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第八章 二年次
第189話 窯作りの下準備
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「そういえば、ペシエラ様」
「何かしら」
厨房に向かいながら、アイリスは口を開く。
「ルゼから報告頂きましたが、私とペシエラ様に新しい剣を用意してくれるそうですよ」
「あら、そうなのね」
「はい、何でもドール商会の鍛冶職人の所に行ってきたそうです」
この話を聞いていて、またチェリシアは疎外感を感じた。まあ、生粋の魔法使いタイプなので、剣となると対象外になってしまうから仕方がない。
しかし、アイリスはそれを感じたらしく、
「チェリシア様、確か魔力の導線は銅か魔法銀でしたよね?」
チェリシアに確認を取る。
「ええ、そうよ」
「畏まりました。調理窯のために、ルゼに用意させます」
チェリシアが答えると、アイリスは淡々とそう言った。
ルゼの能力は、長年金属を食べ続けた事による知識の蓄積とこの金属の精製能力である。自身の体と魔力を使い、思い通りに金属を作り出せるのだが、これを知るのは当のルゼとアイリスの二人だけである。チェリシアとペシエラは聞かなかったし、あまり口外するものでもないと釘を刺していた。ちなみに、二人以外は蓄積された金属の抽出だと思っている。
「うーん、熱源は窯の左右と手前奥の四ヶ所で、その天井と床面に……」
マゼンダ領のジャムを使ったクッキーを頬張りながら、チェリシアは調理窯の構想を再度練り上げていく。
「チェリシア様、窯には低温になる場所もございます。満遍なくもよろしいですが、その調整もできるようにしたら良いかと。その温度差を使って二つ同時に調理する事もございますので」
「そっか。その辺も知ってるなんてすごいわね。ありがとう、そういう調節もできるようにしてみるわね」
窯を使っていて気付いた事や先輩からのアドバイスなどで知った情報を、チェリシアに伝えるアイリス。チェリシアから素直に褒められて、アイリスはちょっと嬉しく思った。
その日、チェリシアはペシエラの女王教育におまけとしてついて行き、シルヴァノと出会う事にした。
「というわけなのです。許可頂けませんでしょうか、殿下」
「うーん、私一人では決められないね。父上や母上に相談してみないと」
チェリシアはペシエラの同伴を得て、シルヴァノに直訴していた。
「でも、面白いね。火を使わずに調理するか、考えた事がなかったよ」
チェリシアの持ってきた案件に、シルヴァノが興味を示している。
「発言失礼致します、殿下。ラルクとアックスの様子はいかがでしょうか」
オークジェネラルのラルクとアックスリザードのアックスは、あの後、王国の騎士団に所属する事になった。というわけで、つい我慢できずにアイリスはそれについて尋ねてしまった。
「うん、二人にはしっかり働いてもらっているよ。ラルクは騎士団の指導、アックスはアクアマリン子爵領に出てもらっている。アクアマリン子爵領では二度も魔物氾濫を起こされたし、彼の言い分ではアクアマリンの地が肌に合うらしいからね」
シルヴァノは気にせずに、すんなりと答えてくれた。どうやら彼らは王国ともうまくやれているようだ。
「まあ、それはともかく、魔石を使った調理窯の件は、すぐにでも申請してみるよ。設計図みたいなのはあるかい?」
紅茶をすすりながら、シルヴァノが尋ねてくる。
「はい、ございます」
チェリシアは返事をして、一枚の図面を収納魔法から取り出す。調理窯の設計図だった。
この調理窯、見た目こそ普通の扉付き調理窯だが、左右と中央前後の床面と天井、それと左右と奥の壁面にも魔石を配置しているつまり、全部で十一個、あとは操作用に一個なので、全部で十二個の魔石を使用する贅沢なものとなっていた。その上、魔力が乏しい者でも使えるように魔力の伝導線も使う予定なので、おそらく少なくとも金貨数十枚はくだらない高価な物になる感じだ。
「うーん、予算的には厳しいかも知れないけど、薪の節約にはなるし、あとは魔石とかの耐用日数の問題かな」
シルヴァノはさらさらと課題を挙げていく。この辺りも逆行前とはかなり違って聡明になっているようだ。
(驚いたわ。殿下って実は頭が良かったのですわね)
なぜかペシエラが驚いている。どうやら、国王になった時でも、ここまでの頭の回転ではなかったらしい。
「それでは、父上たちに会ってきますね」
チェリシアたちが驚いている間に、シルヴァノは国王たちに会いに行く。しばらくして、シルヴァノが戻ってくる。
「うん、許可が取れたよ。厨房を拡張してそこに設置していいそうだよ」
あっという間に許可を取ってきた。この王子有能だわ。
「あ、ありがとうございます、殿下」
「別に礼はいいよ。君たちには助けられてばかりだからね、このくらいしか私にはしてあげられないよ」
