異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第375話 転生者、樹の再生計画に乗り出す

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 今回の外の世界での目的は、ケオス大陸の外側の結界を復活させることだ。
 あの筋肉毒だるまのことだ、おそらく少しは攻撃を仕掛けているだろう。完全に穴を開け切られる前にレーヴェンの結界を復活させねば。

「デイジー、今回の出発地点の木から少し南で木を生やすぞ」

「はい。少しずつ範囲を広げていくんですね」

 これだけで理解してくるデイジーは助かるぜ。
 今回出てきたのは北東の木だった。そこからセイ太で日中の半分ほど南下したところで新たな木を定着させる。
 ケオス大陸なら一発で定着させられるので、順調に進むだろう。
 そう思われたが、思わぬことが判明する。

「どうした、デイジー」

「おかしいですね。ケオス大陸なら一回で終わると思ったのですが、ここで成長が止まってしまいました」

「あんにゃろう……。おそらくヘルプワゾンとかいうやつの影響だな。思ったよりあいつの毒気に結界の効力が落ちてしまってるようだ」

「そんな……」

 俺の出した推測に、デイジーがショックを隠し切れない。

「そのヘルプワゾンとかいうやつは、今はどこにいるのだ」

 ネラールが俺たちに尋ねてくる。

「分からねえ。面倒なやつだったんで、ピエラの魔法で吹っ飛ばしてやったからな。その後逃げるように帰ってきたから、その後のことはさっぱりなんだ」

「ふむ……。現代の魔王ですらも手を焼く存在ということか」

 ネラールは大体のことを理解したようだった。

「セイ太、ピエラ。デイジーと木を守ってやってくれ」

「分かったわ」

「お任せ下さいませ、セイ」

 考えごとをしているネラールの横で、俺は木を成長させて疲れているだろうデイジーのことを気遣う。
 ピエラとセイ太の二人にデイジーを任せ、俺はあの筋肉毒だるまの襲撃に備えて周囲を警戒している。

「セイとかいったな。一応そのヘルプワゾンとかいうやつの情報を聞かせてもらってもよいか?」

「ああ、いいぜ。筋肉毒だるまってあだ名をつけてやるくらいには、筋肉が特徴の男だ。道具を使うと怒って強力な一撃を出してくる」

「また面白い特徴を持っているな」

「笑うなよ。それで一度危険な状態になりかけたんだからな」

 ネラールにとっては興味深かったのか、なぜか笑っている。
 だが、道具を使ったことで思わぬ反撃を食らった俺には、その態度が許せなかった。

「いや、悪かった。しかし、道具を使うと怒るとは、純粋な肉弾戦を好むということなのだろうか」

「おそらくは。魔法に対しては何もなかったから、自分たちの持つ技能だけで戦えば、強力なカウンターは出てこないと思われるよ」

「武器もかい?」

「いや、武器も大丈夫じゃないかな。ただ、俺たちは見ての通り武器らしい武器は持っていないからな」

 武器による検証は行えていない。
 だが、あいつの闘気は毒をまとっていて、まともに受けても毒によって溶かされる危険性がある。
 一応このこともネラールには伝えておく。

「ふむ、全身を毒素の闘気でまとっているか。ならばこちらも負けないように覆って攻撃するしかないというわけだな」

「ああ。それかピエラたちの魔法で攻撃するしかない。デイジーの持つガードインパクトとピエラのマジックアローは通じているからな」

「なるほど、心得た」

 ここまでの説明で、どうやらネラールは大体ヘルプワゾンの特徴を理解したようだ。
 こういうところはあのマーシャルの息子って感じだな。理解力の高さは統治者向きだと思う。
 だが、実力のほどはまだ分からない。なにせ一千年も引きこもっていたような人物だからな。どこまで戦力になるのかも未知数だ。

 ああ、そうそう。
 ネラールにもレーヴェンの樹の種は飲み込んでもらったよ。でなきゃ、外に出た瞬間あの世行きだからな。
 この毒素は植物にも有効で、ケオス大陸以外だと、あの地下空間以外で植物を見たことがない。本当に生きとし生けるもの、すべてを葬り去る死の毒素ってわけだ。
 さて、日が改まって翌日だ。昨日はレーヴェンの樹の定着ができなかったものの、デイジーの回復力は高まっていたので翌日にはレーヴェンの樹を定着させることができた。

「ふぅ、これでここら辺り一帯はレーヴェン様の加護の下に置かれることになります。そうすれば、あいつらにはもう手出しできなくなるでしょうね」

「お疲れ様、デイジー。その通りだと思うぜ。レーヴェンの力はあいつらにとっては、俺たちに対するこの大気中の毒素並みらしいからな」

 デイジーを労いながら、俺はどこか安心したようだ。
 ところが、それは間違いだったらしい。

「ぶるああああぁぁぁっ!!」

 けたたましい叫び声が聞こえてくる。この声は間違いなく筋肉毒だるま、ヘルプワゾンの声だ。

「ぬはははははっ! その程度でこの我を拒めると思うたか。見たところ、まだ力は未熟。今なら我の力で枯らせそうだな!」

 なんてこった。まだ定着したばかりで力が発揮できていない状態なら、こいつらには樹の力は通じないってことか。これははっきりいって予想外だな。

「そうはいくか! またこの間のように追い返してやるぜ!」

「ふん。前はちょっと驚いて吹き飛ばされたが、今度はそうはいかぬぞ。我を甘く見てくれるな!」

 こんなに早くヘルプワゾンとの二回戦になるとは思ってなかった。
 俺たちは戦闘態勢を取り、奴との戦いに備えたのだった。
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