115 / 135
第115話 アンペラトリスの戦闘講座
しおりを挟む
その昼、昼食を取りにステラは食堂に足を運ぶ。
訓練場を去った後に冒険中に身に付けた洗浄の魔法でドレスも体もきれいにしておいたので、食堂に入るには問題のない状態のはずである。
食堂に顔を出したステラは、アンペラトリスの表情を見て思わず固まってしまった。
それもそのはず。ものすごい形相で睨みつけているのだ。その雰囲気はまるで怒っているような状態だった。
そのアンペラトリスの雰囲気に飲まれないように気をつけながら、ステラはいつもの席にゆっくりと着く。その間、ステラの動きに合わせてアンペラトリスの視線はずっと追いかけてきていた。なんともいえない恐怖がステラを襲い続けていた。
ひとまず重苦しい雰囲気ではあるものの、昼食が運ばれてくる。
いざ食事が始まると、しばらくは静かだった。ところが、ある程度食事進んできたところで、ようやくアンペラトリスが口を開いた。
「ステラ」
「な、何でございますでしょうか、皇帝陛下」
少し肩をすくめて、見上げるような形でアンペラトリスの呼び掛けに反応するステラ。
するとそこには、やっぱりちょっと怒ったような表情を覗かせるアンペラトリスの姿があった。これは間違いなく朝の事を咎められると直感するステラである。
「聞いたぞ、ドレス姿のまま訓練場に姿を見せた挙句、そのまま剣を振るったらしいな」
やっぱりである。とはいえ、怒られるような要因はそれしか考えられないのである。
「申し訳ございません。書庫の前に久しぶりに体を動かしたくなってしまったもので……」
縮こまって言い訳をするステラ。
ところが、アンペラトリスは咎めるどころか大きなため息をついていた。
「それで、頑張っているリューンの姿を見て、つい勝負を仕掛けてみたというわけか。ずいぶんと血の気が多いものだな」
呆れたようにステラを見るアンペラトリス。ステラは「申し訳ありません」と下を見ながら謝罪するのが精一杯だった。
「まあ、やってしまったものは仕方あるまい。だが、騎士たちからの評価は決して悪くはないぞ」
アンペラトリスからそう言われれば、思わず顔を勢いよく上げてしまうステラ。
その時のアンペラトリスは面白おかしそうに笑っていた。
「ドレス姿での戦い自体は私もよくやっていたしな。皇帝の地位を継げば、いついかなる状況で襲撃されるか分かったものではない。いちいち服を着替える間などないからな」
アンペラトリスの話を聞いて、怒られない理由に納得のいくステラである。
確かに、ステラもエルミタージュ王家の人間なので理解できる部分がある。
なにせ、エルミタージュ王国が滅びたあの日も、自分の母親、つまりは王妃もドレス姿で応戦していたからだ。ステラを連れて転移魔法を使ったのは、その戦いがひとまず落ち着いてからだった。
ようやく冷静に慣れたステラからは、怯えた表情はすっかり消えてなくなっていた。
「最後はリューンに剣を弾かれて終わったと聞くが、だいぶ手加減をしたっぽいな」
「まあそうですね。慣れない片手剣だったのも大きいでしょうね」
「普通は片手剣が一番扱いやすいのだがな。それだけ双剣に慣れ親しんだということだろうな」
すっかり笑顔が戻って話をする二人である。
「大体師匠のせいですよ。師匠も双剣の逆手持ちでしたからね」
「あのうさん臭いエルフか。わざわざ面倒な武器の扱い方を覚えさせおって。ステラリア、せめて片手だけでも順手持ちに変えるといいぞ。逆手持ちは力が入りにくいからな」
アンペラトリスに注意されたステラは、目を丸くしていた。そんなに驚くような事だったのだろうか。
「……そうか、500年はあの戦い方でやってきていたのだからな。今さら常識云々を説いたところで驚くのも無理はないか」
ステラの抱えた特殊な事情に、つい頭が痛くなってしまうアンペラトリスだった。
「だがな、双剣の逆手持ちを続けるようでは私には勝てんよ。手を振り抜いた後から剣が出てくるのだ。その分、相手の攻撃に対して後手に回ってしまうぞ」
「ふむふむ……」
ようやく昼食を落ち着いて食べられるかと思ったら、突然戦い方の講釈が始まっていた。
アンペラトリスは皇女であると同時に、帝国騎士団でその剣を振るってきた女傑なのである。そのために戦いの事となるとつい熱く語ってしまうのだった。
「型が固まってしまっている以上、すぐには無理だろう。ステラリアの普段を見ている限り、利き腕は右だ。そして、左は反応が悪い。となれば、左手を順手で握って牽制にして、右手で振り抜くスタイルがいいだろうな」
「そうですか。なるほど……」
熱心に話をするせいで、まったく食事が進まない。
そのせいで、いつもよりかなり遅れて食事が終わることとなる。なにせ、それぞれの使用人が呼びに来るまで食事に手をつけていなかったのだから。どれだけ熱く語っていたのかがよく分かるというものだった。
とはいえ、アンペラトリスがかなり本気で喋っていたので、相当にステラに響いたようだった。
いろいろと収穫を得たステラは、その日はご機嫌に書庫にこもったのだった。
