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未羊

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第376話 始まる文化祭

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 そして、ついに文化祭当日がやって来てしまう。
 満はどうにかルナの姿で当日を迎えることができた。

「いよいよだな、満。俺たちは裏方で出ていけないから、頑張ってくれよ」

「むぅ、僕もそっち側がよかったな」

 メイド喫茶ということもあり、女子生徒たちが接客を行う。男子生徒たちは仕切りの向こう側で調理を担当する。
 学校の教室内だけで完結するために、極力は洗い物が発生しないようにするために、食器はすべて使い捨てを使用する。

「それにしても、みんな料理できるのかな?」

「まあ、なんとかなるだろうよ。心配があるからあんまり面倒なメニューにはしなかったんだよ」

「いざとなったら、調理は頼むぞ、ルナ」

「えっ、僕ぅっ?!」

 いろいろと心配はある中で、風斗は満の方をポンと叩いていた。

「手作りでチョコレートも作ったお前だ。きっと他の料理だってちゃんとこなせるはずだ」

「すっごい無責任なこと言わないでくれる?」

 風斗が言い放つ言葉に、満は不満のようである。

「はあ……。とりあえず、文化祭の始まる9時までに、用意できるものは用意しておくよ。IH調理器しか使えないけど、やってみる」

「頼むぜ、ルナ」

 そんなわけで、なぜか開店までの準備は満が行うことになってしまった。その様子を調理担当の男子学生たちが見守るという状況に、満ははっきり言って複雑な心境になっていた。
 というわけで、調理を始める満だったが、お菓子以外でも意外と料理をさくさくと作ってしまっていた。さすが時々母親の手伝いをしているだけのことはある。

「わあ、ルナちゃん、料理もできるんだ」

「こんな美少女で料理までできるなんて……。ダメだ、惚れてしまう」

「なに、変なこと言ってるんだよ。僕が接客に回ったら、みんなで作ってもらうことになるんだからね。しっかり見て作り方を覚えてよ」

「あ、ああ。悪い悪い」

 のろける男子学生たちに、満がきっちりと釘を刺していた。さすがしっかりする時はしっかりするだけのことはある。

「さあ、料理も用意できたことだし、張り切っていきましょう!」

「おーっ!」

 こうして、満たちの中学生最後の文化祭がスタートした。

「で、なんで僕が宣伝役なの?」

 始まったと思ったら、満はメイド喫茶の看板を持って学校内を歩き回っていた。

「まあ、しょうがないな。お前のスタイルは思った以上にいいんだ。教室の中にいればクラスの連中は落ち着かないだろうし、外を歩けばいい感じに目を引くってわけだ」

「むぅ……。なんか納得いかない」

 満はなぜか風斗と一緒に学校内を歩き回っている。
 風斗の見た目は確かにいいわけだが、なぜこの組み合わせになったのか。
 クラスの女子曰く、「クラス一の美男美女が歩けば、いい客引きになる」とのこと。だが、風斗とは男同士のつもりだから、この意見に満は不満たっぷりのようである。

「やあ、ルナちゃん、風斗くん。夏休みぶりだね」

「あれ、イリスさん」

 正面から見知った顔が近付いてきて挨拶をしてきた。そう、ちょっと知名度の低いアイドルであるイリスだった。

「どうしてこちらに?」

「私もこの学校の卒業生だからね。可愛い後輩たちの様子を見に来てというわけよ」

「なるほど」

 イリスの話を聞いて、満はとても納得していた。

「それにしてもルナちゃん、アイドル衣装も似合っていたけど、メイド服もすっごく似合っている」

「あ、ありがとうございます」

 満は恥ずかしがりながらも、イリスの言葉にお礼を言っている。
 そうかと思うと、カシャーという撮影音が響き渡る。

「ちょっと、イリスさん?!」

「うふふっ、可愛さのあまりに写真を撮ってしまったわ。あとで小麦ちゃんにでも送信してあげようっと」

「小麦さんに?! ちょっと、それはやめて下さいよ。絶対電話がかかってきますって!」

 イリスが満のメイド姿を小麦に送信しようとするものだから、満は慌てて阻止しようと、風斗に看板を押し付けてイリスを制止しようとしている。

「うそうそ冗談。でも、そのくらい可愛いから困ったものね。吸血鬼ルナ・フォルモントと同じ姿なのに、ルナちゃんだとこんなに雰囲気が違うから笑っちゃうわ」

「もう、イリスさんってば……」

 二人のドタバタっぷりに、風斗は後ろで呆れて眺めることしかできなかった。

「それにしても、それって変装してるんですかね?」

 雰囲気に飲まれてはいけないと、風斗はイリスに問いかける。
 中学校の制服に三つ編みと眼鏡という格好をしているイリスだが、満と風斗には即バレをしていた。そのせいで風斗は疑問視しているようなのだ。

「大丈夫、君たち以外にはばれていないもの」

「本当かなぁ?」

 自信たっぷりに話すイリスではあるものの、満たちはものすごく疑っているようだった。

「それより、ここで会ったのはちょうどいいわ。せっかくだから、君たちのクラスまで連れていってよ」

 イリスがにこにことしながら頼み込むものだから、満と風斗は顔を見合わせながら考え込んでいた。

「まっ、しょうがないですね。知り合いの先輩の頼みだから、断れませんよ」

「ありがとう。それと、接客はルナちゃんに頼むわね」

「ええっ、僕がですか?!」

 イリスからの無茶振りに、満は大きな声で驚いてしまう。
 にこにこと笑顔を見せるイリスに、どうしたものかと困った顔の満と風斗。
 満の文化祭は、いきなりのトラブル発生である。
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