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第二章 外側の世界
第365話 転生者、試合に勝って勝負に負ける
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リヒテルがガーゴイルと呼んだやつも変態だったが、今回のヘルプワゾンと名乗ったやつもずいぶんと変態のようだった。
それにしても、自分の攻撃を食らいながらもまったくの無傷という状態が解せない。一体どういうことなのだろうか。
「なるほど、自分の属性を吸収したってわけね」
ピエラが推測ながら述べている。
なるほど、ゲームで時々ある同属性であるなら吸収または軽減するっていう現象か。
奴の攻撃には毒属性が乗っているから、毒属性を持っているあいつには通じないってことか。
なるほど、めんどくせえ……。
「よく分かったな、その通りだ! ふぅんっ!」
わざわざポーズを決めながら答えている。
まったく、毒々しい見た目な上にキャラが濃いな!
「どうした、来ないのか? 来ないのなら……」
筋肉野郎の体が深く沈み込む。
「こちらから行くぞ!」
次の瞬間、ものすごいスピードで俺に突っ込んできた。
蹴った瞬間に地面の土が塊ごと吹き飛んでいる。、強い踏み込みだということがよく分かる。
だがな、その移動はさっき見させてもらったんだよ。
毒を防ぐための神聖魔法は既に全身に展開済み。
さあ、来やがれってんだ!
右ストレート!
俺と筋肉野郎の右の拳同士がぶつかる。
女の体になったとはいえ、獣人のパワーだ。そう簡単には負けはしねえぜ。
「ぐぐぐっ……。この攻撃を耐えるとは、なかなかやりおるな。しかも受け止めたか」
「さっき見せてもらったからな。単純にスピードとパワーなら、どうにか対処ができるってもんだ」
「くくくっ、そうこなくてはな。一撃で消し炭になられても困るというものだぞ」
どこまでも余裕らしく、目を伏せて笑っていやがる。
だが、誇らしげに笑っているわけじゃない。俺が受け止めるので限界だということを見抜いた上で笑ってやがるんだ。これが強者の余裕というものか。
「ほれ、どうした。この女以外には手を出さぬのだから、お前たちも何かしたらどうなのだ?」
「くっ……」
筋肉野郎が、ピエラたちを煽っていやがる。
それだけ自分の力には絶対的な自信を持っているんだろうな。
レーヴェンの樹の種が弱点なのは分かっているが、使えばこいつは種の力に焼かれながらも俺たちに攻撃を仕掛けてくる。
さらに、こいつ自身が毒素を大量にばらまきながら動いている。
筋肉野郎自体にはレーヴェンの樹の種は有効だが、種を飲み込んでいるピエラとデイジーがこの毒素に耐えられるかはまったくの別問題だ。
俺たちは慎重にならざるを得ない。
「ふはははっ、どうした。もう終わりか? 石のやつを退けたとはいっても、しょせんその程度か。あいつは攻撃力はさほどだからな。頑丈なくせに情けない話だぜ」
「お前の仲間じゃなかったのかよ」
「仲間ぁ?」
筋肉野郎の態度にイラッときたので、俺はつい確認するように叫んでいた。
ところがだ、筋肉野郎はにやりと笑っている。
「はっ! しょせんは同じ主様から生み出されたという共通点しか持たぬやつよ。我らには主様に仕え、お役に立つという共通認識こそあれ、仲間だと思ったことなど一度もないわっ!
