真夜中血界

未羊

文字の大きさ
65 / 81

第64話

しおりを挟む
 その夜、勇人たちは堀田の家で過ごすことになった。

「雨戸は全部閉めてあるし、雨戸が閉められないところも格子が入っている。いくら奴らとはいえど、簡単には侵入できまい」

 堀田は自信たっぷりに話している。

「すみません、巡査部長さんのお宅に押しかけることになってしまって」

「いえいえ、いいのですよ」

 勇人が話す相手は堀田の妻である。結婚していたようだ。

「まったく、私も子どもが欲しかったのですけれどねぇ」

「うるさい。ヤマが落ち着いたら考えてもいいがな」

 妻の言葉に、堀田はかなり動揺しているようである。
 このやり取りを見て、勇人と都が顔をにやつかせている。

「もう、何をしているのよ。お世話になる方に対してあまりからかいを入れないの。私たちでできる対策を立てなければならないんだからね」

「ああ、悪かった……です」

 一応年上の美幸相手なので、言葉遣いを気を付ける勇人だった。

「ご婦人、本当にしばらく厄介になります。どうも山場のようですのでね」

「はい、主人から伺っております。二階にある部屋をお使い下さい」

「リビングで雑魚寝でも構いませんでしたのに……。まったく、申し訳ありません」

「いえいえ。早く夜も歩けるようにして欲しいですからね」

 夫人が明るく振る舞うものだから、鑑識はもちろん、美幸もものすごくつらく感じている。
 ひとまずは荷物を置いて、今後の方針を話し合うことにしたのだった。

 真夜中のことだった。

 ダンッ! ゴンッ! ガシャンッ!

 何かが激しく当たる音が響き渡る。
 あまりにも激しい音だったので、勇人は目を覚ましてしまっていた。

「くそっ、うるせえな。これが堀田って巡査部長が言ってた襲撃の音か……」

 玄関や窓などに体当たりをする音は、それはものすごい音だった。
 先日犬を捕まえた時に見たことがあるが、見た目は普通の犬よりも痩せている感じだった。
 それなのに、これだけの音を叩き出せるというのは、相当全力で突撃をかけているということだろう。

(玄関も確か靴箱をずらして簡単に開かないようにしてるんだっけかな。まったく、ご苦労なことだよな)

 勇人はトイレに行くと、再び眠りに就こうとして横になる。
 ところが、一度起きてしまうと、このうるさい音の中ではまったくもって寝付くことができなかった。

(……参ったな。耳せんでも買ってくるかするかな)

 目が覚めてしまったのが不幸の始まりである。
 勇人は結局、その後は一睡もすることができず、犬たちが撤収する午前四時をひたすら待つことになってしまった。

「ふわぁ~……。結局眠れなかったぜ……」

 朝の五時を回ると、勇人と鑑識が寝ている部屋に堀田が姿を見せた。

「やあ、おはよう。君は勇人君といったかな、君は鑑識と一緒にすぐに家の周りを調べてくれ」

「えっと、堀田さんは?」

「俺は獣医師のところに行ってくる。彼が襲われていないかどうかの確認だ」

 眠い目を擦る勇人の質問に、堀田ははきはきとした様子で答えている。
 なぜ堀田がそういうことを口にするのかというと、獣医師は難しい立場にあったからだ。
 犬たちの応急処置ながらも助けているが、自分たちに協力したことで襲われる対象になっていないかという心配があったのだ。
 だから、堀田は確認に向かうのだという。

「分かりました。俺はこの人を手伝えばいいんですね」

「そうだ。素人の君に頼むのは酷なことは分かっている。だが、人払いをするというのも大事な仕事だ。なんといっても、現場が荒らされることは鑑識が嫌うものだからな」

「分かりました」

 堀田は伝えるだけ伝えると、玄関の靴箱を元に戻して家を飛び出していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1分で読める怖い話短編集

しょくぱん
ホラー
一分で読める怖い話を定期的に投稿しています。 感想などをいただけると嬉しいです。 応援よろしくお願いします。

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。 2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...