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第七章 3年目前半
第358話 無事解決?
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それはあっという間のできごとだった。
アルーの魔法を食らったテトロは少し言葉を吐き捨てると、そのまま沈黙してしまった。そして、さらさらと灰になって崩れ、溶けるように消えてしまったのだ。
その姿を、メチルはただただ無表情に眺めていた。
「イスンセ?!」
近くまで駆け寄ってきていた女性が、その場に倒れ込んでいた男に声を掛けている。どうやら、この男は魔族であるテトロに体を乗っ取られていたようだった。
その横では、メチルがただ呆然と立っていた。相手が魔族とはいえども、初めて誰かを手に掛けるというのは厳しかったようだった。
「メチル……」
さすがの私も、掛ける声がない。おそらくは私と同じ日本人だろうから、こんな経験はまずありえないものね。
そんな中、フィレン王子とリブロ王子が立ち上がる。
「魔族は討たれた。衛兵、賊を拘束し、皆の無事を確認してくれ」
「はっ」
王子たちの命令に、兵士たちがすぐに行動を起こす。気を失っている侵入者たちを次々と拘束して引き連れていく。
もちろん、真ん中で気絶している男と女性も拘束される。女性はおとなしく捕まっていたが、兵士に声を掛けている。
「王妃様たちに謝罪をしたい。いいだろうか」
困った兵士たちは、フィレン王子たちに視線を向けている。するとフィレン王子もリブロ王子も意外とすんなりと許可していた。
「感謝する」
頭を下げた女性は、兵士に付き添われてベジタリウス王妃の元へと歩いていく。
「クガリ……」
「王妃様、大変申し訳ございませんでした。知らなかったとはいえ、魔族の手先として使われていたこと、お詫びのしようもございません」
クガリの謝罪を黙って聞いているベジタリウス王妃やミズーナ王女たち。
「極刑も甘んじてお受け致します。本当にこれまでお世話になりました」
そして、今度は会場に向けてくるりと振り返る。
「サーロイン王国の者たちよ、本当にすまなかった。大事なパーティーを台無しにしてしまって、その償いはきちんと取ろう」
クガリはそう言うと、付き添う兵士たちにも頭を下げる。そして、そのまま他の侵入者たち同様、会場の外へと連れ出されていったのだった。
どうにか平穏を取り戻したパーティー会場内だが、さすがにさっきまで侵入者との戦闘が行われていたので、パーティーを再開というわけにはいかなかった。
しかし、その一方で外が安全とも限らないので、このまま参加者たちを帰すわけにはいかない。国王たちは頭を悩ませていた。
(それもそうでしょうね。あれだけ多くの侵入者を許したわけだものね。これは事情を説明しなければいけないわね)
そう考えた私は、サキとメチルに目で合図を送る。そして、国王の居る場所へと近付いていった。
「国王陛下、パーティーを続行致しましょう。外は兵士に警戒させればいいですし」
「しかし、あれだけの賊に入られたのだぞ? 安心できるわけがない」
国王は当然のように言葉を返してきた。まぁそうなりますわよね。
だけど、私たちはここで種明かしをする。ミズーナ王女にも来てもらって事情説明開始よ。
「恐れ入ります、サーロイン国王陛下」
「なんだね、ミズーナよ」
ミズーナ王女の声に反応する国王。
「賊が侵入した経緯について、ご説明致します」
ミズーナ王女はそう告げた後、私たちの方を見る。私たちは揃って首を縦に振る。
「実は、今日の結界はわざと緩め、いえ、解いておりました」
「な、なんだと?! どういう事だ、それは」
国王の怒号が飛ぶ。まぁ、それは仕方ないし覚悟していたから、声の大きさだけに驚いた。
「こちらに居るメチルが魔族が来る事を感知しておりまして、そのためにわざと結界を解いて誘い込みました。その代わりに、戦える方々を会場の周囲に配備しておきましたからね」
「それは事実か」
国王が大声で確認を取ってくるので、私たちは揃って大きく頷いておく。黙っていたのは悪かったけど、敵を欺くためにもわざと知らせなかったのよね。侵入作戦が成功したと思わせるためにね。
すべてを話し終わった時、国王は酷く頭を抱えていた。
「そんな大事なこと、どうして黙っていたのだ……」
「フィレン殿下とリブロ殿下にはお伝えしておきましたが、黙っておくように言われましたので仕方なくという感じです」
国王の質問に、私はしれっと返しておく。すると国王は、二人の息子の顔を見ながら大きなため息を吐いていた。
「ちなみに、侵入した時点で防護魔法は回復させていますので、もう外から悪意が入ってくる事はありませんよ」
「はい、気付かれないように頑張りました」
サキは拳を握って元気よく答えていた。
「……はあ、ならばパーティーを再開という方向でいこうか」
国王はもう呆れたようにそういうしかなかった。ガラスの破片を回収した上で私たちがガラスの補強をすると、念のために料理は全て入れ換えた上で、誕生日パーティーは何事もなかったかのように再開されたのだった。
