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第280話 賑やかな年越し
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やって来たお寺の中は、多くの人でごった返している。
「いやぁ、家の近所にお寺さんがあるとは思ってなかったなぁ。いつも神社だったから、お寺は新鮮だね。にしししし」
お寺の敷地に足を踏み入れた小麦はテンションが高い。
自分が真家レニだと打ち明けたこともあってか、もう喋り方が素で真家レニになっていた。
「そういう喋り方をされると、小麦さんって本当にレニちゃんなんですねって思いますよ」
「てひひ、まぁね。でも、本当はこういう喋り方って全部演技なんだけどね」
「えっ、ええ?!」
「おっと、声が大きいぞ、満くん」
「あっ、ごめんなさい」
ぶっちゃけた小麦の言葉に、満は思いっきり叫んでしまう。小麦に注意されて、恥ずかしそうにしながら謝っている。
「うんうん、ママが封印した吸血鬼と同じ姿なのに、満くんは本当に可愛いなあ。うーん、こうやってずっと可愛がっていたいなぁ」
「ちょっと、小麦さん、恥ずかしいからやめて下さいよ!」
振袖を着た満を後ろからぎゅっと抱き締めながらささやいてくるものだから、満は完全に顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「はははっ、うちの小麦があんなに可愛がるのは、初めて見たかな」
「ええ、彼はどことなくからかいたくなるところがありますからね。まったく、あのルナ・フォルモントが気にかけるのも頷けるわ」
「しかし、身内だったとしても、あのスキンシップはちょっと過剰じゃないですかね」
満と小麦の状況を見ながら、満の父親が心配そうに視線を向けている。
「欧米ならあれくらいは普通だと思うわ。でも、さすがにこの人だかりの中では目を集めすぎてしまうわね。ドーターに注意をしてくるわ」
グラッサはちょっと後ろでじゃれつく小麦を注意しに行く。
「しかし、お互い子どもがアバ信をしていると、ちょっと心配になってきませんかね」
「まあ、それはそうですね。うちの満の場合、あの姿で公の前に出てしまいましたしね。気になってくるというものですよ」
「ああ、娘が言ってましたね。配管工レーシングの世界大会でしたっけか」
満の父親と小麦の父親が話をしている。
「ええ、私は反対したんですけれどね。世界チャンピオンからの直々の誘いでしたし、満が行くといって聞かなかったので、やむなくって感じでしたね。ああ、帰りは送って頂いてありがとうございました」
「いや、あれはたまたまグラッサが気が付いて、勝手に迎えに行っただけですよ。お礼なら、彼女に言って下さい」
小麦の父親は、頭を下げる満の父親にそう声をかけていた。
「みんな、そろそろ除夜の鐘が終わるわよ。年が明けたら参拝するんでしょ、集まっておきましょう」
そこに満の母親が呼び掛けてくる。
父親たちは確かにそうだなと思い、満たちを呼びに行って全員集合となった。
最後の鐘が突き終わり、新しい年を迎える。
「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」
「ア、ハッピーニューイヤー!」
みんなが日本語で挨拶をし合っている中、グラッサだけが英語だった。さすが生粋の外国人。思わず笑顔になってしまう満たちなのであった。
年が無事に明けたことで、満たちは初詣を済ませることにする。
「テンプルはシュラインと違って手を叩かなくてもいいのよね?」
そこでグラッサが参拝方法について確認をしてきた。
「そうだよ、グラッサ。静かに手を合わせて頭を下げるだけでいいんだ」
「へえ、神社とお寺ってお参りの仕方が違うんだ」
「あまりに気にしてなかったな」
小麦の父親が正しいよと言っている横で、お参りの仕方を知らなかった満たちが驚いていた。
意外とこのあたり、詳しくないとごっちゃになってしまうものである。
そんなわけで、正しい参拝方法を確認した満たちは、静かに参拝を済ませていくことにした。
「はあ、もう入試が目の前だよ。憂鬱だなぁ……」
