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第136話 遠隔操作
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翌日の放課後、わっけーはまた新聞部の部室に乱入していた。
「わーっはっはっはー、今日はちょっとみんないいかな?」
部室に乱入するなり上機嫌なわっけーに、栞たちは思わずびっくりしてしまっていた。
「ど、どうされたのですか、脇田さん。ずいぶんと上機嫌ですが……」
「うむ、これを見てほしいのだ」
わっけーは持っていた鞄からノートパソコンを取り出す。それを起動させると、モニタにどこかの風景が映し出されていた。
「……これはどこでしょうか?」
「あたしの家の庭なのだ。放課後になると庭に出してもらえるようにママに頼んでおいたのだ」
調部長の問い掛けに、わっけーはにこにこと答えている。だが、これをこの場の誰も理解できなかった。
「人の事言えないんだけどさ、わっけーはテニス部はいいわけ?」
栞が問い掛けるが、
「わーっはっはー、そんな事は大事の前の小事。家の事情とも言っておけばどうにかなるのだ」
わっけーは大笑いしながら答えていた。これには人の事の言えない栞は黙り込むしかなかった。
栞もレオンの事があって以降、まったく陸上部に顔を出していない。朝夕の自主練習こそしているが、部活をさぼる事になるとは思ってもみなかった。レオンの事をこのまま放っておけるわけがないし、仕方のない事だろう。
「さて、早速動かすのだよ」
わっけーはノートパソコンを空いていたテーブルに乗せると、早速キーボードとマウスを使って何やら始める。
ENTERキーで起動させたわっけーは、マウスをクリックしている。するとモニタに映し出された映像が徐々に上空へと移動していた。
「うん、うまくいっているのだ。昨夜2時間のテストしかしていなかったから、まだまだ不安があったからなー」
ほっとした表情を見せるわっけー。そして、すかさず十字キーの上を押して機体を移動させている。
「ねえ、わっけー……。これって一体?」
「ふふん、あたしが組んだ飛行機械から送られてくる映像なのだ。現地に赴いてもいいのだけど、相手が相手ゆえに危険だからな。それで遠隔操作の飛行機械を用意したのだ」
わっけーから返ってきた答えに、栞たちは絶句してしまった。
普段は声が大きいだけで天然風の振る舞いの多いわっけーだが、実はものすごく頭のいい少女だとは思えなかったからだ。栞はテスト結果を見たりだとか、直に家まで行って話をしたというのに、今回も驚いていた。それだけ普段とのギャップが大きいのである。
「さて、このまま例の廃工場まで飛んでいくのだ」
驚く栞たちを尻目に、わっけーはパソコンを操作して飛行機械を順調に飛ばしていく。
「モニタが小さいから前方しか映せないのが痛いけど、画像は鮮明だからよく見えるのだ」
わっけーは一人ではしゃいでいるようにも見える。そして、10分もすれば飛行機械は浦見市の外れにある廃工場へと到着していた。
「ここがおじさんの最後の記録があった廃工場なのだ。いかにも打ち捨てられた感じのある工場で、いい味が出ているのだ」
どういうわけか興奮気味に話すわっけーである。こういうのが好きなのだろうか。
しかし、興奮したのも一瞬で、すぐに近くの森の中へと飛行機械を移動させていく。十字キーとマウスで器用に飛行機械を操作しながら、森の中を観察するわっけー。栞たちもその後ろで静かにその様子を見守っている。
「さすがに管理が行き届いていないのか、ずいぶんと荒れていますね」
調部長は画面を見ながら呟いている。
「あの会長さんも、持っているだけって感じでしたものね。これだけ荒れてしまうのも無理はないでしょうね」
それに反応する栞である。
二人の言う通り、工場もずいぶんと荒れ果てた様子だったが、森の中もかなり自然な状態になっていた。
そんな時だった。飛行機械の映し出す景色に違和感を感じた。
「わっけー、今のところ。今のところもう一度映し出せるかしら」
「どうしたのだ、しおりん」
「いいから、5秒くらい前の場所へもう一度!」
「わ、分かった」
あまりに栞が叫ぶものだから、わっけーは仕方なくさっきの場所へと戻る。
さっきの場所に戻ったところで、栞がじっと画面を凝視している。一体何を見つけたというのだろうか。
「そこ、地面のあたりをズームできないかしら」
「わ、分かったのだ」
栞の言葉に、地面をズームアップするわっけー。すると、さすがにわっけーや調部長たちも何かに気が付いたようである。
「何か埋まっていますね」
「そうなのだ。って、これってまさか……」
わっけーは何かに気が付いてさらに拡大する。そして、何かに気が付いて思わず動きを止めてしまった。
「わっけー?」
異変に気が付いた栞が声を掛ける。
「……見つけたのだ」
「何をですか?」
わっけーの呟きに調部長が問い掛ける。
「おじさんの、痕跡。間違いない、おじさんはここに立ち寄っている」
確信めいたわっけーは、映し出している画像を保存している。そして、すぐさま飛行機械を真上へと上昇させている。上空まで出たところで真下にあるカメラに画像を切り替えるわっけー。