筋肉野郎はきっぱりと言い切っていた。
しょせん、たまたま偶然同じ場所に生まれた同じような境遇のただの他人だったというわけだ。
お前らの立場というものはよく分かったぜ。
「ぬ?」
筋肉野郎が違和感を覚えて小さく声をもらす。
「お前の立ち位置と考え方はよく分かった」
俺は少しずつ筋肉野郎の拳を押し返していく。
「ほう、我と力比べか。面白い」
俺が拳を押し返していったが、すぐに押し戻されてしまう。
やはり、純粋に力比べとなると、俺は非力さを認めざるを得ない。生物学上の性別の差というものは、簡単に埋まるものではないのだ。
それに加えて、目の前のヘルプワゾンと名乗る筋肉野郎は、純然たるパワーファイター型だ。どうあがいても、最初から勝ち目はないってわけだ。
「ふん、押し負けているというのに、ずいぶんと余裕があるようだな」
そう、俺には秘策というものがある。
なにせやつは、俺とピエラたちの共闘を認めているのだからな。
つまり、その驕りにこそ、つけ入る隙があるというわけなのだ。
「ふははははっ! ただのやせ我慢か」
筋肉野郎が力を入れてくる。
その瞬間、俺は苦しそうな顔からにこやかな笑顔になる。
「それっ!」
俺はそのまま後ろへと一気に倒れる。
「なに?!」
筋肉野郎は突然のことにそのまま同じように倒れてくる。
俺はしっぽを利用してうまく地面に背中をつけると、筋肉野郎を蹴り上げる。
「どりゃあああっ!!」
「ぬおっ!?」
俺が繰り出したのは柔道の巴投げだ。
奴は自分の作り出した勢いと、俺の蹴り上げによって大きく宙に舞い上がる。
だが、このままでは奴はすぐに戻ってきてしまう。なんてったって翼があるからな。
「ピエラ!」
「待ってたわよ、セイ!」
間髪入れずにピエラの魔法をぶつける。
「元いた場所まで吹き飛んで行け! マジックアロー!」
「うおおおおっ!!」
空高く舞い上がってよく見えなかっただろうが、あいつはピエラのマジックアローに抵抗していた。
だが、先程の反省から、ピエラはマジックアローを連射していたのだ。さすがに二~三十発も連続で食らえば、あいつでもひとたまりもないだろう。
叫び声とともに遠くへと吹き飛んで行った。
「戻ってくる前に他のレーヴェンの樹から中に戻るぞ!」
「はい!」
どうにか筋肉野郎を退けた俺たちは、念のために生やしておいた他のレーヴェンの樹から、ケオス大陸の中へと無事に戻ることができたのだった。
それにしても、自分の攻撃を食らいながらもまったくの無傷という状態が解せない。一体どういうことなのだろうか。
「なるほど、自分の属性を吸収したってわけね」
ピエラが推測ながら述べている。
なるほど、ゲームで時々ある同属性であるなら吸収または軽減するっていう現象か。
奴の攻撃には毒属性が乗っているから、毒属性を持っているあいつには通じないってことか。
なるほど、めんどくせえ……。
「よく分かったな、その通りだ! ふぅんっ!」
わざわざポーズを決めながら答えている。
まったく、毒々しい見た目な上にキャラが濃いな!
「どうした、来ないのか? 来ないのなら……」
筋肉野郎の体が深く沈み込む。
「こちらから行くぞ!」
次の瞬間、ものすごいスピードで俺に突っ込んできた。
蹴った瞬間に地面の土が塊ごと吹き飛んでいる。、強い踏み込みだということがよく分かる。
だがな、その移動はさっき見させてもらったんだよ。
毒を防ぐための神聖魔法は既に全身に展開済み。
さあ、来やがれってんだ!
右ストレート!
