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第25話 青の背に迫る紅
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モノトーンのアジトに戻ったブルーエ。だが、そこには残酷な現実が待ち受けていた。
自室に戻る直前、とある人物と出会ってしまったのである。
「ブルーエ、また失敗したのね」
「ひっ、ま、マジェ様……」
モノトーン四天王よりも上位の存在であるマジェだった。仮面のせいで表情はよく分からないが、そのまとうオーラがただ事ではない事を物語っている。
ブルーエは冷や汗を流しながら、一歩後ずさりをしてしまう。そのくらいには恐ろしいオーラがマジェから放たれているのである。
「お、お許し下さい、マジェ様。つ、次こそは必ず奴らを完璧に叩きのめしてみせます」
表情が強張りながら、必死に許しを乞うブルーエ。だが、どんなに頑張っても全身の震えが止まらない。その場に立っているのがやっとである。
「お前はそう言って、もう何度失敗してきた? モノトーンに無能な奴は要らない。今この場で消してやってもいいのよ?」
マジェはそう言いながら、じわりじわりとブルーエに近付いていく。
「まったく、パステルオレンジのような面倒な相手ならともかく、覚醒したての未熟な戦士どもに後れを取るなんてねぇ。あなたにはモノトーン四天王としての矜持はないのかしら?」
「ひぃい……」
マジェの気迫に、ブルーエは完全に押されてしまっている。
「まったく、負け犬らしく地面に這いつくばりなさい!」
マジェが語気を強めてそう言うと、そのオーラが一気に強まる。すると、それに伴ってブルーエがそのオーラに押し潰されてしまい、ブルーエは無様にも地面にひれ伏すような形に叩き潰されてしまった。
「くっ……」
あまりの圧力に、ブルーエは体を起こせないでいる。
「あははは、負け犬にはそのような姿が一番似合っているわね」
マジェはその姿を見て大声で笑っている。見下されているブルーエにとっては、この上ない屈辱である。
「ブルーエ」
「……はい」
マジェが重い声でブルーエに語り掛ける。
「分かっているんでしょうね? 次が本当に最後よ。次も失敗するようであるなら、……言わなくても分かるわよね?」
「……はい。分かって、おります」
マジェの言葉に、圧力に耐えながらブルーエは答える。すると、ふっとさっきまで掛かっていた圧力が消え去った。
「すべての世界の支配はお父様の願い。こんなところで躓いているわけにはいかないのよ。さっさとあいつらを葬り去りなさい、いいわね?」
「は、はい。すぐに準備致します」
ブルーエがそう答えると、マジェは振り返る事なく、無言のまま歩いて去っていった。その後姿を見送ったブルーエは、ぎりぎりと強い歯ぎしりをしながら悔しさに耐えていた。
その頃の千春たちは、ゴールデンウィーク明けの授業で苦しんでいた。少し休んでいた後の勉強ほど嫌なものはない。
それに加えて、さすがに5月ともなれば外気温が上がってくる時期。それはより一層、千春のやる気を削いでいくのである。
「はあ、やる気が出ねえ……」
「いや、千春はそもそもやる気なんてないでしょ」
「あのなあ……」
ぐでーっと机に突っ伏して愚痴る千春に、美空からは冷酷なツッコミが飛んでくる。それに千春が勝ち目のない反論をすると言うのはいつもの光景である。真後ろでそれを見せつけられている杏は、何をやってるのか分からなくて、つい首を傾げてしまうようだ。
「ほら、秋葉さんが困ってるみたいだから、しゃんとしなさいよ、千春」
「いてっ! なんでそこで秋葉さんの名前が出てくんだよ。俺を叱るダシにしてやるな!」
喧々囂々の相変わらずのけんかである。その様子を見ていた杏は、最初こそ訳が分からなくてぽかーんとしていたが、あまりに続く様子がおかしかったらしく、しまいには笑い出していた。
「お二人って仲がいいんですね」
杏から声が掛けられると、千春と美空がぴたりと動きを止める。
「仲なんて良くねえよ。ただの腐れ縁だ」
「そうよ。千春はちゃんと見ておかないとよくさぼるから気にしてるだけよ」
二人揃って杏の言葉を否定しているが、それとは反対に二人の息が揃っている。これで仲が良くないなんていうのは嘘だと分かるくらいだ。
「そ、そうなんですね。まぁそういう事にしておきます」
転校してきたばかりの杏だったが、二人の反応に下手に突っ込んではいけないと悟ったようだった。まったく、知り合ったばかりの人間にまで悟られてしまうとは、この二人にはまったく自覚がないようだ。
それにしても、ツンとした表情ばかりだった杏がこれだけの表情を見せるとは、千春と美空の漫才はそれだけレベルが高いという事だろうか。周りのクラスメイトたちも、二人のやり取りより杏の表情の方に驚いていた。
そうやって、1日が終わって部活も終わらせた二人がようやく帰ろうとしていると、チェリーとグローリの2体が血相を変えて走ってくるではないか。
「どうしたの、二人とも」
美空が心配になって声を掛けると、
「大変だ。また奴らが現れた」
チェリーが息を整えながら報告してきた。
聖獣は力は与えるが、聖獣自身では戦えても倒す事ができない。そのもどかしさゆえに、実に必死な表情である。
「またか。本当に諦めの悪い奴らだな」
「それで、どっちなの?」
「以前の商店街の方よ。今度は違うモノトーンを出現させて暴れてるわ」
千春と美空がそれぞれの反応を示す中、グローリが状況を報告する。
「しゃーねえな、行くか」
「うん」
千春と美空は決断すると、
