62 / 387
第62話 依頼した衣装が届いたよ
しおりを挟む
あっという間に12月に突入してしまう。
満がアバター配信者として活動し始めてからひとつ半ほどが経過したことになる。
配信はこまめに、時折ショート動画を作ってアップしている満だが、光月ルナの配信の再生数は相変わらずすごかった。
主力だったクロワとサンの3Dモデルも一般販売が始まったので、それに伴って再生数が落ちるかと思ったらそうでもなかった。光月ルナとセットでいるのがいいらしい。
それにしても11月分の収益がどのくらいになるのか、それがとても怖かった。
そんなある日のこと、満にメールが届いていた。
差出人は世貴だった。
『満くん、頼まれていたものができたので送っておくよ。
キャラクターを右クリックすると「コスチューム変更」という項目が出るから、それを選んで服装を選んでくれ。
まぁ驚かないでくれよな。
追伸、収益化は送ってくれなくても大丈夫だ。クロワとサンの売り上げが思ったよりいいんでね。
それじゃ、頑張ってくれ』
真家レニからのコラボ配信の打診があってから、今日でおおよそ二週間くらいだ。いつもの世貴にしたら時間がかかっていたかもしれない。
とはいえ、新衣装を作るのであれば、それをデザインする世貴の双子の妹の羽美の手伝いは必須。となれば、二人の予定がうまくかみ合わなかった可能性があると考えるのがだろうだろう。
そんなわけで、満は世貴と羽美に感謝しながらメールに貼付されていたデータを開く。
ダウンロードが終わると、早速ソフトを起動する。
起動するとそこには光月ルナが表示されている。ソフトの画面には『New!』の文字が見えている。
クリックすると、世貴から送られてきた衣装が表示されている。
「うわっ、世貴兄さんってばこんなに作ってきたんだ。羽美姉さんもよく考えたなぁ……」
満はびっくりしていた。
真家レニとのコラボ配信に向けて注文を出したのはサンタクロースの衣装だけだった。
ところが、今回送られてきたのはそれだけではなかった。
それだけではという通り、サンタクロースの衣装はもちろんある。それ以外にも普段着とは違うドレスだったり、吸血鬼ではあまりイメージできない水着だとか、何種類もの衣装が送られてきていたのだ。
なんてことはない。
時間がかかったのは連携が取れなかったのではなくて、単純に作りすぎただけだったのだ。
理由が分かった満は、もう笑うしかなかった。
せっかくなので、光月ルナを着替えさせてみる。
最初に着せてみたのは、すぐに使う予定のあるサンタクロース衣装。光月ルナの高貴な吸血鬼のイメージに合う、全体的に露出度の低い衣装だった。
一般的な赤と白でまとめられている。ただ、スカートだけは短かった。足の部分は赤のサイハイブーツと白のタイツ、上半身もよくあるノースリーブにアームカバーのような独立袖かと思ったら、下には白いアンダーを着ていた。
「うーん、さすがは生みの親。サンタのような衣装だけど、ベースとなるルナのイメージも崩していない。すごいなぁ」
満はただただ感心するのみだった。
他のドレスや水着も一応確認する。
最後のひとつを確認しようとすると、他にもデータがあることに気が付いた。
『光月ルナの家(冬景色)』
『天候・雪』
確認したデータを見て、満は困惑した笑いを浮かべてしまう。
出した依頼は、本当にサンタクロース衣装だけなのだ。誰もここまでやれとは言っていないのである。
「冬用のデータまで用意して……。世貴兄さんやり過ぎでしょうに」
すべてのデータを確認し終えて、満の認識は180度変わってしまっていた。実にやりすぎである。
「これだけあると、少しくらいはお披露目してもいいかな。次の配信くらいに入れたいから、世貴兄さんに確認してみようっと」
満は怖くなってきたのか、いったんソフトを閉じて、世貴や羽美にお礼のメールを認める。それと同時にサンタクロース衣装以外はお披露目していいのかの許可を求めた。満は結構律儀なのである。
「さて、今日はレニちゃんの配信があるはず」
ひと通りやり終えたところで、満はSNSのチェックをする。
絞って検索して確認してみると、18時の時点で行われた真家レニの直前告知がヒットした。いつも通りの21時からの配信のようだった。
「19時半かぁ。今日はまだご飯食べてなかったな。今から食べてお風呂に入ればまだ間に合うかな」
真家レニのファンである満の生活リズムは、そこそこ真家レニに支配されている状況なのである。
実際、水、金、日の三日間ある真家レニの配信は欠かさず見ている。見られない日には本気で凹みそうだったというか、小学六年生の修学旅行の際は実際に凹んでいた。どれだけの熱狂的なファンなのか。
さくさくといつものスケジュールをこなした満は、20時半にはパソコンの前に座って配信を今か今かと待ったのだった。
世貴に依頼していた新しい光月ルナの衣装と、真家レニの定期配信を満喫した満は、その日は満足していつものように布団に入る。
時間は夜の10時半。本当に満の一日の終わりは早いのであった。
