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第八章 二年次
第185話 貸しを作る
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というわけでやって来たドール商会。
ロゼリアたちを出迎えたのは、オーロ、ブラッサ、ロイエールの商会長家族とその側近たちだった。よく見れば、オーロの妻カナリーも居る。
マゼンダ商会側は、ロゼリア、チェリシア、ペシエラ、アイリス、それにルゼの五人である。急な事だったので、シアンもリモスも来ていない。子どもだけで交渉するという事である。対して向こうはブラッサとロイエールを除けば大人ばかりだ。見るからに形勢不利である。
だがしかし、それは一般的な感想。アイリスを除けば、中身は子どもではない。それに加えて、ロゼリアとペシエラの二人は交渉術も長けている。子どもと思って甘く見てはいけない。
逆行だとか転生だとかは知らなくても、オーロだけは目の前の面々の恐ろしさが分かっていた。なにせ、今までにない魔道具をたくさん生み出してきたのだ。その発想の自由さと魔力操作の腕は、これまでの概念を崩すには十分過ぎたのだ。
「突然の訪問にも関わらず、これ程までの出迎えに感謝申し上げます。オーロ商会長」
口を開いたのはロゼリアだった。
「いや、あなた方は重要な取引相手です。いくら急とはいえ、ちゃんと出迎えられねば、それは失礼というものではないですかな?」
オーロは言葉を返す。
「そうですね。そういうところは、本当に頭が下がります」
ロゼリアは落ち着いている。
この場でプレッシャーを感じているのは、実はオーロたちの方だ。それくらいには、マゼンダ商会の事を重要視している。娘たちも懇意にしているなど、気を遣わざるを得ないのだ。
「いえいえ、当たり前の事です。……して、本日の用件は何でしょうか」
あまりの堂々とした態度に、オーロは少し押されている。それでも商会長として平然と振る舞う。
用件を聞かれたロゼリアは、チェリシアたちに目で合図をする。それに気が付いたが、口を開いたのは意外にもルゼだった。
「私をこちらで雇って下さいな」
要件だけをストレートに言った。
「失礼ですが、そちらの方はどなたですかな?」
オーロは動揺しつつも、当然発生した疑問を口にする。
「これは失礼致しましたわ、オーロ商会長。この者はルゼと申します。……ルゼ」
これに答えたのはペシエラだった。そして、ペシエラが合図を送ると、ルゼは変化する。その姿に、ドール商会側は驚いて騒めいた。
「ま、魔物……ですかな?」
「はい、とある事情でうちで保護する事になったメタルゼリーでございます。ご覧の通り、彼女は人型になれますし、会話する事もできます」
オーロの言葉に、ロゼリアが答える。この間にルゼは、再び人型になる。
「ええ、私はメタルゼリー。金属の事はとても詳しいのです。ドール商会は金属の取り扱いがあると聞きましたので、私の知識や技術はきっと役に立てると思います!」
ドヤ顔かつ胸を張って言い切るルゼ。その姿に、オーロは目を見開き、ブラッサとロイエールは微笑み、幹部たちは沈黙している。
「し、しかし、魔物とあっては信用はしきれません。本当に大丈夫なのですか?」
ドール商会の幹部の一人が声を上げる。確かに、魔物は人間に対して害を為す存在だ、仕方のない話である。
「いいえ、私は害とはなりません! 主人様のお役に立てる事こそ私の喜び。六百年間、世界の鉱石を食べて回った私を、舐めてもらっては困ります!」
「ルゼ?」
信用できないと言うドール商会の幹部に、ルゼは怒って言い返していると、ペシエラが鋭い視線をルゼに向ける。
「ひっ!」
すると、ルゼはビクッと驚いて、すごすごと席に着いた。
この様子を見ていたドール商会の幹部は驚いていた。魔物を従えているだけではなく、その魔物に言う事を聞かせている。これだけで、ペシエラの恐ろしさが分かるというものだ。
騒つく幹部とは対照的なのが、ドール一家だ。ほぼ初対面であるはずのカナリーすら落ち着いている。さすがは商会長婦人といったところか。肝が据わっている。
ここまでの反応を見ても、実際に見せた方が早いと判断したロゼリアたちは、ルゼに城で見せたように、金属を出させてみた。
「この行為、あまりしたくはないんですよね。凄くお腹が減るので……」
ぶつくさ文句を言いながらも、城で見せたように金銀プラチナに魔法銀や魔鉄鉱を出してみせた。
「おお、希少金属まで……っ! 素晴らしいですな」
オーロが食いついた。その様子に、ルゼはふふんと得意になった。
「この魔鉄鉱に関しては、このアイヴォリーの氷山エリアに眠ってますよ。インフェルノ様やタウロ様がいらしたので、あまり開発されてなかったようですね」
「えっ、お父様の領地にそんな物が眠っているの?」
ルゼが説明していると、ロゼリアが驚いていた。
「そうですよ。ただ、それ以外にも場所が火山の近くと悪いですからね」
ルゼは苦笑いをしていた。
とまあ、ルゼから散々鉱石の知識を披露されてしまっては、ドール商会としては雇わざるを得なかった。
こうして、ロゼリアたちはドール商会に有能な人員を送り込めたし、ドール商会は鉱石に対する強みをより一層強化できた。そんなこんなで、両商会の会合は、成功のうちに終わったと言えるであった。
