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第二章 外側の世界
第337話 転生者、二度目の外へ
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今回も俺たちは魔王城に集合して、一路レーヴェンの樹へと向かう。
「ピエラ、デイジー。今回も行く前に種を飲み込んでおいてくれ」
「分かったわ」
「分かりました」
休憩に入ったところで、二人にレーヴェンの樹の種を渡しておく。これを飲み込んでおくと、約一年間は外界の毒素に侵されずに済むらしいが、詳しい仕組みは分からない。
だが、その効果は前回実証済みなので、二人は迷うことなく種を飲み込んでいた。
レーヴェンの力によって大陸の外周部に出た俺たちは、今回向かう東部の諸島部の方向へと進んでいく。
出発地点は、北方聖国に東端あたりになる。
「信じられませんよね。この山の向こうが自分の国だなんて」
「でも、ここは北方聖国の東端で間違いはない。案内してもらった時に見えた山の形そのものだからな」
俺はかつてジャスに案内してもらった時のことを思い出していた。
北方聖国の東端には、特徴的な頂上を持つ山があることを聞いていたのだ。その特徴こそが、鳥のくちばしのように見える山の頂上の形だ。
その形から『バードビーク』と呼ばれる山だが、この世界では唯一じゃないだろうかな、名前を持つ山なんてな。
「山のことで思い出した」
「どうしたのよ、セイ」
急に手を叩いて声を出しているものだから、ピエラが驚いたように声をかけてくる。
「いや、南の大陸を移動していた時、よく思えば人が住んでいた形跡がなかったんだよ。人がいなくなったとしても、その生活の痕跡は何らかの形で残るはずだ。城などの建物の跡とかがそうだな」
「……そういえばそうね。セイ太で動いていたけれど、そういった場所を見た記憶がないわ」
「ど、どういうことなのでしょうか」
「考えられるのは、最初から外に人なんていなかったことだな。レーヴェンの言葉を否定するのであまり考えたくはないがな」
俺はそのように考えを披露するが、レーヴェンの使徒であるはずのセイ太は否定してこなかった。
「ほかに考えられるのは、痕跡が消えてしまう程に滅んでからの年月が経ってしまっているという可能性だな」
「それもあり得ますね。五百年とか千年とかの単位なら、風化という可能性が捨てきれません」
「痕跡が小さくなっていれば、気が付かないということもあり得るものね」
「な、なるほど」
幼いデイジーでも、これだけ話をすれば納得がいったようである。
「まっ、だからこそ、他の場所にも行ってみるわけなんだがな。たまたまという可能性は捨てきれないからな」
「それでは、海を渡りますか?」
話が落ち着いたところで、セイ太が先を急ごうとする。
「いや、今回はここで休もう」
だが、俺はセイ太たちを止める。
「どうしてですか、セイ」
そりゃ分からないだろうな。痕跡を探そうって話になってるのにな。
でもな、今回は俺にも考えがあるんだ。
「ここで一度レーヴェンの樹を育てる。出発はそれからだ」
「どうしてですか?」
「この大陸の現状を見てみろ。レーヴェンが頑張って来たというのに、植物が生い茂る程度だ。毒素は強いままだし、このまま放ってはおけないんだよ」
三人の疑問に強く訴えて答える。
それというのも、前回の帰りがけに感じたことがあるからだ。
デイジーがレーヴェンの樹を定着させたところの方が、現在地よりも明らかに毒素が弱くなっていたんだよ。
なんとも不可解な話なんだが、これは事実だった。デイジーが定着させたところは、空気がかなり改善しているっていうわけだよ。
だったら、ケオス大陸でも出発前に植えておくべきだろう。それはそう考えたのである。
「むぅ……。お姉様がそこまで仰られるのでしたら、気は進みませんが植えてみます」
「ああ、頼むぞ。出発は遅れてしまうが、きっと無駄にはならないはずだ」
デイジーは俺からレーヴェンの樹の種を受け取り、地面に植えて成長促進魔法を使おうとする。
「よし、ピエラ、セイ太。デイジーを守るぞ」
「了解」
「了解です」
成長促進魔法を使うピエラをかばうように俺たちは構える。
ここはケオス大陸ではあるが、今回向かう諸島部側の海岸近くだ。もしかしたら、いつものように魔物の襲撃が起きるかもしれない。
無事に木が成長して、俺たちは一層警戒を強める。
ところが、ここでは不思議なことに、襲撃が発生しなかった。
今まで一回目は必ず発生していただけに、不思議なことだった。
「……何も起きない?」
「起きませんね」
俺たちは首を傾げてしまう。
「俺たちは警戒を続けるから、ピエラ、デイジーのことを頼むぜ」
「分かったわ」
木の幹に寄りかかってしゃがみ込むデイジーに、ピエラが近付いていく。
そして、そのまま抱きかかえるようにして、一緒に木の幹にもたれてしゃがみ込んだ。
「地中、地上、空中、海域共に敵気配なしです」
「ああ、レーヴェンの加護のある地域だから、魔物も近付けないのかもしれないな」
「可能性はありますね。でも、油断は禁物です。デイジーさんの回復には翌々日の朝まで待つ必要がありますからね」
「だな。聖王とも約束したし、ちゃんと守り通さないとな」
俺とセイ太は、引き続き周囲を警戒し続ける。
結局その日は魔物が現れることがなく、日が沈んで夜になる。
「風邪をひくとよくないから、これにでも包まって眠ってくれ」
「ありがとう、セイ」
