ひみつ探偵しおりちゃん

未羊

文字の大きさ
155 / 182

第155話 進展

しおりを挟む
 レオンの騒動から数日が経った。
 わっけーの仕掛けた発信機だが、いよいよトラックの方が動きが無くなってしまう。しばらく送られ続けていた映像と発信機の座標から、どうやら乗り捨てられたようである。だが、靴の方には気付かれていないらしく、こちらはまだ足元からの景色を映し出していた。
 水崎警部はこの情報を元に全国の警察と連絡を取りながら、レオン包囲網を敷いていった。もちろん、そのためにレオン・アトゥールの情報も渡していた。おそらく、捕まるのは時間の問題だろうと思われていた。
 そんな中、レオンの妻である理恵の母親も任意ながら警察から聴取を受けていた。理恵の母親は既に観念しているらしく、知っている限りの事を警察に話していた。だが、レオンのしている事に積極的に加担していたわけではなく、知っていながら黙っていたという事で、犯人隠避の罪に問われる事になった。十分反省しているという事もあって、逮捕までには至らなかったようである。多分、そこには理恵への影響も考慮されたのだろう。父親は犯罪者として逃亡中な上に、母親まで逮捕されたとあっては、思春期の娘には影響が大きすぎると考えられたのだ。
 この寛大な対処に、理恵の母親は涙ながらに水崎警部に頭を下げていた。
 ただ、これには監視が付くという事は伝えておいた。当たり前の話である。今までレオンのしでかした事を知っていて黙っていたのだから、信用はないのだから。それでも、一応見逃してもらえるわけだから、理恵の母親は涙を流して喜んだのである。
 とりあえずは理恵の母親は家で監視を受けながら一人暮らし。理恵は引き続きわっけーの家で暮らす方向で話は決着したのだった。

 一時的かも知れないが、レオンの脅威が去った事で、草利中学校の校長室に改めて捜査のメスが入る。夏休みに栞たちが仕掛けた隠しカメラは、その位置を事前に提供していたのだが、重要証拠としてすべて回収されていった。
 とにかく、校長室は隅々まで警察官たちの手によって調べ上げられた。すると、いろんなものが発見されたのだった。机の引き出しに二重底だったり、本棚に二重壁だったり、わずかなスペースを作ってはいろんなものが隠されていた。それらはすべて回収され、鑑定に回される事となった。まったく、どれだけ好き勝手に校長室を使っていたのかが分かるというものだ。
 長らく校長室を不在にしていた校長は、あまりの事に反省をしていた。
「いやはや。これほどやってくれているとはな。四方津組の残党の対処に力を割いてしまったがゆえに、まさかこんな事になっていようとはな……」
 あまりの光景に、捜査に同席していた校長は苦笑いをするしかなかった。
 だが、これで草利中学校に蔓延っていた悪い噂は解決に向かっていくだろう。そう思えば、まだ未解決の事があるとはいえど、ひとまずは胸を撫で下ろせるというものである。
 ただこうなってくると次の問題は、調査員たちの扱いという事になるだろう。
 そもそもこの調査員というのは、草利中学校の噂の真相を暴くために結成されたのである。もしこれで噂がすべて解決するような事になれば、この調査員たちの役目は終わってしまう事になる。
 真彩や勝は現役の中学生であるために、調査員の役目を終えてもそのまま学校に通い続けるわけだが、問題は栞と千夏の二人だった。
 栞と千夏の二人はそもそも市役所の一職員でしかない。栞はその見た目から、千夏は教員免許を有していた事から送り込まれただけなのである。
 これで事態が解決したとなると、二人は晴れてお役御免となり、ただの市の職員に戻る事になる手はずとなっているはずである。
 二人の扱いについては、市役所も慎重に構えているようだ。
 その理由として、現在が11月という中途半端な時期になる事である。となると、せめて年末までは引き延ばしたいと考えるものだろう。結果、市役所としては結論は先送りになった。栞と千夏の二人から聞き取りを行った上で、最終的な結論を下す事にしたのである。
 市役所からの通達を受け取った栞は、その日の夜、ベッドの上でごろんと転がって天井を見上げていた。アクティブな栞にしては珍しい光景である。
(そっかあ……。すっかり忘れてたわね、自分の役目が学校の噂の調査だっていう事を……)
 栞はすっかり失念していたようだった。大体はバーディア一家のせいだろう。レオンという脅威のせいで、そっちに意識が向いてしまって栞の頭から抜け落ちていたのである。改めて、レオンという男一人の影響力を思い知らされていた。
(でも、どうしようかしらね。早ければ年末で学校をやめて市の職員に戻る事になるのかぁ……。元々市の職員なんだから、中学生やってる方がおかしいものね)
 右に左に寝返りを打ちながら、栞は悶々と考え続けていた。
 しかし、いくら考えてみたところで結論は簡単には出なかった。
(うーん、参ったわね。これだけ結論が出せないとなると、今の生活、結構気に入っちゃてるのかも知れないわね……)
 栞は結局結論が出せなかったようだった。そして、そのまま知らない間にうとうとと眠ってしまい、次に目を覚ました時には朝を迎えようとしていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...