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第二章 外側の世界
第371話 転生者、思わぬものを発見する
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結局四日間をかけて分類をし終えたのだが、純魔族の始祖であるはずのネラールに関する記述はまったく見つからなかった。
ケオス大陸にやって来た魔王の息子だというのに、こんなことなどあり得るのだろうか。
「結局、家系図の一番上に名前があっただけか……」
「意図的に隠しているともいえるわね、これって」
「直系なら父であるヒョウムと妹のカスミ以外は、この屋敷に全員揃っているはずなのですけどね。誰一人知らないのは意外でしたね」
不思議なくらいに痕跡がない。
魔族というのはそもそも寿命が長いので、外の世界でマーシャルが生きていたのように、ケオス大陸の箱庭にやって来た魔族の中には生き残りがいてもおかしくないはずだ。
「こういう時は、隠し部屋を疑った方がいいんだろうな。ただ、ネラールの最期がどこにいたかによっては、ここを探すか、魔王城を探すかっていうことになるんだが……」
「皆目見当がつかないわね……」
はっきりいって、俺たちはお手上げだった。
結局、純魔族の長の屋敷の中でしたことは、書庫の中の整理整頓くらいだった。
「ひとまず、コモヤとデザストレのところに参りますか?」
「そうだな。そうしよう」
考えていたって埒が明かないので、俺たちは当主代理を務める二人に挨拶をして、一度魔王城に戻ることにした。
当主の部屋にやって来ると、そこではデザストレがコモヤに一方的に言いくるめられている状況に出くわした。
「いや、俺様にはさっぱり分からねえんだが……」
「まったく、こんなことくらい理解してもらえないと困ります。統治者としては基本中の基本ですよ」
どうやら、統治に関する説明を受けている最中だった。
「悪い、邪魔していいか」
俺は部屋に入ってからノックをして声をかける。いろいろと順番がおかしいかもしれないが、声が聞こえてきたから、つい覗きに入っちまったってわけだ。
「ああ、魔王様。どうかなさいましたか?」
隠密の任務を解かれたコモヤは、以前と比べるとかなり感情を出すようになっている。
だが、そこはキリエの妹。仕事となると同じように表情がさっぱりなくなってしまう。
「いや、書庫を調べてみたんだが、これといった情報が見つからなくてな。それで魔王城に戻ることにしたんだよ」
「そうでしたか。結局家系図の最初という以外の情報は見つかりませんでしたか……」
「ああ、マーシャルとて魔王だし、あの中で今も指導者として頑張っている。嘘をつくようにはとても思えないんだが……、これっぽっちも情報が出てこないんだよ」
俺はぼりぼりと頭を掻きむしってしまう。
「そうですか、分かりました。魔王城では情報が見つかるといいですよね」
「ああ、当時の記述が見つかれば、どういった感じでこの大陸の中の世界が成立していったのか分かるだろうしな。あの地下空間で細々と協力しながら生きているような種族が、なぜケオス大陸の中で再び争い始めたのかっていうのも気になるしな」
「それは確かにそうよね。生き延びるために協力し合っていたのに、不思議よね」
ピエラも当然思い当たる話だ。俺と一緒に先代の魔王を倒しに出たんだからな。
つまり、この大陸にやって来てから、なんらかの原因で再び対立が始まったってことなんだからな。でなきゃ、魔王を討つ必要なんてまったくないはずなんだよ。
「マーシャルの代わりに箱庭計画に関わったのなら、ケオス大陸最初の魔王は、間違いなくネラールっていう人物で間違いないはず。マーシャルのあの様子じゃ、ネラールのことをかなり気にかけてるようだったから、顛末を調べて知らせてやりたいんだよな」
「魔王様は、本当にお優しい方ですね」
「いや、ただのお節介ってやつだよ」
キリエが褒めてくるが、俺は照れ隠しをしておいた。
前世から本当に面倒な性格してるからな、俺は。よくそれで貧乏くじも引いたもんだよ、まったく。
さて、コモヤとデザストレとの話も済んだことだし、俺たちはそろそろお暇をしようか。
そう思って、挨拶をして部屋の外へ出ようとした時だった。
「うん?」
「どうかなさいましたか、魔王様」
「いや、なんだかあの壁がにおうんだ」
「壁がですか?」
俺は本棚が置いてある壁が気になってしまう。
キリエもピエラもよく分からないといった感じで俺を見ている。
(まさかな……)
俺はおそるおそる、本棚へと近付いていく。
(こういう時は、たいてい本棚の本を押してやれば……)
そう思ったものの、本棚はコモヤが毎日触っている本棚だ。スイッチがあればとっくに発見できているだろう。彼女は隠密で看破持ちなんだからな。
となればと、俺は本棚の中に並んだ本の一冊に、そっと手を添える。
(魔力を流してやれば、きっと何かが起きるだろう)
先日見た時とは、なぜか雰囲気が違っている本があった。その本に魔力を流した瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴ……。
何かが動く音がし始めた。
「なんだ、これは?!」
「その本棚って仕掛けがあったの?!」
デザストレとピエラが慌てている。
それとは対照的に、キリエとコモヤはとても冷静だった。
「この感じ……」
「純魔族の魔力ですね……。どことなく懐かしくて温かい魔力です」
二人は何かを感じ取っているようだ。
俺たちがそれぞれ反応を示していると、本棚がずれ、さらには後ろの壁の一部が突然消失した。
「隠し部屋ですね」
「そのようだな……」
そう、隠された空間が見つかったのだ。
何がカギだったのかは分からない。だが、なんとなく惹かれてみた結果がこれだった。
「この奥から、呼ばれている感じがするな……。進むしかなさそうだ」
