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第60話
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翌朝、犬ばあさんの件に関わった警察官は、疲れ切った表情で出勤してきた。
「ああ、おはよう。その分だとお前たちは酷い目に遭ったようだな」
「聞いて下さいよ、巡査部長。窓が割られた上に部屋の中を激しく荒らされてました。一応ケガはなかったんですが、首用のコルセットがボロボロでしたよ」
「俺もですよ。妻の悲鳴で目を覚ましましたからね」
すっかり疲れた顔をして、昨日話をしていた警察官二人は巡査部長の前に姿を見せた。
「あれ、巡査部長は平気だったんですか?」
「ああ、家中の雨戸を閉めておいたからな。雨戸のないところも最初から格子が付いていたから、侵入されずに済んだよ」
巡査部長は涼しい顔をしていた。
「お前たち、家の状況はそのままにしてあるか?」
「はい、妻にも片付けるなとは指示してきています。現場は俺の部屋だけでしたし、気味悪がりながらも了承してくれました」
「俺のところもですよ」
二人の証言を聞いて、巡査部長はすぐに動き始める。
「よし、すぐに現場検証をするぞ。鑑識は既に呼んであるから、すぐにでも出るぞ」
「はっ!」
巡査部長たちは、すぐさま自分たちの家へ現場検証に出かけたのだった。
三件とも回ってみたが、どれもこれもひどい被害だった。
同行させられた鑑識も、自分一人だけだった理由になんとなく納得がいったようである。
「なるほど、例の怪異事件の現場検証でしたか。それなら、私一人だけが呼ばれたのにも納得がいきます」
「万一に備えて被害は小さくしておきたいからな。あまり騒ぎを大きくしたくないからサイレンも鳴らさなかったんだ」
「堀田さんの家のあれ、なんでしょうかね。丸く大きく凹んでいましたけど」
「ああ、おそらく犬の頭蓋骨でできた陥没だろう。だが、一匹も発見できなかったのは、早い段階で諦めたということなんだろうな」
「なるほど……。それで凹みに血痕があるというわけですか」
鑑識は状況の推測を聞いて、雨戸に血痕が付着している理由に納得がいった。
調べてみれば血液型や動物の種類などが分かるだろう。
「他の二人の家は、本人たちの部屋だけがピンポイントでガラスを破られてましたね。カーテンのおかげで破片は窓際にほとんど落ちていました。そこにも同じように血痕が残されていましたので、調べてみます。一致していたら怖いですが」
「ああ、頼むぞ。それと、しばらくは私の家で寝泊まりしてくれ」
「ははっ、そうさせてもらいますよ」
鑑識は怖くなって引きつった笑いを浮かべるばかりだった。
「……これでよしっと、すぐに調べてみますよ。夜の8時になったら声をかけて下さいね」
「ああ、そうだな。頼むぞ」
巡査部長と警察官二人の家の現場検証を終えて、巡査部長たちは一度警察へと向かっていく。
警察官二人はしばらくは窓は段ボールで応急処置である。
入れ直したところでまた割られる可能性があるので、こればかりは我慢するしかなかった。
警察か二人はあまりにも情けない状態に泣きそうになっていたものの、事件解決までは我慢してもらうしかないというものだ。
(予想通り、私たちをすぐに襲ってきたか……。犬ばあさんの犬たちは、主を守ろうとして害をなす連中をすぐさま消し去ろうというわけか。あの種田とかいう女性もその対象だろうが、無事なのはこの襟峰市から遠くにいるからということなんだろうな)
巡査部長はいろいろと考えを巡らせている。
なんにしても事態好転のための証拠を出してもらえたのだ。
怪異事件が人為的なものであるのなら、街を守る警察官として何としても解決したい。巡査部長は強く思っている。
(もう少し証拠をそろえたい。犬ばあさんの家の犬を調べさせてもらえば、すぐにでも分かるのだろうが……。あのばあさんは一筋縄じゃいかないからな)
