496 / 500
第九章 拡張版ミズーナ編
第496話 最後(エンディング)の舞台へ
しおりを挟む
年末を迎える。
ベジタリウス王国でも、年越しを迎えるにあたって年越しのパーティーが行われる。
国に帰っての年越しパーティーは、ミズーナ王女編におけるノーマルエンドである。攻略対象の誰とも結ばれなかったので、それは当然という結果だった。
とはいえ、ノーマルエンドではあっても無事にゲームの時間軸をやり過ごせたので、まずはそのことにほっと胸を撫で下ろすミズーナ王女である。
「お兄様と結婚するミズーナというのも悪くはなかったわね」
年末のパーティーを前に、エスカはそんな事を呟いている。
「嫌よ、王妃だなんて。私のガラじゃないわね」
ところが、ミズーナ王女はそれは断固拒否といった感じだった。前世が幼少時に厳しい環境だったし、今回だって王女という立場だ。大人になったらその締め付けから脱却したくなるのは当然のことだろう。ミズーナ王女には、最初から王族との結婚は選択肢になかったようだった。
そういう状況に加えて、他の攻略対象もことごとく婚約者と無事に結ばれそうなために、こうやってミズーナ王女はあぶれてしまった。これだけならよかったものの、まさか双子の兄であるレッタス王子まで相手がいないまま終わるとは思ってもみなかった。大体エスカのせいである。
「私としては、お兄様の相手をどうにかしたいわね。王妃を任せられる相手を、私も見極めてみたいものだわ」
ミズーナ王女はテーブルに肘をつきながらぶつぶつと呟いていた。
「そういうんだったら、まずは自分の相手を見つけなさいよ。それこそ、アンマリアの提案を受け入れれば楽よ?」
「うーん、タミールくんはあんまり面識がなぁ……。アンマリアのいとこっていうのはまぁ、そこそこ魅力ではあるんだけど」
エスカの指摘に、ミズーナ王女は本気で頭を悩ませている。
というのも、タミールであれば知らない相手ではないし、王妃となるアンマリアのいとこだ。彼がいるファッティ領もそれなりに安定した収入のある領地だ。ベジタリウス王国と国境を接するバッサーシ辺境伯領の南にあるし、サーロイン王国の王都トーミともそこそこ近い。立地も悪くなかった。
ところが、ミズーナ王女は安易にその条件に飛びついていいのかという点で躊躇していた。
「別にいいんじゃないのかしらね。何らかの形でサーロインとのつながりを持っておくのは重要だと思うわよ」
「うーん、それもそうかしらね」
エスカの指摘に、ミズーナ王女はちょっとなびきそうになる。
「私だって魔王様の下に嫁ぐのよ? やりたいようにやればいいのよ。世間が丸く収まればそれでいいんだから」
「それはまぁそうかしらね」
「そうよ。メチルをお兄様の元に嫁がせておいて今さらってものよ」
「あっ、やっぱりすんなり決まったのね、アーサリー殿下のお相手の件は」
ミズーナ王女が確認をすると、エスカはドヤ顔を決めながら何度も頷いた。どうしてそんなに威張るのか、ミズーナ王女は不思議でならなかった。
エスカの反応にため息をつきながら、ミズーナ王女は年末パーティーのドレス選びを始めることにしたのだった。
長かったような短かったような、実に濃密なゲーム時間軸の三年間。
この年末のパーティーでもって、ミズーナ編もいよいよ終わりを迎える。
エンディングとしてはノーマルエンドではあるものの、決して悪いエンディングではない。バッドエンドをすべて回避できたなら、それはそれで成果は上々だからだ。
やせ薬ドーピングに加え、魔王との対決という最大級の死亡フラグを回避できたのはよかった。しかも、魔王とはほとんど対決することなく決着してしまった。大体はエスカのせいではあるが。
その魔王はというと、ベジタリウス王国の一臣下となっただけではなく、ほぼ強引ながらもエスカと結婚することになったのだから、本当に何が起こるか分かったものではない。
年末のパーティーを迎えるその日、ベジタリウス王国には例年のごとく雪が舞っている。
元々山と森の多い寒い地域だ。雪がちになるのは仕方のない事だった。そのせいで、王都に居るか居ないかという状況次第で、この王城で行われる年末パーティーの賑やかさは変わってくる。なにせ、雪深いために領地と王都との間の行き来はほぼ不可能なのだから。
しかし、今年の年末パーティーはほぼすべての貴族が城に集結していた。
理由としては、サーロイン王国に留学していた王子と王女が戻ってくるためである。無事に学園を卒業して戻ってきた二人をひと目見ようとして、王城に集まってきていたのだ。
もちろん、それだけが理由ではない。あわよくば自分のところの子どもと結婚させようという目論見があってのことだ。
こうして、長かったゲーム時間軸の最後を締めくくるイベント、ベジタリウス王城の年末パーティーが始まろうとしていた。
はてさて、レッタス王子とミズーナ王女のお相手は、ここで決まることになるのだろうか。
トラブルメーカーエスカも参加しているため、ミズーナ王女の緊張はいつも以上のものとなっていた。
