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第一章 大陸編
第196話 転生者、久しぶりに魔王城を散策する
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あれからおおよそ半月。いや、一か月の概念がないから15日間といった方がいいかな。
俺は久しぶりに城に腰を落ち着けていた。
今日はウネのいる庭園へとやって来た。持って帰ってきたジャガイモの……ポテイの様子を見に来たのだ。
「よう、ウネ。ポテイの生育状況はどうだ?」
「魔王様なのー。えーとね、順調といったところ?」
「いや、なんで疑問形」
答えながら首を傾げるウネの姿に、思わず顔を引きつらせてしまう。
ところが、ウネは俺の反応が理解できないのか、目を丸々と見開いたまま首をこてんと傾けていた。
まったく、ドライアドの中でもこいつは一番マイペースでつかみどころがないな。母親のルネの方がまだ理解できるぞ。
とりあえず、それはまあ今はどうでもいい話だ。
今俺が確認したいのはポテイの状態だ。ドライアドの力を使えば、一気に成長させることもできたはず。なので、再度ウネに確認する。
「実際に見てみるのー」
答えないで俺に実物を見せるとか言い始めた。
まっ、この方が確かに早いよな。
ポテイの畑は、薬草などの栽培されている場所とは少し離して設置されている。
植物というのは、近いと混ざり合ってしまうからだ。
ましてやポテイは他の植物とは性質が違う。なので、ちょっと距離を離した上に、魔法で囲われているのである。
「結構育っているな」
「わちの能力を使えば、このくらいは簡単なのー。ただ、特殊だからちょっと育ちが悪いのー」
ウネの話を聞いた上でポテイの状況を見れば、その話に納得がいくというもの。
他の植物はウネが力を注げばあっという間に育っていってしまう。
だというのに、目の前のポテイは芽が出て少し育ったくらいまでだ。西方王国に出向いていた期間を考えれば、明らかに育ちが遅かった。いや、普通に比べればそれでも早いんだがな。
「ふむ、まあ気長に育ててくれ。俺だってそこまで急いでいるわけじゃないからな。他にもやってもらっていることもあるし、俺自身もやらなきゃいけないことがあるからな」
「分かったのー。熟れたら報告するー」
「ああ、頼んだぞ、ウネ」
ウネが元気よく手を振って俺を見送ってくれるので、俺も手を振って挨拶を返しておいた。
俺が次に向かったのは、薬師たちの研究室だな。
ウネのおかげで薬草類は余るほど手に入るからな。これなら新しいポーションのひとつやふたつも作れているかも知れないな。
「よっ、調子はどうだ?」
「これは魔王様」
部屋に入るなり、全員が跪こうとする。
「おいおい、下手に床の汚れを上げるな。そのまま立っていて大丈夫だよ」
「こ、これはお気遣いありがとうございます。そこまで気にかけて頂けるとは、我々も光栄の極みであります」
代表して数少ない男性の薬師がお礼を言ってきた。だが、ちょっと仰々しくないかな。
「どうだい、ポーションの種類は増えているかな?」
「はい、今は解毒ポーションも作れております」
「普通の治癒ポーションと魔法ポーションも上位のものが作れております」
次々と薬師たちが答えてくる。うんうん、順調に増えているようだな。
「ポーション作りに励むのはいいが、お前たちが倒れないように気を付けておくれよ。適度に休憩を入れて、食事と睡眠はちゃんととる、いいな?」
「はいっ!」
薬師たちの元気な声を聞いて、俺は安心して薬師たちの研究室から次の場所に移動した。
次にやって来たのは、北西の庭園だ。ここにはクルクーがいる。
「おっす、クルル、ルクク、それと助手のみんな」
「魔王様、これはわざわざお越しになるとは。光栄でございます」
助手である魔族が頭を大きく下げてくる。
「そこまで畏まるな。普段不在にしているから、こうやって確認しておかないとな。ちゃんと現状を把握しておくのは、為政者にとって重要なんだよ」
「さすが魔王様でございます」
ああ、これは何を言っても称えてくるやつだ。
うん、もう変なことをいうのはやめておこう。
「クルクーの卵は少し分けてもらってもいいか?」
「問題ない」
「ささっ、魔王様、どうぞ」
クルルとルククの二人が俺の手を引っ張ってくる。
「おいおい、そんなに引っ張らなくても行くから」
暗にやめるように言うものの、結局クルクーたちのいる場所まで俺は二人に引きずられてしまった。
それにしても、本当に俺が近付いても平然としているな。
普通の魔族が近付くと、クルクーたちは怖がって騒ぎ始める。だが、俺の場合はなんともない。
それに、平然と頭や体を撫でさせてくれるし、なんなら背中にだって乗せてくれる。でも、あまり悪い気はしないな。
「悪いな。一生懸命産んだ卵、少しもらっていくよ」
「クルックルー」
まるでいいよと言っているような鳴き方だった。
クルクーは一定の数までは間引いても怒らない。さっと見てみた感じ、10個くらいなら大丈夫そうだった。
というわけで、俺はデザストレのうろこにクルクーの卵をしまっていった。
「サンキューな、クルクー」
「クルックー!」
撫でると嬉しそうに鳴いていた。
ここまで城の中を巡った俺のお腹が鳴る。
