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第64話
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その夜、勇人たちは堀田の家で過ごすことになった。
「雨戸は全部閉めてあるし、雨戸が閉められないところも格子が入っている。いくら奴らとはいえど、簡単には侵入できまい」
堀田は自信たっぷりに話している。
「すみません、巡査部長さんのお宅に押しかけることになってしまって」
「いえいえ、いいのですよ」
勇人が話す相手は堀田の妻である。結婚していたようだ。
「まったく、私も子どもが欲しかったのですけれどねぇ」
「うるさい。ヤマが落ち着いたら考えてもいいがな」
妻の言葉に、堀田はかなり動揺しているようである。
このやり取りを見て、勇人と都が顔をにやつかせている。
「もう、何をしているのよ。お世話になる方に対してあまりからかいを入れないの。私たちでできる対策を立てなければならないんだからね」
「ああ、悪かった……です」
一応年上の美幸相手なので、言葉遣いを気を付ける勇人だった。
「ご婦人、本当にしばらく厄介になります。どうも山場のようですのでね」
「はい、主人から伺っております。二階にある部屋をお使い下さい」
「リビングで雑魚寝でも構いませんでしたのに……。まったく、申し訳ありません」
「いえいえ。早く夜も歩けるようにして欲しいですからね」
夫人が明るく振る舞うものだから、鑑識はもちろん、美幸もものすごくつらく感じている。
ひとまずは荷物を置いて、今後の方針を話し合うことにしたのだった。
真夜中のことだった。
ダンッ! ゴンッ! ガシャンッ!
何かが激しく当たる音が響き渡る。
あまりにも激しい音だったので、勇人は目を覚ましてしまっていた。
「くそっ、うるせえな。これが堀田って巡査部長が言ってた襲撃の音か……」
玄関や窓などに体当たりをする音は、それはものすごい音だった。
先日犬を捕まえた時に見たことがあるが、見た目は普通の犬よりも痩せている感じだった。
それなのに、これだけの音を叩き出せるというのは、相当全力で突撃をかけているということだろう。
(玄関も確か靴箱をずらして簡単に開かないようにしてるんだっけかな。まったく、ご苦労なことだよな)
勇人はトイレに行くと、再び眠りに就こうとして横になる。
ところが、一度起きてしまうと、このうるさい音の中ではまったくもって寝付くことができなかった。
(……参ったな。耳せんでも買ってくるかするかな)
目が覚めてしまったのが不幸の始まりである。
勇人は結局、その後は一睡もすることができず、犬たちが撤収する午前四時をひたすら待つことになってしまった。
「ふわぁ~……。結局眠れなかったぜ……」
朝の五時を回ると、勇人と鑑識が寝ている部屋に堀田が姿を見せた。
「やあ、おはよう。君は勇人君といったかな、君は鑑識と一緒にすぐに家の周りを調べてくれ」
「えっと、堀田さんは?」
「俺は獣医師のところに行ってくる。彼が襲われていないかどうかの確認だ」
眠い目を擦る勇人の質問に、堀田ははきはきとした様子で答えている。
なぜ堀田がそういうことを口にするのかというと、獣医師は難しい立場にあったからだ。
犬たちの応急処置ながらも助けているが、自分たちに協力したことで襲われる対象になっていないかという心配があったのだ。
だから、堀田は確認に向かうのだという。
「分かりました。俺はこの人を手伝えばいいんですね」
「そうだ。素人の君に頼むのは酷なことは分かっている。だが、人払いをするというのも大事な仕事だ。なんといっても、現場が荒らされることは鑑識が嫌うものだからな」
「分かりました」
堀田は伝えるだけ伝えると、玄関の靴箱を元に戻して家を飛び出していった。
「雨戸は全部閉めてあるし、雨戸が閉められないところも格子が入っている。いくら奴らとはいえど、簡単には侵入できまい」
堀田は自信たっぷりに話している。
「すみません、巡査部長さんのお宅に押しかけることになってしまって」
「いえいえ、いいのですよ」
勇人が話す相手は堀田の妻である。結婚していたようだ。
「まったく、私も子どもが欲しかったのですけれどねぇ」
「うるさい。ヤマが落ち着いたら考えてもいいがな」
妻の言葉に、堀田はかなり動揺しているようである。
このやり取りを見て、勇人と都が顔をにやつかせている。
「もう、何をしているのよ。お世話になる方に対してあまりからかいを入れないの。私たちでできる対策を立てなければならないんだからね」
「ああ、悪かった……です」
一応年上の美幸相手なので、言葉遣いを気を付ける勇人だった。
「ご婦人、本当にしばらく厄介になります。どうも山場のようですのでね」
「はい、主人から伺っております。二階にある部屋をお使い下さい」
「リビングで雑魚寝でも構いませんでしたのに……。まったく、申し訳ありません」
「いえいえ。早く夜も歩けるようにして欲しいですからね」
夫人が明るく振る舞うものだから、鑑識はもちろん、美幸もものすごくつらく感じている。
ひとまずは荷物を置いて、今後の方針を話し合うことにしたのだった。
真夜中のことだった。
ダンッ! ゴンッ! ガシャンッ!
何かが激しく当たる音が響き渡る。
あまりにも激しい音だったので、勇人は目を覚ましてしまっていた。
「くそっ、うるせえな。これが堀田って巡査部長が言ってた襲撃の音か……」
玄関や窓などに体当たりをする音は、それはものすごい音だった。
先日犬を捕まえた時に見たことがあるが、見た目は普通の犬よりも痩せている感じだった。
それなのに、これだけの音を叩き出せるというのは、相当全力で突撃をかけているということだろう。
(玄関も確か靴箱をずらして簡単に開かないようにしてるんだっけかな。まったく、ご苦労なことだよな)
勇人はトイレに行くと、再び眠りに就こうとして横になる。
ところが、一度起きてしまうと、このうるさい音の中ではまったくもって寝付くことができなかった。
(……参ったな。耳せんでも買ってくるかするかな)
目が覚めてしまったのが不幸の始まりである。
勇人は結局、その後は一睡もすることができず、犬たちが撤収する午前四時をひたすら待つことになってしまった。
「ふわぁ~……。結局眠れなかったぜ……」
朝の五時を回ると、勇人と鑑識が寝ている部屋に堀田が姿を見せた。
「やあ、おはよう。君は勇人君といったかな、君は鑑識と一緒にすぐに家の周りを調べてくれ」
「えっと、堀田さんは?」
「俺は獣医師のところに行ってくる。彼が襲われていないかどうかの確認だ」
眠い目を擦る勇人の質問に、堀田ははきはきとした様子で答えている。
なぜ堀田がそういうことを口にするのかというと、獣医師は難しい立場にあったからだ。
犬たちの応急処置ながらも助けているが、自分たちに協力したことで襲われる対象になっていないかという心配があったのだ。
だから、堀田は確認に向かうのだという。
「分かりました。俺はこの人を手伝えばいいんですね」
「そうだ。素人の君に頼むのは酷なことは分かっている。だが、人払いをするというのも大事な仕事だ。なんといっても、現場が荒らされることは鑑識が嫌うものだからな」
「分かりました」
堀田は伝えるだけ伝えると、玄関の靴箱を元に戻して家を飛び出していった。
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