訓練場を去った後に冒険中に身に付けた洗浄の魔法でドレスも体もきれいにしておいたので、食堂に入るには問題のない状態のはずである。
食堂に顔を出したステラは、アンペラトリスの表情を見て思わず固まってしまった。
それもそのはず。ものすごい形相で睨みつけているのだ。その雰囲気はまるで怒っているような状態だった。
そのアンペラトリスの雰囲気に飲まれないように気をつけながら、ステラはいつもの席にゆっくりと着く。その間、ステラの動きに合わせてアンペラトリスの視線はずっと追いかけてきていた。なんともいえない恐怖がステラを襲い続けていた。
ひとまず重苦しい雰囲気ではあるものの、昼食が運ばれてくる。
いざ食事が始まると、しばらくは静かだった。ところが、ある程度食事進んできたところで、ようやくアンペラトリスが口を開いた。
「ステラ」
「な、何でございますでしょうか、皇帝陛下」
少し肩をすくめて、見上げるような形でアンペラトリスの呼び掛けに反応するステラ。
するとそこには、やっぱりちょっと怒ったような表情を覗かせるアンペラトリスの姿があった。これは間違いなく朝の事を咎められると直感するステラである。
「聞いたぞ、ドレス姿のまま訓練場に姿を見せた挙句、そのまま剣を振るったらしいな」
やっぱりである。とはいえ、怒られるような要因はそれしか考えられないのである。
「申し訳ございません。書庫の前に久しぶりに体を動かしたくなってしまったもので……」
縮こまって言い訳をするステラ。
ところが、アンペラトリスは咎めるどころか大きなため息をついていた。
「それで、頑張っているリューンの姿を見て、つい勝負を仕掛けてみたというわけか。ずいぶんと血の気が多いものだな」
呆れたようにステラを見るアンペラトリス。ステラは「申し訳ありません」と下を見ながら謝罪するのが精一杯だった。
「まあ、やってしまったものは仕方あるまい。だが、騎士たちからの評価は決して悪くはないぞ」
アンペラトリスからそう言われれば、思わず顔を勢いよく上げてしまうステラ。
その時のアンペラトリスは面白おかしそうに笑っていた。
「ドレス姿での戦い自体は私もよくやっていたしな。皇帝の地位を継げば、いついかなる状況で襲撃されるか分かったものではない。いちいち服を着替える間などないからな」
アンペラトリスの話を聞いて、怒られない理由に納得のいくステラである。
確かに、ステラもエルミタージュ王家の人間なので理解できる部分がある。
なにせ、エルミタージュ王国が滅びたあの日も、自分の母親、つまりは王妃もドレス姿で応戦していたからだ。ステラを連れて転移魔法を使ったのは、その戦いがひとまず落ち着いてからだった。
ようやく冷静に慣れたステラからは、怯えた表情はすっかり消えてなくなっていた。
「最後はリューンに剣を弾かれて終わったと聞くが、だいぶ手加減をしたっぽいな」
「まあそうですね。慣れない片手剣だったのも大きいでしょうね」
「普通は片手剣が一番扱いやすいのだがな。それだけ双剣に慣れ親しんだということだろうな」
すっかり笑顔が戻って話をする二人である。
「大体師匠のせいですよ。師匠も双剣の逆手持ちでしたからね」
「あのうさん臭いエルフか。わざわざ面倒な武器の扱い方を覚えさせおって。ステラリア、せめて片手だけでも順手持ちに変えるといいぞ。逆手持ちは力が入りにくいからな」
アンペラトリスに注意されたステラは、目を丸くしていた。そんなに驚くような事だったのだろうか。
「……そうか、500年はあの戦い方でやってきていたのだからな。今さら常識云々を説いたところで驚くのも無理はないか」
ステラの抱えた特殊な事情に、つい頭が痛くなってしまうアンペラトリスだった。
「だがな、双剣の逆手持ちを続けるようでは私には勝てんよ。手を振り抜いた後から剣が出てくるのだ。その分、相手の攻撃に対して後手に回ってしまうぞ」
「ふむふむ……」
ようやく昼食を落ち着いて食べられるかと思ったら、突然戦い方の講釈が始まっていた。
アンペラトリスは皇女であると同時に、帝国騎士団でその剣を振るってきた女傑なのである。そのために戦いの事となるとつい熱く語ってしまうのだった。
「型が固まってしまっている以上、すぐには無理だろう。ステラリアの普段を見ている限り、利き腕は右だ。そして、左は反応が悪い。となれば、左手を順手で握って牽制にして、右手で振り抜くスタイルがいいだろうな」
「そうですか。なるほど……」
熱心に話をするせいで、まったく食事が進まない。
そのせいで、いつもよりかなり遅れて食事が終わることとなる。なにせ、それぞれの使用人が呼びに来るまで食事に手をつけていなかったのだから。どれだけ熱く語っていたのかがよく分かるというものだった。
とはいえ、アンペラトリスがかなり本気で喋っていたので、相当にステラに響いたようだった。
いろいろと収穫を得たステラは、その日はご機嫌に書庫にこもったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる