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第一章 大陸編
第134話 転生者、トラブル里帰り
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「ああ、やれやれ。やっと王都に向かえるな」
魔王領の馬に乗って移動する俺とピエラ。相変わらず魔王領の馬は大きいが、普通の馬に比べれば移動速度が速い。
この魔王領の馬のペースに合わせて、街道の宿場町は整備されているので、一日走らせればティコが治める一つ目の宿場町に到着できる。
俺は宿場町に泊まるたびに、町長たちに話を聞いて問題がないかどうかのチェックをしていく。本来の目的は南方王国への里帰りではあるが、アフターケアだって忘れない。それが魔王ってものだろう?
ティコ、ザルドン、ハナとそれぞれから話を聞いたが、現状は特に問題はなさそうだった。周りは魔族だらけだから、ケンカを吹っかける度胸もないんだろうな。ま、平和なのはいい事だ。
ただ、二番目の宿場町のは釣りにやってくる連中がいるらしい。それで、魚を釣って屋台や食堂に持っていくと、捌いて調理するというサービスが行われるようになったとか。なんとも不思議な話だったが、釣りという文化が広がってくれるのはちょっと嬉しかったな。
そんなこんなといろいろ確認しながら、俺はようやくピエラと一緒に南方王国との国境にたどり着いた。
属領となっても、ここはいまだに国境である。
「久しぶりだな。街に変わりはないか?」
「はっ、問題ございません」
「セイ殿のおかげで、魔族との間の問題が激減しておりますゆえ、我々としてはとても感謝しております」
俺にそんな態度を取っていてどうするんだと思いたいところだが、彼らは国境警備の兵士だ。魔王領の領主である俺に対してこういう態度を取っても、何ら問題はなかったのだった。
「ピエラ様も、大変お久しぶりでございます。今回はどのようなご用件でございますでしょうか」
兵士がどういうわけか、ピエラへと質問を投げかけている。ピエラはどうしたものかと俺に視線を向けてくるが、実家に早馬がいくだろうから気にするなといったような返事をしておく。
国境の街では、ヨネスも交えて話をしながらひと晩を過ごした。久しぶりの南方王国の地に、ついつい話が盛り上がってしまった。
翌日には南方王国に入り、いよいよ王都へ向けて魔王領の馬を駆る。
途中で寄った町や村で人々を驚かせながらも、俺たちは順調に王都に近付いていた。
そうして、ようやく到着した王都だったが、俺たちは入口の兵士たちに呼び止められて、城へと連れていかれることになった。一体何があったというのだろうか。
わけも分からず、俺とピエラは城へと連行されていく。
「一体どうしたのかしらね」
「そんなの俺の方が聞きたい。いきなり連行とか、どうしたんだろうかな」
話をする俺たちだが、まったく心当たりがないので、終始首を捻り倒す始末だった。
連れて来られたのは謁見の間だった。
国王に王妃、王子たちも勢ぞろいで実に物々しい雰囲気だな。
「セイ、それとピエラ・ハミングウェイ。よくものこのこと戻ってこれたものだな」
国王からわけの分からない叱責を食らう。
事情がのみ込めないので黙っていると、続けて投げつけられた言葉でようやく理由が分かった。
どうやら、俺たち魔族と西方王国が親しくなっていることが、国王たちの耳に届いていたらしい。国王たちからしてみれば、属領に過ぎない魔王領の主である俺が勝手に西方王国と手を組んだから、裏切り行為だという風に取ったようだ。
うん、まったくこいつはうかつだったな。
「恐れながら申しますが、こちらは侵略戦争を仕掛けられそうになったのです。その中での和平交渉は、問題ないとは思うのですけれどね」
「私に報告せぬ時点で、十分に大問題だ」
あっさりと言い返されてしまった。まぁそうなるかな。
「お言葉ですが、事後処理のために報告が遅れたことはお詫びします。ここで私たちを下手に処罰しようものなら、再び魔族たちとの全面戦争に入りかねません。そうなると魔王領内にいる人間に被害が及んだり、ポーションの材料の不足だって起こるうるわけですから、寛大な対応をお願い致します」
精一杯に俺は訴えておく。
ここで下手にいざこざとなれば、魔王領内にいる人間たちに危害が及ぶ可能性だってあるんだ。
すると、国王はぴたりと怒るのをやめ、唸って考え始めた。
一時的な感情で動くよりも、長い目で見た時の損得を考えた方がいいに決まっているからな。
まぁポーションの材料である緑精の広葉も赤霊草も、国境から一番近い三番目の宿場町にたっぷりあるんだがな。なんといってもあいつらの主食だもんよ。
しかし、そんな事情を知らない国王たちは必死に悩んでいた。一時的な感情で動いた結果、王国にどれだけの損益が発生するのか。それを必死に考えているってわけだ。
結果、俺の報告遅れは今回ちゃんと包み隠さずして報告すれば不問とということになった。うん、これでひと安心だな。
ただ、巻き込まれたピエラからはずっと睨み続けられていたので、心はまったく落ち着かなかったがな。
そんなこんなのトラブルから始まった今回の里帰り。これ以上のトラブルはこりごりだよ。
祈るような気持ちで、俺は城からピエラの実家へと向かったのだった。
魔王領の馬に乗って移動する俺とピエラ。相変わらず魔王領の馬は大きいが、普通の馬に比べれば移動速度が速い。
この魔王領の馬のペースに合わせて、街道の宿場町は整備されているので、一日走らせればティコが治める一つ目の宿場町に到着できる。
俺は宿場町に泊まるたびに、町長たちに話を聞いて問題がないかどうかのチェックをしていく。本来の目的は南方王国への里帰りではあるが、アフターケアだって忘れない。それが魔王ってものだろう?