俺と筋肉野郎の右の拳同士がぶつかる。
女の体になったとはいえ、獣人のパワーだ。そう簡単には負けはしねえぜ。
「ぐぐぐっ……。この攻撃を耐えるとは、なかなかやりおるな。しかも受け止めたか」
「さっき見せてもらったからな。単純にスピードとパワーなら、どうにか対処ができるってもんだ」
「くくくっ、そうこなくてはな。一撃で消し炭になられても困るというものだぞ」
どこまでも余裕らしく、目を伏せて笑っていやがる。
だが、誇らしげに笑っているわけじゃない。俺が受け止めるので限界だということを見抜いた上で笑ってやがるんだ。これが強者の余裕というものか。
「ほれ、どうした。この女以外には手を出さぬのだから、お前たちも何かしたらどうなのだ?」
「くっ……」
筋肉野郎が、ピエラたちを煽っていやがる。
それだけ自分の力には絶対的な自信を持っているんだろうな。
レーヴェンの樹の種が弱点なのは分かっているが、使えばこいつは種の力に焼かれながらも俺たちに攻撃を仕掛けてくる。
さらに、こいつ自身が毒素を大量にばらまきながら動いている。
筋肉野郎自体にはレーヴェンの樹の種は有効だが、種を飲み込んでいるピエラとデイジーがこの毒素に耐えられるかはまったくの別問題だ。
俺たちは慎重にならざるを得ない。
「ふはははっ、どうした。もう終わりか? 石のやつを退けたとはいっても、しょせんその程度か。あいつは攻撃力はさほどだからな。頑丈なくせに情けない話だぜ」
「お前の仲間じゃなかったのかよ」
「仲間ぁ?」
筋肉野郎の態度にイラッときたので、俺はつい確認するように叫んでいた。
ところがだ、筋肉野郎はにやりと笑っている。
「はっ! しょせんは同じ主様から生み出されたという共通点しか持たぬやつよ。我らには主様に仕え、お役に立つという共通認識こそあれ、仲間だと思ったことなど一度もないわっ!
筋肉野郎はきっぱりと言い切っていた。
しょせん、たまたま偶然同じ場所に生まれた同じような境遇のただの他人だったというわけだ。
お前らの立場というものはよく分かったぜ。
「ぬ?」
筋肉野郎が違和感を覚えて小さく声をもらす。
「お前の立ち位置と考え方はよく分かった」
俺は少しずつ筋肉野郎の拳を押し返していく。
「ほう、我と力比べか。面白い」
俺が拳を押し返していったが、すぐに押し戻されてしまう。
やはり、純粋に力比べとなると、俺は非力さを認めざるを得ない。生物学上の性別の差というものは、簡単に埋まるものではないのだ。
それに加えて、目の前のヘルプワゾンと名乗る筋肉野郎は、純然たるパワーファイター型だ。どうあがいても、最初から勝ち目はないってわけだ。
「ふん、押し負けているというのに、ずいぶんと余裕があるようだな」
そう、俺には秘策というものがある。
なにせやつは、俺とピエラたちの共闘を認めているのだからな。
つまり、その驕りにこそ、つけ入る隙があるというわけなのだ。
「ふははははっ! ただのやせ我慢か」
筋肉野郎が力を入れてくる。
その瞬間、俺は苦しそうな顔からにこやかな笑顔になる。
「それっ!」
俺はそのまま後ろへと一気に倒れる。
「なに?!」
筋肉野郎は突然のことにそのまま同じように倒れてくる。
俺はしっぽを利用してうまく地面に背中をつけると、筋肉野郎を蹴り上げる。
「どりゃあああっ!!」
「ぬおっ!?」
俺が繰り出したのは柔道の巴投げだ。
奴は自分の作り出した勢いと、俺の蹴り上げによって大きく宙に舞い上がる。
だが、このままでは奴はすぐに戻ってきてしまう。なんてったって翼があるからな。
「ピエラ!」
「待ってたわよ、セイ!」
間髪入れずにピエラの魔法をぶつける。
「元いた場所まで吹き飛んで行け! マジックアロー!」
「うおおおおっ!!」
空高く舞い上がってよく見えなかっただろうが、あいつはピエラのマジックアローに抵抗していた。
だが、先程の反省から、ピエラはマジックアローを連射していたのだ。さすがに二~三十発も連続で食らえば、あいつでもひとたまりもないだろう。
叫び声とともに遠くへと吹き飛んで行った。
「戻ってくる前に他のレーヴェンの樹から中に戻るぞ!」
「はい!」
どうにか筋肉野郎を退けた俺たちは、念のために生やしておいた他のレーヴェンの樹から、ケオス大陸の中へと無事に戻ることができたのだった。
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