満がアバター配信者として活動し始めてからひとつ半ほどが経過したことになる。
配信はこまめに、時折ショート動画を作ってアップしている満だが、光月ルナの配信の再生数は相変わらずすごかった。
主力だったクロワとサンの3Dモデルも一般販売が始まったので、それに伴って再生数が落ちるかと思ったらそうでもなかった。光月ルナとセットでいるのがいいらしい。
それにしても11月分の収益がどのくらいになるのか、それがとても怖かった。
そんなある日のこと、満にメールが届いていた。
差出人は世貴だった。
『満くん、頼まれていたものができたので送っておくよ。
キャラクターを右クリックすると「コスチューム変更」という項目が出るから、それを選んで服装を選んでくれ。
まぁ驚かないでくれよな。
追伸、収益化は送ってくれなくても大丈夫だ。クロワとサンの売り上げが思ったよりいいんでね。
それじゃ、頑張ってくれ』
真家レニからのコラボ配信の打診があってから、今日でおおよそ二週間くらいだ。いつもの世貴にしたら時間がかかっていたかもしれない。
とはいえ、新衣装を作るのであれば、それをデザインする世貴の双子の妹の羽美の手伝いは必須。となれば、二人の予定がうまくかみ合わなかった可能性があると考えるのがだろうだろう。
そんなわけで、満は世貴と羽美に感謝しながらメールに貼付されていたデータを開く。
ダウンロードが終わると、早速ソフトを起動する。
起動するとそこには光月ルナが表示されている。ソフトの画面には『New!』の文字が見えている。
クリックすると、世貴から送られてきた衣装が表示されている。
「うわっ、世貴兄さんってばこんなに作ってきたんだ。羽美姉さんもよく考えたなぁ……」
満はびっくりしていた。
真家レニとのコラボ配信に向けて注文を出したのはサンタクロースの衣装だけだった。
ところが、今回送られてきたのはそれだけではなかった。
それだけではという通り、サンタクロースの衣装はもちろんある。それ以外にも普段着とは違うドレスだったり、吸血鬼ではあまりイメージできない水着だとか、何種類もの衣装が送られてきていたのだ。
なんてことはない。
時間がかかったのは連携が取れなかったのではなくて、単純に作りすぎただけだったのだ。
理由が分かった満は、もう笑うしかなかった。
せっかくなので、光月ルナを着替えさせてみる。
最初に着せてみたのは、すぐに使う予定のあるサンタクロース衣装。光月ルナの高貴な吸血鬼のイメージに合う、全体的に露出度の低い衣装だった。
一般的な赤と白でまとめられている。ただ、スカートだけは短かった。足の部分は赤のサイハイブーツと白のタイツ、上半身もよくあるノースリーブにアームカバーのような独立袖かと思ったら、下には白いアンダーを着ていた。
「うーん、さすがは生みの親。サンタのような衣装だけど、ベースとなるルナのイメージも崩していない。すごいなぁ」
満はただただ感心するのみだった。
他のドレスや水着も一応確認する。
最後のひとつを確認しようとすると、他にもデータがあることに気が付いた。
『光月ルナの家(冬景色)』
『天候・雪』
確認したデータを見て、満は困惑した笑いを浮かべてしまう。
出した依頼は、本当にサンタクロース衣装だけなのだ。誰もここまでやれとは言っていないのである。
「冬用のデータまで用意して……。世貴兄さんやり過ぎでしょうに」
すべてのデータを確認し終えて、満の認識は180度変わってしまっていた。実にやりすぎである。
「これだけあると、少しくらいはお披露目してもいいかな。次の配信くらいに入れたいから、世貴兄さんに確認してみようっと」
満は怖くなってきたのか、いったんソフトを閉じて、世貴や羽美にお礼のメールを認める。それと同時にサンタクロース衣装以外はお披露目していいのかの許可を求めた。満は結構律儀なのである。
「さて、今日はレニちゃんの配信があるはず」
ひと通りやり終えたところで、満はSNSのチェックをする。
絞って検索して確認してみると、18時の時点で行われた真家レニの直前告知がヒットした。いつも通りの21時からの配信のようだった。
「19時半かぁ。今日はまだご飯食べてなかったな。今から食べてお風呂に入ればまだ間に合うかな」
真家レニのファンである満の生活リズムは、そこそこ真家レニに支配されている状況なのである。
実際、水、金、日の三日間ある真家レニの配信は欠かさず見ている。見られない日には本気で凹みそうだったというか、小学六年生の修学旅行の際は実際に凹んでいた。どれだけの熱狂的なファンなのか。
さくさくといつものスケジュールをこなした満は、20時半にはパソコンの前に座って配信を今か今かと待ったのだった。
世貴に依頼していた新しい光月ルナの衣装と、真家レニの定期配信を満喫した満は、その日は満足していつものように布団に入る。
時間は夜の10時半。本当に満の一日の終わりは早いのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる