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第五章 2年目前半
第246話 荒れ狂う海
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私とミズーナ王女は、闇夜の中宙に浮きながら魔物の気配を探る。
「アンマリア、魔物の気配を正確に感じ取れますか?」
「ちょっとなんとも言えないわね。ただ、海の方向からというのだけは分かるわ」
私とミズーナ王女しか居ないので、私の言葉遣いが少々タメ口だ。
ミール王国の海の特徴なのか、魔力の波動が乱れているせいでうまく魔物の気配が感知できなかった。そのせいでおおよその方向しか分からない。種類や数の特定となると厳しかったのだ。
それでも、この建国祭最大のイベントを邪魔されるわけにはいかないので、私とミズーナ王女は空中で魔物を迎え撃つ事にした。
しばらくすると、海から波の音が聞こえ始めてきた。
「この音……、来たようですよ、アンマリア!」
「そうみたいね!」
波の音と同時に、地響きの音まで聞こえ始める。空中に居るせいで分かりにくいけれど、心なしか空気も揺れているようだ。
「防壁展開OK。いっちょぶっぱなしてやりますか!」
私は後方に影響が及ばないように地面から防壁魔法を展開する。そして、手を前に差し出すと、その手から雷がほとばしる。これはクッケン湖でケルピーを撃破した時と同じものよ。
「サンダーウェイヴ!」
私の手から放たれた雷が海面を走っていく。だけど、さすがにクッケン湖とはわけが違った。
「ありゃりゃ……。広すぎて雷が散ってしまってるわ」
思ったよりも雷の霧散が早すぎて、数えられる程度の魔物しか倒せなかったようだった。
だけど、これがいい感じに魔物たちの気を引いたようだった。
「油断しないで、アンマリア!」
ミズーナ王女の叫びで、私はハッとする。改めて状況を確認すると、大きな音が私たち目がけて進んできているのが分かる。
「まったく、こんなところで死ぬわけにはいかないわよ!」
私は改めて魔法を放とうとする。しかし、ミール王国の海の不思議な感覚のせいか、距離感が完全に狂っていた。
次の瞬間、私の真下から魔物が襲い掛かってくる。
「なっ、しまった!」
海面から跳び上がってくる魔物に、私は反応が遅れてしまう。
「ウィンドカッター!」
次の瞬間、ミズーナ王女の風魔法が魔物を襲う。あっという間に魔物は切り刻まれてしまい、私はなんとか無事だった。
「大丈夫かしら、アンマリア」
「ええ、大丈夫です。ありがとう、ミズーナ」
ミズーナ王女が私の元へやって来て、私たちは背中合わせになる。死角を極力減らすためだった。
「まったく、この海には魔力がこもっているみたいで、うまく感知できませんね」
「やっぱりそうだったのね。普段ならさっきのなんか楽に反応できたのに」
ギリッと爪を噛む私。さすがにこうも調子を狂わされると腹が立ってきてしまう。
正直、建国祭を行っている会場に知られないように済ませたかったのだけども、これだけ感覚や調子が狂っていると、それはものすごく難しそうだった。
「変に遠慮すると、私たちがやられちゃいそうね。ミズーナ、いっちょ派手にやっちゃう?」
「そうですね、やっちゃいますか」
私の働きかけに乗っかるミズーナ王女である。こんなところでバッドエンドなんて引いてたまるもんですか。
死にたくないという必死な思いと、お祭りを邪魔させてたまるかという使命感で、私たちは魔物たちへと立ち向かう。
ゲームでの戦闘シーンというものには、属性の相性というものがある。それに従えば、水属性の攻撃は水属性の魔物には通用しない。
だけど、現実であるならどうか。
そう思った私は、思い切った魔法を使う事にした。
「水よ切り刻め! メイルシュトローム!」
そう、水の大渦を巻き起こす魔法、メイルシュトロームだった。
「そっか、水魔法は通常通じないけど、物理的な圧力で押し切ろうってわけね」
瞬時に理解するミズーナ王女である。すると、私に負けてられないと、ミズーナ王女も大技の準備にかかった。
「今はゲームなら1年目だから大した魔法は使えないだろうけど、現実というのなら習得条件なんて無視できるわね!」
何を使うつもりなのだろうか。水魔法を維持しながらも、私に嫌な予感が走る。
「うふふふ。お姫様に転生したせいで、前世のうっ憤が再燃しちゃったのよね。だから、魔物たちに八つ当たりしてあげるわ!」
ものすごく怖い顔をしていると思われるけど、私は魔法を維持しているので振り向けなかった。怖いわけじゃないからね。
「アンマリアが海の魔物を相手しているのですから、私は空のあなたたちを潰してあげますよ!」
次の瞬間、ミズーナ王女の体が緑色に光る。風の属性を表す光だった。
「巻き起これ嵐、すべてを飲み込め! テンペスト!」
ミズーナ王女がそう叫んだ瞬間、会場にたくさんの竜巻が現れる。ちなみに、私の使った魔法もミズーナ王女の使った魔法も、オリジナルのゲームには存在しない。どこかで拾ってきたゲームの知識なのよ。
だけども、海底から空中まで所狭しと巻き起こる渦巻きに、魔物たちはひとたまりもなく飲み込まれていく。
(あっちゃー。多分これ、大騒ぎになってるわねよ……)
自分たちで巻き起こしておきながらも、冷や汗をかきながらそう思う私。
