしまうものだった。
そして、会場の中央まで進んできたフィレン王子たち。国王と王妃は玉座に座り、フィレン王子は一歩前に歩み出た。
「みなさん、私の誕生日パーティーにお集まり頂き、感謝致します。王国の民たちに愛されている事を改めて感じ、みなさんに祝福される事を喜ばしく思います」
フィレン王子のスピーチである。私はその言葉に聞き入っていた。隣に居るモモは泣いているし、サキなんて倒れそうな勢いでうっとりしている。やめて、倒れないで!
どうにかサキを必死に支えながら、フィレン王子のスピーチを聞く私たち。本当に、この王子様ったら破壊力が凄すぎる。よくよく見てみれば、サキと同じように王子の魅力にやられている令嬢たちがちらほら見える。大丈夫なのかしらね、このパーティー……。これはさすがに心配になってしまうわね。
ひやひやしたフィレン王子のスピーチだったけれど、どうにか令嬢の大量失神とかいう最悪の事態は逃れた模様。
(みんな、やめなさいよ。婚約者持ちなんだからね)
私は心の中で叫んでいた。
とはいえ、あれだけ顔も性格もよい王子となると、みんなが心酔するのはよく分かる。だからといっても、惚れるだの好きになるだのとなればまた別の問題。正式な婚約者が居るのだから大問題なのよ。本当に、貴族子女って惚れっぽいみたいね。私は正直頭が痛かった。
スピーチが終われば、いよいよ乾杯である。
子どもはお酒が飲めないので、フィレン王子の手にあるグラスの中身は果汁である。
「私の誕生日のお祝いを感謝する。サーロイン王国の更なる繁栄に乾杯!」
「乾杯!」
こうして無事に乾杯が終わる。
だが、この時私は妙な雰囲気を感じた。誰かが不敵に笑ったような気がするのだ。
なるほど、この乾杯の飲み物に毒を仕込んだってわけね。その感覚に私はすぐに直感した。
ところが、乾杯が終わってしばらくダンスなども行われたのだが、何も起きる気配はない。それもそうだろう、私たちの力によって城に持ち込まれただろう毒物はすべて無毒化したのだから。
「お父様、お父様、ちょっとよろしいですか?」
「どうしたんだい、マリー」
「どうやら、毒を仕込んだと思われる人物が会場内に居るみたいなんです。変な魔力を感じましたから、間違いないかと」
私からそう言われた父親は、驚いた顔をする。すると、それを肯定するようにサキが続いた。
「はい、私も感じましたね。ただ、その人物は今はまともに動けないと思います。この会場を包み込む魔法に影響されているでしょうから」
サキが話した会場を包み込む魔法というのは、私とミズーナ王女によって掛けられた防護魔法の事である。悪意があればこの魔法によって弾き出されるという代物なのだけど、最初からその魔法の中に居れば、影響は小さいのである。
だけど、今回この場で悪意を発動した事で、その魔法の影響を受け始めたというわけなのよ。今頃は会場のどこかでうずくまっているはず。私とサキの言葉で、父親は会場の中を当該人物を探して移動を始めた。
すると、会場の一角で椅子に座っている人物が発見された。顔色は悪い。
「ロートント男爵、一体どうされたのですかな?」
父親が声を掛けたのは、ローロント男爵という私の父親の部下の男だった。
「すまない、酒に酔ったようだ。しばらく休んでいれば大丈夫だと思うので、ファッティ伯爵、このままそっとしておいてほしい」
「そうか。この程度の酒で酔うとは、すっかり酒に弱くなったな、ロートント男爵」
ロートント男爵の言い分をとりあえず信じて、その場はそのままにしておく父親。だが、近くに居た使用人や兵士たちに、ロートント男爵の動きを見張るように話をしておいた。
フィレン王子の誕生日パーティーは、特に混乱なく無事に終わる事ができたのだった。
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