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第七章 一年次・後半
第153話 逆襲の決意
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インフェルノとの契約を終えて、ロゼリアたちは氷山エリアの麓まで戻ってきた。
トムが神妙な顔をしていたので、街などには寄らず、野営をする事になった。その時に、アイリスも交えて話をする事になった。
食事を終えてから落ち着いたところで、トムは徐ろに語り出した。
「実は、ロゼリア様には、とある魔法が使われた可能性があるのです」
「とある魔法?」
「はい」
ロゼリアたちが聞き返せば、トムは落ち着いた声で返事をする。
「正直、この魔法を使う者が存在したというのは驚きでございます。そして、わたくしはその魔法を使った人物を存じ上げております」
ロゼリアたちは驚いた。何の魔法を使われたのかは分からないが、トムがそれを把握していると言うのだ。
「しかし、わたくしがその名を言ってしまう事は憚られます。その者の想いを踏みにじる事になりますから」
トムはそこまで言うと、黙り込んだ。
しばらくの沈黙の後、おそるおそる口を開いたのはチェリシアだった。
「で、その魔法って?」
「その魔法は禁法と呼ばれる、代償の大きな魔法でございます。何せ結果如何を問わず、自身の存在が消えてしまうのですから」
トムの言葉に、ロゼリアたちは戦いた。自分の命はおろかその存在すらも投げ打っての大博打である。
「その魔法の名を“時渡りの秘法”。現時点から過去や未来に飛ぶ事のできる、禁法中の禁法でございます」
時渡りの秘法。
つまり、過去や未来に渡る事で歴史を変えてしまう恐れがあるという事だ。使用者の存在が消えてなくなるというのは、その不都合を消滅させるための代償なのだろう。それが故に禁法と呼ばれているのだ。
「代償無しに扱える者も居ると言えばいらっしゃいます。時の神獣クロノス様とその娘である幻獣クロノア様でございます」
トムは更に話を続けている。
「ただ、お二人も違うでしょう。我々は基本的に人間には関与致しませんから」
名を挙げながらも、あっさり自分で否定するトム。だが、驚きの連続のあまり、四人は黙って聞いているだけである。
「しかし、使われた方には感謝致しますよ。忘れ去られていた神獣や幻獣が、こうやって再び人に認知される事になったのですから」
語るだけ語ったトムは、どこか泣きそうな雰囲気になっていた。
しばらくの沈黙の後、ロゼリアが静かに口を開いた。
「……その時渡りの秘法の発動時点って、いつだったの?」
「それは言えません。知ってはいますが、使用者の意思を尊重致しますので、黙秘させて頂きます」
トムは頑なに話す事を拒んだ。
「ただ、これだけは申しておきます。ロゼリア様、ペシエラ様のお二人が、その魔法の対象者でございます。そして、その魔法の発動の影響が、別の世界の方であったチェリシア様の魂に干渉したと、わたくしはそう考えております」
トムの言葉に、四人は絶句する程に驚いた。さすがは幻獣、そこまで把握していたようだ。
ところが、このトムの証言で、ロゼリアとペシエラの中にあった仮説は、更に確実なものとなった。
アイヴォリー王国の滅亡は、ロゼリアの死がきっかけになった。しかし、この悲劇を引き起こしたこのロゼリア断罪の引き金を引いた、逆行前のペシエラの行動にもいろいろ不可解な点がある。それ自体は逆行してきた今のペシエラも感じている。
それに、断絶されたはずのマゼンダ侯爵一派が、モスグリネ王国との戦争の中で暗躍したという事も、大きな謎なのだ。徹底的に叩かれたので、組織だった動きができるわけがなかったのだ。
どこの誰だか知らないが、時渡りの秘法を使ってくれた事に、ロゼリアもペシエラも今は感謝しかない。アイリスを助けた事で、逆行前の合宿で起きた魔物襲撃が人為的なものであった事が判明。それに伴って、パープリア男爵が逆行前の一連の出来事に関わっていた可能性が出てきた。彼が逆行前の時間軸で、ペイル王やマゼンダ侯爵一派の残党を唆した可能性が考えられる。
となれば、王国のためにできる事は、国内の不穏分子を叩き潰す事だった。
「ファントム」
「なんでしょうか、ロゼリア様」
「この国、いえ、この世界の平和のために、力を貸して下さいますか?」