だけど、そう思っている間にも、魔物たちは渦に飲み込まれて海の藻屑となっていったのだった。
「アンマリア、魔物の気配を正確に感じ取れますか?」
「ちょっとなんとも言えないわね。ただ、海の方向からというのだけは分かるわ」
私とミズーナ王女しか居ないので、私の言葉遣いが少々タメ口だ。
ミール王国の海の特徴なのか、魔力の波動が乱れているせいでうまく魔物の気配が感知できなかった。そのせいでおおよその方向しか分からない。種類や数の特定となると厳しかったのだ。
それでも、この建国祭最大のイベントを邪魔されるわけにはいかないので、私とミズーナ王女は空中で魔物を迎え撃つ事にした。
しばらくすると、海から波の音が聞こえ始めてきた。
「この音……、来たようですよ、アンマリア!」
「そうみたいね!」
波の音と同時に、地響きの音まで聞こえ始める。空中に居るせいで分かりにくいけれど、心なしか空気も揺れているようだ。
「防壁展開OK。いっちょぶっぱなしてやりますか!」
私は後方に影響が及ばないように地面から防壁魔法を展開する。そして、手を前に差し出すと、その手から雷がほとばしる。これはクッケン湖でケルピーを撃破した時と同じものよ。
「サンダーウェイヴ!」
私の手から放たれた雷が海面を走っていく。だけど、さすがにクッケン湖とはわけが違った。
「ありゃりゃ……。広すぎて雷が散ってしまってるわ」
思ったよりも雷の霧散が早すぎて、数えられる程度の魔物しか倒せなかったようだった。
だけど、これがいい感じに魔物たちの気を引いたようだった。
「油断しないで、アンマリア!」
ミズーナ王女の叫びで、私はハッとする。改めて状況を確認すると、大きな音が私たち目がけて進んできているのが分かる。
「まったく、こんなところで死ぬわけにはいかないわよ!」
私は改めて魔法を放とうとする。しかし、ミール王国の海の不思議な感覚のせいか、距離感が完全に狂っていた。
次の瞬間、私の真下から魔物が襲い掛かってくる。
「なっ、しまった!」
海面から跳び上がってくる魔物に、私は反応が遅れてしまう。
「ウィンドカッター!」
次の瞬間、ミズーナ王女の風魔法が魔物を襲う。あっという間に魔物は切り刻まれてしまい、私はなんとか無事だった。
「大丈夫かしら、アンマリア」
「ええ、大丈夫です。ありがとう、ミズーナ」
ミズーナ王女が私の元へやって来て、私たちは背中合わせになる。死角を極力減らすためだった。
「まったく、この海には魔力がこもっているみたいで、うまく感知できませんね」
「やっぱりそうだったのね。普段ならさっきのなんか楽に反応できたのに」
ギリッと爪を噛む私。さすがにこうも調子を狂わされると腹が立ってきてしまう。
正直、建国祭を行っている会場に知られないように済ませたかったのだけども、これだけ感覚や調子が狂っていると、それはものすごく難しそうだった。
「変に遠慮すると、私たちがやられちゃいそうね。ミズーナ、いっちょ派手にやっちゃう?」
「そうですね、やっちゃいますか」
私の働きかけに乗っかるミズーナ王女である。こんなところでバッドエンドなんて引いてたまるもんですか。
死にたくないという必死な思いと、お祭りを邪魔させてたまるかという使命感で、私たちは魔物たちへと立ち向かう。
ゲームでの戦闘シーンというものには、属性の相性というものがある。それに従えば、水属性の攻撃は水属性の魔物には通用しない。
だけど、現実であるならどうか。
そう思った私は、思い切った魔法を使う事にした。
「水よ切り刻め! メイルシュトローム!」
そう、水の大渦を巻き起こす魔法、メイルシュトロームだった。
「そっか、水魔法は通常通じないけど、物理的な圧力で押し切ろうってわけね」
瞬時に理解するミズーナ王女である。すると、私に負けてられないと、ミズーナ王女も大技の準備にかかった。
「今はゲームなら1年目だから大した魔法は使えないだろうけど、現実というのなら習得条件なんて無視できるわね!」
何を使うつもりなのだろうか。水魔法を維持しながらも、私に嫌な予感が走る。
「うふふふ。お姫様に転生したせいで、前世のうっ憤が再燃しちゃったのよね。だから、魔物たちに八つ当たりしてあげるわ!」
ものすごく怖い顔をしていると思われるけど、私は魔法を維持しているので振り向けなかった。怖いわけじゃないからね。
「アンマリアが海の魔物を相手しているのですから、私は空のあなたたちを潰してあげますよ!」
次の瞬間、ミズーナ王女の体が緑色に光る。風の属性を表す光だった。
「巻き起これ嵐、すべてを飲み込め! テンペスト!」
ミズーナ王女がそう叫んだ瞬間、会場にたくさんの竜巻が現れる。ちなみに、私の使った魔法もミズーナ王女の使った魔法も、オリジナルのゲームには存在しない。どこかで拾ってきたゲームの知識なのよ。
だけども、海底から空中まで所狭しと巻き起こる渦巻きに、魔物たちはひとたまりもなく飲み込まれていく。
(あっちゃー。多分これ、大騒ぎになってるわねよ……)
自分たちで巻き起こしておきながらも、冷や汗をかきながらそう思う私。
だけど、そう思っている間にも、魔物たちは渦に飲み込まれて海の藻屑となっていったのだった。
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