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第377話 使える武器は使うもの
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イリスに頼まれた満は、やむなく教室へと戻ってきた。
「あれ、ルナちゃん。どうしたの?」
クラスに戻れば、みんなから声をかけられてしまう。
「ごめんなさい。知り合いに声をかけられて無理やり案内されちゃったんだ」
「えっ、知り合い?」
満の後ろから変装したイリスが顔を見せる。
制服と三つ編みとメガネのせいで、誰かよく分からない。なので、クラスメイトたちは首を捻っているようだった。
「で、でも、やっとお客様が来たわ。張り切るわよ」
「おーっ!」
クラスメイトたちの声に満は思わずびっくりしてしまう。
「えっ、初めて?!」
驚くのも無理はない。文化祭が始まってから一時間は経っている。メイド喫茶なら話題には上りそうだし、お客が来ていないというのは意外過ぎたのだ。
「まぁ、中学生じゃねえ。メイドっていってもそんなに客を惹きつけられないでしょうね」
「そ、そうかなぁ……」
イリスの言葉を、満は疑問視しているようだ。
満の疑問視する態度に、イリスはにこにこと笑っている。
「まあ、み……ルナちゃんがいるのなら、客は十分引き寄せられると思うんだけどね」
「どういうことなんだよ、イリスさん」
追いかけてきた風斗がイリスに疑問をぶつけている。
「簡単なことよ? ルナちゃんの体型とネームバリューを活かさない手はないんだから。ね?」
「え……?」
満は嫌な予感がしている。
だが、すぐさまその作戦は実行に移されることになる。
イリスは環を呼んできて、すぐさま料理の増産に取り掛かる。
「ちょっと、料理を勝手に始めないでくれないかしら」
「いいえ、ゆっくりしてられないわ。メニューを見せてくれるかしら。私がこれから作ってあげるから」
「イリスさん、料理できるんですか?」
「これでも自炊は好きなのよ」
いろいろと言われながらも、イリスは料理を始めている。
それにしても、イリスの考え付いた作戦とはどういうものだろうか。
風斗は環と一緒に学園内を看板を持って回っている。部外者である環は学園祭で手伝いをさせられていて、少々不機嫌そうだ。
「なんで仕事がお休みの日にこんなことをさせられなければならないんですか」
「断ればいいじゃないですか」
「私もこの学校の卒業生なのよ」
風斗が文句を言うと、環からはそんな答えが返ってきていた。卒業生だからこそ、イリスと一緒で後輩を応援したいようなのだ。実に心境としては複雑なようだ。
しかし、イリスの立てた作戦は当たり始め、じわじわとクラスにお客がやってくるようになる。看板にちょっと文言を継ぎ足したのが功を奏しているようだ。
「うわわわっ、本当にお客さんが来始めちゃったよ……」
教室の中では満たちが大慌てである。
「ルナちゃんのネームバリューは大きいからね。なんといっても銀髪美少女というのも大きい」
「もう、イリスさんってば!」
「ほらほら、メイドさんたちはちゃんと接客する。ちゃんと『お帰りなさいませ、ご主人様』っていうのよ?」
満は文句を言うものの、イリスから言い返されてしまう。
ぶっすーと頬を膨らませながらも、満たちはお客たちを迎えに外に出ていく。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
直立して、腰の前で手を合わせ、笑顔で小さく頭を下げる満たち。その姿に、やってきたお客たちはどきりとしているようだった。
教室の3分の2しか使えないために、あっという間に教室の中は満席である。女子たちも狭い教室の中を行ったり来たりと大忙しだ。
「マジで埋まってやがる。しかも、外では順番待ちまで……」
勧誘の交代で戻ってきた風斗は、教室の状況にびっくりしていた。
その状況を見て、環が冷静に分析を始めている。
「本当にルナさんのネームバリューは恐ろしいですよ。直近では夏祭りであれだけ目立っていましたからね。イリスを食ってしまいそうになるくらいで、私はひやひやして見ていましたが」
「あ、ああ。それは確かにな。知名度はそう高くはないけど、アイドルと一緒に踊っていた人物がいるとなれば、まあ……いでっ!」
突然、風斗は声を上げる。
「ひと言余計ですよ、少年。関係者の前で軽々に口にするものではありません」
環は笑顔で顔を引きつらせていた。さすがに自分が担当しているアイドルをバカにされたので怒っているのだ。
そう、風斗は環によって足を強く踏みつけられていたのである。
まったく、思春期の子どもは時に藪蛇なことをしてしまうのである。
怒られた風斗は、素直に頭を下げて謝罪をしていた。
「さて、この調子でいくと、夕方の文化祭終了までにどのくらいの客足が来ますかね。私はどうやら買い出しに行かなければいけないようですから、他の人と宣伝は交代することとしましょう」
「そ、そうですね」
環は風斗を連れて宣伝役を交代すると、教師に断りを入れてから風斗を連れて学校の外へと向かっていく。
イリスの入れ知恵によって大変なことになってしまった満のクラス。この調子で夕方の終了を無事に迎えることができるのだろうか。
