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新章 番外編集
番外編 緑の魔道具師・その3
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ヒスイたちは、まずは三属性の合成の特訓から始める。完璧な光魔法を使うには、このバランスが難しいのだ。
「はあはあ……、なかなかうまくいきませんね」
「シアン様もとても苦労されていましたからね。そう簡単にはいかないと思います」
ヒスイとヘリオロは床に座り込んでいた。何度やってみても、三つの属性がうまく混ざり合わないのだ。
「チェリシア様の光魔法と釣り合いを取ろうとすると、弱い方向にバランスが取ることは推奨されません。なんとしても強い方で揃えませんと……」
「私が弱いというわけでもなさそうですからね」
「ええ、弱いのは私の風魔法です。だから、私のエアリアルボードは土魔法の補助が要るんですよ」
どうやら、失敗の原因はヒスイの風魔法だった。ヘリオロはさすがコーラル伯爵家の一員であるらしく、水魔法はかなり強いようだった。ただ、血縁ではないというのによく使えるものである。
「ヒスイ嬢、とりあえずは弱い状態で試してみましょう。きちんと光魔法に変化して、カメラが機能するかどうか確認してからでもいいと思います」
「それもそうですね。きちんと合成魔法でも光魔法として機能するのか確認は重要でした。はははっ、魔法に集中し過ぎてすっかり基本的なところを忘れるところでしたね」
ヘリオロの指摘で、ヒスイはまずは二人できちんと合成魔法を完成させて、カメラの昨日を再現できるか試すことにしてみることにした。
結果からいえば、無事に機能していた。風、水、土の三属性合成で光魔法になるのは、シアンが実際に行っていた通りだった。
「できましたね」
「ええ、無事にできてよかったです」
ヒスイもヘリオロも、ひとまずの成功にほっとした様子だった。
そこへ、ちょうど飲み物とお菓子を持ったコハクがやって来た。
「ヒスイ様、ヘリオロ様、進捗はいかがですか?」
「コハク、一応弱い状態で再現性が取れたところよ。でも、チェリシア様の魔法のような強力なものではないわ。そこが課題といったところね」
「詳しくお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」
「ええ、コハクなら私の侍女ですし、情報の共有はしておいて問題ないでしょう。ヘリオロ様もよろしいでしょうか」
「君の侍女であるなら、構いませんよ」
共同研究者であるヘリオロの許可が出たので、ヒスイはコハクに説明をしていた。
「なるほど、風魔法が弱いですか……。残念ですね、私は土魔法なのでお手伝いができませんよ」
コハクはものすごく残念そうにしていた。土魔法が弱いのであれば、自分が手助けをできたからである。風魔法であるのだから手伝いようがないのである。
「緑色の強いモスグリネ王国であっても、みんなが風魔法が得意というわけではないのですね。これはひとつ賢くなった気がしますね」
「どのくらいの力の差があるのか分かればいいのですがね」
「ここの属性の強さを調べられる測定器はありませんですものね。こればっかりは研究所の方にご助力いただくしかないですね」
二人ではいよいよ手詰まり感が強まっているようだった。
「よし、休憩も入れたことですし、今度は風属性のギリギリの強さで試してみましょう。これが成功すれば、かなりチェリシア様のカメラには近付けるでしょうからね」
「はい、頑張りましょう、ヘリオロ様」
お菓子と紅茶を空にした二人は、再び三色合成魔法の研究に打ち込んだのだった。
十日も続けていると、三色合成魔法の要領をつかんだらしく、風魔法を限界まで強めても、かなりの回数実行できるようになってきた。
劣化の写真魔法とはいえども安定して数が作れるようになってきたのは、大した進歩である。
「ふぅ、かなり作れるようになってきましたね」
「ええ、とりあえず、チェリシア様に評価して頂かないといけないと思いますよ。勝手に売り出したらあの方の怒りを買いそうで怖いです」
「はははっ、それは分かりますね。では、早速向かうとしましょうか」
「はい。まずは手続きをしませんと……」
話を終えたヘリオロは部屋を出ていき、研究所の責任者に外出の許可を取りに行った。
部屋に残ったヒスイは、三色合成魔法を閉じ込めて作ったカメラを手に取りながら、小さくため息をついている。
「どうなさったのですか、ヒスイ様。安定して作れるようになってきたのですから、お喜びになった方がいいかと思いますよ」
コハクに言われても、ため息を漏らしてしまう。
「いや、魔道具を手掛ける魔法一門としては、やはり誰かに劣っているというのが許せないようでしてね。なんとしてもチェリシア様の作るカメラを上回りたいと考えてしまうのですよ」
「なるほど、そうでしたか。それは失礼致しました」
ヒスイが返してきた言葉に、コハクははっとさせられて謝罪している。魔法使いというものは簡単には妥協しないのだ。
「ひとまず、この手の一人者であるチェリシア様に見て頂いて、それで認められれば少しは気持ちが楽になると思うわ。それまではちょっと、ね?」
「承知致しました。気をつけます」
ヒスイのどことなく思い詰めたような表情に、コハクはつい心配になってしまう。
ほどなくして、ヒスイとヘリオロのアイヴォリー王国への訪問のための外出の許可が下りる。