参拝が終わると、小麦はずいぶんと頭が痛そうな話題を口にしていた。
「小麦さんって、志望は決めているんですか?」
「あったり前よ。ママとおんなじバリバリのキャリアウーマンを目指すんだから。経営学部を目指すわ」
「そうなんですね。頑張って下さいね、小麦さん」
拳を握って気合いを入れる小麦に、とにかくよく分からないけれど応援をする満である。
「でも、経営学部となると、近くにいい大学がないから遠くになってしまうな。なんだ、パパは寂しくなるじゃないか」
「パパ、そういうこと言わないでよ。私の決心を鈍らせるの? 応援するの、邪魔するの、どっちなの?」
「ちょっと、落ち着け。落ち着くんだ小麦」
娘に迫られて、小麦の父親はたじたじである。
その様子を見ていた満たち家族は微笑ましくて笑っている。
「まったく、ドーターときたら、私の真似事でもするのかしらね。アバター配信者というのでも頑張っていけるだろうに」
「手に職を身につけたいの」
「イラストすっごくうまいじゃないですか、小麦さん。あれじゃダメなんですか?」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど。私にとってはママが憧れなの。ちょっとでも近づきたいから、うん」
満に言われて、ちょっとトーンダウンをしている。
「もう、ルナちの顔で言われたら、なんだか揺らいじゃう!」
小麦は突然怒りだしていた。
「ふふっ、ちょっとドーターが興奮しているみたいだから、私たちはこれで失礼しますね」
「あ、ああ。なんとも微笑ましい家族ですね」
「ふふっ、いつも一緒にいられるそちらの家族が羨ましいわ。私は常に世界を飛び回っているので、こうやっていられる時間が短いんですよ」
満の父親の言葉に、グラッサはそう言って、ちょっと寂し気な笑顔を見せていた。
「それでは、また今年もよい年でありますように」
「ルナち、また配信でね」
「はい、コラボできるように、頑張って下さいね」
「うん、頑張るわ」
こうして、満たちの家族と小麦たちの家族が一緒になっていた年越しは過ぎていった。
小麦が受験を終えると、今度満が受験生になる番である。
今年もまた、いろいろと何かありそうな気がしてきた満なのであった。
「いやぁ、家の近所にお寺さんがあるとは思ってなかったなぁ。いつも神社だったから、お寺は新鮮だね。にしししし」
お寺の敷地に足を踏み入れた小麦はテンションが高い。
自分が真家レニだと打ち明けたこともあってか、もう喋り方が素で真家レニになっていた。
「そういう喋り方をされると、小麦さんって本当にレニちゃんなんですねって思いますよ」
「てひひ、まぁね。でも、本当はこういう喋り方って全部演技なんだけどね」
「えっ、ええ?!」
「おっと、声が大きいぞ、満くん」
「あっ、ごめんなさい」
ぶっちゃけた小麦の言葉に、満は思いっきり叫んでしまう。小麦に注意されて、恥ずかしそうにしながら謝っている。
「うんうん、ママが封印した吸血鬼と同じ姿なのに、満くんは本当に可愛いなあ。うーん、こうやってずっと可愛がっていたいなぁ」
「ちょっと、小麦さん、恥ずかしいからやめて下さいよ!」
振袖を着た満を後ろからぎゅっと抱き締めながらささやいてくるものだから、満は完全に顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「はははっ、うちの小麦があんなに可愛がるのは、初めて見たかな」
「ええ、彼はどことなくからかいたくなるところがありますからね。まったく、あのルナ・フォルモントが気にかけるのも頷けるわ」
「しかし、身内だったとしても、あのスキンシップはちょっと過剰じゃないですかね」
満と小麦の状況を見ながら、満の父親が心配そうに視線を向けている。
「欧米ならあれくらいは普通だと思うわ。でも、さすがにこの人だかりの中では目を集めすぎてしまうわね。ドーターに注意をしてくるわ」
グラッサはちょっと後ろでじゃれつく小麦を注意しに行く。
「しかし、お互い子どもがアバ信をしていると、ちょっと心配になってきませんかね」
