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第八章 二年次
第177話 不安と動揺の中で
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「ペシエラたち、大丈夫かしら……」
別荘に避難したチェリシアが、ペシエラたちを気に掛けている。
「大丈夫よ。それよりも、私たちはこっちをどうにかしないとね」
慌てふためくチェリシアを、ロゼリアは落ち着かせようとする。しかし、ロゼリアの視線はチェリシアではなく、避難させた学生や教官の方を見ていた。
「ロゼリア? どうしたの?」
チェリシアがゆっくりとロゼリアを見る。しかし、ロゼリアの視線はチェリシアに向かない。それどころか鋭く学生たちを見ている。
「……おかしな話よ。人為的に魔物氾濫を起こせるレベルの召喚陣を、アクアマリン子爵に気付かれる事なく仕掛けられるなんてね」
睨みを利かせたまま、ロゼリアは呟く。
「えっ、それはどういう……」
「チェリシア、いい加減こちらの世界に慣れなさい。考えられる理由は二つ。一つはアクアマリン子爵の近くにパープリアの手の者が居て、うまく隠蔽している」
ロゼリアはチェリシアだけに聞こえるように、魔物反乱の起きた理由を挙げていく。
「そして、もう一つがこの合宿の参加者に、短時間で召喚陣を仕掛けられる手段を持った者が紛れている」
ロゼリアの推理を聞いて、チェリシアは声を上げそうになる。
「それって、まさか……」
なんとか声を抑え、小声でロゼリアに確認するように尋ねるチェリシア。
「ええ、疑いたくはないけれど、片方、もしくは両方にパープリアの駒が送り込まれてるという事よ」
ロゼリアの語った言葉は、実に衝撃的だった。アイリス以外にも、パープリアの関係者が紛れ込んでいた事に、まったくもって気付けなかったのだから。
おそらくは対外的にアイリスは亡くなったと報せたあの日から、次の手駒の選定に入っていたのだろう。でなければ、学園祭の武術大会の件も説明ができない。怪しい事をすれば、学園の警備の目を誤魔化せるはずもないからだ。
だが、学園の関係者ならどうとでも言って目撃者を排除する事だって可能だ。そう考えれば、武術大会の武台に仕掛けられた召喚陣にも納得がいく。
「なぁ、いつまで俺たちはこうしていればいいんだ!」
「そうよ。魔物氾濫だというなら私たちも戦うべきではないのですか?」
閉じ込められた学生たちが騒ぎ出す。だが、
「お前ら、黙れっ!」
ペイルが一喝する。すると、学生たちは一気に静まり返った。
「まったくだね。自分たちの力量も分かってないようだけど、それより魔物の数を把握できてないようでは、邪魔にしかならないよ」
シルヴァノは、自分も魔物と対峙できない悔しさを表情に出している。
「まったくね。外の魔物はおそらく千体くらい居るわ。多少強いのも居るようだけど、ペシエラとアイリスなら十分相手にできる数よ」
ロゼリアも冷めた口調で話す。
その状況で、学生たちからはロゼリアたちに非難の声をぶつけようとしているのか、険しい表情を向けている。
その様子を見たロゼリアは、大きくため息をついた。
「私はあの子にこっちを任されたの。見た目こそ三つも年下だけど、あの子は誰よりも大人よ」
ロゼリアの目が鋭く光る。
「おそらくペシエラは気付いているわ。この魔物氾濫が人為的な物だという事にね!」
ロゼリアがこう言い切れば、学生はもちろん、周りに居た教官たちも驚いていた。
「去年の合宿や武術大会と同じ、召喚陣を用いたのよ。ただ、今回はその規模が違うわ。調べてみたけれど、一つの召喚陣からは一体から十数体の魔物を呼び出せるそうよ。つまり、千もの魔物を呼び出すには、数百の陣が必要になるわ。……これがどういう事か、お分かり?」
ロゼリアが問い掛ければ、場の全員が黙り込んだ。自分たちの中に、これを仕掛けた犯人が居るかも知れない……。この事に気付かされたが故の沈黙なのだ。
動揺が広がる中、ロゼリアは冷静だった。動揺で注意が逸れた隙に、こっそりとチェリシアに話し掛ける。