俺は毛皮で作られた毛布を渡し、セイ太と一緒に寝ずの番で過ごす。
結局、朝になっても魔物の襲撃はなく、俺は首を傾げるようにして、ピエラと交代するように眠りについたのだった。
「ピエラ、デイジー。今回も行く前に種を飲み込んでおいてくれ」
「分かったわ」
「分かりました」
休憩に入ったところで、二人にレーヴェンの樹の種を渡しておく。これを飲み込んでおくと、約一年間は外界の毒素に侵されずに済むらしいが、詳しい仕組みは分からない。
だが、その効果は前回実証済みなので、二人は迷うことなく種を飲み込んでいた。
レーヴェンの力によって大陸の外周部に出た俺たちは、今回向かう東部の諸島部の方向へと進んでいく。
出発地点は、北方聖国に東端あたりになる。
「信じられませんよね。この山の向こうが自分の国だなんて」
「でも、ここは北方聖国の東端で間違いはない。案内してもらった時に見えた山の形そのものだからな」
俺はかつてジャスに案内してもらった時のことを思い出していた。
北方聖国の東端には、特徴的な頂上を持つ山があることを聞いていたのだ。その特徴こそが、鳥のくちばしのように見える山の頂上の形だ。
その形から『バードビーク』と呼ばれる山だが、この世界では唯一じゃないだろうかな、名前を持つ山なんてな。
「山のことで思い出した」
「どうしたのよ、セイ」
急に手を叩いて声を出しているものだから、ピエラが驚いたように声をかけてくる。
「いや、南の大陸を移動していた時、よく思えば人が住んでいた形跡がなかったんだよ。人がいなくなったとしても、その生活の痕跡は何らかの形で残るはずだ。城などの建物の跡とかがそうだな」
「……そういえばそうね。セイ太で動いていたけれど、そういった場所を見た記憶がないわ」
「ど、どういうことなのでしょうか」
「考えられるのは、最初から外に人なんていなかったことだな。レーヴェンの言葉を否定するのであまり考えたくはないがな」
俺はそのように考えを披露するが、レーヴェンの使徒であるはずのセイ太は否定してこなかった。
「ほかに考えられるのは、痕跡が消えてしまう程に滅んでからの年月が経ってしまっているという可能性だな」
「それもあり得ますね。五百年とか千年とかの単位なら、風化という可能性が捨てきれません」
「痕跡が小さくなっていれば、気が付かないということもあり得るものね」
「な、なるほど」
幼いデイジーでも、これだけ話をすれば納得がいったようである。
「まっ、だからこそ、他の場所にも行ってみるわけなんだがな。たまたまという可能性は捨てきれないからな」
「それでは、海を渡りますか?」
話が落ち着いたところで、セイ太が先を急ごうとする。
「いや、今回はここで休もう」
だが、俺はセイ太たちを止める。
「どうしてですか、セイ」
そりゃ分からないだろうな。痕跡を探そうって話になってるのにな。
でもな、今回は俺にも考えがあるんだ。
「ここで一度レーヴェンの樹を育てる。出発はそれからだ」
「どうしてですか?」
「この大陸の現状を見てみろ。レーヴェンが頑張って来たというのに、植物が生い茂る程度だ。毒素は強いままだし、このまま放ってはおけないんだよ」
三人の疑問に強く訴えて答える。
それというのも、前回の帰りがけに感じたことがあるからだ。
デイジーがレーヴェンの樹を定着させたところの方が、現在地よりも明らかに毒素が弱くなっていたんだよ。
なんとも不可解な話なんだが、これは事実だった。デイジーが定着させたところは、空気がかなり改善しているっていうわけだよ。
だったら、ケオス大陸でも出発前に植えておくべきだろう。それはそう考えたのである。
「むぅ……。お姉様がそこまで仰られるのでしたら、気は進みませんが植えてみます」
「ああ、頼むぞ。出発は遅れてしまうが、きっと無駄にはならないはずだ」
デイジーは俺からレーヴェンの樹の種を受け取り、地面に植えて成長促進魔法を使おうとする。
「よし、ピエラ、セイ太。デイジーを守るぞ」
「了解」
「了解です」
成長促進魔法を使うピエラをかばうように俺たちは構える。
ここはケオス大陸ではあるが、今回向かう諸島部側の海岸近くだ。もしかしたら、いつものように魔物の襲撃が起きるかもしれない。
無事に木が成長して、俺たちは一層警戒を強める。
ところが、ここでは不思議なことに、襲撃が発生しなかった。
今まで一回目は必ず発生していただけに、不思議なことだった。
「……何も起きない?」
「起きませんね」
俺たちは首を傾げてしまう。
「俺たちは警戒を続けるから、ピエラ、デイジーのことを頼むぜ」
「分かったわ」
木の幹に寄りかかってしゃがみ込むデイジーに、ピエラが近付いていく。
そして、そのまま抱きかかえるようにして、一緒に木の幹にもたれてしゃがみ込んだ。
「地中、地上、空中、海域共に敵気配なしです」
「ああ、レーヴェンの加護のある地域だから、魔物も近付けないのかもしれないな」
「可能性はありますね。でも、油断は禁物です。デイジーさんの回復には翌々日の朝まで待つ必要がありますからね」
「だな。聖王とも約束したし、ちゃんと守り通さないとな」
俺とセイ太は、引き続き周囲を警戒し続ける。
結局その日は魔物が現れることがなく、日が沈んで夜になる。
「風邪をひくとよくないから、これにでも包まって眠ってくれ」
「ありがとう、セイ」
俺は毛皮で作られた毛布を渡し、セイ太と一緒に寝ずの番で過ごす。
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