「パステル・カラーチェンジ!」
パステルピンクとパステルシアンに変身して、化け物が現れた商店街へと向かったのだった。
自室に戻る直前、とある人物と出会ってしまったのである。
「ブルーエ、また失敗したのね」
「ひっ、ま、マジェ様……」
モノトーン四天王よりも上位の存在であるマジェだった。仮面のせいで表情はよく分からないが、そのまとうオーラがただ事ではない事を物語っている。
ブルーエは冷や汗を流しながら、一歩後ずさりをしてしまう。そのくらいには恐ろしいオーラがマジェから放たれているのである。
「お、お許し下さい、マジェ様。つ、次こそは必ず奴らを完璧に叩きのめしてみせます」
表情が強張りながら、必死に許しを乞うブルーエ。だが、どんなに頑張っても全身の震えが止まらない。その場に立っているのがやっとである。
「お前はそう言って、もう何度失敗してきた? モノトーンに無能な奴は要らない。今この場で消してやってもいいのよ?」
マジェはそう言いながら、じわりじわりとブルーエに近付いていく。
「まったく、パステルオレンジのような面倒な相手ならともかく、覚醒したての未熟な戦士どもに後れを取るなんてねぇ。あなたにはモノトーン四天王としての矜持はないのかしら?」
「ひぃい……」
マジェの気迫に、ブルーエは完全に押されてしまっている。
「まったく、負け犬らしく地面に這いつくばりなさい!」
マジェが語気を強めてそう言うと、そのオーラが一気に強まる。すると、それに伴ってブルーエがそのオーラに押し潰されてしまい、ブルーエは無様にも地面にひれ伏すような形に叩き潰されてしまった。
「くっ……」
あまりの圧力に、ブルーエは体を起こせないでいる。
「あははは、負け犬にはそのような姿が一番似合っているわね」
マジェはその姿を見て大声で笑っている。見下されているブルーエにとっては、この上ない屈辱である。
「ブルーエ」
「……はい」
マジェが重い声でブルーエに語り掛ける。
「分かっているんでしょうね? 次が本当に最後よ。次も失敗するようであるなら、……言わなくても分かるわよね?」
「……はい。分かって、おります」
マジェの言葉に、圧力に耐えながらブルーエは答える。すると、ふっとさっきまで掛かっていた圧力が消え去った。
「すべての世界の支配はお父様の願い。こんなところで躓いているわけにはいかないのよ。さっさとあいつらを葬り去りなさい、いいわね?」
「は、はい。すぐに準備致します」
ブルーエがそう答えると、マジェは振り返る事なく、無言のまま歩いて去っていった。その後姿を見送ったブルーエは、ぎりぎりと強い歯ぎしりをしながら悔しさに耐えていた。
その頃の千春たちは、ゴールデンウィーク明けの授業で苦しんでいた。少し休んでいた後の勉強ほど嫌なものはない。
それに加えて、さすがに5月ともなれば外気温が上がってくる時期。それはより一層、千春のやる気を削いでいくのである。
「はあ、やる気が出ねえ……」
「いや、千春はそもそもやる気なんてないでしょ」
「あのなあ……」
ぐでーっと机に突っ伏して愚痴る千春に、美空からは冷酷なツッコミが飛んでくる。それに千春が勝ち目のない反論をすると言うのはいつもの光景である。真後ろでそれを見せつけられている杏は、何をやってるのか分からなくて、つい首を傾げてしまうようだ。
「ほら、秋葉さんが困ってるみたいだから、しゃんとしなさいよ、千春」
「いてっ! なんでそこで秋葉さんの名前が出てくんだよ。俺を叱るダシにしてやるな!」
喧々囂々の相変わらずのけんかである。その様子を見ていた杏は、最初こそ訳が分からなくてぽかーんとしていたが、あまりに続く様子がおかしかったらしく、しまいには笑い出していた。
「お二人って仲がいいんですね」
杏から声が掛けられると、千春と美空がぴたりと動きを止める。
「仲なんて良くねえよ。ただの腐れ縁だ」
「そうよ。千春はちゃんと見ておかないとよくさぼるから気にしてるだけよ」
二人揃って杏の言葉を否定しているが、それとは反対に二人の息が揃っている。これで仲が良くないなんていうのは嘘だと分かるくらいだ。
「そ、そうなんですね。まぁそういう事にしておきます」
転校してきたばかりの杏だったが、二人の反応に下手に突っ込んではいけないと悟ったようだった。まったく、知り合ったばかりの人間にまで悟られてしまうとは、この二人にはまったく自覚がないようだ。
それにしても、ツンとした表情ばかりだった杏がこれだけの表情を見せるとは、千春と美空の漫才はそれだけレベルが高いという事だろうか。周りのクラスメイトたちも、二人のやり取りより杏の表情の方に驚いていた。
そうやって、1日が終わって部活も終わらせた二人がようやく帰ろうとしていると、チェリーとグローリの2体が血相を変えて走ってくるではないか。
「どうしたの、二人とも」
美空が心配になって声を掛けると、
「大変だ。また奴らが現れた」
チェリーが息を整えながら報告してきた。
聖獣は力は与えるが、聖獣自身では戦えても倒す事ができない。そのもどかしさゆえに、実に必死な表情である。
「またか。本当に諦めの悪い奴らだな」
「それで、どっちなの?」
「以前の商店街の方よ。今度は違うモノトーンを出現させて暴れてるわ」
千春と美空がそれぞれの反応を示す中、グローリが状況を報告する。
「しゃーねえな、行くか」
「うん」
千春と美空は決断すると、
「パステル・カラーチェンジ!」
パステルピンクとパステルシアンに変身して、化け物が現れた商店街へと向かったのだった。
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