時間的にはまだお昼前。このあともまだまだ気を揉む状況は続きそうなのである。
「あれ、ルナちゃん。どうしたの?」
クラスに戻れば、みんなから声をかけられてしまう。
「ごめんなさい。知り合いに声をかけられて無理やり案内されちゃったんだ」
「えっ、知り合い?」
満の後ろから変装したイリスが顔を見せる。
制服と三つ編みとメガネのせいで、誰かよく分からない。なので、クラスメイトたちは首を捻っているようだった。
「で、でも、やっとお客様が来たわ。張り切るわよ」
「おーっ!」
クラスメイトたちの声に満は思わずびっくりしてしまう。
「えっ、初めて?!」
驚くのも無理はない。文化祭が始まってから一時間は経っている。メイド喫茶なら話題には上りそうだし、お客が来ていないというのは意外過ぎたのだ。
「まぁ、中学生じゃねえ。メイドっていってもそんなに客を惹きつけられないでしょうね」
「そ、そうかなぁ……」
イリスの言葉を、満は疑問視しているようだ。
満の疑問視する態度に、イリスはにこにこと笑っている。
「まあ、み……ルナちゃんがいるのなら、客は十分引き寄せられると思うんだけどね」
「どういうことなんだよ、イリスさん」
追いかけてきた風斗がイリスに疑問をぶつけている。
「簡単なことよ? ルナちゃんの体型とネームバリューを活かさない手はないんだから。ね?」
「え……?」
満は嫌な予感がしている。
だが、すぐさまその作戦は実行に移されることになる。
イリスは環を呼んできて、すぐさま料理の増産に取り掛かる。
「ちょっと、料理を勝手に始めないでくれないかしら」
「いいえ、ゆっくりしてられないわ。メニューを見せてくれるかしら。私がこれから作ってあげるから」
「イリスさん、料理できるんですか?」
「これでも自炊は好きなのよ」
いろいろと言われながらも、イリスは料理を始めている。
それにしても、イリスの考え付いた作戦とはどういうものだろうか。
風斗は環と一緒に学園内を看板を持って回っている。部外者である環は学園祭で手伝いをさせられていて、少々不機嫌そうだ。
「なんで仕事がお休みの日にこんなことをさせられなければならないんですか」
「断ればいいじゃないですか」
「私もこの学校の卒業生なのよ」
風斗が文句を言うと、環からはそんな答えが返ってきていた。卒業生だからこそ、イリスと一緒で後輩を応援したいようなのだ。実に心境としては複雑なようだ。
しかし、イリスの立てた作戦は当たり始め、じわじわとクラスにお客がやってくるようになる。看板にちょっと文言を継ぎ足したのが功を奏しているようだ。
「うわわわっ、本当にお客さんが来始めちゃったよ……」
教室の中では満たちが大慌てである。
「ルナちゃんのネームバリューは大きいからね。なんといっても銀髪美少女というのも大きい」
「もう、イリスさんってば!」
「ほらほら、メイドさんたちはちゃんと接客する。ちゃんと『お帰りなさいませ、ご主人様』っていうのよ?」
満は文句を言うものの、イリスから言い返されてしまう。
ぶっすーと頬を膨らませながらも、満たちはお客たちを迎えに外に出ていく。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
直立して、腰の前で手を合わせ、笑顔で小さく頭を下げる満たち。その姿に、やってきたお客たちはどきりとしているようだった。
教室の3分の2しか使えないために、あっという間に教室の中は満席である。女子たちも狭い教室の中を行ったり来たりと大忙しだ。
「マジで埋まってやがる。しかも、外では順番待ちまで……」
勧誘の交代で戻ってきた風斗は、教室の状況にびっくりしていた。
その状況を見て、環が冷静に分析を始めている。
「本当にルナさんのネームバリューは恐ろしいですよ。直近では夏祭りであれだけ目立っていましたからね。イリスを食ってしまいそうになるくらいで、私はひやひやして見ていましたが」
「あ、ああ。それは確かにな。知名度はそう高くはないけど、アイドルと一緒に踊っていた人物がいるとなれば、まあ……いでっ!」
突然、風斗は声を上げる。
「ひと言余計ですよ、少年。関係者の前で軽々に口にするものではありません」
環は笑顔で顔を引きつらせていた。さすがに自分が担当しているアイドルをバカにされたので怒っているのだ。
そう、風斗は環によって足を強く踏みつけられていたのである。
まったく、思春期の子どもは時に藪蛇なことをしてしまうのである。
怒られた風斗は、素直に頭を下げて謝罪をしていた。
「さて、この調子でいくと、夕方の文化祭終了までにどのくらいの客足が来ますかね。私はどうやら買い出しに行かなければいけないようですから、他の人と宣伝は交代することとしましょう」
「そ、そうですね」
環は風斗を連れて宣伝役を交代すると、教師に断りを入れてから風斗を連れて学校の外へと向かっていく。
イリスの入れ知恵によって大変なことになってしまった満のクラス。この調子で夕方の終了を無事に迎えることができるのだろうか。
時間的にはまだお昼前。このあともまだまだ気を揉む状況は続きそうなのである。
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