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第八章 二年次
第182話 決着、そして
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「プラティナ様の証言では、この石に施されている紋様はカーボニル子爵家の家紋との事です」
アイリスは、画像の中の石の説明をする。
「しかも埋まり方からすると、どう見ても踏まれて埋まったのではなく、ご丁寧に手作業で埋めたもののようです。他の召喚陣のにも同じような石が埋まってましたが、二ヶ所を除いて全て砕けていました」
アイリスは丁寧に説明した。
「カーボニル子爵家は、わたくしのスノーフィールド公爵家と同じ、王家の血を継ぐ家系です。紋様が似ているのはそのためです。ですが、ある時謀反を起こしかけた事で、三段階降爵という処罰を受けて子爵となりました。今でも王家と公爵家からは、危険な一族として監視されております」
プラティナは、カーボニル子爵家とスノーフィールド公爵家の家紋が似ている事の説明をする。教官も学生も初めて聞いたようで、言葉も出ないようだった。
しかし、未遂とはいえ謀反を企てて三段階降爵で済むとは、なかなかに温情の処分である。通常ならよくて爵位剥奪、悪くて一族断絶といったところだ。おそらく、王家の血を慮っての処分なのだろう。だが、それはカーボニル家から恨みを買うだけの結果となったわけである。
(その温情の結果が、これというわけか……)
床に押さえつけられたままのダルクとデプスを見て、ロゼリア、ペシエラ、ガレンの三人は同じ事を思った。
「ただ、この魔法が得意分野のアクアマリンの地で、二年連続でやらかしてくれていますので、アクアマリン子爵の近くにも協力者が居る可能性があります。すぐさま、調べ上げる必要があると思います」
プラティナが強く言うと、学園側はすぐに動き始めた。ガレンが主導して、学園と王家へと早馬を出す。ダルクとデプスは拘束され、チェリシアの張った防壁の中に閉じ込められた。
こうして、人為的な魔物氾濫はひとまず終結を迎えたのだ。
そして、一件落着後の別荘の外。
「アイリス、この六体が配下になった魔物なの?」
チェリシアが驚いた表情でアイリスに尋ねる。
「はい。ただ、正式な契約には名が必要ですので、正式な契約を結んだのは、ミノタウロスのタウロだけですね」
牛の頭と尾を持つ人型の魔物、それがミノタウロス。だが、タウロの体は赤く染まり、鼻息に火が混じっている。
「タウロは、インフェルノの古い友人のようです。火山に居たせいか、火を纏っているのが特徴ですね」
紹介されたタウロは雄叫びを上げた。アイリスは気にせず、残りの契約もしようと試みる。
「魔物まで配下にしてしまうとは、神獣使いとは恐ろしいな」
魔物に興味があってついてきたペイルが、言葉とは裏腹に笑みを浮かべている。
シルヴァノも加わって話している間、アイリスは名付けを行なって順番に契約していく。
オークジェネラルはラルク、ライトニングウルフはトルフ、ハイスプライトはライ、メタルゼリーはルゼ、そして、アックスリザードはアックスと名付けられた。種族名から取ったのだが、概ね満足しているようである。
この五体は契約した瞬間、光り輝いて精霊へと変化した。その事で能力が上昇し、更には喋る事もできるようになった。仮契約の状態でも変化を行使して言葉を喋っていたルゼだったが、ゼリー形態でも喋れるようになってしまった。
「いやまあ、すごい光景だね。……それにしても不思議だよ」
「何がですか、殿下」
シルヴァノがポツリと漏らした言葉に、ロゼリアが反応する。
「何って。魔物が人間を主人と認めている事だよ。魔物は我が強いと言われているから、他人に従う事なんて、まずありえない事なんだ」
「確かに、そうですわね」
「しかし、こんな貴重な場面を目の前で見れるだなんてね。父上に報告して、彼らの処遇をどうするか決めないとね」
シルヴァノは楽しそうに笑っていた。
しかし、確かに重大な問題である。なりゆきな上に元とはいえ、魔物を従える事になってしまった。神獣使いの事が歴史に残ってないのだから、国で魔物を従えた記録もない。魔物を大量に従えた事を、他の国がどう捉えるのかというのは、実に不透明である。
ところが、隣国モスグリネの王子であるペイル。
「おい、この狼、トルフと言ったか、乗っても構わないか?」
ライトニングウルフに興味津々である。アイリスは反応に困っていたようだが、トルフの方がペイルに興味を示した。
「俺に乗りたいと言うのか? ふっ、面白い奴だな」
そう言うと、しゃがみ込んでペイルを背に乗せていた。そして、しばらく走り回っている様子に、ロゼリアやペシエラは呆気に取られていた。
「くははははっ! 気に入ったぞ、小僧。主人の許可さえあれば、小僧についてもいいぞ?」
「なにっ、本当か? 俺はモスグリネ王国の王子ペイルだ。トルフ、お前とは気が合いそうだな!」
すっかり意気投合しているようだった。さすがは攻略対象で俺様気質のペイル。豪胆というか何と言うか……。