ロゼリアは強く微笑む。それを見たトムは、
「もちろんでございますとも」
安心したように笑って頷いた。
トムが神妙な顔をしていたので、街などには寄らず、野営をする事になった。その時に、アイリスも交えて話をする事になった。
食事を終えてから落ち着いたところで、トムは徐ろに語り出した。
「実は、ロゼリア様には、とある魔法が使われた可能性があるのです」
「とある魔法?」
「はい」
ロゼリアたちが聞き返せば、トムは落ち着いた声で返事をする。
「正直、この魔法を使う者が存在したというのは驚きでございます。そして、わたくしはその魔法を使った人物を存じ上げております」
ロゼリアたちは驚いた。何の魔法を使われたのかは分からないが、トムがそれを把握していると言うのだ。
「しかし、わたくしがその名を言ってしまう事は憚られます。その者の想いを踏みにじる事になりますから」
トムはそこまで言うと、黙り込んだ。
しばらくの沈黙の後、おそるおそる口を開いたのはチェリシアだった。
「で、その魔法って?」
「その魔法は禁法と呼ばれる、代償の大きな魔法でございます。何せ結果如何を問わず、自身の存在が消えてしまうのですから」
トムの言葉に、ロゼリアたちは戦いた。自分の命はおろかその存在すらも投げ打っての大博打である。
「その魔法の名を“時渡りの秘法”。現時点から過去や未来に飛ぶ事のできる、禁法中の禁法でございます」
時渡りの秘法。
つまり、過去や未来に渡る事で歴史を変えてしまう恐れがあるという事だ。使用者の存在が消えてなくなるというのは、その不都合を消滅させるための代償なのだろう。それが故に禁法と呼ばれているのだ。
「代償無しに扱える者も居ると言えばいらっしゃいます。時の神獣クロノス様とその娘である幻獣クロノア様でございます」
トムは更に話を続けている。
「ただ、お二人も違うでしょう。我々は基本的に人間には関与致しませんから」
名を挙げながらも、あっさり自分で否定するトム。だが、驚きの連続のあまり、四人は黙って聞いているだけである。
「しかし、使われた方には感謝致しますよ。忘れ去られていた神獣や幻獣が、こうやって再び人に認知される事になったのですから」
語るだけ語ったトムは、どこか泣きそうな雰囲気になっていた。
しばらくの沈黙の後、ロゼリアが静かに口を開いた。
「……その時渡りの秘法の発動時点って、いつだったの?」
「それは言えません。知ってはいますが、使用者の意思を尊重致しますので、黙秘させて頂きます」
トムは頑なに話す事を拒んだ。
「ただ、これだけは申しておきます。ロゼリア様、ペシエラ様のお二人が、その魔法の対象者でございます。そして、その魔法の発動の影響が、別の世界の方であったチェリシア様の魂に干渉したと、わたくしはそう考えております」
トムの言葉に、四人は絶句する程に驚いた。さすがは幻獣、そこまで把握していたようだ。
ところが、このトムの証言で、ロゼリアとペシエラの中にあった仮説は、更に確実なものとなった。
アイヴォリー王国の滅亡は、ロゼリアの死がきっかけになった。しかし、この悲劇を引き起こしたこのロゼリア断罪の引き金を引いた、逆行前のペシエラの行動にもいろいろ不可解な点がある。それ自体は逆行してきた今のペシエラも感じている。
それに、断絶されたはずのマゼンダ侯爵一派が、モスグリネ王国との戦争の中で暗躍したという事も、大きな謎なのだ。徹底的に叩かれたので、組織だった動きができるわけがなかったのだ。
どこの誰だか知らないが、時渡りの秘法を使ってくれた事に、ロゼリアもペシエラも今は感謝しかない。アイリスを助けた事で、逆行前の合宿で起きた魔物襲撃が人為的なものであった事が判明。それに伴って、パープリア男爵が逆行前の一連の出来事に関わっていた可能性が出てきた。彼が逆行前の時間軸で、ペイル王やマゼンダ侯爵一派の残党を唆した可能性が考えられる。
となれば、王国のためにできる事は、国内の不穏分子を叩き潰す事だった。
「ファントム」
「なんでしょうか、ロゼリア様」
「この国、いえ、この世界の平和のために、力を貸して下さいますか?」
ロゼリアは強く微笑む。それを見たトムは、
「もちろんでございますとも」
安心したように笑って頷いた。
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