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第63話
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事情聴取を終えて、堀田たちは外に出てくる。
獣医師からの聞き取りではいろいろと情報が出てきて、思わず興奮してしまったようだ。
「頭がい骨骨折とは、またずいぶんと重いけがをしているようだが、こんな状態でも今夜は外に出て走り回るのだろうな」
「でしょうね。奴らは犬ばあさんをぐっすり眠らせるように動いているみたいですしね」
堀田は勇人たちをパトカーに乗せながら話をしている。
「しかしだ。君たちは平気なのかい?」
「何がでしょうか」
堀田に尋ねられて、思わず聞き返してしまう勇人。
警察官が相手なので、勇人もさすがに丁寧語である。
「いや、俺が既に犬たちに襲われる身になっているというのに、関わって大丈夫かということだ」
「ああ、そのことですか。まあ、対策はありますよ」
堀田の質問に、勇人は答える。
「そうか。首にコルセットを巻いておくだけでも、ひと晩耐えきれたらしいからな。試してみるといい」
「ありがとうございます」
対策を聞かされて、勇人はお礼を言っておく。
「ですけれど、刑事さん」
「うん、なにかな?」
パトカーの中で都が堀田に声をかけている。
「その習性を使って、逆に捕まえることってできませんかね」
都の提案に思わず驚いてしまう。そんなことを中学生が言い出すのだから余計にだった。
「自分をおとりにするっていうのかい? まったく賛同できないね。君たちは若いし、警察官じゃない。命を投げ出すような真似はすべきではないと思うぞ」
だが、堀田は都の意見を却下していた。
理由は今述べた通りだ。中学生に対して、無駄に命を散らさせるわけにはいかないのだ。
「確かにそうかも知れませんが、俺たちはこの怪異事件をずっと追いかけているんだ。部長たちだけに負担を強いて、自分たちは安全になんてしてられない」
「ええ、狙われる対象になった今だからこそ、いよいよ反撃の時と思うのよ。少しでも早く、よしくんたちをこの襟峰市に戻れるようにしなきゃいけないのよ」
勇人や美幸の言葉に、堀田は言葉を失った。
まだ中学生や高校生だと思われる子どもたちが命を張ろうとしているのだ。
ならば、警察官である自分が負けていられるわけがなかった。
「よし、しばらく君たちの身柄は俺が預かろう。ただし、家には連絡させてもらうからな」
「そうこなくっちゃ」
「だったら、明るい間に対策をできるだけしておかないとな。今日からやるのか?」
勇人も興奮してきたのか、ずいぶんと前のめりな発言をしている。
「いや、今日はまだ実行に移せないな。準備を整えるには時間が短すぎる。まずは君たちの荷物をまとめて、俺の家まで来てもらうところからだな」
「了解だぜ」
「わ、私も頑張るわ」
「いとこの仇、取らせてもらうわ」
「いや、まだ死んでねえから!」
各々が気合いを入れる中、美幸の言葉に冷静にツッコミを入れる勇人である。
「おや、生存者がいたのか」
「ああ、部長の実の兄貴ですよ。今も病院で入院中なんです」
「そうか……」
勇人が答えると、堀田はさすがに表情を曇らせていた。
得体のしれないもののせいで、今もなお苦しむ者がいる。
その正体がしっかりと見え始めた今だからこそ、警察官としての使命に心が燃えてきているのである。
「一度君たちを家で降ろすから、準備ができたら襟峰警察署まで来てくれ」
「分かりました」
襟峰市内でも、いよいよ怪異事件の謎を解き明かす本格的な活動が始まった。
はたして、勇人たちはその正体を暴き、事件を解決することができるのだろうか。
獣医師からの聞き取りではいろいろと情報が出てきて、思わず興奮してしまったようだ。
「頭がい骨骨折とは、またずいぶんと重いけがをしているようだが、こんな状態でも今夜は外に出て走り回るのだろうな」
「でしょうね。奴らは犬ばあさんをぐっすり眠らせるように動いているみたいですしね」
堀田は勇人たちをパトカーに乗せながら話をしている。
「しかしだ。君たちは平気なのかい?」
「何がでしょうか」
堀田に尋ねられて、思わず聞き返してしまう勇人。
警察官が相手なので、勇人もさすがに丁寧語である。
「いや、俺が既に犬たちに襲われる身になっているというのに、関わって大丈夫かということだ」
「ああ、そのことですか。まあ、対策はありますよ」
堀田の質問に、勇人は答える。
「そうか。首にコルセットを巻いておくだけでも、ひと晩耐えきれたらしいからな。試してみるといい」
「ありがとうございます」
対策を聞かされて、勇人はお礼を言っておく。
「ですけれど、刑事さん」
「うん、なにかな?」
パトカーの中で都が堀田に声をかけている。
「その習性を使って、逆に捕まえることってできませんかね」
都の提案に思わず驚いてしまう。そんなことを中学生が言い出すのだから余計にだった。
「自分をおとりにするっていうのかい? まったく賛同できないね。君たちは若いし、警察官じゃない。命を投げ出すような真似はすべきではないと思うぞ」
だが、堀田は都の意見を却下していた。
理由は今述べた通りだ。中学生に対して、無駄に命を散らさせるわけにはいかないのだ。
「確かにそうかも知れませんが、俺たちはこの怪異事件をずっと追いかけているんだ。部長たちだけに負担を強いて、自分たちは安全になんてしてられない」
「ええ、狙われる対象になった今だからこそ、いよいよ反撃の時と思うのよ。少しでも早く、よしくんたちをこの襟峰市に戻れるようにしなきゃいけないのよ」
勇人や美幸の言葉に、堀田は言葉を失った。
まだ中学生や高校生だと思われる子どもたちが命を張ろうとしているのだ。
ならば、警察官である自分が負けていられるわけがなかった。
「よし、しばらく君たちの身柄は俺が預かろう。ただし、家には連絡させてもらうからな」
「そうこなくっちゃ」
「だったら、明るい間に対策をできるだけしておかないとな。今日からやるのか?」
勇人も興奮してきたのか、ずいぶんと前のめりな発言をしている。
「いや、今日はまだ実行に移せないな。準備を整えるには時間が短すぎる。まずは君たちの荷物をまとめて、俺の家まで来てもらうところからだな」
「了解だぜ」
「わ、私も頑張るわ」
「いとこの仇、取らせてもらうわ」
「いや、まだ死んでねえから!」
各々が気合いを入れる中、美幸の言葉に冷静にツッコミを入れる勇人である。
「おや、生存者がいたのか」
「ああ、部長の実の兄貴ですよ。今も病院で入院中なんです」
「そうか……」
勇人が答えると、堀田はさすがに表情を曇らせていた。
得体のしれないもののせいで、今もなお苦しむ者がいる。
その正体がしっかりと見え始めた今だからこそ、警察官としての使命に心が燃えてきているのである。
「一度君たちを家で降ろすから、準備ができたら襟峰警察署まで来てくれ」
「分かりました」
襟峰市内でも、いよいよ怪異事件の謎を解き明かす本格的な活動が始まった。
はたして、勇人たちはその正体を暴き、事件を解決することができるのだろうか。
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