そして、ロゼリアは人差し指を突き出し、声高らかに叫んだ。
「今回の召喚陣を仕組んだ犯人は、この中に居るわ!」
別荘に避難したチェリシアが、ペシエラたちを気に掛けている。
「大丈夫よ。それよりも、私たちはこっちをどうにかしないとね」
慌てふためくチェリシアを、ロゼリアは落ち着かせようとする。しかし、ロゼリアの視線はチェリシアではなく、避難させた学生や教官の方を見ていた。
「ロゼリア? どうしたの?」
チェリシアがゆっくりとロゼリアを見る。しかし、ロゼリアの視線はチェリシアに向かない。それどころか鋭く学生たちを見ている。
「……おかしな話よ。人為的に魔物氾濫を起こせるレベルの召喚陣を、アクアマリン子爵に気付かれる事なく仕掛けられるなんてね」
睨みを利かせたまま、ロゼリアは呟く。
「えっ、それはどういう……」
「チェリシア、いい加減こちらの世界に慣れなさい。考えられる理由は二つ。一つはアクアマリン子爵の近くにパープリアの手の者が居て、うまく隠蔽している」
ロゼリアはチェリシアだけに聞こえるように、魔物反乱の起きた理由を挙げていく。
「そして、もう一つがこの合宿の参加者に、短時間で召喚陣を仕掛けられる手段を持った者が紛れている」
ロゼリアの推理を聞いて、チェリシアは声を上げそうになる。
「それって、まさか……」
なんとか声を抑え、小声でロゼリアに確認するように尋ねるチェリシア。
「ええ、疑いたくはないけれど、片方、もしくは両方にパープリアの駒が送り込まれてるという事よ」
ロゼリアの語った言葉は、実に衝撃的だった。アイリス以外にも、パープリアの関係者が紛れ込んでいた事に、まったくもって気付けなかったのだから。
おそらくは対外的にアイリスは亡くなったと報せたあの日から、次の手駒の選定に入っていたのだろう。でなければ、学園祭の武術大会の件も説明ができない。怪しい事をすれば、学園の警備の目を誤魔化せるはずもないからだ。
だが、学園の関係者ならどうとでも言って目撃者を排除する事だって可能だ。そう考えれば、武術大会の武台に仕掛けられた召喚陣にも納得がいく。
「なぁ、いつまで俺たちはこうしていればいいんだ!」
「そうよ。魔物氾濫だというなら私たちも戦うべきではないのですか?」
閉じ込められた学生たちが騒ぎ出す。だが、
「お前ら、黙れっ!」
ペイルが一喝する。すると、学生たちは一気に静まり返った。
「まったくだね。自分たちの力量も分かってないようだけど、それより魔物の数を把握できてないようでは、邪魔にしかならないよ」
シルヴァノは、自分も魔物と対峙できない悔しさを表情に出している。
「まったくね。外の魔物はおそらく千体くらい居るわ。多少強いのも居るようだけど、ペシエラとアイリスなら十分相手にできる数よ」
ロゼリアも冷めた口調で話す。
その状況で、学生たちからはロゼリアたちに非難の声をぶつけようとしているのか、険しい表情を向けている。
その様子を見たロゼリアは、大きくため息をついた。
「私はあの子にこっちを任されたの。見た目こそ三つも年下だけど、あの子は誰よりも大人よ」
ロゼリアの目が鋭く光る。
「おそらくペシエラは気付いているわ。この魔物氾濫が人為的な物だという事にね!」
ロゼリアがこう言い切れば、学生はもちろん、周りに居た教官たちも驚いていた。
「去年の合宿や武術大会と同じ、召喚陣を用いたのよ。ただ、今回はその規模が違うわ。調べてみたけれど、一つの召喚陣からは一体から十数体の魔物を呼び出せるそうよ。つまり、千もの魔物を呼び出すには、数百の陣が必要になるわ。……これがどういう事か、お分かり?」
ロゼリアが問い掛ければ、場の全員が黙り込んだ。自分たちの中に、これを仕掛けた犯人が居るかも知れない……。この事に気付かされたが故の沈黙なのだ。
動揺が広がる中、ロゼリアは冷静だった。動揺で注意が逸れた隙に、こっそりとチェリシアに話し掛ける。
そして、ロゼリアは人差し指を突き出し、声高らかに叫んだ。
「今回の召喚陣を仕組んだ犯人は、この中に居るわ!」
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