ティコ、ザルドン、ハナとそれぞれから話を聞いたが、現状は特に問題はなさそうだった。周りは魔族だらけだから、ケンカを吹っかける度胸もないんだろうな。ま、平和なのはいい事だ。
ただ、二番目の宿場町のは釣りにやってくる連中がいるらしい。それで、魚を釣って屋台や食堂に持っていくと、捌いて調理するというサービスが行われるようになったとか。なんとも不思議な話だったが、釣りという文化が広がってくれるのはちょっと嬉しかったな。
そんなこんなといろいろ確認しながら、俺はようやくピエラと一緒に南方王国との国境にたどり着いた。
属領となっても、ここはいまだに国境である。
「久しぶりだな。街に変わりはないか?」
「はっ、問題ございません」
「セイ殿のおかげで、魔族との間の問題が激減しておりますゆえ、我々としてはとても感謝しております」
俺にそんな態度を取っていてどうするんだと思いたいところだが、彼らは国境警備の兵士だ。魔王領の領主である俺に対してこういう態度を取っても、何ら問題はなかったのだった。
「ピエラ様も、大変お久しぶりでございます。今回はどのようなご用件でございますでしょうか」
兵士がどういうわけか、ピエラへと質問を投げかけている。ピエラはどうしたものかと俺に視線を向けてくるが、実家に早馬がいくだろうから気にするなといったような返事をしておく。
国境の街では、ヨネスも交えて話をしながらひと晩を過ごした。久しぶりの南方王国の地に、ついつい話が盛り上がってしまった。
翌日には南方王国に入り、いよいよ王都へ向けて魔王領の馬を駆る。
途中で寄った町や村で人々を驚かせながらも、俺たちは順調に王都に近付いていた。
そうして、ようやく到着した王都だったが、俺たちは入口の兵士たちに呼び止められて、城へと連れていかれることになった。一体何があったというのだろうか。
わけも分からず、俺とピエラは城へと連行されていく。
「一体どうしたのかしらね」
「そんなの俺の方が聞きたい。いきなり連行とか、どうしたんだろうかな」
話をする俺たちだが、まったく心当たりがないので、終始首を捻り倒す始末だった。
連れて来られたのは謁見の間だった。
国王に王妃、王子たちも勢ぞろいで実に物々しい雰囲気だな。
「セイ、それとピエラ・ハミングウェイ。よくものこのこと戻ってこれたものだな」
国王からわけの分からない叱責を食らう。
事情がのみ込めないので黙っていると、続けて投げつけられた言葉でようやく理由が分かった。
どうやら、俺たち魔族と西方王国が親しくなっていることが、国王たちの耳に届いていたらしい。国王たちからしてみれば、属領に過ぎない魔王領の主である俺が勝手に西方王国と手を組んだから、裏切り行為だという風に取ったようだ。
うん、まったくこいつはうかつだったな。
「恐れながら申しますが、こちらは侵略戦争を仕掛けられそうになったのです。その中での和平交渉は、問題ないとは思うのですけれどね」
「私に報告せぬ時点で、十分に大問題だ」
あっさりと言い返されてしまった。まぁそうなるかな。
「お言葉ですが、事後処理のために報告が遅れたことはお詫びします。ここで私たちを下手に処罰しようものなら、再び魔族たちとの全面戦争に入りかねません。そうなると魔王領内にいる人間に被害が及んだり、ポーションの材料の不足だって起こるうるわけですから、寛大な対応をお願い致します」
精一杯に俺は訴えておく。
ここで下手にいざこざとなれば、魔王領内にいる人間たちに危害が及ぶ可能性だってあるんだ。
すると、国王はぴたりと怒るのをやめ、唸って考え始めた。
一時的な感情で動くよりも、長い目で見た時の損得を考えた方がいいに決まっているからな。
まぁポーションの材料である緑精の広葉も赤霊草も、国境から一番近い三番目の宿場町にたっぷりあるんだがな。なんといってもあいつらの主食だもんよ。
しかし、そんな事情を知らない国王たちは必死に悩んでいた。一時的な感情で動いた結果、王国にどれだけの損益が発生するのか。それを必死に考えているってわけだ。
結果、俺の報告遅れは今回ちゃんと包み隠さずして報告すれば不問とということになった。うん、これでひと安心だな。
ただ、巻き込まれたピエラからはずっと睨み続けられていたので、心はまったく落ち着かなかったがな。
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祈るような気持ちで、俺は城からピエラの実家へと向かったのだった。
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