ロゼリアたちを出迎えたのは、オーロ、ブラッサ、ロイエールの商会長家族とその側近たちだった。よく見れば、オーロの妻カナリーも居る。
マゼンダ商会側は、ロゼリア、チェリシア、ペシエラ、アイリス、それにルゼの五人である。急な事だったので、シアンもリモスも来ていない。子どもだけで交渉するという事である。対して向こうはブラッサとロイエールを除けば大人ばかりだ。見るからに形勢不利である。
だがしかし、それは一般的な感想。アイリスを除けば、中身は子どもではない。それに加えて、ロゼリアとペシエラの二人は交渉術も長けている。子どもと思って甘く見てはいけない。
逆行だとか転生だとかは知らなくても、オーロだけは目の前の面々の恐ろしさが分かっていた。なにせ、今までにない魔道具をたくさん生み出してきたのだ。その発想の自由さと魔力操作の腕は、これまでの概念を崩すには十分過ぎたのだ。
「突然の訪問にも関わらず、これ程までの出迎えに感謝申し上げます。オーロ商会長」
口を開いたのはロゼリアだった。
「いや、あなた方は重要な取引相手です。いくら急とはいえ、ちゃんと出迎えられねば、それは失礼というものではないですかな?」
オーロは言葉を返す。
「そうですね。そういうところは、本当に頭が下がります」
ロゼリアは落ち着いている。
この場でプレッシャーを感じているのは、実はオーロたちの方だ。それくらいには、マゼンダ商会の事を重要視している。娘たちも懇意にしているなど、気を遣わざるを得ないのだ。
「いえいえ、当たり前の事です。……して、本日の用件は何でしょうか」
あまりの堂々とした態度に、オーロは少し押されている。それでも商会長として平然と振る舞う。
用件を聞かれたロゼリアは、チェリシアたちに目で合図をする。それに気が付いたが、口を開いたのは意外にもルゼだった。
「私をこちらで雇って下さいな」
要件だけをストレートに言った。
「失礼ですが、そちらの方はどなたですかな?」
オーロは動揺しつつも、当然発生した疑問を口にする。
「これは失礼致しましたわ、オーロ商会長。この者はルゼと申します。……ルゼ」
これに答えたのはペシエラだった。そして、ペシエラが合図を送ると、ルゼは変化する。その姿に、ドール商会側は驚いて騒めいた。
「ま、魔物……ですかな?」
「はい、とある事情でうちで保護する事になったメタルゼリーでございます。ご覧の通り、彼女は人型になれますし、会話する事もできます」
オーロの言葉に、ロゼリアが答える。この間にルゼは、再び人型になる。
「ええ、私はメタルゼリー。金属の事はとても詳しいのです。ドール商会は金属の取り扱いがあると聞きましたので、私の知識や技術はきっと役に立てると思います!」
ドヤ顔かつ胸を張って言い切るルゼ。その姿に、オーロは目を見開き、ブラッサとロイエールは微笑み、幹部たちは沈黙している。
「し、しかし、魔物とあっては信用はしきれません。本当に大丈夫なのですか?」
ドール商会の幹部の一人が声を上げる。確かに、魔物は人間に対して害を為す存在だ、仕方のない話である。
「いいえ、私は害とはなりません! 主人様のお役に立てる事こそ私の喜び。六百年間、世界の鉱石を食べて回った私を、舐めてもらっては困ります!」
「ルゼ?」
信用できないと言うドール商会の幹部に、ルゼは怒って言い返していると、ペシエラが鋭い視線をルゼに向ける。
「ひっ!」
すると、ルゼはビクッと驚いて、すごすごと席に着いた。
この様子を見ていたドール商会の幹部は驚いていた。魔物を従えているだけではなく、その魔物に言う事を聞かせている。これだけで、ペシエラの恐ろしさが分かるというものだ。
騒つく幹部とは対照的なのが、ドール一家だ。ほぼ初対面であるはずのカナリーすら落ち着いている。さすがは商会長婦人といったところか。肝が据わっている。
ここまでの反応を見ても、実際に見せた方が早いと判断したロゼリアたちは、ルゼに城で見せたように、金属を出させてみた。
「この行為、あまりしたくはないんですよね。凄くお腹が減るので……」
ぶつくさ文句を言いながらも、城で見せたように金銀プラチナに魔法銀や魔鉄鉱を出してみせた。
「おお、希少金属まで……っ! 素晴らしいですな」
オーロが食いついた。その様子に、ルゼはふふんと得意になった。
「この魔鉄鉱に関しては、このアイヴォリーの氷山エリアに眠ってますよ。インフェルノ様やタウロ様がいらしたので、あまり開発されてなかったようですね」
「えっ、お父様の領地にそんな物が眠っているの?」
ルゼが説明していると、ロゼリアが驚いていた。
「そうですよ。ただ、それ以外にも場所が火山の近くと悪いですからね」
ルゼは苦笑いをしていた。
とまあ、ルゼから散々鉱石の知識を披露されてしまっては、ドール商会としては雇わざるを得なかった。
こうして、ロゼリアたちはドール商会に有能な人員を送り込めたし、ドール商会は鉱石に対する強みをより一層強化できた。そんなこんなで、両商会の会合は、成功のうちに終わったと言えるであった。
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