チェリシアが頭を下げると、シルヴァノは謙遜していた。
何にしても、これによって魔石を使った調理窯の製造が始められる事になったのだった。
「何かしら」
厨房に向かいながら、アイリスは口を開く。
「ルゼから報告頂きましたが、私とペシエラ様に新しい剣を用意してくれるそうですよ」
「あら、そうなのね」
「はい、何でもドール商会の鍛冶職人の所に行ってきたそうです」
この話を聞いていて、またチェリシアは疎外感を感じた。まあ、生粋の魔法使いタイプなので、剣となると対象外になってしまうから仕方がない。
しかし、アイリスはそれを感じたらしく、
「チェリシア様、確か魔力の導線は銅か魔法銀でしたよね?」
チェリシアに確認を取る。
「ええ、そうよ」
「畏まりました。調理窯のために、ルゼに用意させます」
チェリシアが答えると、アイリスは淡々とそう言った。
ルゼの能力は、長年金属を食べ続けた事による知識の蓄積とこの金属の精製能力である。自身の体と魔力を使い、思い通りに金属を作り出せるのだが、これを知るのは当のルゼとアイリスの二人だけである。チェリシアとペシエラは聞かなかったし、あまり口外するものでもないと釘を刺していた。ちなみに、二人以外は蓄積された金属の抽出だと思っている。
「うーん、熱源は窯の左右と手前奥の四ヶ所で、その天井と床面に……」
マゼンダ領のジャムを使ったクッキーを頬張りながら、チェリシアは調理窯の構想を再度練り上げていく。
「チェリシア様、窯には低温になる場所もございます。満遍なくもよろしいですが、その調整もできるようにしたら良いかと。その温度差を使って二つ同時に調理する事もございますので」
「そっか。その辺も知ってるなんてすごいわね。ありがとう、そういう調節もできるようにしてみるわね」
窯を使っていて気付いた事や先輩からのアドバイスなどで知った情報を、チェリシアに伝えるアイリス。チェリシアから素直に褒められて、アイリスはちょっと嬉しく思った。
その日、チェリシアはペシエラの女王教育におまけとしてついて行き、シルヴァノと出会う事にした。
「というわけなのです。許可頂けませんでしょうか、殿下」
「うーん、私一人では決められないね。父上や母上に相談してみないと」
チェリシアはペシエラの同伴を得て、シルヴァノに直訴していた。
「でも、面白いね。火を使わずに調理するか、考えた事がなかったよ」
チェリシアの持ってきた案件に、シルヴァノが興味を示している。
「発言失礼致します、殿下。ラルクとアックスの様子はいかがでしょうか」
オークジェネラルのラルクとアックスリザードのアックスは、あの後、王国の騎士団に所属する事になった。というわけで、つい我慢できずにアイリスはそれについて尋ねてしまった。
「うん、二人にはしっかり働いてもらっているよ。ラルクは騎士団の指導、アックスはアクアマリン子爵領に出てもらっている。アクアマリン子爵領では二度も魔物氾濫を起こされたし、彼の言い分ではアクアマリンの地が肌に合うらしいからね」
シルヴァノは気にせずに、すんなりと答えてくれた。どうやら彼らは王国ともうまくやれているようだ。
「まあ、それはともかく、魔石を使った調理窯の件は、すぐにでも申請してみるよ。設計図みたいなのはあるかい?」
紅茶をすすりながら、シルヴァノが尋ねてくる。
「はい、ございます」
チェリシアは返事をして、一枚の図面を収納魔法から取り出す。調理窯の設計図だった。
この調理窯、見た目こそ普通の扉付き調理窯だが、左右と中央前後の床面と天井、それと左右と奥の壁面にも魔石を配置しているつまり、全部で十一個、あとは操作用に一個なので、全部で十二個の魔石を使用する贅沢なものとなっていた。その上、魔力が乏しい者でも使えるように魔力の伝導線も使う予定なので、おそらく少なくとも金貨数十枚はくだらない高価な物になる感じだ。
「うーん、予算的には厳しいかも知れないけど、薪の節約にはなるし、あとは魔石とかの耐用日数の問題かな」
シルヴァノはさらさらと課題を挙げていく。この辺りも逆行前とはかなり違って聡明になっているようだ。
(驚いたわ。殿下って実は頭が良かったのですわね)
なぜかペシエラが驚いている。どうやら、国王になった時でも、ここまでの頭の回転ではなかったらしい。
「それでは、父上たちに会ってきますね」
チェリシアたちが驚いている間に、シルヴァノは国王たちに会いに行く。しばらくして、シルヴァノが戻ってくる。
「うん、許可が取れたよ。厨房を拡張してそこに設置していいそうだよ」
あっという間に許可を取ってきた。この王子有能だわ。
「あ、ありがとうございます、殿下」
「別に礼はいいよ。君たちには助けられてばかりだからね、このくらいしか私にはしてあげられないよ」
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