真夜中血界

未羊

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第59話

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 巡査部長たちが業務に戻ったところで、一本の電話がかかってくる。

「はい、こちら襟峰市警察です。事件ですか、事故ですか?」

 犬ばあさんに呼び出されていた警察官が受話器を取る。

『あっ、襟峰警察でしょうか。私は雑誌社の編集長で種田たねだと申します。ちょっとお話よろしいでしょうか』

 電話の相手は雑誌の編集長だった。
 まともな相手をしたくない警察官は、適当に言って電話を切ろうと考えた。
 ところが、念のために話を聞いてみるとそういう風にもいかなくなってしまった。

「それは、本当ですか?」

『ああ、私たちが体を張って手に入れた情報だから間違いない。まったく生きた心地がしなかったわね』

 電話越しの編集長の話を、警察官は信じられるように感じてしまっていた。

「分かりました。では、巡査部長におつなぎしますので、そちらでもう一度同じ話をお願いします」

『そうですか。では、頼みます』

 一度保留にして、警察官はすぐさま内線で巡査部長へと電話を繋げる。

『どうした。何があった』

「巡査部長、興味深い電話がかかってきましたのでつなぎます。後はお願いします」

『少しは落ち着いたらどうだ』

「落ち着いていられませんよ。では、巡査部長、後のことは頼みます」

 そうとだけ言うと、警察官は電話を切ってしまった。
 巡査部長はやれやれと思いつつ、保留を解除して電話に出る。

「はい、お電話代わりました。巡査部長の堀田ほったです」

『これはお忙しいところ失礼致します。雑誌社の編集長で種田という者です。襟峰市の怪異事件についてちょっとお話したことがございますが、お時間は大丈夫でしょうか』

 保留が解除されたところで、編集長は改めて話を始めようとしている。

「ええ、気にしなくても大丈夫。いつもは面倒腐りな部下が興奮していたのだから、私としても興味があるというものだ」

 問題ないという返答を得たので、編集長が話を始める。
 最初こそ話半分に聞いていた巡査部長も、その表情がじわじわと変わっていく。

「……そのデータ、こちらに送って頂くことはできますかな?」

『送らせて頂きますよ。元々そのつもりでデータ収集をしておりましたから』

 編集長が通話口から離れて何かを指示しているようだ。近くには数名の人がいると、巡査部長は長年の勘ですぐに見抜いていた。

『データの準備ができましたので、メールアドレス……、襟峰警察署のメールアドレスで大丈夫ですかね』

「構わんよ。後はこっちで捜査をしておく。こっちの命にだって係わることだ」

『……何かおありのようですね』

「詳しくは言えないがな。私たちもちょっとな……」

『分かりました。それでしたら、とにかくに首周りにご注意を。首固定用のコルセットがおすすめですよ』

 編集長にこう言われては、巡査部長も苦笑いをするしかなかった。あっちもあっちでお見通しなのである。

『今、警察署あてのメールアドレスで送信しました。コピーを取りましたら削除をお願いします』

「分かった。しかし、何のデータを送ったんだ?」

『見れば分かりますよ。それでは、襟峰市の怪異事件の解決のために頑張りましょう。一度電話を切ります』

「お、おい!」

『ツー、ツー、ツー、ツー……』

 巡査部長が叫ぶも、通話は切れてしまっていた。

「仕方あるまい。送られてきたものをチェックしようか」

 巡査部長は、編集長から送られてきたデータをパソコンに落とし、早速データを確認する。
 そこに映し出されたものに、衝撃を受けてしまう。

「やはり……、やはりそうだったのか」

 巡査部長は衝撃を受けていた。
 ますます疑惑は深まったが、これでも巡査部長は動けない。

(もっと決定的な証拠を押さえねば……)

 悩ましく思う巡査部長は、両腕を組んで天井を見上げたのだった。
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