「まあ、それはそうですね。うちの満の場合、あの姿で公の前に出てしまいましたしね。気になってくるというものですよ」
「ああ、娘が言ってましたね。配管工レーシングの世界大会でしたっけか」
満の父親と小麦の父親が話をしている。
「ええ、私は反対したんですけれどね。世界チャンピオンからの直々の誘いでしたし、満が行くといって聞かなかったので、やむなくって感じでしたね。ああ、帰りは送って頂いてありがとうございました」
「いや、あれはたまたまグラッサが気が付いて、勝手に迎えに行っただけですよ。お礼なら、彼女に言って下さい」
小麦の父親は、頭を下げる満の父親にそう声をかけていた。
「みんな、そろそろ除夜の鐘が終わるわよ。年が明けたら参拝するんでしょ、集まっておきましょう」
そこに満の母親が呼び掛けてくる。
父親たちは確かにそうだなと思い、満たちを呼びに行って全員集合となった。
最後の鐘が突き終わり、新しい年を迎える。
「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」
「ア、ハッピーニューイヤー!」
みんなが日本語で挨拶をし合っている中、グラッサだけが英語だった。さすが生粋の外国人。思わず笑顔になってしまう満たちなのであった。
年が無事に明けたことで、満たちは初詣を済ませることにする。
「テンプルはシュラインと違って手を叩かなくてもいいのよね?」
そこでグラッサが参拝方法について確認をしてきた。
「そうだよ、グラッサ。静かに手を合わせて頭を下げるだけでいいんだ」
「へえ、神社とお寺ってお参りの仕方が違うんだ」
「あまりに気にしてなかったな」
小麦の父親が正しいよと言っている横で、お参りの仕方を知らなかった満たちが驚いていた。
意外とこのあたり、詳しくないとごっちゃになってしまうものである。
そんなわけで、正しい参拝方法を確認した満たちは、静かに参拝を済ませていくことにした。
「はあ、もう入試が目の前だよ。憂鬱だなぁ……」
参拝が終わると、小麦はずいぶんと頭が痛そうな話題を口にしていた。
「小麦さんって、志望は決めているんですか?」
「あったり前よ。ママとおんなじバリバリのキャリアウーマンを目指すんだから。経営学部を目指すわ」
「そうなんですね。頑張って下さいね、小麦さん」
拳を握って気合いを入れる小麦に、とにかくよく分からないけれど応援をする満である。
「でも、経営学部となると、近くにいい大学がないから遠くになってしまうな。なんだ、パパは寂しくなるじゃないか」
「パパ、そういうこと言わないでよ。私の決心を鈍らせるの? 応援するの、邪魔するの、どっちなの?」
「ちょっと、落ち着け。落ち着くんだ小麦」
娘に迫られて、小麦の父親はたじたじである。
その様子を見ていた満たち家族は微笑ましくて笑っている。
「まったく、ドーターときたら、私の真似事でもするのかしらね。アバター配信者というのでも頑張っていけるだろうに」
「手に職を身につけたいの」
「イラストすっごくうまいじゃないですか、小麦さん。あれじゃダメなんですか?」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど。私にとってはママが憧れなの。ちょっとでも近づきたいから、うん」
満に言われて、ちょっとトーンダウンをしている。
「もう、ルナちの顔で言われたら、なんだか揺らいじゃう!」
小麦は突然怒りだしていた。
「ふふっ、ちょっとドーターが興奮しているみたいだから、私たちはこれで失礼しますね」
「あ、ああ。なんとも微笑ましい家族ですね」
「ふふっ、いつも一緒にいられるそちらの家族が羨ましいわ。私は常に世界を飛び回っているので、こうやっていられる時間が短いんですよ」
満の父親の言葉に、グラッサはそう言って、ちょっと寂し気な笑顔を見せていた。
「それでは、また今年もよい年でありますように」
「ルナち、また配信でね」
「はい、コラボできるように、頑張って下さいね」
「うん、頑張るわ」
こうして、満たちの家族と小麦たちの家族が一緒になっていた年越しは過ぎていった。
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