「そっか、もうそういう時間か。みんなも交代で休憩取ってお昼にするんだぞ」
「はい、魔王様」
みんなの笑顔に見送られた俺は、昼食を食べるために食堂へと向かったのだった。
俺は久しぶりに城に腰を落ち着けていた。
今日はウネのいる庭園へとやって来た。持って帰ってきたジャガイモの……ポテイの様子を見に来たのだ。
「よう、ウネ。ポテイの生育状況はどうだ?」
「魔王様なのー。えーとね、順調といったところ?」
「いや、なんで疑問形」
答えながら首を傾げるウネの姿に、思わず顔を引きつらせてしまう。
ところが、ウネは俺の反応が理解できないのか、目を丸々と見開いたまま首をこてんと傾けていた。
まったく、ドライアドの中でもこいつは一番マイペースでつかみどころがないな。母親のルネの方がまだ理解できるぞ。
とりあえず、それはまあ今はどうでもいい話だ。
今俺が確認したいのはポテイの状態だ。ドライアドの力を使えば、一気に成長させることもできたはず。なので、再度ウネに確認する。
「実際に見てみるのー」
答えないで俺に実物を見せるとか言い始めた。
まっ、この方が確かに早いよな。
ポテイの畑は、薬草などの栽培されている場所とは少し離して設置されている。
植物というのは、近いと混ざり合ってしまうからだ。
ましてやポテイは他の植物とは性質が違う。なので、ちょっと距離を離した上に、魔法で囲われているのである。
「結構育っているな」
「わちの能力を使えば、このくらいは簡単なのー。ただ、特殊だからちょっと育ちが悪いのー」
ウネの話を聞いた上でポテイの状況を見れば、その話に納得がいくというもの。
他の植物はウネが力を注げばあっという間に育っていってしまう。
だというのに、目の前のポテイは芽が出て少し育ったくらいまでだ。西方王国に出向いていた期間を考えれば、明らかに育ちが遅かった。いや、普通に比べればそれでも早いんだがな。
「ふむ、まあ気長に育ててくれ。俺だってそこまで急いでいるわけじゃないからな。他にもやってもらっていることもあるし、俺自身もやらなきゃいけないことがあるからな」
「分かったのー。熟れたら報告するー」
「ああ、頼んだぞ、ウネ」
ウネが元気よく手を振って俺を見送ってくれるので、俺も手を振って挨拶を返しておいた。
俺が次に向かったのは、薬師たちの研究室だな。
ウネのおかげで薬草類は余るほど手に入るからな。これなら新しいポーションのひとつやふたつも作れているかも知れないな。
「よっ、調子はどうだ?」
「これは魔王様」
部屋に入るなり、全員が跪こうとする。
「おいおい、下手に床の汚れを上げるな。そのまま立っていて大丈夫だよ」
「こ、これはお気遣いありがとうございます。そこまで気にかけて頂けるとは、我々も光栄の極みであります」
代表して数少ない男性の薬師がお礼を言ってきた。だが、ちょっと仰々しくないかな。
「どうだい、ポーションの種類は増えているかな?」
「はい、今は解毒ポーションも作れております」
「普通の治癒ポーションと魔法ポーションも上位のものが作れております」
次々と薬師たちが答えてくる。うんうん、順調に増えているようだな。
「ポーション作りに励むのはいいが、お前たちが倒れないように気を付けておくれよ。適度に休憩を入れて、食事と睡眠はちゃんととる、いいな?」
「はいっ!」
薬師たちの元気な声を聞いて、俺は安心して薬師たちの研究室から次の場所に移動した。
次にやって来たのは、北西の庭園だ。ここにはクルクーがいる。
「おっす、クルル、ルクク、それと助手のみんな」
「魔王様、これはわざわざお越しになるとは。光栄でございます」
助手である魔族が頭を大きく下げてくる。
「そこまで畏まるな。普段不在にしているから、こうやって確認しておかないとな。ちゃんと現状を把握しておくのは、為政者にとって重要なんだよ」
「さすが魔王様でございます」
ああ、これは何を言っても称えてくるやつだ。
うん、もう変なことをいうのはやめておこう。
「クルクーの卵は少し分けてもらってもいいか?」
「問題ない」
「ささっ、魔王様、どうぞ」
クルルとルククの二人が俺の手を引っ張ってくる。
「おいおい、そんなに引っ張らなくても行くから」
暗にやめるように言うものの、結局クルクーたちのいる場所まで俺は二人に引きずられてしまった。
それにしても、本当に俺が近付いても平然としているな。
普通の魔族が近付くと、クルクーたちは怖がって騒ぎ始める。だが、俺の場合はなんともない。
それに、平然と頭や体を撫でさせてくれるし、なんなら背中にだって乗せてくれる。でも、あまり悪い気はしないな。
「悪いな。一生懸命産んだ卵、少しもらっていくよ」
「クルックルー」
まるでいいよと言っているような鳴き方だった。
クルクーは一定の数までは間引いても怒らない。さっと見てみた感じ、10個くらいなら大丈夫そうだった。
というわけで、俺はデザストレのうろこにクルクーの卵をしまっていった。
「サンキューな、クルクー」
「クルックー!」
撫でると嬉しそうに鳴いていた。
ここまで城の中を巡った俺のお腹が鳴る。
「そっか、もうそういう時間か。みんなも交代で休憩取ってお昼にするんだぞ」
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