ひみつ探偵しおりちゃん

未羊

文字の大きさ
156 / 182

第156話 今後の行方

しおりを挟む
 悶々とした気持ちのまま、栞は学校へと登校していく。少し寝不足ではあったものの、登校中に事故るような愚かな事はしない栞である。
 学校へ着いて上履きに履き替えると、教室へと向かう。中に入ると真彩たちが居たので栞はいつも通りに挨拶を交わした。
「おはよう、みんな」
「おはよう、栞ちゃん」
「おはようだぞ、しおりん」
「おはようございます、栞ちゃん」
「……おはよう」
 それぞれから挨拶が返ってきた。当然ながらわっけーが一番うるさかった。
 一度学校にやってくれば、いつもの通りに元気になれた栞である。特にうるさいわっけーとのやり取りは、ずいぶんと気持ちが楽になったものである。
 普段はうるさくて煙たい存在であるわっけーだが、こういう気分の落ち込んだ時だと元気になれるのだ。
 給食を終えると、栞たちは示し合わせたかのように新聞部の部室へと向かった。
「失礼します」
 いつも通りノックをして中に入ると、そこにはやはり調部長と軽部副部長の二人が座っていた。
「ああ、高石さん。それとみなさんもご一緒で」
 調部長はいつも通りに気さくに迎えていた。軽部副部長は奥で相変わらずスマホを弄っている。ゲームをしていない姿はまず見た事がないくらいである。
 とりあえず、いつも通りゲームをし続ける軽部副部長は置いておいて、栞たちは部室の中の椅子に腰を掛ける。
 本来ならば部員ではないわっけーと理恵は追い出されるところだが、バリバリの関係者である以上、部室には無事に迎え入れられていた。
「それで、今日のお話は何でしょうか」
 調部長が切り出した。すると、それを受けてどういうわけか栞に視線が集中する。代表して話をしてというアピール他ならなかった。
 これには栞も仕方ないなとため息を吐き、調部長と向き合った。
「はっきり申しますと、今後の事についてですね」
「今後……ですか」
 栞の言葉に、腕を組む調部長である。
「まずは調部長たちですね。今年度末には中学を卒業してしまうのですから、今後をどうするかというのは常に頭にあるはずです」
 これには、調部長は少し首を捻っていた。これを見た栞は、まだ結論が出ていないのだろうと感じた。
 ところが、その直後に調部長はにっこりと微笑んだ。これには栞たちは驚いた。
「詩音、妹のリリックがせっかくこっちに来たのです。高校を卒業するまでは日本で過ごしますよ。これは私の両親にも報告済みです。ただ、その後はまだ具体的には決めていませんが、私はお父様の事業を引き継ぐ予定でいます」
 調部長ははっきりと言い切った。これには詩音が表情を明るくしていた。
「レオンを取り逃してしまいましたからね。捕まるまでは解決とは言えません。おめおめと帰るわけにはいかないのですよ」
 詩音の事もあるが、レオンの事もある。いろいろと苦慮した上での判断のようだった。
「私からも、高石さんにお聞きします。あなたは今後どうするおつもりなのですか?」
 調部長から逆に聞き返される栞である。
 これには栞は言葉を詰まらせてしまう。
 無理もない話だ。栞は本来は10個も年上なのだ。中学生をしている事自体がおかしな話である。
「あー、そっか。栞ちゃんって元々……」
「うむ、市役所の職員なのだ」
 ごまかそうとした真彩に対して、わっけーがドストレートにばらしてしまう。
「えっ、栞ちゃんって大人だったの?!」
 詳しく知らなかった理恵がもの凄く驚いていた。
「ごめんね、理恵ちゃん。私、本当は23歳なのよ。この通りにね」
 栞は常に持ち歩いている運転免許証を取り出して、理恵に見せた。そこの生年月日を確認する限り、確かに理恵たちよりはるかに年上であった。
「だますつもりはなかったのよ。全部うちの課長が悪いんだから」
 しかめっ面で言い放つ栞である。
 子どもに見えるからという理由だけで調査員に選ばれたのだから、そりゃまあ文句の一つや二つはあるわけである。なんといっても、この年で中学生の中に紛れるというのは恥ずかしいとしか言いようがないのだ。
 今でこそ慣れてしまってはいるが、最初のうちはただのコスプレとしか思っていなかったし、同僚の千夏には大笑いをされたくらいなのだから。ここにきて積もり積もった感情が爆発しているといっても過言ではない。
「しかし、どうなさるのです?」
「そうですね。市の方と相談して、早ければ年末には転校という形で出て行く事になりますね」
 調部長が確認すると、栞は今後の考えられる予定を全部話した。
 一つは最初に答えた通り、年末の時点で終了するパターン。
 別の一つは年度末、つまり3月末の時点で終了するパターン。
「まだあるという事は、つまり……」
「ええ、このまま中学を卒業してしまうパターンですね。調査を打ち切りにするなら、居る意味がないとは思いますし、何より学歴に中学校卒業が2回出てくる事になるので面倒なんですよ」
 栞はため息を吐きながら、最後のパターンを説明した。
「そうだよね。私たち調査員の元々の目的は、草利中学校の噂の真相を解き明かす事だもの。今回の事で解決してしまえば、解散というのが普通の考え方よね」
 真彩も調査員であるがために、すぐにそれを理解したのだった。
 ひとまずは解決しそうになっている草利中学校の噂ではあるものの、それはまた別の問題を発生させていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...