バタバタと準備を済ませた二人は、それぞれの使用人を伴いアイヴォリー王国へと出かけたのだった。
「はあはあ……、なかなかうまくいきませんね」
「シアン様もとても苦労されていましたからね。そう簡単にはいかないと思います」
ヒスイとヘリオロは床に座り込んでいた。何度やってみても、三つの属性がうまく混ざり合わないのだ。
「チェリシア様の光魔法と釣り合いを取ろうとすると、弱い方向にバランスが取ることは推奨されません。なんとしても強い方で揃えませんと……」
「私が弱いというわけでもなさそうですからね」
「ええ、弱いのは私の風魔法です。だから、私のエアリアルボードは土魔法の補助が要るんですよ」
どうやら、失敗の原因はヒスイの風魔法だった。ヘリオロはさすがコーラル伯爵家の一員であるらしく、水魔法はかなり強いようだった。ただ、血縁ではないというのによく使えるものである。
「ヒスイ嬢、とりあえずは弱い状態で試してみましょう。きちんと光魔法に変化して、カメラが機能するかどうか確認してからでもいいと思います」
「それもそうですね。きちんと合成魔法でも光魔法として機能するのか確認は重要でした。はははっ、魔法に集中し過ぎてすっかり基本的なところを忘れるところでしたね」
ヘリオロの指摘で、ヒスイはまずは二人できちんと合成魔法を完成させて、カメラの昨日を再現できるか試すことにしてみることにした。
結果からいえば、無事に機能していた。風、水、土の三属性合成で光魔法になるのは、シアンが実際に行っていた通りだった。
「できましたね」
「ええ、無事にできてよかったです」
ヒスイもヘリオロも、ひとまずの成功にほっとした様子だった。
そこへ、ちょうど飲み物とお菓子を持ったコハクがやって来た。
「ヒスイ様、ヘリオロ様、進捗はいかがですか?」
「コハク、一応弱い状態で再現性が取れたところよ。でも、チェリシア様の魔法のような強力なものではないわ。そこが課題といったところね」
「詳しくお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」
「ええ、コハクなら私の侍女ですし、情報の共有はしておいて問題ないでしょう。ヘリオロ様もよろしいでしょうか」
「君の侍女であるなら、構いませんよ」
共同研究者であるヘリオロの許可が出たので、ヒスイはコハクに説明をしていた。
「なるほど、風魔法が弱いですか……。残念ですね、私は土魔法なのでお手伝いができませんよ」
コハクはものすごく残念そうにしていた。土魔法が弱いのであれば、自分が手助けをできたからである。風魔法であるのだから手伝いようがないのである。
「緑色の強いモスグリネ王国であっても、みんなが風魔法が得意というわけではないのですね。これはひとつ賢くなった気がしますね」
「どのくらいの力の差があるのか分かればいいのですがね」
「ここの属性の強さを調べられる測定器はありませんですものね。こればっかりは研究所の方にご助力いただくしかないですね」
二人ではいよいよ手詰まり感が強まっているようだった。
「よし、休憩も入れたことですし、今度は風属性のギリギリの強さで試してみましょう。これが成功すれば、かなりチェリシア様のカメラには近付けるでしょうからね」
「はい、頑張りましょう、ヘリオロ様」
お菓子と紅茶を空にした二人は、再び三色合成魔法の研究に打ち込んだのだった。
十日も続けていると、三色合成魔法の要領をつかんだらしく、風魔法を限界まで強めても、かなりの回数実行できるようになってきた。
劣化の写真魔法とはいえども安定して数が作れるようになってきたのは、大した進歩である。
「ふぅ、かなり作れるようになってきましたね」
「ええ、とりあえず、チェリシア様に評価して頂かないといけないと思いますよ。勝手に売り出したらあの方の怒りを買いそうで怖いです」
「はははっ、それは分かりますね。では、早速向かうとしましょうか」
「はい。まずは手続きをしませんと……」
話を終えたヘリオロは部屋を出ていき、研究所の責任者に外出の許可を取りに行った。
部屋に残ったヒスイは、三色合成魔法を閉じ込めて作ったカメラを手に取りながら、小さくため息をついている。
「どうなさったのですか、ヒスイ様。安定して作れるようになってきたのですから、お喜びになった方がいいかと思いますよ」
コハクに言われても、ため息を漏らしてしまう。
「いや、魔道具を手掛ける魔法一門としては、やはり誰かに劣っているというのが許せないようでしてね。なんとしてもチェリシア様の作るカメラを上回りたいと考えてしまうのですよ」
「なるほど、そうでしたか。それは失礼致しました」
ヒスイが返してきた言葉に、コハクははっとさせられて謝罪している。魔法使いというものは簡単には妥協しないのだ。
「ひとまず、この手の一人者であるチェリシア様に見て頂いて、それで認められれば少しは気持ちが楽になると思うわ。それまではちょっと、ね?」
「承知致しました。気をつけます」
ヒスイのどことなく思い詰めたような表情に、コハクはつい心配になってしまう。
ほどなくして、ヒスイとヘリオロのアイヴォリー王国への訪問のための外出の許可が下りる。
バタバタと準備を済ませた二人は、それぞれの使用人を伴いアイヴォリー王国へと出かけたのだった。
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