ベジタリウス王国でも、年越しを迎えるにあたって年越しのパーティーが行われる。
国に帰っての年越しパーティーは、ミズーナ王女編におけるノーマルエンドである。攻略対象の誰とも結ばれなかったので、それは当然という結果だった。
とはいえ、ノーマルエンドではあっても無事にゲームの時間軸をやり過ごせたので、まずはそのことにほっと胸を撫で下ろすミズーナ王女である。
「お兄様と結婚するミズーナというのも悪くはなかったわね」
年末のパーティーを前に、エスカはそんな事を呟いている。
「嫌よ、王妃だなんて。私のガラじゃないわね」
ところが、ミズーナ王女はそれは断固拒否といった感じだった。前世が幼少時に厳しい環境だったし、今回だって王女という立場だ。大人になったらその締め付けから脱却したくなるのは当然のことだろう。ミズーナ王女には、最初から王族との結婚は選択肢になかったようだった。
そういう状況に加えて、他の攻略対象もことごとく婚約者と無事に結ばれそうなために、こうやってミズーナ王女はあぶれてしまった。これだけならよかったものの、まさか双子の兄であるレッタス王子まで相手がいないまま終わるとは思ってもみなかった。大体エスカのせいである。
「私としては、お兄様の相手をどうにかしたいわね。王妃を任せられる相手を、私も見極めてみたいものだわ」
ミズーナ王女はテーブルに肘をつきながらぶつぶつと呟いていた。
「そういうんだったら、まずは自分の相手を見つけなさいよ。それこそ、アンマリアの提案を受け入れれば楽よ?」
「うーん、タミールくんはあんまり面識がなぁ……。アンマリアのいとこっていうのはまぁ、そこそこ魅力ではあるんだけど」
エスカの指摘に、ミズーナ王女は本気で頭を悩ませている。
というのも、タミールであれば知らない相手ではないし、王妃となるアンマリアのいとこだ。彼がいるファッティ領もそれなりに安定した収入のある領地だ。ベジタリウス王国と国境を接するバッサーシ辺境伯領の南にあるし、サーロイン王国の王都トーミともそこそこ近い。立地も悪くなかった。
ところが、ミズーナ王女は安易にその条件に飛びついていいのかという点で躊躇していた。
「別にいいんじゃないのかしらね。何らかの形でサーロインとのつながりを持っておくのは重要だと思うわよ」
「うーん、それもそうかしらね」
エスカの指摘に、ミズーナ王女はちょっとなびきそうになる。
「私だって魔王様の下に嫁ぐのよ? やりたいようにやればいいのよ。世間が丸く収まればそれでいいんだから」
「それはまぁそうかしらね」
「そうよ。メチルをお兄様の元に嫁がせておいて今さらってものよ」
「あっ、やっぱりすんなり決まったのね、アーサリー殿下のお相手の件は」
ミズーナ王女が確認をすると、エスカはドヤ顔を決めながら何度も頷いた。どうしてそんなに威張るのか、ミズーナ王女は不思議でならなかった。
エスカの反応にため息をつきながら、ミズーナ王女は年末パーティーのドレス選びを始めることにしたのだった。
長かったような短かったような、実に濃密なゲーム時間軸の三年間。
この年末のパーティーでもって、ミズーナ編もいよいよ終わりを迎える。
エンディングとしてはノーマルエンドではあるものの、決して悪いエンディングではない。バッドエンドをすべて回避できたなら、それはそれで成果は上々だからだ。
やせ薬ドーピングに加え、魔王との対決という最大級の死亡フラグを回避できたのはよかった。しかも、魔王とはほとんど対決することなく決着してしまった。大体はエスカのせいではあるが。
その魔王はというと、ベジタリウス王国の一臣下となっただけではなく、ほぼ強引ながらもエスカと結婚することになったのだから、本当に何が起こるか分かったものではない。
年末のパーティーを迎えるその日、ベジタリウス王国には例年のごとく雪が舞っている。
元々山と森の多い寒い地域だ。雪がちになるのは仕方のない事だった。そのせいで、王都に居るか居ないかという状況次第で、この王城で行われる年末パーティーの賑やかさは変わってくる。なにせ、雪深いために領地と王都との間の行き来はほぼ不可能なのだから。
しかし、今年の年末パーティーはほぼすべての貴族が城に集結していた。
理由としては、サーロイン王国に留学していた王子と王女が戻ってくるためである。無事に学園を卒業して戻ってきた二人をひと目見ようとして、王城に集まってきていたのだ。
もちろん、それだけが理由ではない。あわよくば自分のところの子どもと結婚させようという目論見があってのことだ。
こうして、長かったゲーム時間軸の最後を締めくくるイベント、ベジタリウス王城の年末パーティーが始まろうとしていた。
はてさて、レッタス王子とミズーナ王女のお相手は、ここで決まることになるのだろうか。
トラブルメーカーエスカも参加しているため、ミズーナ王女の緊張はいつも以上のものとなっていた。
19
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる