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第63話 新しいことをする前にはしっかり準備を
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翌日の満は、学校へ行く前に当日の配信の予告をしておいた。
配信の内容は現状は秘密であり、今日の夜9時から配信を行う旨だけをSNSに投稿しておいた。
学校に行くまでのわずかな間だけでも、瞬く間にポストがどんどんと拡散されていく。
(やっば、通知が止まらない)
マナーモードにしているスマホがぶるぶると震え続けている。
まったく、新人にして有名アバター配信者なのに、対処を行っていないとは驚いたものだ。
さすがに見ていられなくなった満は、震えるスマホに驚きながらも、どうにかSNSの通知をオフにしておいた。
「いってきます~」
「いってらっしゃい、満」
その日も元気に満は学校へと向かっていった。
学校へとやって来た満は、昼休みに風斗と一緒にいつもの屋上への階段へとやって来る。ここなら人はあまり来ないので、ひそひそ話なら他人の耳に入らないだろうからだ。
最上段にどっしりと腰を落ち着けて、満と風斗が話を始める。
「まったく、こんなところに連れてきて何の話をするんだよ」
風斗はなんでここに来たのか理解に苦しんでいるようだった。
「うん、光月ルナのことだからね。ちょっと人に聞かれるのは嫌かなって思ったから」
「ああ、そういうことか」
満の返答を聞いて、風斗も納得したようである。
満がアバター配信者『光月ルナ』であることは、風斗と二人だけの秘密だ。それは幼馴染みである香織すらも知らない重大機密なのである。だからこその場所の選択というわけだ。
「で、どういう話をしに来たんだよ。今まではこそこそ話ながらも教室でしていただろうに」
改めて気になった風斗は、満に確認をする。
「そうなんだけどね、今回はちょっとね……」
まごまごとなんとも落ち着かない様子を見せる満である。
それでも、なんとか風斗には事情を説明する。満の説明を聞いた風斗は、困惑の表情を浮かべながらも笑ってしまっていた。
「そうかそうか、世貴にぃも羽美ねぇもずいぶんと張り切ったものだな」
笑いが止まらない風斗である。
あまりにも笑いまくる風斗の姿に、満の顔は不満に満ちていた。
「もう、風斗。いくらなんでも笑い過ぎだよ」
「おう、悪い悪い。で、今夜はそのお披露目を行うってわけか」
「うん、送られてきた一部だけだけどね。一気に別衣装が増えたし、使わないのはもったいないと思うんだ」
「使ってくれって送ってきたんだもんな。満の好きにしていいと思うぞ」
いとことして、満を安心させようとする風斗なのである。
風斗と話をして少し気が楽になったのか、満の表情は少しばかり明るくなったように思える。
「それにしても、どんな衣装を送ってきたんだかな。さっき言ってた奴以外にもあるのか?」
「新しい背景まで送ってきてたよ。僕が頼んだのは時期の衣装だけだったのに」
「ああ、時期の衣装ってことで、それに合わせた背景も作ったってわけか。世貴にぃって、徹底的にやり込むんだな……」
自分のいとことはいえ、さすがにやりすぎだと感じた風斗なのであった。
とはいえ、どこか不安そうにしていた満もすっかりいつも通りのように感じる。その変化に風斗も安心したのか、あとは時間の許す限りいつものように二人で話をしたのだった。
学校から帰ってきた満は、最初に配信の準備をする。
ぶっつけ本番でやってやらかしてしまっては意味がない。とにかく動作をちゃんと確認しておかねばならないのだ。放送事故も配信者にとっては致命的になりかねないのだから。
数回触ってみて着替えの感じも分かったし、動作のずれも起きない。さすがは世貴といったところである。
ご飯とお風呂を済ませてすっきりとした満は、時計を確認する。時間は夜の7時だった。
「よし、直前告知をしますかね」
カタカタとSNSに配信の直前告知を行う。
『今宵9時より、配信を行いますわ。お見せしたいものがございますので、楽しみにしていて下さいませ』
SNSにポストをすれば、これも瞬く間にリポストといいねの嵐である。あまりにも伸びていくので、改めて今日の配信について怖くなってしまう。あれだけ動作確認をしたというのに、まだまだ新衣装に対して不安を拭いきれないのだ。
それにしても、配信や告知ポストを見てみても、すっかりお嬢様言葉に慣れてきた満なのである。
ただ、配信でそんな口調で喋っているので、普段の生活でうっかりその口調を使ってしまわないか、そっちの方がむしろ心配になってしまっていた。
今のところは切り替えられているものの、いつやらかさないかひやひやものである。
もう一度動作を確認して、宿題を済ませた満は、いよいよ配信時間だということでソフトを起動して配信に備えた。モーションキャプチャも着けて準備万端だ。
どことなくドキドキとする中、ついに夜9時を迎えて配信開始のボタンをクリックする。
新しい衣装の数々にまだ戸惑いはあるようだが、満はうまく今回の配信をやり切れるのだろうか。
いよいよ光月ルナの新衣装のお披露目配信が始まったのである。
配信の内容は現状は秘密であり、今日の夜9時から配信を行う旨だけをSNSに投稿しておいた。
学校に行くまでのわずかな間だけでも、瞬く間にポストがどんどんと拡散されていく。
(やっば、通知が止まらない)
マナーモードにしているスマホがぶるぶると震え続けている。
まったく、新人にして有名アバター配信者なのに、対処を行っていないとは驚いたものだ。
さすがに見ていられなくなった満は、震えるスマホに驚きながらも、どうにかSNSの通知をオフにしておいた。
「いってきます~」
「いってらっしゃい、満」
その日も元気に満は学校へと向かっていった。
学校へとやって来た満は、昼休みに風斗と一緒にいつもの屋上への階段へとやって来る。ここなら人はあまり来ないので、ひそひそ話なら他人の耳に入らないだろうからだ。
最上段にどっしりと腰を落ち着けて、満と風斗が話を始める。
「まったく、こんなところに連れてきて何の話をするんだよ」
風斗はなんでここに来たのか理解に苦しんでいるようだった。
「うん、光月ルナのことだからね。ちょっと人に聞かれるのは嫌かなって思ったから」
「ああ、そういうことか」
満の返答を聞いて、風斗も納得したようである。
満がアバター配信者『光月ルナ』であることは、風斗と二人だけの秘密だ。それは幼馴染みである香織すらも知らない重大機密なのである。だからこその場所の選択というわけだ。
「で、どういう話をしに来たんだよ。今まではこそこそ話ながらも教室でしていただろうに」
改めて気になった風斗は、満に確認をする。
「そうなんだけどね、今回はちょっとね……」
まごまごとなんとも落ち着かない様子を見せる満である。
それでも、なんとか風斗には事情を説明する。満の説明を聞いた風斗は、困惑の表情を浮かべながらも笑ってしまっていた。
「そうかそうか、世貴にぃも羽美ねぇもずいぶんと張り切ったものだな」
笑いが止まらない風斗である。
あまりにも笑いまくる風斗の姿に、満の顔は不満に満ちていた。
「もう、風斗。いくらなんでも笑い過ぎだよ」
「おう、悪い悪い。で、今夜はそのお披露目を行うってわけか」
「うん、送られてきた一部だけだけどね。一気に別衣装が増えたし、使わないのはもったいないと思うんだ」
「使ってくれって送ってきたんだもんな。満の好きにしていいと思うぞ」
いとことして、満を安心させようとする風斗なのである。
風斗と話をして少し気が楽になったのか、満の表情は少しばかり明るくなったように思える。
「それにしても、どんな衣装を送ってきたんだかな。さっき言ってた奴以外にもあるのか?」
「新しい背景まで送ってきてたよ。僕が頼んだのは時期の衣装だけだったのに」
「ああ、時期の衣装ってことで、それに合わせた背景も作ったってわけか。世貴にぃって、徹底的にやり込むんだな……」
自分のいとことはいえ、さすがにやりすぎだと感じた風斗なのであった。
とはいえ、どこか不安そうにしていた満もすっかりいつも通りのように感じる。その変化に風斗も安心したのか、あとは時間の許す限りいつものように二人で話をしたのだった。
学校から帰ってきた満は、最初に配信の準備をする。
ぶっつけ本番でやってやらかしてしまっては意味がない。とにかく動作をちゃんと確認しておかねばならないのだ。放送事故も配信者にとっては致命的になりかねないのだから。
数回触ってみて着替えの感じも分かったし、動作のずれも起きない。さすがは世貴といったところである。
ご飯とお風呂を済ませてすっきりとした満は、時計を確認する。時間は夜の7時だった。
「よし、直前告知をしますかね」
カタカタとSNSに配信の直前告知を行う。
『今宵9時より、配信を行いますわ。お見せしたいものがございますので、楽しみにしていて下さいませ』
SNSにポストをすれば、これも瞬く間にリポストといいねの嵐である。あまりにも伸びていくので、改めて今日の配信について怖くなってしまう。あれだけ動作確認をしたというのに、まだまだ新衣装に対して不安を拭いきれないのだ。
それにしても、配信や告知ポストを見てみても、すっかりお嬢様言葉に慣れてきた満なのである。
ただ、配信でそんな口調で喋っているので、普段の生活でうっかりその口調を使ってしまわないか、そっちの方がむしろ心配になってしまっていた。
今のところは切り替えられているものの、いつやらかさないかひやひやものである。
もう一度動作を確認して、宿題を済ませた満は、いよいよ配信時間だということでソフトを起動して配信に備えた。モーションキャプチャも着けて準備万端だ。
どことなくドキドキとする中、ついに夜9時を迎えて配信開始のボタンをクリックする。
新しい衣装の数々にまだ戸惑いはあるようだが、満はうまく今回の配信をやり切れるのだろうか。
いよいよ光月ルナの新衣装のお披露目配信が始まったのである。
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