この光景にアイリスは混乱し、シルヴァノは報告内容が増えて苦笑いをしていた。
アイリスは、画像の中の石の説明をする。
「しかも埋まり方からすると、どう見ても踏まれて埋まったのではなく、ご丁寧に手作業で埋めたもののようです。他の召喚陣のにも同じような石が埋まってましたが、二ヶ所を除いて全て砕けていました」
アイリスは丁寧に説明した。
「カーボニル子爵家は、わたくしのスノーフィールド公爵家と同じ、王家の血を継ぐ家系です。紋様が似ているのはそのためです。ですが、ある時謀反を起こしかけた事で、三段階降爵という処罰を受けて子爵となりました。今でも王家と公爵家からは、危険な一族として監視されております」
プラティナは、カーボニル子爵家とスノーフィールド公爵家の家紋が似ている事の説明をする。教官も学生も初めて聞いたようで、言葉も出ないようだった。
しかし、未遂とはいえ謀反を企てて三段階降爵で済むとは、なかなかに温情の処分である。通常ならよくて爵位剥奪、悪くて一族断絶といったところだ。おそらく、王家の血を慮っての処分なのだろう。だが、それはカーボニル家から恨みを買うだけの結果となったわけである。
(その温情の結果が、これというわけか……)
床に押さえつけられたままのダルクとデプスを見て、ロゼリア、ペシエラ、ガレンの三人は同じ事を思った。
「ただ、この魔法が得意分野のアクアマリンの地で、二年連続でやらかしてくれていますので、アクアマリン子爵の近くにも協力者が居る可能性があります。すぐさま、調べ上げる必要があると思います」
プラティナが強く言うと、学園側はすぐに動き始めた。ガレンが主導して、学園と王家へと早馬を出す。ダルクとデプスは拘束され、チェリシアの張った防壁の中に閉じ込められた。
こうして、人為的な魔物氾濫はひとまず終結を迎えたのだ。
そして、一件落着後の別荘の外。
「アイリス、この六体が配下になった魔物なの?」
チェリシアが驚いた表情でアイリスに尋ねる。
「はい。ただ、正式な契約には名が必要ですので、正式な契約を結んだのは、ミノタウロスのタウロだけですね」
牛の頭と尾を持つ人型の魔物、それがミノタウロス。だが、タウロの体は赤く染まり、鼻息に火が混じっている。
「タウロは、インフェルノの古い友人のようです。火山に居たせいか、火を纏っているのが特徴ですね」
紹介されたタウロは雄叫びを上げた。アイリスは気にせず、残りの契約もしようと試みる。
「魔物まで配下にしてしまうとは、神獣使いとは恐ろしいな」
魔物に興味があってついてきたペイルが、言葉とは裏腹に笑みを浮かべている。
シルヴァノも加わって話している間、アイリスは名付けを行なって順番に契約していく。
オークジェネラルはラルク、ライトニングウルフはトルフ、ハイスプライトはライ、メタルゼリーはルゼ、そして、アックスリザードはアックスと名付けられた。種族名から取ったのだが、概ね満足しているようである。
この五体は契約した瞬間、光り輝いて精霊へと変化した。その事で能力が上昇し、更には喋る事もできるようになった。仮契約の状態でも変化を行使して言葉を喋っていたルゼだったが、ゼリー形態でも喋れるようになってしまった。
「いやまあ、すごい光景だね。……それにしても不思議だよ」
「何がですか、殿下」
シルヴァノがポツリと漏らした言葉に、ロゼリアが反応する。
「何って。魔物が人間を主人と認めている事だよ。魔物は我が強いと言われているから、他人に従う事なんて、まずありえない事なんだ」
「確かに、そうですわね」
「しかし、こんな貴重な場面を目の前で見れるだなんてね。父上に報告して、彼らの処遇をどうするか決めないとね」
シルヴァノは楽しそうに笑っていた。
しかし、確かに重大な問題である。なりゆきな上に元とはいえ、魔物を従える事になってしまった。神獣使いの事が歴史に残ってないのだから、国で魔物を従えた記録もない。魔物を大量に従えた事を、他の国がどう捉えるのかというのは、実に不透明である。
ところが、隣国モスグリネの王子であるペイル。
「おい、この狼、トルフと言ったか、乗っても構わないか?」
ライトニングウルフに興味津々である。アイリスは反応に困っていたようだが、トルフの方がペイルに興味を示した。
「俺に乗りたいと言うのか? ふっ、面白い奴だな」
そう言うと、しゃがみ込んでペイルを背に乗せていた。そして、しばらく走り回っている様子に、ロゼリアやペシエラは呆気に取られていた。
「くははははっ! 気に入ったぞ、小僧。主人の許可さえあれば、小僧についてもいいぞ?」
「なにっ、本当か? 俺はモスグリネ王国の王子ペイルだ。トルフ、お前とは気が合いそうだな!」
すっかり意気投合しているようだった。さすがは攻略対象で俺様気質のペイル。豪胆というか何と言うか……。
この光景にアイリスは混乱し、シルヴァノは報告内容が増えて苦笑いをしていた。
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