こうして、長らく行方が分からずに困っていたベジタリウス王国の諜報部隊は、ものの見事に一網打尽にされたのだった。
アルーの魔法を食らったテトロは少し言葉を吐き捨てると、そのまま沈黙してしまった。そして、さらさらと灰になって崩れ、溶けるように消えてしまったのだ。
その姿を、メチルはただただ無表情に眺めていた。
「イスンセ?!」
近くまで駆け寄ってきていた女性が、その場に倒れ込んでいた男に声を掛けている。どうやら、この男は魔族であるテトロに体を乗っ取られていたようだった。
その横では、メチルがただ呆然と立っていた。相手が魔族とはいえども、初めて誰かを手に掛けるというのは厳しかったようだった。
「メチル……」
さすがの私も、掛ける声がない。おそらくは私と同じ日本人だろうから、こんな経験はまずありえないものね。
そんな中、フィレン王子とリブロ王子が立ち上がる。
「魔族は討たれた。衛兵、賊を拘束し、皆の無事を確認してくれ」
「はっ」
王子たちの命令に、兵士たちがすぐに行動を起こす。気を失っている侵入者たちを次々と拘束して引き連れていく。
もちろん、真ん中で気絶している男と女性も拘束される。女性はおとなしく捕まっていたが、兵士に声を掛けている。
「王妃様たちに謝罪をしたい。いいだろうか」
困った兵士たちは、フィレン王子たちに視線を向けている。するとフィレン王子もリブロ王子も意外とすんなりと許可していた。
「感謝する」
頭を下げた女性は、兵士に付き添われてベジタリウス王妃の元へと歩いていく。
「クガリ……」
「王妃様、大変申し訳ございませんでした。知らなかったとはいえ、魔族の手先として使われていたこと、お詫びのしようもございません」
クガリの謝罪を黙って聞いているベジタリウス王妃やミズーナ王女たち。
「極刑も甘んじてお受け致します。本当にこれまでお世話になりました」
そして、今度は会場に向けてくるりと振り返る。
「サーロイン王国の者たちよ、本当にすまなかった。大事なパーティーを台無しにしてしまって、その償いはきちんと取ろう」
クガリはそう言うと、付き添う兵士たちにも頭を下げる。そして、そのまま他の侵入者たち同様、会場の外へと連れ出されていったのだった。
どうにか平穏を取り戻したパーティー会場内だが、さすがにさっきまで侵入者との戦闘が行われていたので、パーティーを再開というわけにはいかなかった。
しかし、その一方で外が安全とも限らないので、このまま参加者たちを帰すわけにはいかない。国王たちは頭を悩ませていた。
(それもそうでしょうね。あれだけ多くの侵入者を許したわけだものね。これは事情を説明しなければいけないわね)
そう考えた私は、サキとメチルに目で合図を送る。そして、国王の居る場所へと近付いていった。
「国王陛下、パーティーを続行致しましょう。外は兵士に警戒させればいいですし」
「しかし、あれだけの賊に入られたのだぞ? 安心できるわけがない」
国王は当然のように言葉を返してきた。まぁそうなりますわよね。
だけど、私たちはここで種明かしをする。ミズーナ王女にも来てもらって事情説明開始よ。
「恐れ入ります、サーロイン国王陛下」
「なんだね、ミズーナよ」
ミズーナ王女の声に反応する国王。
「賊が侵入した経緯について、ご説明致します」
ミズーナ王女はそう告げた後、私たちの方を見る。私たちは揃って首を縦に振る。
「実は、今日の結界はわざと緩め、いえ、解いておりました」
「な、なんだと?! どういう事だ、それは」
国王の怒号が飛ぶ。まぁ、それは仕方ないし覚悟していたから、声の大きさだけに驚いた。
「こちらに居るメチルが魔族が来る事を感知しておりまして、そのためにわざと結界を解いて誘い込みました。その代わりに、戦える方々を会場の周囲に配備しておきましたからね」
「それは事実か」
国王が大声で確認を取ってくるので、私たちは揃って大きく頷いておく。黙っていたのは悪かったけど、敵を欺くためにもわざと知らせなかったのよね。侵入作戦が成功したと思わせるためにね。
すべてを話し終わった時、国王は酷く頭を抱えていた。
「そんな大事なこと、どうして黙っていたのだ……」
「フィレン殿下とリブロ殿下にはお伝えしておきましたが、黙っておくように言われましたので仕方なくという感じです」
国王の質問に、私はしれっと返しておく。すると国王は、二人の息子の顔を見ながら大きなため息を吐いていた。
「ちなみに、侵入した時点で防護魔法は回復させていますので、もう外から悪意が入ってくる事はありませんよ」
「はい、気付かれないように頑張りました」
サキは拳を握って元気よく答えていた。
「……はあ、ならばパーティーを再開という方向でいこうか」
国王はもう呆れたようにそういうしかなかった。ガラスの破片を回収した上で私たちがガラスの補強をすると、念のために料理は全て入れ換えた上で、誕生日パーティーは何事もなかったかのように再開されたのだった。
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