まだまだ難しい状況に、巡査部長はため息を漏らすのだった。
「ああ、おはよう。その分だとお前たちは酷い目に遭ったようだな」
「聞いて下さいよ、巡査部長。窓が割られた上に部屋の中を激しく荒らされてました。一応ケガはなかったんですが、首用のコルセットがボロボロでしたよ」
「俺もですよ。妻の悲鳴で目を覚ましましたからね」
すっかり疲れた顔をして、昨日話をしていた警察官二人は巡査部長の前に姿を見せた。
「あれ、巡査部長は平気だったんですか?」
「ああ、家中の雨戸を閉めておいたからな。雨戸のないところも最初から格子が付いていたから、侵入されずに済んだよ」
巡査部長は涼しい顔をしていた。
「お前たち、家の状況はそのままにしてあるか?」
「はい、妻にも片付けるなとは指示してきています。現場は俺の部屋だけでしたし、気味悪がりながらも了承してくれました」
「俺のところもですよ」
二人の証言を聞いて、巡査部長はすぐに動き始める。
「よし、すぐに現場検証をするぞ。鑑識は既に呼んであるから、すぐにでも出るぞ」
「はっ!」
巡査部長たちは、すぐさま自分たちの家へ現場検証に出かけたのだった。
三件とも回ってみたが、どれもこれもひどい被害だった。
同行させられた鑑識も、自分一人だけだった理由になんとなく納得がいったようである。
「なるほど、例の怪異事件の現場検証でしたか。それなら、私一人だけが呼ばれたのにも納得がいきます」
「万一に備えて被害は小さくしておきたいからな。あまり騒ぎを大きくしたくないからサイレンも鳴らさなかったんだ」
「堀田さんの家のあれ、なんでしょうかね。丸く大きく凹んでいましたけど」
「ああ、おそらく犬の頭蓋骨でできた陥没だろう。だが、一匹も発見できなかったのは、早い段階で諦めたということなんだろうな」
「なるほど……。それで凹みに血痕があるというわけですか」
鑑識は状況の推測を聞いて、雨戸に血痕が付着している理由に納得がいった。
調べてみれば血液型や動物の種類などが分かるだろう。
「他の二人の家は、本人たちの部屋だけがピンポイントでガラスを破られてましたね。カーテンのおかげで破片は窓際にほとんど落ちていました。そこにも同じように血痕が残されていましたので、調べてみます。一致していたら怖いですが」
「ああ、頼むぞ。それと、しばらくは私の家で寝泊まりしてくれ」
「ははっ、そうさせてもらいますよ」
鑑識は怖くなって引きつった笑いを浮かべるばかりだった。
「……これでよしっと、すぐに調べてみますよ。夜の8時になったら声をかけて下さいね」
「ああ、そうだな。頼むぞ」
巡査部長と警察官二人の家の現場検証を終えて、巡査部長たちは一度警察へと向かっていく。
警察官二人はしばらくは窓は段ボールで応急処置である。
入れ直したところでまた割られる可能性があるので、こればかりは我慢するしかなかった。
警察か二人はあまりにも情けない状態に泣きそうになっていたものの、事件解決までは我慢してもらうしかないというものだ。
(予想通り、私たちをすぐに襲ってきたか……。犬ばあさんの犬たちは、主を守ろうとして害をなす連中をすぐさま消し去ろうというわけか。あの種田とかいう女性もその対象だろうが、無事なのはこの襟峰市から遠くにいるからということなんだろうな)
巡査部長はいろいろと考えを巡らせている。
なんにしても事態好転のための証拠を出してもらえたのだ。
怪異事件が人為的なものであるのなら、街を守る警察官として何としても解決したい。巡査部長は強く思っている。
(もう少し証拠をそろえたい。犬ばあさんの家の犬を調べさせてもらえば、すぐにでも分かるのだろうが……。あのばあさんは一筋縄じゃいかないからな)
まだまだ難しい状況に、巡査部長はため息を漏らすのだった。
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