「ここに、おじさんの手掛かりがあるんだ!」
そう叫ぶわっけーの表情は、見た事がないくらいに険しい顔になっていた。
「わーっはっはっはー、今日はちょっとみんないいかな?」
部室に乱入するなり上機嫌なわっけーに、栞たちは思わずびっくりしてしまっていた。
「ど、どうされたのですか、脇田さん。ずいぶんと上機嫌ですが……」
「うむ、これを見てほしいのだ」
わっけーは持っていた鞄からノートパソコンを取り出す。それを起動させると、モニタにどこかの風景が映し出されていた。
「……これはどこでしょうか?」
「あたしの家の庭なのだ。放課後になると庭に出してもらえるようにママに頼んでおいたのだ」
調部長の問い掛けに、わっけーはにこにこと答えている。だが、これをこの場の誰も理解できなかった。
「人の事言えないんだけどさ、わっけーはテニス部はいいわけ?」
栞が問い掛けるが、
「わーっはっはー、そんな事は大事の前の小事。家の事情とも言っておけばどうにかなるのだ」
わっけーは大笑いしながら答えていた。これには人の事の言えない栞は黙り込むしかなかった。
栞もレオンの事があって以降、まったく陸上部に顔を出していない。朝夕の自主練習こそしているが、部活をさぼる事になるとは思ってもみなかった。レオンの事をこのまま放っておけるわけがないし、仕方のない事だろう。
「さて、早速動かすのだよ」
わっけーはノートパソコンを空いていたテーブルに乗せると、早速キーボードとマウスを使って何やら始める。
ENTERキーで起動させたわっけーは、マウスをクリックしている。するとモニタに映し出された映像が徐々に上空へと移動していた。
「うん、うまくいっているのだ。昨夜2時間のテストしかしていなかったから、まだまだ不安があったからなー」
ほっとした表情を見せるわっけー。そして、すかさず十字キーの上を押して機体を移動させている。
「ねえ、わっけー……。これって一体?」
「ふふん、あたしが組んだ飛行機械から送られてくる映像なのだ。現地に赴いてもいいのだけど、相手が相手ゆえに危険だからな。それで遠隔操作の飛行機械を用意したのだ」
わっけーから返ってきた答えに、栞たちは絶句してしまった。
普段は声が大きいだけで天然風の振る舞いの多いわっけーだが、実はものすごく頭のいい少女だとは思えなかったからだ。栞はテスト結果を見たりだとか、直に家まで行って話をしたというのに、今回も驚いていた。それだけ普段とのギャップが大きいのである。
「さて、このまま例の廃工場まで飛んでいくのだ」
驚く栞たちを尻目に、わっけーはパソコンを操作して飛行機械を順調に飛ばしていく。
「モニタが小さいから前方しか映せないのが痛いけど、画像は鮮明だからよく見えるのだ」
わっけーは一人ではしゃいでいるようにも見える。そして、10分もすれば飛行機械は浦見市の外れにある廃工場へと到着していた。
「ここがおじさんの最後の記録があった廃工場なのだ。いかにも打ち捨てられた感じのある工場で、いい味が出ているのだ」
どういうわけか興奮気味に話すわっけーである。こういうのが好きなのだろうか。
しかし、興奮したのも一瞬で、すぐに近くの森の中へと飛行機械を移動させていく。十字キーとマウスで器用に飛行機械を操作しながら、森の中を観察するわっけー。栞たちもその後ろで静かにその様子を見守っている。
「さすがに管理が行き届いていないのか、ずいぶんと荒れていますね」
調部長は画面を見ながら呟いている。
「あの会長さんも、持っているだけって感じでしたものね。これだけ荒れてしまうのも無理はないでしょうね」
それに反応する栞である。
二人の言う通り、工場もずいぶんと荒れ果てた様子だったが、森の中もかなり自然な状態になっていた。
そんな時だった。飛行機械の映し出す景色に違和感を感じた。
「わっけー、今のところ。今のところもう一度映し出せるかしら」
「どうしたのだ、しおりん」
「いいから、5秒くらい前の場所へもう一度!」
「わ、分かった」
あまりに栞が叫ぶものだから、わっけーは仕方なくさっきの場所へと戻る。
さっきの場所に戻ったところで、栞がじっと画面を凝視している。一体何を見つけたというのだろうか。
「そこ、地面のあたりをズームできないかしら」
「わ、分かったのだ」
栞の言葉に、地面をズームアップするわっけー。すると、さすがにわっけーや調部長たちも何かに気が付いたようである。
「何か埋まっていますね」
「そうなのだ。って、これってまさか……」
わっけーは何かに気が付いてさらに拡大する。そして、何かに気が付いて思わず動きを止めてしまった。
「わっけー?」
異変に気が付いた栞が声を掛ける。
「……見つけたのだ」
「何をですか?」
わっけーの呟きに調部長が問い掛ける。
「おじさんの、痕跡。間違いない、おじさんはここに立ち寄っている」
確信めいたわっけーは、映し出している画像を保存している。そして、すぐさま飛行機械を真上へと上昇させている。上空まで出たところで真下にあるカメラに画像を切り替えるわっけー。
「ここに、おじさんの手掛かりがあるんだ!」
そう叫ぶわっけーの表情は、見た事がないくらいに険しい顔になっていた。
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