「私たちもついて行くわよ」
「もちろんです。魔王様の補佐をする者として、同行しないわけには参りません」
突如現れた隠し部屋。
俺たちは、引き寄せられるようにその中へと進んでいったのだった。
ケオス大陸にやって来た魔王の息子だというのに、こんなことなどあり得るのだろうか。
「結局、家系図の一番上に名前があっただけか……」
「意図的に隠しているともいえるわね、これって」
「直系なら父であるヒョウムと妹のカスミ以外は、この屋敷に全員揃っているはずなのですけどね。誰一人知らないのは意外でしたね」
不思議なくらいに痕跡がない。
魔族というのはそもそも寿命が長いので、外の世界でマーシャルが生きていたのように、ケオス大陸の箱庭にやって来た魔族の中には生き残りがいてもおかしくないはずだ。
「こういう時は、隠し部屋を疑った方がいいんだろうな。ただ、ネラールの最期がどこにいたかによっては、ここを探すか、魔王城を探すかっていうことになるんだが……」
「皆目見当がつかないわね……」
はっきりいって、俺たちはお手上げだった。
結局、純魔族の長の屋敷の中でしたことは、書庫の中の整理整頓くらいだった。
「ひとまず、コモヤとデザストレのところに参りますか?」
「そうだな。そうしよう」
考えていたって埒が明かないので、俺たちは当主代理を務める二人に挨拶をして、一度魔王城に戻ることにした。
当主の部屋にやって来ると、そこではデザストレがコモヤに一方的に言いくるめられている状況に出くわした。
「いや、俺様にはさっぱり分からねえんだが……」
「まったく、こんなことくらい理解してもらえないと困ります。統治者としては基本中の基本ですよ」
どうやら、統治に関する説明を受けている最中だった。
「悪い、邪魔していいか」
俺は部屋に入ってからノックをして声をかける。いろいろと順番がおかしいかもしれないが、声が聞こえてきたから、つい覗きに入っちまったってわけだ。
「ああ、魔王様。どうかなさいましたか?」
隠密の任務を解かれたコモヤは、以前と比べるとかなり感情を出すようになっている。
だが、そこはキリエの妹。仕事となると同じように表情がさっぱりなくなってしまう。
「いや、書庫を調べてみたんだが、これといった情報が見つからなくてな。それで魔王城に戻ることにしたんだよ」
「そうでしたか。結局家系図の最初という以外の情報は見つかりませんでしたか……」
「ああ、マーシャルとて魔王だし、あの中で今も指導者として頑張っている。嘘をつくようにはとても思えないんだが……、これっぽっちも情報が出てこないんだよ」
俺はぼりぼりと頭を掻きむしってしまう。
「そうですか、分かりました。魔王城では情報が見つかるといいですよね」
「ああ、当時の記述が見つかれば、どういった感じでこの大陸の中の世界が成立していったのか分かるだろうしな。あの地下空間で細々と協力しながら生きているような種族が、なぜケオス大陸の中で再び争い始めたのかっていうのも気になるしな」
「それは確かにそうよね。生き延びるために協力し合っていたのに、不思議よね」
ピエラも当然思い当たる話だ。俺と一緒に先代の魔王を倒しに出たんだからな。
つまり、この大陸にやって来てから、なんらかの原因で再び対立が始まったってことなんだからな。でなきゃ、魔王を討つ必要なんてまったくないはずなんだよ。
「マーシャルの代わりに箱庭計画に関わったのなら、ケオス大陸最初の魔王は、間違いなくネラールっていう人物で間違いないはず。マーシャルのあの様子じゃ、ネラールのことをかなり気にかけてるようだったから、顛末を調べて知らせてやりたいんだよな」
「魔王様は、本当にお優しい方ですね」
「いや、ただのお節介ってやつだよ」
キリエが褒めてくるが、俺は照れ隠しをしておいた。
前世から本当に面倒な性格してるからな、俺は。よくそれで貧乏くじも引いたもんだよ、まったく。
さて、コモヤとデザストレとの話も済んだことだし、俺たちはそろそろお暇をしようか。
そう思って、挨拶をして部屋の外へ出ようとした時だった。
「うん?」
「どうかなさいましたか、魔王様」
「いや、なんだかあの壁がにおうんだ」
「壁がですか?」
俺は本棚が置いてある壁が気になってしまう。
キリエもピエラもよく分からないといった感じで俺を見ている。
(まさかな……)
俺はおそるおそる、本棚へと近付いていく。
(こういう時は、たいてい本棚の本を押してやれば……)
そう思ったものの、本棚はコモヤが毎日触っている本棚だ。スイッチがあればとっくに発見できているだろう。彼女は隠密で看破持ちなんだからな。
となればと、俺は本棚の中に並んだ本の一冊に、そっと手を添える。
(魔力を流してやれば、きっと何かが起きるだろう)
先日見た時とは、なぜか雰囲気が違っている本があった。その本に魔力を流した瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴ……。
何かが動く音がし始めた。
「なんだ、これは?!」
「その本棚って仕掛けがあったの?!」
デザストレとピエラが慌てている。
それとは対照的に、キリエとコモヤはとても冷静だった。
「この感じ……」
「純魔族の魔力ですね……。どことなく懐かしくて温かい魔力です」
二人は何かを感じ取っているようだ。
俺たちがそれぞれ反応を示していると、本棚がずれ、さらには後ろの壁の一部が突然消失した。
「隠し部屋ですね」
「そのようだな……」
そう、隠された空間が見つかったのだ。
何がカギだったのかは分からない。だが、なんとなく惹かれてみた結果がこれだった。
「この奥から、呼ばれている感じがするな……。進むしかなさそうだ」
「私たちもついて行くわよ」
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